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24 王妃の最期
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王宮の奥にひっそりとたたずむ別邸にある寝室で一人ベッドに横たわっている女性がいた。
彼女の名はソフィア。
この国の現国王の妻であり、王太子ユージーンの母親だ。
彼女は既に何年も前からこうして寝室に閉じこもり寝込んだままだ。
いつ、尽きるともわからない命をこうして細々と生きながらえている。
彼女の命を繋ぐものはただ一つ。
それは夫であるエリックの妻の座を誰にも渡したくないという意地だった。
だが、その意地だけでいつまでも持つはずもなかった。
ソフィアはここに来て急激に身体が弱ってきていることを感じていた。
もう余命幾ばくもないのは自分自身が良くわかっていた。
自分が死ねばエリックはすぐさま昔の恋人を探すに違いない。
いや、もしかしたら既に捜し出して見つけているのかもしれない。
ソフィアはベッドに横たわったまま、あの日の事を思い出していた。
十六年前、まだ生まれて間もないユージーンがいるにも関わらず、エリックは他の令嬢と逢瀬を重ねていた。
その相手が自分と同じ侯爵令嬢ならば、まだ我慢が出来た。
しかし、エリックが選んだ相手は事もあろうに子爵令嬢だった。
これにはソフィアのプライドもズタズタに傷ついた。
(よりによって子爵令嬢? あんな格下の女に私が負けたと言うの?)
エリックにとってソフィアは単なる政略結婚の相手に過ぎなかっただろう。
けれどソフィアにとってエリックは初恋の相手だった。
七歳の年に初めて登城してエリックを見た時から、ソフィアはエリックに恋をした。
その日からソフィアはエリックの婚約者になれるように一層の努力を重ねた。
その苦労も実って十五歳になってソフィアはエリックの婚約者として認められた。
エリックもその頃はソフィアの事をそれなりに受け入れてくれていたはずだった。
それなのに結婚式を間近に控えた夜会で出会ったアイリスと言う子爵令嬢に、あろうことかエリックは心を奪われてしまったのだ。
流石にソフィアに婚約破棄を言い出すような馬鹿な行動はしなかったが、時折ソフィアの目を盗んでは二人は逢瀬を重ねていた。
そして結婚後、ソフィアが出産でエリックの側を離れている隙に二人は関係を持ってしまった。
それに気付いたソフィアは実家の権力と自身の立場を使ってアイリスを修道院へと追いやった。
エリックは何とかそれを阻止しようとしたが、結局は周りの人からも押し切られるような形で泣く泣くアイリスを手放した。
「今のままではソフィア様がアイリス様を殺しかねない。生まれたばかりのユージーン様を犯罪者の子供にしても良いのですか?」
そんなふうに言われれば、アイリスをソフィアから遠ざける事しか出来なかった。
そして今。
ソフィアの命は確実に消えようとしている。
ソフィアは最期の力を振り絞って、自分に仕えてくれている侍女の名前を呼んだ。
「…ミランダ…」
「はい、王妃様。ここにおります」
ミランダは伸ばされたソフィアの手を両手で握りしめると力づけるように声をかけた。
「…陛下は、きっとあの女をこの王宮に連れてくるわ。もしそうなったら…」
「お任せください、王妃様。その時は必ず私があの女に引導を渡します」
ミランダもアイリスと同じ子爵令嬢だった。
それなのにあの女が陛下に見初められて、自分が相手にされなかったのには我慢がならなかった。
それにミランダはソフィアに憧れていた。
そのソフィアを差し置いて陛下の寵愛をアイリスが受けているのも許せなかった。
あの頃にも散々アイリスに嫌がらせをしてやったが、いつも陛下に庇われていた。
修道院に送られたと聞いた時は溜飲が下がったが、こうしてソフィアが明日をもしれぬ命になると、あの女が帰って来るのではと不安になった。
(次は失敗しないわ。必ず息の根を止めてやる)
ソフィアはミランダの決意を聞いて満足そうに微笑んだ。
「…ありがとう、ミランダ。…頼んだわよ…」
そう言い残すとふっとソフィアの手から力が抜けた。
ミランダが慌てて呼びかけても、ソフィアの目が再び開く事はなかった。
彼女の名はソフィア。
この国の現国王の妻であり、王太子ユージーンの母親だ。
彼女は既に何年も前からこうして寝室に閉じこもり寝込んだままだ。
いつ、尽きるともわからない命をこうして細々と生きながらえている。
彼女の命を繋ぐものはただ一つ。
それは夫であるエリックの妻の座を誰にも渡したくないという意地だった。
だが、その意地だけでいつまでも持つはずもなかった。
ソフィアはここに来て急激に身体が弱ってきていることを感じていた。
もう余命幾ばくもないのは自分自身が良くわかっていた。
自分が死ねばエリックはすぐさま昔の恋人を探すに違いない。
いや、もしかしたら既に捜し出して見つけているのかもしれない。
ソフィアはベッドに横たわったまま、あの日の事を思い出していた。
十六年前、まだ生まれて間もないユージーンがいるにも関わらず、エリックは他の令嬢と逢瀬を重ねていた。
その相手が自分と同じ侯爵令嬢ならば、まだ我慢が出来た。
しかし、エリックが選んだ相手は事もあろうに子爵令嬢だった。
これにはソフィアのプライドもズタズタに傷ついた。
(よりによって子爵令嬢? あんな格下の女に私が負けたと言うの?)
エリックにとってソフィアは単なる政略結婚の相手に過ぎなかっただろう。
けれどソフィアにとってエリックは初恋の相手だった。
七歳の年に初めて登城してエリックを見た時から、ソフィアはエリックに恋をした。
その日からソフィアはエリックの婚約者になれるように一層の努力を重ねた。
その苦労も実って十五歳になってソフィアはエリックの婚約者として認められた。
エリックもその頃はソフィアの事をそれなりに受け入れてくれていたはずだった。
それなのに結婚式を間近に控えた夜会で出会ったアイリスと言う子爵令嬢に、あろうことかエリックは心を奪われてしまったのだ。
流石にソフィアに婚約破棄を言い出すような馬鹿な行動はしなかったが、時折ソフィアの目を盗んでは二人は逢瀬を重ねていた。
そして結婚後、ソフィアが出産でエリックの側を離れている隙に二人は関係を持ってしまった。
それに気付いたソフィアは実家の権力と自身の立場を使ってアイリスを修道院へと追いやった。
エリックは何とかそれを阻止しようとしたが、結局は周りの人からも押し切られるような形で泣く泣くアイリスを手放した。
「今のままではソフィア様がアイリス様を殺しかねない。生まれたばかりのユージーン様を犯罪者の子供にしても良いのですか?」
そんなふうに言われれば、アイリスをソフィアから遠ざける事しか出来なかった。
そして今。
ソフィアの命は確実に消えようとしている。
ソフィアは最期の力を振り絞って、自分に仕えてくれている侍女の名前を呼んだ。
「…ミランダ…」
「はい、王妃様。ここにおります」
ミランダは伸ばされたソフィアの手を両手で握りしめると力づけるように声をかけた。
「…陛下は、きっとあの女をこの王宮に連れてくるわ。もしそうなったら…」
「お任せください、王妃様。その時は必ず私があの女に引導を渡します」
ミランダもアイリスと同じ子爵令嬢だった。
それなのにあの女が陛下に見初められて、自分が相手にされなかったのには我慢がならなかった。
それにミランダはソフィアに憧れていた。
そのソフィアを差し置いて陛下の寵愛をアイリスが受けているのも許せなかった。
あの頃にも散々アイリスに嫌がらせをしてやったが、いつも陛下に庇われていた。
修道院に送られたと聞いた時は溜飲が下がったが、こうしてソフィアが明日をもしれぬ命になると、あの女が帰って来るのではと不安になった。
(次は失敗しないわ。必ず息の根を止めてやる)
ソフィアはミランダの決意を聞いて満足そうに微笑んだ。
「…ありがとう、ミランダ。…頼んだわよ…」
そう言い残すとふっとソフィアの手から力が抜けた。
ミランダが慌てて呼びかけても、ソフィアの目が再び開く事はなかった。
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