【完結】フェリシアの誤算

伽羅

文字の大きさ
73 / 98

73 襲撃(ユージーン視点)

しおりを挟む
 いよいよ明日はフェリシアのお披露目の日だ。

 可愛い妹を披露して皆に自慢したい気持ちと、変な虫が付かないように閉じ込めておきたい気持ちがない混ぜになっている。

 お披露目の後は貴族の子息達から婚約の打診が増えるかもしれないが、すべて無視すればいい話だ。

 ハミルトンからは既に申込みが来ているが、きっと父上がのらりくらりと躱すに決まっている。

 フェリシアが先に食堂を出た後で、僕と父上もそれに続いた。

「明日は私が最初にフェリシアと踊るからな」

 廊下を歩きながら父上が念を押してくる。

 本当は僕が一番最初にフェリシア取られて踊りたかったのだが、ここはやはり国王である父上の顔を立てるとしよう。

「わかりました。フェリシアのファーストダンスは父上にお譲りしますよ。その代わり二番目は僕ですからね。続けて二曲目も踊ったりしないでくださいよ」

 こうやって釘を刺しておかないと何曲も続けて踊りそうだからな。

「わかった、わかった。二曲目はお前に譲るよ」

 そんなやり取りをしながらふと前方に目をやると、誰かが廊下に倒れているのが目に入った。

 その側に立っているのはフェリシアと、…誰だ?

「何だ? フェリシアか?」

 慌てて父上と共に駆け寄ったが、数歩手前の所で足を止めざるを得なかった。

 フェリシアの頬にナイフが突き付けられていた。

「お前はミランダ! 一体何をしている。今すぐフェリシアを離すんだ!」

 父上の怒鳴り声で黒いフードの人物がミランダだと気が付いた。

 母上の葬儀が終わってから、彼女は王宮を出て行ったはずだが、どうしてここにいるんだ?

 その時になって僕は別邸への扉が開いている事に気付いた。

 魔法陣で封鎖したはずなのに誰が解除したんだ?

 まさか、ミランダか?

 そのうちにミランダは恐ろしい話を始めた。

 ミランダがお祖父様の落し胤だと言うのだ。

 お祖父様が酔った勢いで侍女に手を出しただって?

 父上にとってもにわかには信じ難い話だったようだ。

「そんな話を誰が信じる? お前が私の父親の娘だとどうやって証明するのだ?」

 父上は何とかミランダの隙をついてフェリシアを解放させようと思っているようだ。

 鑑定の魔道具を使う隙にフェリシアを救い出したかったが、ミランダはそれを鼻で笑った。

「証明? 鑑定の魔道具があるのは知っているわ。だけど、わざわざそんな物を持ってこなくても証明出来るわ」

 ミランダが小さく口を動かすと魔法が発動されてミランダの髪の色が茶色から金髪へと変化した。

 あまり知られてはいないが、王家の血を引く者は金色の髪をしているのだ。

 確かにミランダが王家の血を引いている事は確認出来たが、どうして父上の命を狙うんだ?

 既に当事者である三人がこの世にいないのに、どうしてお祖父様達が悪いと証明出来るんだ?

 だが、復讐に凝り固まっているミランダには何を言っても聞きはしないだろう。

 どうにかしてフェリシアを助け出したいが、打つ手はなくただ手をこまねいて見ているしか出来ない。

 床に倒れているアガサは身動き一つしていない。

 …まさか、死んでいないよな?

「そろそろおしゃべりは終わりにしましょうか。あなたの可愛い娘を助けたかったら言う通りにしなさい」

 そう言ってミランダはどこからか取り出したロープを僕の足元に飛ばしてきた。

「ユージーン、そのロープでエリックを縛りなさい」

 そんな命令なんて聞けるわけがない。

 だが、ミランダは僕が動かないのを見て取ると、フェリシアの首のナイフを動かした。

 フェリシアが顔を歪めると、首から見が滲むのが見えた。

「やめろ!」

 思わず叫んだが、ミランダは悪びれる事なく僕を見据えている。

 僕がロープを拾って父上を見ると、軽く頷かれた。

 少し緩めに父上の腕を縛ったが、それもミランダにはお見通しだったようだ。

「フン! まあいいわ。それじゃ、今度はこれよ」

 ミランダが取り出したのは一振りの剣だった。

 …まさか、それで僕に父上を殺させるつもりじゃないよな?
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

王妃の仕事なんて知りません、今から逃げます!

gacchi(がっち)
恋愛
側妃を迎えるって、え?聞いてないよ? 王妃の仕事が大変でも頑張ってたのは、レオルドが好きだから。 国への責任感?そんなの無いよ。もういい。私、逃げるから! 12/16加筆修正したものをカクヨムに投稿しました。

【完結】きみは、俺のただひとり ~神様からのギフト~

Mimi
恋愛
 若様がお戻りになる……  イングラム伯爵領に住む私設騎士団御抱え治療士デイヴの娘リデルがそれを知ったのは、王都を揺るがす第2王子魅了事件解決から半年経った頃だ。  王位継承権2位を失った第2王子殿下のご友人の栄誉に預かっていた若様のジェレマイアも後継者から外されて、領地に戻されることになったのだ。  リデルとジェレマイアは、幼い頃は交流があったが、彼が王都の貴族学院の入学前に婚約者を得たことで、それは途絶えていた。  次期領主の少年と平民の少女とでは身分が違う。  婚約も破棄となり、約束されていた輝かしい未来も失って。  再び、リデルの前に現れたジェレマイアは……   * 番外編の『最愛から2番目の恋』完結致しました  そちらの方にも、お立ち寄りいただけましたら、幸いです

王宮侍女は穴に落ちる

斑猫
恋愛
婚約破棄されたうえ養家を追い出された アニエスは王宮で運良く職を得る。 呪われた王女と呼ばれるエリザベ―ト付き の侍女として。 忙しく働く毎日にやりがいを感じていた。 ところが、ある日ちょっとした諍いから 突き飛ばされて怪しい穴に落ちてしまう。 ちょっと、とぼけた主人公が足フェチな 俺様系騎士団長にいじめ……いや、溺愛され るお話です。

【完結】愛を知らない伯爵令嬢は執着激重王太子の愛を一身に受ける。

扇 レンナ
恋愛
スパダリ系執着王太子×愛を知らない純情令嬢――婚約破棄から始まる、極上の恋 伯爵令嬢テレジアは小さな頃から両親に《次期公爵閣下の婚約者》という価値しか見出してもらえなかった。 それでもその利用価値に縋っていたテレジアだが、努力も虚しく婚約破棄を突きつけられる。 途方に暮れるテレジアを助けたのは、留学中だったはずの王太子ラインヴァルト。彼は何故かテレジアに「好きだ」と告げて、熱烈に愛してくれる。 その真意が、テレジアにはわからなくて……。 *hotランキング 最高68位ありがとうございます♡ ▼掲載先→ベリーズカフェ、エブリスタ、アルファポリス

【完結】長い眠りのその後で

maruko
恋愛
伯爵令嬢のアディルは王宮魔術師団の副団長サンディル・メイナードと結婚しました。 でも婚約してから婚姻まで一度も会えず、婚姻式でも、新居に向かう馬車の中でも目も合わせない旦那様。 いくら政略結婚でも幸せになりたいって思ってもいいでしょう? このまま幸せになれるのかしらと思ってたら⋯⋯アレッ?旦那様が2人!! どうして旦那様はずっと眠ってるの? 唖然としたけど強制的に旦那様の為に動かないと行けないみたい。 しょうがないアディル頑張りまーす!! 複雑な家庭環境で育って、醒めた目で世間を見ているアディルが幸せになるまでの物語です 全50話(2話分は登場人物と時系列の整理含む) ※他サイトでも投稿しております ご都合主義、誤字脱字、未熟者ですが優しい目線で読んで頂けますと幸いです ※表紙 AIアプリ作成

山猿の皇妃

夏菜しの
恋愛
 ライヘンベルガー王国の第三王女レティーツィアは、成人する十六歳の誕生日と共に、隣国イスターツ帝国へ和平条約の品として贈られた。  祖国に聞こえてくるイスターツ帝国の噂は、〝山猿〟と言った悪いモノばかり。それでもレティーツィアは自らに課せられた役目だからと山を越えて隣国へ向かった。  嫁いできたレティーツィアを見た皇帝にして夫のヘクトールは、子供に興味は無いと一蹴する。これはライヘンベルガー王国とイスターツ帝国の成人とみなす年の違いの問題だから、レティーツィアにはどうすることも出来ない。  子供だと言われてヘクトールに相手にされないレティーツィアは、妻の責務を果たしていないと言われて次第に冷遇されていく。  一方、レティーツィアには祖国から、将来的に帝国を傀儡とする策が授けられていた。そのためには皇帝ヘクトールの子を産む必要があるのだが……  それが出来たらこんな待遇になってないわ! と彼女は憤慨する。  帝国で居場所をなくし、祖国にも帰ることも出来ない。  行き場を失ったレティーツィアの孤独な戦いが静かに始まる。 ※恋愛成分は低め、内容はややダークです

まだ20歳の未亡人なので、この後は好きに生きてもいいですか?

せいめ
恋愛
 政略結婚で愛することもなかった旦那様が魔物討伐中の事故で亡くなったのが1年前。  喪が明け、子供がいない私はこの家を出て行くことに決めました。  そんな時でした。高額報酬の良い仕事があると声を掛けて頂いたのです。  その仕事内容とは高貴な身分の方の閨指導のようでした。非常に悩みましたが、家を出るのにお金が必要な私は、その仕事を受けることに決めたのです。  閨指導って、そんなに何度も会う必要ないですよね?しかも、指導が必要には見えませんでしたが…。  でも、高額な報酬なので文句は言いませんわ。  家を出る資金を得た私は、今度こそ自由に好きなことをして生きていきたいと考えて旅立つことに決めました。  その後、新しい生活を楽しんでいる私の所に現れたのは……。    まずは亡くなったはずの旦那様との話から。      ご都合主義です。  設定は緩いです。  誤字脱字申し訳ありません。  主人公の名前を途中から間違えていました。  アメリアです。すみません。    

殿下、毒殺はお断りいたします

石里 唯
恋愛
公爵令嬢エリザベスは、王太子エドワードから幼いころから熱烈に求婚され続けているが、頑なに断り続けている。 彼女には、前世、心から愛した相手と結ばれ、毒殺された記憶があり、今生の目標は、ただ穏やかな結婚と人生を全うすることなのだ。 容姿端麗、文武両道、加えて王太子という立場で国中の令嬢たちの憧れであるエドワードと結婚するなどとんでもない選択なのだ。 彼女の拒絶を全く意に介しない王太子、彼女を溺愛し生涯手元に置くと公言する兄を振り切って彼女は人生の目標を達成できるのだろうか。 「小説家になろう」サイトで完結済みです。大まかな流れに変更はありません。 「小説家になろう」サイトで番外編を投稿しています。

処理中です...