【完結】フェリシアの誤算

伽羅

文字の大きさ
72 / 98

72 脅迫

しおりを挟む
 ミランダが王妃様をお父様に執着させた?

 本当にそんな事が可能なのかしら?

 私は半信半疑だったけれど、お父様には何か思い当たる事があるようだった。

「確かに婚約した当初は普通に私と接していたような気がする。王妃教育をするために王宮に出入りするようになってから、徐々に私に構うようになってきたが、それはお前がそう仕向けたのか?」

「その通りよ。私が世話係に任命されたから、ソフィアに暗示をかけてあなたに執着させたの。それと同時に一緒に侍女をしていたアイリスをあなたに近付けたら、面白いようにあなたはアイリスに夢中になっていったわ」

 ミランダの言う通りならば、私はミランダのお陰で生まれたようなものだ。

 けれど、お父様にとっては聞きたくもない話だったようだ。

「お前がソフィアを私に執着させたから、私はアイリスを好きになったと言いたいのか? 私とアイリスは真剣に愛し合っていたのに…」

 お父様は随分とショックを受けているようだけれど、お兄様が生まれた以上王妃様と離婚なんて出来なかっただろうし、私の母をそのまま王宮には置いておけなかったと思う。

 がっくりと打ちひしがれているお父様を見てミランダは高らかな笑い声をあげる。

「本当に見ていて楽しかったわ。ソフィアが怒り狂ったようにアイリスを追い出す姿も、それを知って酷く落ち込むあなたを見た時は溜飲が下がったわ」

 身動き一つ出来ないまま、ミランダの話を聞くのは辛すぎる。

 私がこうしてミランダに捕まっている以上、お父様もお兄様もミランダに手出しが出来ない。

 全神経を指先に集中させてみると、ピクリとほんの僅かだけ指を動かす事が出来た。

 この調子で何とかミランダの束縛から逃れたい。

 お父様は悲痛な面持ちでミランダに尋ねた。

「お前はアイリスが妊娠している事を知っていて、ソフィアに王宮から追い出させたのか?」

 ミランダは残忍そうな表情を浮かべてお父様を見つめる。

「残念ながら知らなかったわ。知ってたらもっとあなたが苦しむような方法を考えたのに…。例えばアイリスを流産させた挙げ句、死なせるとかね」

 ミランダの答えにお父様とお兄様は驚愕で目を見開いている。

 私も先程「私が生まれたのはミランダのお陰」なんて思った事を後悔した。

 私の母の妊娠が発覚していたら、私はミランダによって母の胎内で殺されていたかもしれないのだ。

「なんて事を! お前はそれでも人の子か?」

 お兄様が我慢出来ないとばかりに叫んでいる。

 けれどミランダはそれを鼻で笑った。

「元はと言えば前国王が私の母を弄んで、王妃が追い出したからよ! 私のせいじゃないわ!」

 確かにミランダは前国王の娘である事は間違いないだろう。

 だけど、本当に前国王がミランダの母を襲ったのだろうか?

 前王妃の言うようにミランダの母が前国王を誘惑したのではないだろうか?

 既に三人共この世にいないので、今更どれが真実なのかは確認のしようがない。

 ミランダの母が「前国王に乱暴された」と、ミランダに嘘を吹き込んだかもしれないのだ。

「そろそろおしゃべりは終わりにしましょうか。あなたの可愛い娘を助けたかったら私の言う通りにしなさい」

 ミランダは私の喉元にナイフを近付けてくる。

 それを見たお父様とお兄様は、踏み出しかけた足を少しだけ後ろにずらした。

「ユージーン、このロープでエリックを縛りなさい」

 ミランダがお兄様に命令すると、ミランダの側の空間からロープが出現したかと思うと、ヒュッとお兄様の足元に飛んで行った。

 どうやら空間魔法で収納していたようだ。

 お兄様はすぐには動こうとしない。

 するとミランダは私の首にスッとナイフを滑らせた。

 チクリとした痛みで顔をしかめると、「やめろ!」とお兄様が叫んだ。

 どうやら少し首を切られて血が滲んだようだ。

 お兄様は渋々ロープを拾うと、お父様を緩めに縛り上げた。

「フン! まぁいいわ。それじゃ、今度はこれよ」

 ミランダが空間魔法で取り出したものは一振りの剣だった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

王妃の仕事なんて知りません、今から逃げます!

gacchi(がっち)
恋愛
側妃を迎えるって、え?聞いてないよ? 王妃の仕事が大変でも頑張ってたのは、レオルドが好きだから。 国への責任感?そんなの無いよ。もういい。私、逃げるから! 12/16加筆修正したものをカクヨムに投稿しました。

【完結】きみは、俺のただひとり ~神様からのギフト~

Mimi
恋愛
 若様がお戻りになる……  イングラム伯爵領に住む私設騎士団御抱え治療士デイヴの娘リデルがそれを知ったのは、王都を揺るがす第2王子魅了事件解決から半年経った頃だ。  王位継承権2位を失った第2王子殿下のご友人の栄誉に預かっていた若様のジェレマイアも後継者から外されて、領地に戻されることになったのだ。  リデルとジェレマイアは、幼い頃は交流があったが、彼が王都の貴族学院の入学前に婚約者を得たことで、それは途絶えていた。  次期領主の少年と平民の少女とでは身分が違う。  婚約も破棄となり、約束されていた輝かしい未来も失って。  再び、リデルの前に現れたジェレマイアは……   * 番外編の『最愛から2番目の恋』完結致しました  そちらの方にも、お立ち寄りいただけましたら、幸いです

王宮侍女は穴に落ちる

斑猫
恋愛
婚約破棄されたうえ養家を追い出された アニエスは王宮で運良く職を得る。 呪われた王女と呼ばれるエリザベ―ト付き の侍女として。 忙しく働く毎日にやりがいを感じていた。 ところが、ある日ちょっとした諍いから 突き飛ばされて怪しい穴に落ちてしまう。 ちょっと、とぼけた主人公が足フェチな 俺様系騎士団長にいじめ……いや、溺愛され るお話です。

【完結】愛を知らない伯爵令嬢は執着激重王太子の愛を一身に受ける。

扇 レンナ
恋愛
スパダリ系執着王太子×愛を知らない純情令嬢――婚約破棄から始まる、極上の恋 伯爵令嬢テレジアは小さな頃から両親に《次期公爵閣下の婚約者》という価値しか見出してもらえなかった。 それでもその利用価値に縋っていたテレジアだが、努力も虚しく婚約破棄を突きつけられる。 途方に暮れるテレジアを助けたのは、留学中だったはずの王太子ラインヴァルト。彼は何故かテレジアに「好きだ」と告げて、熱烈に愛してくれる。 その真意が、テレジアにはわからなくて……。 *hotランキング 最高68位ありがとうございます♡ ▼掲載先→ベリーズカフェ、エブリスタ、アルファポリス

【完結】長い眠りのその後で

maruko
恋愛
伯爵令嬢のアディルは王宮魔術師団の副団長サンディル・メイナードと結婚しました。 でも婚約してから婚姻まで一度も会えず、婚姻式でも、新居に向かう馬車の中でも目も合わせない旦那様。 いくら政略結婚でも幸せになりたいって思ってもいいでしょう? このまま幸せになれるのかしらと思ってたら⋯⋯アレッ?旦那様が2人!! どうして旦那様はずっと眠ってるの? 唖然としたけど強制的に旦那様の為に動かないと行けないみたい。 しょうがないアディル頑張りまーす!! 複雑な家庭環境で育って、醒めた目で世間を見ているアディルが幸せになるまでの物語です 全50話(2話分は登場人物と時系列の整理含む) ※他サイトでも投稿しております ご都合主義、誤字脱字、未熟者ですが優しい目線で読んで頂けますと幸いです ※表紙 AIアプリ作成

山猿の皇妃

夏菜しの
恋愛
 ライヘンベルガー王国の第三王女レティーツィアは、成人する十六歳の誕生日と共に、隣国イスターツ帝国へ和平条約の品として贈られた。  祖国に聞こえてくるイスターツ帝国の噂は、〝山猿〟と言った悪いモノばかり。それでもレティーツィアは自らに課せられた役目だからと山を越えて隣国へ向かった。  嫁いできたレティーツィアを見た皇帝にして夫のヘクトールは、子供に興味は無いと一蹴する。これはライヘンベルガー王国とイスターツ帝国の成人とみなす年の違いの問題だから、レティーツィアにはどうすることも出来ない。  子供だと言われてヘクトールに相手にされないレティーツィアは、妻の責務を果たしていないと言われて次第に冷遇されていく。  一方、レティーツィアには祖国から、将来的に帝国を傀儡とする策が授けられていた。そのためには皇帝ヘクトールの子を産む必要があるのだが……  それが出来たらこんな待遇になってないわ! と彼女は憤慨する。  帝国で居場所をなくし、祖国にも帰ることも出来ない。  行き場を失ったレティーツィアの孤独な戦いが静かに始まる。 ※恋愛成分は低め、内容はややダークです

まだ20歳の未亡人なので、この後は好きに生きてもいいですか?

せいめ
恋愛
 政略結婚で愛することもなかった旦那様が魔物討伐中の事故で亡くなったのが1年前。  喪が明け、子供がいない私はこの家を出て行くことに決めました。  そんな時でした。高額報酬の良い仕事があると声を掛けて頂いたのです。  その仕事内容とは高貴な身分の方の閨指導のようでした。非常に悩みましたが、家を出るのにお金が必要な私は、その仕事を受けることに決めたのです。  閨指導って、そんなに何度も会う必要ないですよね?しかも、指導が必要には見えませんでしたが…。  でも、高額な報酬なので文句は言いませんわ。  家を出る資金を得た私は、今度こそ自由に好きなことをして生きていきたいと考えて旅立つことに決めました。  その後、新しい生活を楽しんでいる私の所に現れたのは……。    まずは亡くなったはずの旦那様との話から。      ご都合主義です。  設定は緩いです。  誤字脱字申し訳ありません。  主人公の名前を途中から間違えていました。  アメリアです。すみません。    

殿下、毒殺はお断りいたします

石里 唯
恋愛
公爵令嬢エリザベスは、王太子エドワードから幼いころから熱烈に求婚され続けているが、頑なに断り続けている。 彼女には、前世、心から愛した相手と結ばれ、毒殺された記憶があり、今生の目標は、ただ穏やかな結婚と人生を全うすることなのだ。 容姿端麗、文武両道、加えて王太子という立場で国中の令嬢たちの憧れであるエドワードと結婚するなどとんでもない選択なのだ。 彼女の拒絶を全く意に介しない王太子、彼女を溺愛し生涯手元に置くと公言する兄を振り切って彼女は人生の目標を達成できるのだろうか。 「小説家になろう」サイトで完結済みです。大まかな流れに変更はありません。 「小説家になろう」サイトで番外編を投稿しています。

処理中です...