【完結】大魔法師様は運命の恋人を溺愛中。〜魔法学院編〜

みるくくらうん

文字の大きさ
268 / 321
一年生・冬の章

リヒトの欲しいもの②

しおりを挟む


「チョコレートでも買って帰ろうか」


 問い詰めたい気持ちをグッと抑え、とりあえずフィンが風邪をひかないように早々に帰ろうと歩き出す。
 “ドーラ・ショコラティエ”に入ったリヒトは、オススメのチョコレートを買うとそのまま別邸までフィンの手を離さず歩いた。


「(結局リヒトに買ってもらっちゃった……)」


 普段ならチョコレートを買うと大喜びするフィンが、今日に限っては浮かない様子のため、リヒトは心配そうにフィンに視線を送る。
 プレゼントをあげるつもりが、結局いつも通りリヒトに与えられてしまったことでフィンは少し焦りを感じていた。そんなフィンに追い打ちをかけるように、広場のベンチに座るとある子女二人組の会話が聞こえてくる。


「それでね、貰うのが当たり前だと思ってるの?って言ったら彼が黙っちゃって」
「えーなにそれ!やっぱり庶民とじゃ釣り合わないわよ、貴女与えてばっかりじゃない」
「たまにはプレゼントぐらいして欲しいわよねぇ」
「そうよねー。そんな彼、


 普段なら気にするような内容の話ではないが、今のフィンには堪える内容。


「(捨てられる)」


 ネガティブモードのフィンは一気に表情を青ざめさせ、無意識にリヒトの手を強く握って瞳を震わせた。
 リヒトはそれに気付き、困ったように少し目を見開く。


「(一体何があったんだ……)」


 別邸に着くと、リヒトはそのままフィンを連れて暖炉のある部屋に行きソファに座らせる。暖炉は自然に火が灯され、冷えた部屋は徐々に暖かくなっていった。


「……」


 フィンは大人しくソファに座ったまま目を泳がせる。
 リヒトはその横に座り、白状しろと言わんばかりにフィンの顔をこちらに向かせ口を開く。


「フィン、どうしたの」

「……」

「黙ってちゃ分からない……教えてくれ。そうでないと、寂しい」


 リヒトはフィンの手をとり自分の心臓にあてて、寂しそうな表情を浮かべ顔を近付ける。
 自分が仕事で目を離している隙に何があったのか、どんな心情の変化があったのか、リヒトは気になって仕方がなかった。

 フィンは、リヒトを喜ばせたかったはずがそれが出来なかったこと、考えても何を与えたら喜んでくれるか分からなかったこと、いつもしてもらってばかりでたまにはリヒトを労いたかったこと、それを説明するべきだと頭で分かっていても、喉が熱くなり思うように言葉が出ずただ瞳を震わせた。
 そんな態度がリヒトを不安にさせているのに、上手く話せない。


「リヒト、あの、」


 フィンは震えた声で目をぎゅっと閉じリヒトの服を掴む。


「ん……?」


 リヒトはようやく口を開いたフィンに耳を傾けた。
 フィンは言葉の整理がつかぬまま、先程の子女達の会話が頭の中をループし一人焦燥感に苛まれる。


「ぼく……捨てられちゃう?」


 ようやく捻り出した言葉。リヒトは訳がわからず困った表情でフィンを見下ろすと、俯く相手の顔を両手で包んで自分の目を見させた。
 不安げに揺れる大きな瞳が、リヒトの庇護欲を駆り立てる。


「どう言う意味だ……フィンを捨てる?俺が?」


 リヒトが確認のためそう問いかけると、フィンはぶわっと大粒の涙を浮かべぽろぽろと涙を流し始めた。


「っ!?」


 リヒトはそれを慌てて指で優しく拭うと、心配そうに顔を近づけ額にキスをしてから見つめる。


「フィン、一体どうしたの。俺の目を見て、少しでいいから教えて?泣いてる理由を」


 フィンは言われた通りリヒトの瞳を見つめる。宝石のように輝くブルーの瞳が美し過ぎて、フィンはぼーっとした表情で相手を見つめ続ける。その間もぽろっと小さな涙の粒がフィンの瞳から溢れて、リヒトはその度に指で拭い堪らなくなって触れるだけのキスをした。
 フィンの唇は少しひんやりとしていて、それでいていつも通り柔らかい。リヒトはその唇を温めるように何度も繰り返し唇を押しつけた。


「ん……」


 フィンはキスをされる度ピクッと肩を震わせるが、嫌がるそぶりは見せず次第に唇に熱を持ち始める。
 リヒトはそれを確認するように舌でフィンの唇を軽く舐めると、そのまま唇を離してフィンを見つめた。


「ごめんね……泣いている顔も可愛いから我慢できなかった」


 突然キスをしたことを謝罪するリヒト。フィンはカーッと顔を赤くしながら小さく首を横に振って「大丈夫」と返答した。その後はごしごしと目を擦ると、靴を脱いでソファーに正座しリヒトを見つめる。


「ん、話してくれる気になった?」


 リヒトはすりすりと赤ちゃんのようなフィンの頬を撫でながら笑みを浮かべると、フィンはコクリと小さく頷いた。


「……あのね、リヒト」


 ようやく語り始めるフィン。
 アレクサンダーがご褒美と称してシルフィーにプレゼントをしていたことをきっかけに、自分もリヒトに感謝の気持ちを伝えるためにプレゼントをしたかった。しかし、いざとなるとリヒトに何を贈ればいいか分からず、何が欲しいかも分からなかったため途方にくれていたことを説明した。
 結局リヒトにチョコレートを買ってもらってしまい、極め付けに子女の会話が聞こえ、このままでは自分はいつか捨てられてしまうと焦ってしまったとフィンは俯きながら語る。

 一通り聞き終えたリヒトは、キョトン顔でフィンを見た。


しおりを挟む
感想 160

あなたにおすすめの小説

巣ごもりオメガは後宮にひそむ【続編完結】

晦リリ@9/10『死に戻りの神子~』発売
BL
後宮で幼馴染でもあるラナ姫の護衛をしているミシュアルは、つがいがいないのに、すでに契約がすんでいる体であるという判定を受けたオメガ。 発情期はあるものの、つがいが誰なのか、いつつがいの契約がなされたのかは本人もわからない。 そんななか、気になる匂いの落とし物を後宮で拾うようになる。 第9回BL小説大賞にて奨励賞受賞→書籍化しました。ありがとうございます。

お疲れポメラニアンの俺を癒したのは眼鏡イケメンの同期だった

こたま
BL
前田累(かさね)は、商社営業部に勤める社員だ。接待では無理してノリを合わせており、見た目からコミュ強チャラ男と思われているが本来は大人しい。疲れはてて独身寮に帰ろうとした際に気付けばオレンジ毛のポメラニアンになっていた。累を保護したのは普段眼光鋭く厳しい指摘をする経理の同期野坂燿司(ようじ)で。ポメラニアンに対しては甘く優しい燿司の姿にびっくりしつつ、癒されると…

鎖に繋がれた騎士は、敵国で皇帝の愛に囚われる

結衣可
BL
戦場で捕らえられた若き騎士エリアスは、牢に繋がれながらも誇りを折らず、帝国の皇帝オルフェンの瞳を惹きつける。 冷酷と畏怖で人を遠ざけてきた皇帝は、彼を望み、夜ごと逢瀬を重ねていく。 憎しみと抗いのはずが、いつしか芽生える心の揺らぎ。 誇り高き騎士が囚われたのは、冷徹な皇帝の愛。 鎖に繋がれた誇りと、独占欲に満ちた溺愛の行方は――。

借金のカタで二十歳上の実業家に嫁いだΩ。鳥かごで一年過ごすだけの契約だったのに、氷の帝王と呼ばれた彼に激しく愛され、唯一無二の番になる

水凪しおん
BL
名家の次男として生まれたΩ(オメガ)の青年、藍沢伊織。彼はある日突然、家の負債の肩代わりとして、二十歳も年上のα(アルファ)である実業家、久遠征四郎の屋敷へと送られる。事実上の政略結婚。しかし伊織を待ち受けていたのは、愛のない契約だった。 「一年間、俺の『鳥』としてこの屋敷で静かに暮らせ。そうすれば君の家族は救おう」 過去に愛する番を亡くし心を凍てつかせた「氷の帝王」こと征四郎。伊織はただ美しい置物として鳥かごの中で生きることを強いられる。しかしその瞳の奥に宿る深い孤独に触れるうち、伊織の心には反発とは違う感情が芽生え始める。 ひたむきな優しさは、氷の心を溶かす陽だまりとなるか。 孤独なαと健気なΩが、偽りの契約から真実の愛を見出すまでの、切なくも美しいシンデレラストーリー。

悪役令嬢の兄でしたが、追放後は参謀として騎士たちに囲まれています。- 第1巻 - 婚約破棄と一族追放

大の字だい
BL
王国にその名を轟かせる名門・ブラックウッド公爵家。 嫡男レイモンドは比類なき才知と冷徹な眼差しを持つ若き天才であった。 だが妹リディアナが王太子の許嫁でありながら、王太子が心奪われたのは庶民の少女リーシャ・グレイヴェル。 嫉妬と憎悪が社交界を揺るがす愚行へと繋がり、王宮での婚約破棄、王の御前での一族追放へと至る。 混乱の只中、妹を庇おうとするレイモンドの前に立ちはだかったのは、王国騎士団副団長にしてリーシャの異母兄、ヴィンセント・グレイヴェル。 琥珀の瞳に嗜虐を宿した彼は言う―― 「この才を捨てるは惜しい。ゆえに、我が手で飼い馴らそう」 知略と支配欲を秘めた騎士と、没落した宰相家の天才青年。 耽美と背徳の物語が、冷たい鎖と熱い口づけの中で幕を開ける。

イケメン後輩のスマホを拾ったらロック画が俺でした

天埜鳩愛
BL
☆本編番外編 完結済✨ 感想嬉しいです! 元バスケ部の俺が拾ったスマホのロック画は、ユニフォーム姿の“俺”。 持ち主は、顔面国宝の一年生。 なんで俺の写真? なんでロック画? 問い詰める間もなく「この人が最優先なんで」って宣言されて、女子の悲鳴の中、肩を掴まれて連行された。……俺、ただスマホ届けに来ただけなんだけど。 頼られたら嫌とは言えない南澤燈真は高校二年生。クールなイケメン後輩、北門唯が置き忘れたスマホを手に取ってみると、ロック画が何故か中学時代の燈真だった! 北門はモテ男ゆえに女子からしつこくされ、燈真が助けることに。その日から学年を越え急激に仲良くなる二人。燈真は誰にも言えなかった悩みを北門にだけ打ち明けて……。一途なメロ後輩 × 絆され男前先輩の、救いすくわれ・持ちつ持たれつラブ! ☆ノベマ!の青春BLコンテスト最終選考作品に加筆&新エピソードを加えたアルファポリス版です。

隠れオメガの整備士は自由になりたい。なのに暴走する最強騎士を身体を張って止めたら、運命の番だとバレて過保護な専属契約を結ばされました

水凪しおん
BL
※オメガバース設定。激しい戦闘描写や、執着攻めによるマーキング描写、軽度の性的な接触の描写がありますので、15歳未満の方の閲覧はご遠慮ください。 汚染された惑星を浄化する生体兵器『機装(ギア)』。 その搭乗者は優れた能力を持つ『アルファ』に限られ、彼らの精神を安定させる鎮静剤として『オメガ』が存在する世界。 整備士のエリアンは、オメガであることを隠し、ベータと偽って軍の最前線で働いていた。 オメガは道具のように扱われるこの社会で、自由を守るための必死の嘘だった。 だがある日、軍最強のエリートパイロット・クレイドの機装が暴走する事故に遭遇する。 死を覚悟して止めに入ったエリアンだったが、暴走する機体はなぜか彼にだけ反応し、沈静化した。 それは、隠していたオメガのフェロモンが、クレイドと強烈な『共鳴』を起こした瞬間だった。 「見つけた。俺の対になる存在を」 正体がバレたと戦慄するエリアンに対し、冷徹なはずのクレイドが向けたのは、処罰ではなく執着に満ちた熱い視線で……? 孤独なエリート騎士×身分を隠した健気な整備士。 星の命運と本能が交錯する、近未来SFオメガバース!

番解除した僕等の末路【完結済・短編】

藍生らぱん
BL
都市伝説だと思っていた「運命の番」に出逢った。 番になって数日後、「番解除」された事を悟った。 「番解除」されたΩは、二度と他のαと番になることができない。 けれど余命宣告を受けていた僕にとっては都合が良かった。

処理中です...