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13 妹の存在(ハミルトン視点)
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僕の名前はハミルトン。
アシェトン公爵家の長男でもうじき十七歳の誕生日を迎える。
僕の家に父上はいない。
祖父母と母上だけが僕の家族だ。
小さい頃は疑問にも思っていなかったが、大きくなるにつれて他の家庭には父親という存在がある事を知った。
(どうして僕の家には父上がいないのだろう?)
そんな質問も祖父母や母上にするのは何故か躊躇われた。
そのうちに参加したパーティーで噂好きの貴族から僕の父上が他の女と駆け落ちしたという話を聞かされた。
それも面と向かって言われたわけではなく、たまたま噂話が耳に入って来ただけの事だ。
話をしていた人達もまさか僕が聞いていたとは露ほども思っていなかっただろう。
だけど、その時の僕にとってはかなり衝撃的な話だった。
まさか他の女と駆け落ちをするなんて…。
まだ死んでくれていたほうがよっぽどマシだ。
そのせいもあるのかどうかはわからないが、僕に関しては特に婚約者を決められる事はなかった。
勿論、たとえ婚約者を決められても僕はその人を蔑ろにするつもりはなかった。
それでもあの男の血を引いているから、一概に大丈夫とは言えないだろう。
父上の顔は肖像画でしか知らないが、僕とはあまり似ていなかった。
それでも何処か可愛らしい印象を受ける顔付きだった。
父上の話を聞いた後もいつもと変わらない毎日を過ごしていたが、徐々にお祖母様の体調が悪くなっていった。
やがて寝込む事が多くなり、ついには起き上がれなくなってしまった。
お見舞いに行ってもお祖母様は次第に「ダグラスに会いたい」と言うようになった。
そこでようやくお祖父様は父上を捜す決意をしたようだ。
人を雇い、父上の足取りを追った結果、随分と前に盗賊に襲われて亡くなっていた事が判明した。
だが、流石にそんな報告をお祖母様にするわけにはいかなかった。
父上と女は亡くなっていたが、娘が一人いた事がわかり、捜しているうちにお祖母様は亡くなってしまった。
お祖父様もお祖母様を亡くした心労から、お祖母様と同じように寝込んでしまった。
二人は政略結婚とはいえ、仲睦まじかったから余計にお祖母様の死が堪えたに違いない。
そのお祖父様の要望もあって、残された娘を我が家で引き取る事になった。
お祖父様が決めた事だから否は唱えたくないが、内心いい気持ちはしなかった。
次期当主はこの僕だ。
せいぜい僕の役に立って貰おう。
そう思い、その娘ジェシカが連れてこられた日、一目顔を見てやろうと待ち構えていた。
階段の上から玄関の扉が開いて入って来たジェシカを見た途端、何故か僕は心を奪われてしまった。
小綺麗ではあるが安物のワンピースに身を包んだ彼女から目が離せなかった。
(どうした、ハミルトン!)
(相手は半分とはいえ、血の繋がった妹だぞ!)
僕は心に喝を入れて階段を降りていった。
目の前のジェシカを睨みつけるようにして口を開いたが、思っている事とはまるで反対の言葉が口から溢れる。
「こいつが泥棒猫の娘か。こんな女と血が繋がっているなんて反吐が出る!」
(違う! こんな事を言いたいんじゃないのに…)
だけど口からはどんどんジェシカを傷つけるような言葉が吐き出される。
そうでもしないと僕はジェシカを抱きしめてしまいそうだったから…。
妹だと知らずに会っていたらきっと好きになっていたに違いない。
そう、僕はジェシカに一目惚れしてしまったんだ。
クルリと背を向けて階段を上がって行ったが、本当はすぐにでも引き返して抱きしめたかった。
部屋に戻ると僕はベッドに倒れ込んで思い切り布団に拳を叩き込んだ。
この時ほど父上を恨んだ事はない。
あの男が駆け落ちなんてしなければ、ジェシカが生まれてくる事なんてなかったのに…。
だが、その反面、ジェシカに出会えた喜びに打ち震える自分がいた。
そして、夕食の時、食堂に入って来たジェシカの美しさに僕は目を瞠った。
何処に出しても恥ずかしくない貴族令嬢がそこにいた。
出来ればずっと手元に置いておきたいが、そうもいかないだろう。
社交界に出ればきっと数多の令息がジェシカの虜になるに違いない。
だが、ジェシカは何処にも嫁にはやらないからな。
ずっと僕と一緒に公爵家で暮らして行くんだ。
そう固く心に決めて僕は食事を続ける。
明日からどう口実をつけてジェシカに接触しようかと考えを巡らせながら。
アシェトン公爵家の長男でもうじき十七歳の誕生日を迎える。
僕の家に父上はいない。
祖父母と母上だけが僕の家族だ。
小さい頃は疑問にも思っていなかったが、大きくなるにつれて他の家庭には父親という存在がある事を知った。
(どうして僕の家には父上がいないのだろう?)
そんな質問も祖父母や母上にするのは何故か躊躇われた。
そのうちに参加したパーティーで噂好きの貴族から僕の父上が他の女と駆け落ちしたという話を聞かされた。
それも面と向かって言われたわけではなく、たまたま噂話が耳に入って来ただけの事だ。
話をしていた人達もまさか僕が聞いていたとは露ほども思っていなかっただろう。
だけど、その時の僕にとってはかなり衝撃的な話だった。
まさか他の女と駆け落ちをするなんて…。
まだ死んでくれていたほうがよっぽどマシだ。
そのせいもあるのかどうかはわからないが、僕に関しては特に婚約者を決められる事はなかった。
勿論、たとえ婚約者を決められても僕はその人を蔑ろにするつもりはなかった。
それでもあの男の血を引いているから、一概に大丈夫とは言えないだろう。
父上の顔は肖像画でしか知らないが、僕とはあまり似ていなかった。
それでも何処か可愛らしい印象を受ける顔付きだった。
父上の話を聞いた後もいつもと変わらない毎日を過ごしていたが、徐々にお祖母様の体調が悪くなっていった。
やがて寝込む事が多くなり、ついには起き上がれなくなってしまった。
お見舞いに行ってもお祖母様は次第に「ダグラスに会いたい」と言うようになった。
そこでようやくお祖父様は父上を捜す決意をしたようだ。
人を雇い、父上の足取りを追った結果、随分と前に盗賊に襲われて亡くなっていた事が判明した。
だが、流石にそんな報告をお祖母様にするわけにはいかなかった。
父上と女は亡くなっていたが、娘が一人いた事がわかり、捜しているうちにお祖母様は亡くなってしまった。
お祖父様もお祖母様を亡くした心労から、お祖母様と同じように寝込んでしまった。
二人は政略結婚とはいえ、仲睦まじかったから余計にお祖母様の死が堪えたに違いない。
そのお祖父様の要望もあって、残された娘を我が家で引き取る事になった。
お祖父様が決めた事だから否は唱えたくないが、内心いい気持ちはしなかった。
次期当主はこの僕だ。
せいぜい僕の役に立って貰おう。
そう思い、その娘ジェシカが連れてこられた日、一目顔を見てやろうと待ち構えていた。
階段の上から玄関の扉が開いて入って来たジェシカを見た途端、何故か僕は心を奪われてしまった。
小綺麗ではあるが安物のワンピースに身を包んだ彼女から目が離せなかった。
(どうした、ハミルトン!)
(相手は半分とはいえ、血の繋がった妹だぞ!)
僕は心に喝を入れて階段を降りていった。
目の前のジェシカを睨みつけるようにして口を開いたが、思っている事とはまるで反対の言葉が口から溢れる。
「こいつが泥棒猫の娘か。こんな女と血が繋がっているなんて反吐が出る!」
(違う! こんな事を言いたいんじゃないのに…)
だけど口からはどんどんジェシカを傷つけるような言葉が吐き出される。
そうでもしないと僕はジェシカを抱きしめてしまいそうだったから…。
妹だと知らずに会っていたらきっと好きになっていたに違いない。
そう、僕はジェシカに一目惚れしてしまったんだ。
クルリと背を向けて階段を上がって行ったが、本当はすぐにでも引き返して抱きしめたかった。
部屋に戻ると僕はベッドに倒れ込んで思い切り布団に拳を叩き込んだ。
この時ほど父上を恨んだ事はない。
あの男が駆け落ちなんてしなければ、ジェシカが生まれてくる事なんてなかったのに…。
だが、その反面、ジェシカに出会えた喜びに打ち震える自分がいた。
そして、夕食の時、食堂に入って来たジェシカの美しさに僕は目を瞠った。
何処に出しても恥ずかしくない貴族令嬢がそこにいた。
出来ればずっと手元に置いておきたいが、そうもいかないだろう。
社交界に出ればきっと数多の令息がジェシカの虜になるに違いない。
だが、ジェシカは何処にも嫁にはやらないからな。
ずっと僕と一緒に公爵家で暮らして行くんだ。
そう固く心に決めて僕は食事を続ける。
明日からどう口実をつけてジェシカに接触しようかと考えを巡らせながら。
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