【完結】フェリシアの誤算

伽羅

文字の大きさ
29 / 98

29 弔問(ユージーン視点)

しおりを挟む
 母上が亡くなった事はすぐに実家であるハリントン侯爵家と、父上の叔父のアシェトン公爵家に伝えられた。

 その他の貴族達には明日、葬儀の日時が決まってから伝えられるだろう。

 ハリントン侯爵家とアシェトン公爵家からはすぐにお悔やみの言葉と明日の弔問の連絡が来た。

 きっとロジャーとハミルトンが弔問客として来るはずだ。

 ハリントン侯爵家の当主である母上の兄は母上の事をあまり良く思っていなかった。

 自分のライバルを蹴落とす為に侯爵家の権限を使いたいだけ使ってきたからな。

 娘に甘い当時のハリントン侯爵は、娘の言いなりで次期当主としては苦々しく思っていたようから、亡くなってくれてホッとしている事だろう。

 

 翌朝、両家を迎え入れる準備を終えて待っていると、アシェトン公爵家がやってきたと連絡が入った。

 すぐに玄関に向かって出迎えると、やはりやって来たのはハミルトンだった。

「ユージーン様、この度はお悔やみを申し上げます」

 周りに人がいるせいか、かしこまった物言いをしてくるハミルトンに「ああ」とだけ返す。

 ロジャーは到着次第、案内するようにと告げてそのまま母上の遺体が安置してある別邸へと向かった。

 以前、ハミルトンが母上を見舞った時はまだ彼の祖母が存命の時だった。

 あれだけ元気だった彼の祖母が母上よりも先に天に召されるとは誰もが想像すらしていなかった。

「母上が亡くなったと聞いて遺体を見れば涙の一つも出るかと思ったが、何の感情も沸かなかったよ」

 母上の遺体の前で自虐気味に告げると、ポンと慰めるように肩を叩いてくる。

 そんなハミルトンを見ると、以前と雰囲気が違っているのに気が付いた。

 もしかして最近アシェトン公爵家に来たという妹の存在が関係しているのか?

「そういえばハミルトンには妹がいたんだって? ロジャーが街で出会ったと言っていたぞ」 

 そう話を振ると何故か照れたような表情を浮かべる。

 …何だ、その顔は?

 詳しく話を聞こうとした所で、ロジャーが侍従に案内されて部屋に入って来た。

「ユージーン、遅れてすまない。ハミルトン、随分と早かったな」

 ロジャーは軽く挨拶をすると母上の遺体の側に近寄って黙祷を捧げた。

「後で父上も顔を出すと言っていた。散々面倒をかけられたが、それでもたった一人の妹だからって言ってたよ」

 ロジャーが伯父上について知らせてくれた。

「そうか、ありがとう。向こうでお茶でもどうだ? ハミルトンには色々と聞きたい事もあるしな」

 母上の部屋を出て応接室に向かい、侍従にお茶を用意させる。

 僕達がソファーでくつろぐ中、カチャカチャと茶器の置かれる音が響く。

 準備が終わって侍従達が退室して僕達だけになると、皆が取り繕った顔をフニャリと緩めた。

「ハミルトンに聞きたい事って、例の妹の事か? なかなか可愛い娘だったな。ハミルトンとはあまり似てなかったが…」

「ハミルトンはパトリシア様にそっくりだからな。妹はどっちに似ているんだ?」

 ロジャーと僕が矢継ぎ早に質問する中、ハミルトンはお茶を飲みながら次に発する言葉を捜しているようだった。

 僕とロジャーがハミルトンの言葉を待っていると、やがて決心したように口を開く。

「…ジェシカは僕の妹じゃないようだ」

「「は?」」

 突然の爆弾発言に僕とロジャーの間の抜けたような返事が重なる。

 いきなり現れた妹の存在を認めたくないのはわかるが、「妹じゃない」と否定するのはどうなんだ?

 ロジャーからは「仲良く買い物をしていた」と聞かされていたから、てっきり受け入れていると思っていたが違うのか?

 ロジャーもハミルトンの発言に怪訝な顔をしている。

 実際に二人を間近で見ているから余計に困惑しているようだ。

「ハミルトン、一体どういう事だ? ちゃんと弁護士が見つけて来たんだろう?」

 僕がハミルトンに説明を求めると、ハミルトンは何故か喜々として話し始める。

 それは驚きの内容だった。 
 
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

王妃の仕事なんて知りません、今から逃げます!

gacchi(がっち)
恋愛
側妃を迎えるって、え?聞いてないよ? 王妃の仕事が大変でも頑張ってたのは、レオルドが好きだから。 国への責任感?そんなの無いよ。もういい。私、逃げるから! 12/16加筆修正したものをカクヨムに投稿しました。

【完結】きみは、俺のただひとり ~神様からのギフト~

Mimi
恋愛
 若様がお戻りになる……  イングラム伯爵領に住む私設騎士団御抱え治療士デイヴの娘リデルがそれを知ったのは、王都を揺るがす第2王子魅了事件解決から半年経った頃だ。  王位継承権2位を失った第2王子殿下のご友人の栄誉に預かっていた若様のジェレマイアも後継者から外されて、領地に戻されることになったのだ。  リデルとジェレマイアは、幼い頃は交流があったが、彼が王都の貴族学院の入学前に婚約者を得たことで、それは途絶えていた。  次期領主の少年と平民の少女とでは身分が違う。  婚約も破棄となり、約束されていた輝かしい未来も失って。  再び、リデルの前に現れたジェレマイアは……   * 番外編の『最愛から2番目の恋』完結致しました  そちらの方にも、お立ち寄りいただけましたら、幸いです

王宮侍女は穴に落ちる

斑猫
恋愛
婚約破棄されたうえ養家を追い出された アニエスは王宮で運良く職を得る。 呪われた王女と呼ばれるエリザベ―ト付き の侍女として。 忙しく働く毎日にやりがいを感じていた。 ところが、ある日ちょっとした諍いから 突き飛ばされて怪しい穴に落ちてしまう。 ちょっと、とぼけた主人公が足フェチな 俺様系騎士団長にいじめ……いや、溺愛され るお話です。

【完結】愛を知らない伯爵令嬢は執着激重王太子の愛を一身に受ける。

扇 レンナ
恋愛
スパダリ系執着王太子×愛を知らない純情令嬢――婚約破棄から始まる、極上の恋 伯爵令嬢テレジアは小さな頃から両親に《次期公爵閣下の婚約者》という価値しか見出してもらえなかった。 それでもその利用価値に縋っていたテレジアだが、努力も虚しく婚約破棄を突きつけられる。 途方に暮れるテレジアを助けたのは、留学中だったはずの王太子ラインヴァルト。彼は何故かテレジアに「好きだ」と告げて、熱烈に愛してくれる。 その真意が、テレジアにはわからなくて……。 *hotランキング 最高68位ありがとうございます♡ ▼掲載先→ベリーズカフェ、エブリスタ、アルファポリス

【完結】長い眠りのその後で

maruko
恋愛
伯爵令嬢のアディルは王宮魔術師団の副団長サンディル・メイナードと結婚しました。 でも婚約してから婚姻まで一度も会えず、婚姻式でも、新居に向かう馬車の中でも目も合わせない旦那様。 いくら政略結婚でも幸せになりたいって思ってもいいでしょう? このまま幸せになれるのかしらと思ってたら⋯⋯アレッ?旦那様が2人!! どうして旦那様はずっと眠ってるの? 唖然としたけど強制的に旦那様の為に動かないと行けないみたい。 しょうがないアディル頑張りまーす!! 複雑な家庭環境で育って、醒めた目で世間を見ているアディルが幸せになるまでの物語です 全50話(2話分は登場人物と時系列の整理含む) ※他サイトでも投稿しております ご都合主義、誤字脱字、未熟者ですが優しい目線で読んで頂けますと幸いです ※表紙 AIアプリ作成

山猿の皇妃

夏菜しの
恋愛
 ライヘンベルガー王国の第三王女レティーツィアは、成人する十六歳の誕生日と共に、隣国イスターツ帝国へ和平条約の品として贈られた。  祖国に聞こえてくるイスターツ帝国の噂は、〝山猿〟と言った悪いモノばかり。それでもレティーツィアは自らに課せられた役目だからと山を越えて隣国へ向かった。  嫁いできたレティーツィアを見た皇帝にして夫のヘクトールは、子供に興味は無いと一蹴する。これはライヘンベルガー王国とイスターツ帝国の成人とみなす年の違いの問題だから、レティーツィアにはどうすることも出来ない。  子供だと言われてヘクトールに相手にされないレティーツィアは、妻の責務を果たしていないと言われて次第に冷遇されていく。  一方、レティーツィアには祖国から、将来的に帝国を傀儡とする策が授けられていた。そのためには皇帝ヘクトールの子を産む必要があるのだが……  それが出来たらこんな待遇になってないわ! と彼女は憤慨する。  帝国で居場所をなくし、祖国にも帰ることも出来ない。  行き場を失ったレティーツィアの孤独な戦いが静かに始まる。 ※恋愛成分は低め、内容はややダークです

まだ20歳の未亡人なので、この後は好きに生きてもいいですか?

せいめ
恋愛
 政略結婚で愛することもなかった旦那様が魔物討伐中の事故で亡くなったのが1年前。  喪が明け、子供がいない私はこの家を出て行くことに決めました。  そんな時でした。高額報酬の良い仕事があると声を掛けて頂いたのです。  その仕事内容とは高貴な身分の方の閨指導のようでした。非常に悩みましたが、家を出るのにお金が必要な私は、その仕事を受けることに決めたのです。  閨指導って、そんなに何度も会う必要ないですよね?しかも、指導が必要には見えませんでしたが…。  でも、高額な報酬なので文句は言いませんわ。  家を出る資金を得た私は、今度こそ自由に好きなことをして生きていきたいと考えて旅立つことに決めました。  その後、新しい生活を楽しんでいる私の所に現れたのは……。    まずは亡くなったはずの旦那様との話から。      ご都合主義です。  設定は緩いです。  誤字脱字申し訳ありません。  主人公の名前を途中から間違えていました。  アメリアです。すみません。    

殿下、毒殺はお断りいたします

石里 唯
恋愛
公爵令嬢エリザベスは、王太子エドワードから幼いころから熱烈に求婚され続けているが、頑なに断り続けている。 彼女には、前世、心から愛した相手と結ばれ、毒殺された記憶があり、今生の目標は、ただ穏やかな結婚と人生を全うすることなのだ。 容姿端麗、文武両道、加えて王太子という立場で国中の令嬢たちの憧れであるエドワードと結婚するなどとんでもない選択なのだ。 彼女の拒絶を全く意に介しない王太子、彼女を溺愛し生涯手元に置くと公言する兄を振り切って彼女は人生の目標を達成できるのだろうか。 「小説家になろう」サイトで完結済みです。大まかな流れに変更はありません。 「小説家になろう」サイトで番外編を投稿しています。

処理中です...