28 / 30
28 王宮
しおりを挟む
僕は兄さんに促されるまま、重い足取りで家に辿り着いた。
今すぐにでもシェリルの元に駆けつけたいのに、僕は何をやっているんだろう。
「兄さん、僕はやっぱりシェリルを助けに行きたい!」
必死で訴えたが、兄さんは首を縦に振らなかった。
「フェリクス王子。兄弟としてなら行って来い、と言うべきでしょうが、側近としては許すわけにはいきません。どうかわかってください」
兄さんの言う事はわかる。だけど頭では理解しても感情がついていかない。
「何を言い争っているんだ?」
扉が開いて父さんが帰って来たが、コンラッドさんも一緒だった。
「フェリクス王子の恋人がカインに捕まって王宮に連れて行かれたんだ。罠に決まってるから行くなと止めてるんだけど‥‥」
兄さんの言葉に父さんはふっと相好を崩した。
「王子もそういう年頃になりましたか。シオンがいるから大丈夫でしょう。どうぞ行ってください。私達もすぐに後を追いかけます」
「ありがとう、父さん!」
家を飛び出そうとすると、シオンが一回り大きくなった。
『俺の背中に乗れ!』
「わかった。ありがとう」
シオンの背中に跨がると、凄い勢いで駆けていく。振り落とされないように捕まっているのがやっとだ。
通り過ぎる人々が驚いたように僕達を見つめているが、そんなのを気にしている余裕はなかった。
しばらく走っているとようやく王宮が見えてきた。
変だな?
門は閉じられているが、そこにいるはずの門番の姿がない。
やはり罠なのか
門扉に手を当てると紋章が光り、静かに開いた。僕が入るとまた静かに閉ざされた。
紋章がないと入れないのなら、後から来る父さん達はどうなるのだろう?
そう思いつつ足を進めた。
王宮の中に入っても、誰もいなかった。
一体どういう事だろう。
シオンがシェリルの匂いを辿っていく。
『こっちだ』
やがてシオンある扉の前で止まった。
「ここにシェリルが?」
無作法だとはわかっているが、今はそんな事を言っている場合ではない。
僕はノックも無しにその扉を開けた。
すると、ソファーの上に座っているカインとシェリルがいた。
シェリルの腕がカインに掴まれているのを見て、僕は思わず叫んだ。
「カイン! シェリルを離せ!」
するとカインはシェリルの首元にナイフを突きつけて、シェリルの身体を盾にするように自分の身を隠す。
「随分と早かったな。せっかくこの女を私の物にしようと思っていたのに残念だ」
何処まで本気なのかわからないカインの物言いに僕は唇を噛む。
ふと、隣にいるシオンが殺気を出したのに気づいて慌てて止めた。
「駄目だ! シェリルに当たる!」
この世界に土下座は有効なのかわからないけど、床に手を付き頭を下げた。
「お願いだ。シェリルを離してくれ。お前が用があるのは僕だけだろ?」
そう言うと、カインは何かを投げて寄越した。それは首輪と手枷だった。
「シェリルを開放した途端、八つ裂きにされたくないからな。そこのフェンリルに首輪を付けて、お前は手枷だ」
言われるまま、シオンに首輪を付けたが、シオンは首輪を付けた途端にその場に座り込んでしまった。恐らく何かの魔導具なのだろう。
それならばこの手枷もそうなのだろう。
僕も両手に手枷をはめるとようやくカインはシェリルから体を離した。
けれど、シェリルはそのままソファーへと倒れ込む。
「シェリル!?」
駆け寄ろうとしたが、手枷のせいか、僕もその場から動けない。
「心配するな。ほんの少し睡眠薬を飲ませただけだ」
カインは立ち上がると僕に近寄ってきた。
きつく睨む僕の顎に手を当て、顔を持ち上げてくる。
「まったく…、王妃に生き写しだな。さて、本題に入ろうか。私の父上に会いたいのだろう?」
そうだ。先ずはグレイと対峙しなければならない。だが、この状態ではなすすべもなく殺されてしまうだろう。
だが、せめて援軍が来るまでは持ちこたえたい。
僕はカインに促されるまま、歩きだした。
今すぐにでもシェリルの元に駆けつけたいのに、僕は何をやっているんだろう。
「兄さん、僕はやっぱりシェリルを助けに行きたい!」
必死で訴えたが、兄さんは首を縦に振らなかった。
「フェリクス王子。兄弟としてなら行って来い、と言うべきでしょうが、側近としては許すわけにはいきません。どうかわかってください」
兄さんの言う事はわかる。だけど頭では理解しても感情がついていかない。
「何を言い争っているんだ?」
扉が開いて父さんが帰って来たが、コンラッドさんも一緒だった。
「フェリクス王子の恋人がカインに捕まって王宮に連れて行かれたんだ。罠に決まってるから行くなと止めてるんだけど‥‥」
兄さんの言葉に父さんはふっと相好を崩した。
「王子もそういう年頃になりましたか。シオンがいるから大丈夫でしょう。どうぞ行ってください。私達もすぐに後を追いかけます」
「ありがとう、父さん!」
家を飛び出そうとすると、シオンが一回り大きくなった。
『俺の背中に乗れ!』
「わかった。ありがとう」
シオンの背中に跨がると、凄い勢いで駆けていく。振り落とされないように捕まっているのがやっとだ。
通り過ぎる人々が驚いたように僕達を見つめているが、そんなのを気にしている余裕はなかった。
しばらく走っているとようやく王宮が見えてきた。
変だな?
門は閉じられているが、そこにいるはずの門番の姿がない。
やはり罠なのか
門扉に手を当てると紋章が光り、静かに開いた。僕が入るとまた静かに閉ざされた。
紋章がないと入れないのなら、後から来る父さん達はどうなるのだろう?
そう思いつつ足を進めた。
王宮の中に入っても、誰もいなかった。
一体どういう事だろう。
シオンがシェリルの匂いを辿っていく。
『こっちだ』
やがてシオンある扉の前で止まった。
「ここにシェリルが?」
無作法だとはわかっているが、今はそんな事を言っている場合ではない。
僕はノックも無しにその扉を開けた。
すると、ソファーの上に座っているカインとシェリルがいた。
シェリルの腕がカインに掴まれているのを見て、僕は思わず叫んだ。
「カイン! シェリルを離せ!」
するとカインはシェリルの首元にナイフを突きつけて、シェリルの身体を盾にするように自分の身を隠す。
「随分と早かったな。せっかくこの女を私の物にしようと思っていたのに残念だ」
何処まで本気なのかわからないカインの物言いに僕は唇を噛む。
ふと、隣にいるシオンが殺気を出したのに気づいて慌てて止めた。
「駄目だ! シェリルに当たる!」
この世界に土下座は有効なのかわからないけど、床に手を付き頭を下げた。
「お願いだ。シェリルを離してくれ。お前が用があるのは僕だけだろ?」
そう言うと、カインは何かを投げて寄越した。それは首輪と手枷だった。
「シェリルを開放した途端、八つ裂きにされたくないからな。そこのフェンリルに首輪を付けて、お前は手枷だ」
言われるまま、シオンに首輪を付けたが、シオンは首輪を付けた途端にその場に座り込んでしまった。恐らく何かの魔導具なのだろう。
それならばこの手枷もそうなのだろう。
僕も両手に手枷をはめるとようやくカインはシェリルから体を離した。
けれど、シェリルはそのままソファーへと倒れ込む。
「シェリル!?」
駆け寄ろうとしたが、手枷のせいか、僕もその場から動けない。
「心配するな。ほんの少し睡眠薬を飲ませただけだ」
カインは立ち上がると僕に近寄ってきた。
きつく睨む僕の顎に手を当て、顔を持ち上げてくる。
「まったく…、王妃に生き写しだな。さて、本題に入ろうか。私の父上に会いたいのだろう?」
そうだ。先ずはグレイと対峙しなければならない。だが、この状態ではなすすべもなく殺されてしまうだろう。
だが、せめて援軍が来るまでは持ちこたえたい。
僕はカインに促されるまま、歩きだした。
2
あなたにおすすめの小説
無限に進化を続けて最強に至る
お寿司食べたい
ファンタジー
突然、居眠り運転をしているトラックに轢かれて異世界に転生した春風 宝。そこで女神からもらった特典は「倒したモンスターの力を奪って無限に強くなる」だった。
※よくある転生ものです。良ければ読んでください。 不定期更新 初作 小説家になろうでも投稿してます。 文章力がないので悪しからず。優しくアドバイスしてください。
改稿したので、しばらくしたら消します
異世界あるある 転生物語 たった一つのスキルで無双する!え?【土魔法】じゃなくって【土】スキル?
よっしぃ
ファンタジー
農民が土魔法を使って何が悪い?異世界あるある?前世の謎知識で無双する!
土砂 剛史(どしゃ つよし)24歳、独身。自宅のパソコンでネットをしていた所、突然轟音がしたと思うと窓が破壊され何かがぶつかってきた。
自宅付近で高所作業車が電線付近を作業中、トラックが高所作業車に突っ込み運悪く剛史の部屋に高所作業車のアームの先端がぶつかり、そのまま窓から剛史に一直線。
『あ、やべ!』
そして・・・・
【あれ?ここは何処だ?】
気が付けば真っ白な世界。
気を失ったのか?だがなんか聞こえた気がしたんだが何だったんだ?
・・・・
・・・
・・
・
【ふう・・・・何とか間に合ったか。たった一つのスキルか・・・・しかもあ奴の元の名からすれば土関連になりそうじゃが。済まぬが異世界あるあるのチートはない。】
こうして剛史は新た生を異世界で受けた。
そして何も思い出す事なく10歳に。
そしてこの世界は10歳でスキルを確認する。
スキルによって一生が決まるからだ。
最低1、最高でも10。平均すると概ね5。
そんな中剛史はたった1しかスキルがなかった。
しかも土木魔法と揶揄される【土魔法】のみ、と思い込んでいたが【土魔法】ですらない【土】スキルと言う謎スキルだった。
そんな中頑張って開拓を手伝っていたらどうやら領主の意に添わなかったようで
ゴウツク領主によって領地を追放されてしまう。
追放先でも土魔法は土木魔法とバカにされる。
だがここで剛史は前世の記憶を徐々に取り戻す。
『土魔法を土木魔法ってバカにすんなよ?異世界あるあるな前世の謎知識で無双する!』
不屈の精神で土魔法を極めていく剛史。
そしてそんな剛史に同じような境遇の人々が集い、やがて大きなうねりとなってこの世界を席巻していく。
その中には同じく一つスキルしか得られず、公爵家や侯爵家を追放された令嬢も。
前世の記憶を活用しつつ、やがて土木魔法と揶揄されていた土魔法を世界一のスキルに押し上げていく。
但し剛史のスキルは【土魔法】ですらない【土】スキル。
転生時にチートはなかったと思われたが、努力の末にチートと言われるほどスキルを活用していく事になる。
これは所持スキルの少なさから世間から見放された人々が集い、ギルド『ワンチャンス』を結成、努力の末に世界一と言われる事となる物語・・・・だよな?
何故か追放された公爵令嬢や他の貴族の令嬢が集まってくるんだが?
俺は農家の4男だぞ?
悪役顔のモブに転生しました。特に影響が無いようなので好きに生きます
竹桜
ファンタジー
ある部屋の中で男が画面に向かいながら、ゲームをしていた。
そのゲームは主人公の勇者が魔王を倒し、ヒロインと結ばれるというものだ。
そして、ヒロインは4人いる。
ヒロイン達は聖女、剣士、武闘家、魔法使いだ。
エンドのルートしては六種類ある。
バットエンドを抜かすと、ハッピーエンドが五種類あり、ハッピーエンドの四種類、ヒロインの中の誰か1人と結ばれる。
残りのハッピーエンドはハーレムエンドである。
大好きなゲームの十回目のエンディングを迎えた主人公はお腹が空いたので、ご飯を食べようと思い、台所に行こうとして、足を滑らせ、頭を強く打ってしまった。
そして、主人公は不幸にも死んでしまった。
次に、主人公が目覚めると大好きなゲームの中に転生していた。
だが、主人公はゲームの中で名前しか出てこない悪役顔のモブに転生してしまった。
主人公は大好きなゲームの中に転生したことを心の底から喜んだ。
そして、折角転生したから、この世界を好きに生きようと考えた。
異世界に転生した社畜は調合師としてのんびりと生きていく。~ただの生産職だと思っていたら、結構ヤバい職でした~
夢宮
ファンタジー
台風が接近していて避難勧告が出されているにも関わらず出勤させられていた社畜──渡部与一《わたべよいち》。
雨で視界が悪いなか、信号無視をした車との接触事故で命を落としてしまう。
女神に即断即決で異世界転生を決められ、パパっと送り出されてしまうのだが、幸いなことに女神の気遣いによって職業とスキルを手に入れる──生産職の『調合師』という職業とそのスキルを。
異世界に転生してからふたりの少女に助けられ、港町へと向かい、物語は動き始める。
調合師としての立場を知り、それを利用しようとする者に悩まされながらも生きていく。
そんな与一ののんびりしたくてものんびりできない異世界生活が今、始まる。
※2話から登場人物の描写に入りますので、のんびりと読んでいただけたらなと思います。
※サブタイトル追加しました。
異世界転生したらたくさんスキルもらったけど今まで選ばれなかったものだった~魔王討伐は無理な気がする~
宝者来価
ファンタジー
俺は異世界転生者カドマツ。
転生理由は幼い少女を交通事故からかばったこと。
良いとこなしの日々を送っていたが女神様から異世界に転生すると説明された時にはアニメやゲームのような展開を期待したりもした。
例えばモンスターを倒して国を救いヒロインと結ばれるなど。
けれど与えられた【今まで選ばれなかったスキルが使える】 戦闘はおろか日常の役にも立つ気がしない余りものばかり。
同じ転生者でイケメン王子のレイニーに出迎えられ歓迎される。
彼は【スキル:水】を使う最強で理想的な異世界転生者に思えたのだが―――!?
※小説家になろう様にも掲載しています。
S級冒険者の子どもが進む道
干支猫
ファンタジー
【12/26完結】
とある小さな村、元冒険者の両親の下に生まれた子、ヨハン。
父親譲りの剣の才能に母親譲りの魔法の才能は両親の想定の遥か上をいく。
そうして王都の冒険者学校に入学を決め、出会った仲間と様々な学生生活を送っていった。
その中で魔族の存在にエルフの歴史を知る。そして魔王の復活を聞いた。
魔王とはいったい?
※感想に盛大なネタバレがあるので閲覧の際はご注意ください。
知識スキルで異世界らいふ
菻莅❝りんり❞
ファンタジー
他の異世界の神様のやらかしで死んだ俺は、その神様の紹介で別の異世界に転生する事になった。地球の神様からもらった知識スキルを駆使して、異世界ライフ
最強無敗の少年は影を従え全てを制す
ユースケ
ファンタジー
不慮の事故により死んでしまった大学生のカズトは、異世界に転生した。
産まれ落ちた家は田舎に位置する辺境伯。
カズトもといリュートはその家系の長男として、日々貴族としての教養と常識を身に付けていく。
しかし彼の力は生まれながらにして最強。
そんな彼が巻き起こす騒動は、常識を越えたものばかりで……。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる