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28 弔問(ハミルトン視点)
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食後のお茶を飲んでいると慌ただしく足音が聞こえて、モーガンが部屋に飛び込んで来た。
いつもの落ち着き払った姿は何処へやら、こんな姿のモーガンが見られるとは思ってもみなかった。
こんなに慌てていると言う事は、多分あの知らせが届いたのだろう。
「先程、王妃様が亡くなられたそうです」
案の定、モーガンの口から思っていた通りの台詞が出て来る。
僕も母上もモーガンの台詞に驚きはしなかったが、ただ一人、フェリシアだけが王妃様の訃報に目を白黒させていた。
今まで貴族とは無縁の生活をしていたのに、こうして貴族の屋敷にいて王妃様の訃報を聞く事になるとは思わなかったのだろう。
本物のジェシカが公爵家の血筋だと知っていてこの家に入り込んだと思っていたのだが、どうやら違うようだ。
そもそも当のジェシカが自分の父親の素性を知らなかったようだから当然かもしれない。
母上は王妃様の訃報を聞いて即座に僕に弔問に行くようにと命じた。
王妃様とは犬猿の仲だったらしいから無理もないか。
僕としてもユージーンに会えるのだから異を唱えはしないが、ジェシカとの時間が減ってしまうのが残念だ。
翌朝、僕は登城の準備に取り掛かった。
華美な装飾の付いていない服を用意させて、馬車も家紋のみの目立たない物に乗り込んだ。
馬車に揺られながら、最後に王妃様にお会いしたのはいつだったかと記憶を辿った。
あればまだ祖母が存命の頃で祖父母と共に王妃様のいる別邸を訪ねたのだ。
とはいえ、男性である僕と祖父は直接お目通りする事は叶わなかった。
祖母だけが王妃様が寝ている部屋に通され、僕と祖父は別室で祖母の面会が終わるのを待っていただけだった。
その祖母が先に亡くなるとは、誰もが想像すらしていなかっただろう。
馬車は程なくして王宮の門をくぐる。
あらかじめ訪問を伝えていたので馬車を降りるとユージーンが出迎えてくれた。
「ユージーン様、この度はお悔やみを申し上げます」
恭しく頭を下げると「ああ」とだけ返ってきた。
そのまま二人で王妃様が安置されている別邸へと向かう。
今日の夜には教会の方に遺体が移され、葬儀が行われる日までそちらに安置されるそうだ。
そんな話を淡々と様子で事務的に僕に伝えてくるユージーンには、母親を亡くしたという悲壮感はない。
(まあ、あんな親子関係じゃ無理もないか)
歳も同じだし祖父同士が兄弟なので、それなりに親しい付き合いをしてきたので、二人がどんな関係だったのかを知っている。
公的な場では仲が良さそうに振る舞ってはいたが、人目が無くなった途端、王妃様はユージーンに近寄りもしなかった。
彼女の目に映るのはただ一人、国王陛下だけだった。
あれほど愛している人との間に産まれた子供なのだから、溺愛してもおかしくないのに、まるで歯牙にもかけなかった。
王族だから子供の世話を乳母に任せるというのはよくある話だが、それでもある程度の愛情は注いでいるはずだ。
だが、王妃様はユージーンにいっさい関わろうとしなかった。
まるで他人同士が一緒にいるような印象を受けたものだ。
別邸の一室に案内されるとベッドに横たわった王妃様の遺体があった。
記憶の中の王妃様はユージーンに良く似た綺麗な女性だったが、今は痩せこけて見る影も無い。
「母上が亡くなったと聞いて遺体を見れば涙の一つも出るかと思ったが、何の感情も沸かなかったよ」
フッと自虐の笑みを浮かべるユージーンの肩をポンと慰めるように叩いてやった。
「あの王妃様の態度じゃ仕方がないさ」
他にも言葉をかけようとしたが、何を言っていいのか全く思いつかない。
少し乱れた王妃様の髪を直しながらユージーンがポツリと呟いた。
「あんなに執着していた父上は、母上の遺体を見ながら、例の女性を探すように言い付けていたんだよ。全く母上も母上ならば、父上も父上だ」
吐き捨てるような物言いに父親への侮蔑が込められている。
「お互い、父親には苦労するな」
「そう言えばハミルトンに妹がいたんだって? ロジャーが街で出会ったと言っていたぞ」
(…やはり、既に耳に入っていたか)
僕はジェシカについてユージーンに話す事に決めた。
いつもの落ち着き払った姿は何処へやら、こんな姿のモーガンが見られるとは思ってもみなかった。
こんなに慌てていると言う事は、多分あの知らせが届いたのだろう。
「先程、王妃様が亡くなられたそうです」
案の定、モーガンの口から思っていた通りの台詞が出て来る。
僕も母上もモーガンの台詞に驚きはしなかったが、ただ一人、フェリシアだけが王妃様の訃報に目を白黒させていた。
今まで貴族とは無縁の生活をしていたのに、こうして貴族の屋敷にいて王妃様の訃報を聞く事になるとは思わなかったのだろう。
本物のジェシカが公爵家の血筋だと知っていてこの家に入り込んだと思っていたのだが、どうやら違うようだ。
そもそも当のジェシカが自分の父親の素性を知らなかったようだから当然かもしれない。
母上は王妃様の訃報を聞いて即座に僕に弔問に行くようにと命じた。
王妃様とは犬猿の仲だったらしいから無理もないか。
僕としてもユージーンに会えるのだから異を唱えはしないが、ジェシカとの時間が減ってしまうのが残念だ。
翌朝、僕は登城の準備に取り掛かった。
華美な装飾の付いていない服を用意させて、馬車も家紋のみの目立たない物に乗り込んだ。
馬車に揺られながら、最後に王妃様にお会いしたのはいつだったかと記憶を辿った。
あればまだ祖母が存命の頃で祖父母と共に王妃様のいる別邸を訪ねたのだ。
とはいえ、男性である僕と祖父は直接お目通りする事は叶わなかった。
祖母だけが王妃様が寝ている部屋に通され、僕と祖父は別室で祖母の面会が終わるのを待っていただけだった。
その祖母が先に亡くなるとは、誰もが想像すらしていなかっただろう。
馬車は程なくして王宮の門をくぐる。
あらかじめ訪問を伝えていたので馬車を降りるとユージーンが出迎えてくれた。
「ユージーン様、この度はお悔やみを申し上げます」
恭しく頭を下げると「ああ」とだけ返ってきた。
そのまま二人で王妃様が安置されている別邸へと向かう。
今日の夜には教会の方に遺体が移され、葬儀が行われる日までそちらに安置されるそうだ。
そんな話を淡々と様子で事務的に僕に伝えてくるユージーンには、母親を亡くしたという悲壮感はない。
(まあ、あんな親子関係じゃ無理もないか)
歳も同じだし祖父同士が兄弟なので、それなりに親しい付き合いをしてきたので、二人がどんな関係だったのかを知っている。
公的な場では仲が良さそうに振る舞ってはいたが、人目が無くなった途端、王妃様はユージーンに近寄りもしなかった。
彼女の目に映るのはただ一人、国王陛下だけだった。
あれほど愛している人との間に産まれた子供なのだから、溺愛してもおかしくないのに、まるで歯牙にもかけなかった。
王族だから子供の世話を乳母に任せるというのはよくある話だが、それでもある程度の愛情は注いでいるはずだ。
だが、王妃様はユージーンにいっさい関わろうとしなかった。
まるで他人同士が一緒にいるような印象を受けたものだ。
別邸の一室に案内されるとベッドに横たわった王妃様の遺体があった。
記憶の中の王妃様はユージーンに良く似た綺麗な女性だったが、今は痩せこけて見る影も無い。
「母上が亡くなったと聞いて遺体を見れば涙の一つも出るかと思ったが、何の感情も沸かなかったよ」
フッと自虐の笑みを浮かべるユージーンの肩をポンと慰めるように叩いてやった。
「あの王妃様の態度じゃ仕方がないさ」
他にも言葉をかけようとしたが、何を言っていいのか全く思いつかない。
少し乱れた王妃様の髪を直しながらユージーンがポツリと呟いた。
「あんなに執着していた父上は、母上の遺体を見ながら、例の女性を探すように言い付けていたんだよ。全く母上も母上ならば、父上も父上だ」
吐き捨てるような物言いに父親への侮蔑が込められている。
「お互い、父親には苦労するな」
「そう言えばハミルトンに妹がいたんだって? ロジャーが街で出会ったと言っていたぞ」
(…やはり、既に耳に入っていたか)
僕はジェシカについてユージーンに話す事に決めた。
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