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89 意気投合
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「お兄様、どうぞこちらにお座りになってくださいませ。今アガサにお茶を淹れさせますわ」
私とセシリアに挟まれるような形でお兄様が腰を下ろす。
アガサがお兄様の前にお茶を置くと、お兄様は優雅な動きでカップを持つと、それを口に運んだ。
少し伏せられた目に、少し口角が上がった唇。
お兄様の大きな手が持つとカップが一回り小さく見えるわ。
カップをゆっくりとソーサーに戻すとお兄様は軽く息を吐いた。
ただお茶を飲んだだけなのに、イケメンって何をやってもかっこいいわね。
私もセシリアも思わず見惚れてしまっていたわ。
いけない、いけない。
お兄様とセシリアを引っ付けなければいけないんだったわ。
「お兄様、お仕事はよろしいんですの?」
お父様は宰相にゴリ押しをしてここに来ていたけれど、お兄様もそうなのかしら?
「とりあえず終わらせて来たよ。それにたまには休憩も必要だろう? 1日中机にかじりついていたって効率が悪いだけだよ」
もっともらしい事を言っているけれど、要はサボっているという事ではないかしら?
向こうの方に文官らしき人がチラチラこちらを見ているような気がするんだけれど、そのうちお兄様を連れ戻しに来そうだわ。
「そうですね。ユージーン様にも時には休養も必要ですわ」
私よりも先にセシリアがお兄様に相槌を打っている。
それに気をよくしたのか、お兄様はセシリアとおしゃべりを始めた。
楽しそうに談笑する二人を眺めながら、私は一人でお茶をすすっている。
どうやら私が二人を焚き付けなくても、勝手に盛り上がっているみたいだわ。
初めのうちは黙って二人の話を聞いていたけれど、だんだんと自分がこの場にいるのが馬鹿らしくなってきた。
お兄様もセシリアも私がいることなどまるで目に入っていないようだ。
カラになった私のカップにアガサがお茶を注いでくれた。
いい加減、二人の話を聞きながらお茶を飲んでいるのも飽きてきたわ。
「…あのー」
そう声をかけるとお兄様とセシリアは私に目をやって、ようやく私がいる事を思い出したようだ。
「あ、フェリシアがいたんだったね。ゴメンゴメン。ついつい話が弾んじゃったよ」
「ごめんなさい、フェリシア様。あまりにもユージーン様のお話が楽しくて時間を忘れてましたわ」
(忘れていたのは時間だけじゃなくて、私の存在もでしょ!)
そんなツッコミは心の中にしまって、私はニコリと二人に微笑んだ。
「とんでもありませんわ。お二人の話を聞いていてこちらも楽しかったですわ。でも、そろそろお兄様はお仕事に戻られた方がよろしいみたいですわ」
私の言葉が終わると同時に文官がこちらへやってきた。
「ユージーン様、そろそろ戻っていただかないと今日中に終わりませんよ」
文官に言われてお兄様は仕方なさそうに立ち上がった。
「せっかくセシリア嬢と楽しく語らっていたのに残念です。それではまたお会いしましょう」
そう言うとお兄様はセシリアの手を取って軽く口付けた。
ポッと頬を染めるセシリア嬢を見て満足そうに微笑むと、お兄様はそのまま文官と共に立ち去った。
私に何も声をかけずに立ち去っていくお兄様の後ろ姿を私はただ呆然と見送っていたが、セシリアと目が合って私はニコリと微笑んだ。
(ちょっと!)
(私に挨拶も無しってどういう事よ!)
顔に笑顔を貼り付けたまま、私は心の中で叫んでいた。
「恋は盲目」なんて言うけれど、私の存在すら見えなくなってしまうものなのかしらね。
こういう展開を望んでいたはずなのに、いざとなると惜しくなってしまうものなのかしら?
私は心の中にモヤモヤしたものを抱えながら、セシリアとのお茶会を終えたのだった。
私とセシリアに挟まれるような形でお兄様が腰を下ろす。
アガサがお兄様の前にお茶を置くと、お兄様は優雅な動きでカップを持つと、それを口に運んだ。
少し伏せられた目に、少し口角が上がった唇。
お兄様の大きな手が持つとカップが一回り小さく見えるわ。
カップをゆっくりとソーサーに戻すとお兄様は軽く息を吐いた。
ただお茶を飲んだだけなのに、イケメンって何をやってもかっこいいわね。
私もセシリアも思わず見惚れてしまっていたわ。
いけない、いけない。
お兄様とセシリアを引っ付けなければいけないんだったわ。
「お兄様、お仕事はよろしいんですの?」
お父様は宰相にゴリ押しをしてここに来ていたけれど、お兄様もそうなのかしら?
「とりあえず終わらせて来たよ。それにたまには休憩も必要だろう? 1日中机にかじりついていたって効率が悪いだけだよ」
もっともらしい事を言っているけれど、要はサボっているという事ではないかしら?
向こうの方に文官らしき人がチラチラこちらを見ているような気がするんだけれど、そのうちお兄様を連れ戻しに来そうだわ。
「そうですね。ユージーン様にも時には休養も必要ですわ」
私よりも先にセシリアがお兄様に相槌を打っている。
それに気をよくしたのか、お兄様はセシリアとおしゃべりを始めた。
楽しそうに談笑する二人を眺めながら、私は一人でお茶をすすっている。
どうやら私が二人を焚き付けなくても、勝手に盛り上がっているみたいだわ。
初めのうちは黙って二人の話を聞いていたけれど、だんだんと自分がこの場にいるのが馬鹿らしくなってきた。
お兄様もセシリアも私がいることなどまるで目に入っていないようだ。
カラになった私のカップにアガサがお茶を注いでくれた。
いい加減、二人の話を聞きながらお茶を飲んでいるのも飽きてきたわ。
「…あのー」
そう声をかけるとお兄様とセシリアは私に目をやって、ようやく私がいる事を思い出したようだ。
「あ、フェリシアがいたんだったね。ゴメンゴメン。ついつい話が弾んじゃったよ」
「ごめんなさい、フェリシア様。あまりにもユージーン様のお話が楽しくて時間を忘れてましたわ」
(忘れていたのは時間だけじゃなくて、私の存在もでしょ!)
そんなツッコミは心の中にしまって、私はニコリと二人に微笑んだ。
「とんでもありませんわ。お二人の話を聞いていてこちらも楽しかったですわ。でも、そろそろお兄様はお仕事に戻られた方がよろしいみたいですわ」
私の言葉が終わると同時に文官がこちらへやってきた。
「ユージーン様、そろそろ戻っていただかないと今日中に終わりませんよ」
文官に言われてお兄様は仕方なさそうに立ち上がった。
「せっかくセシリア嬢と楽しく語らっていたのに残念です。それではまたお会いしましょう」
そう言うとお兄様はセシリアの手を取って軽く口付けた。
ポッと頬を染めるセシリア嬢を見て満足そうに微笑むと、お兄様はそのまま文官と共に立ち去った。
私に何も声をかけずに立ち去っていくお兄様の後ろ姿を私はただ呆然と見送っていたが、セシリアと目が合って私はニコリと微笑んだ。
(ちょっと!)
(私に挨拶も無しってどういう事よ!)
顔に笑顔を貼り付けたまま、私は心の中で叫んでいた。
「恋は盲目」なんて言うけれど、私の存在すら見えなくなってしまうものなのかしらね。
こういう展開を望んでいたはずなのに、いざとなると惜しくなってしまうものなのかしら?
私は心の中にモヤモヤしたものを抱えながら、セシリアとのお茶会を終えたのだった。
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