御家騒動なんて真っ平ごめんです〜捨てられた双子の片割れは平凡な人生を歩みたい〜

伽羅

文字の大きさ
128 / 242
学院編

128 待ち伏せ?

しおりを挟む
 翌朝、スクール馬車で登校してきた僕は馬車を降りた途端、回れ右してまた馬車に乗り込もうとした。

 先に降りたアーサーがそれに気付き、慌てて僕の袖を引っ張る。

「エド、どうしたんだよ。何でまた、馬車に乗ろうとするんだ?」

 そんなやり取りをしている僕達に一人の人物が近付いてくる。

「おはよう、エドアルド君。何をそこで揉めているんだい?」

 僕は馬車に乗るのを諦めて、ため息をつきつつ振り返る。

「おはようございます、エドワード王子」

 僕が挨拶をすると、エドワード王子に気付いたアーサーも慌てて頭を下げる。

「お、おはようございます、エドワード王子」 

「おはよう。失礼だけど君の名前は?」

「アーサー・コールリッジでごじゃいます」

 アーサーったら、テンパっているのか盛大に噛んでいる。

「アーサー君か。よろしく」

 エドワード王子はアーサーに軽く挨拶を返すと僕の方に近寄って来た。

 ただでさえ皆の注目を集めているのにこれ以上、何を言うつもりなんだろうか。

 身構えている僕をよそにエドワード王子は親しげな笑顔を向ける。

「エドアルド君。昨日は決着がつかなくて残念だったね。次は負けないからね。君もしっかり腕を磨いてくれよ」

 エドワード王子がそんな宣戦布告をしていると、向こうから誰かが走ってくる足音が近付いて来た。

 そちらに視線を向けるとブライアンの姿が目に入った。

 恐らくエドワード王子を探しに来たのだろう。

 ブライアンが声をかけるより早くエドワード王子はクルリと向きを変えると、そのままブライアンと共に自分の教室へと歩きだした。

 エドワード王子がいなくなった事で僕に注目する人は減ったけれど、それでも何人かは僕を見てヒソヒソと話をしている。

「下位貴族なのにどうしてエドワード王子が話しかけたのかしら」

「あんな冴えない風貌でよく恥ずかしげもなくエドワード王子の前に立てるわね」

 などと言う陰口が聞こえてくる。

 まあ、こんな陰口なんてどうって事はない。

 僕が恐れているのは『二人が似ている』と言われる事だ。

 幸いこの眼鏡のおかげでそんな声はあがらないみたいだな。

 ヒソヒソ声にムッとしているアーサーを宥めながら僕達も教室に向かった。

 チャイムが鳴ってディクソン先生がホームルームに現れた。

「おはようございます。急で申し訳ありませんが、今日の魔術の授業は中止になりました。その時間は自習になります」

 突然告げられた授業の変更に僕達は驚くばかりだった。

「ディクソン先生。どうして変更になったんですか?」

 クラスメイトの一人が質問したが、ディクソン先生は困惑した表情のまま答える。

「私にも理由はわかりません。ただ、マーリン先生に急用が出来たとしか聞いていません」

 急用?

 一体どうしたんだろう?

 昨日のブレンドン王の事と何か関係があるのだろうか?

 マーリン先生ことオーウェンが授業を休むなんてよほどの事があったに違いない。

 言動はアレだけど、くだらない用事で授業をサボるような先生ではない。

 少なくとも僕はそう信じている。

「マーリン先生、どうしたんだろうね」

 ディクソン先生が教室を出て行くと、早速アーサーが僕の机の所にやって来た。

「さぁね? 体調でも崩したのかな?」

 マーリン先生がエルフだとは言えないので、当たり障りのない事を口にする。

 エドワード王子とだったら、昨日の事を引き合いにして色々と考察するんだけど、アーサー相手にそんな話は出来ない。

 お得意の時間を止めてオーウェンが現れる事もなく、午前中の授業が終わった。

「エド、食事に行こう」 

 アーサーと連れ立って食堂に行き、向かい合って座っていると誰かが僕達のテーブルにやって来た。

「一緒に座って良いかな」 

「…どうぞ」

 そう言って顔を上げた僕は思わず口の中の物を吹き出しそうになった。

「ゴホッ! ゴホッ!」

 思いっきりむせていると、隣の席に座った人物が僕の背中を擦ってくる。

「大丈夫か? エドアルド君」

 そこにいたのはエドワード王子だった。



   
 
しおりを挟む
感想 144

あなたにおすすめの小説

あっ、追放されちゃった…。

satomi
恋愛
ガイダール侯爵家の長女であるパールは精霊の話を聞くことができる。がそのことは誰にも話してはいない。亡き母との約束。 母が亡くなって喪も明けないうちに義母を父は連れてきた。義妹付きで。義妹はパールのものをなんでも欲しがった。事前に精霊の話を聞いていたパールは対処なりをできていたけれど、これは…。 ついにウラルはパールの婚約者である王太子を横取りした。 そのことについては王太子は特に魅力のある人ではないし、なんにも感じなかったのですが、王宮内でも噂になり、家の恥だと、家まで追い出されてしまったのです。 精霊さんのアドバイスによりブルハング帝国へと行ったパールですが…。

嫌われたと思って離れたのに

ラム猫
恋愛
 私は、婚約者のカイルに嫌われたと思った。冷たくそっけなく、近づくたびに避けられる日々。  距離を置くことを選び、留学の準備も進めて心を落ち着かせようとするけれど——。

骸骨と呼ばれ、生贄になった王妃のカタの付け方

ウサギテイマーTK
恋愛
骸骨娘と揶揄され、家で酷い扱いを受けていたマリーヌは、国王の正妃として嫁いだ。だが結婚後、国王に愛されることなく、ここでも幽閉に近い扱いを受ける。側妃はマリーヌの義姉で、公式行事も側妃が請け負っている。マリーヌに与えられた最後の役割は、海の神への生贄だった。 注意:地震や津波の描写があります。ご注意を。やや残酷な描写もあります。

主人公の恋敵として夫に処刑される王妃として転生した私は夫になる男との結婚を阻止します

白雪の雫
ファンタジー
突然ですが質問です。 あなたは【真実の愛】を信じますか? そう聞かれたら私は『いいえ!』『No!』と答える。 だって・・・そうでしょ? ジュリアーノ王太子の(名目上の)父親である若かりし頃の陛下曰く「私と彼女は真実の愛で結ばれている」という何が何だか訳の分からない理屈で、婚約者だった大臣の姫ではなく平民の女を妃にしたのよ!? それだけではない。 何と平民から王妃になった女は庭師と不倫して不義の子を儲け、その不義の子ことジュリアーノは陛下が側室にも成れない身分の低い女が産んだ息子のユーリアを後宮に入れて妃のように扱っているのよーーーっ!!! 私とジュリアーノの結婚は王太子の後見になって欲しいと陛下から土下座をされてまで請われたもの。 それなのに・・・ジュリアーノは私を後宮の片隅に追いやりユーリアと毎晩「アッー!」をしている。 しかも! ジュリアーノはユーリアと「アッー!」をするにしてもベルフィーネという存在が邪魔という理由だけで、正式な王太子妃である私を車裂きの刑にしやがるのよ!!! マジかーーーっ!!! 前世は腐女子であるが会社では働く女性向けの商品開発に携わっていた私は【夢色の恋人達】というBLゲームの、悪役と位置づけられている王太子妃のベルフィーネに転生していたのよーーーっ!!! 思い付きで書いたので、ガバガバ設定+矛盾がある+ご都合主義。 世界観、建築物や衣装等は古代ギリシャ・ローマ神話、古代バビロニアをベースにしたファンタジー、ベルフィーネの一人称は『私』と書いて『わたくし』です。

心が折れた日に神の声を聞く

木嶋うめ香
ファンタジー
ある日目を覚ましたアンカーは、自分が何度も何度も自分に生まれ変わり、父と義母と義妹に虐げられ冤罪で処刑された人生を送っていたと気が付く。 どうして何度も生まれ変わっているの、もう繰り返したくない、生まれ変わりたくなんてない。 何度生まれ変わりを繰り返しても、苦しい人生を送った末に処刑される。 絶望のあまり、アンカーは自ら命を断とうとした瞬間、神の声を聞く。 没ネタ供養、第二弾の短編です。

三年の想いは小瓶の中に

月山 歩
恋愛
結婚三周年の記念日だと、邸の者達がお膳立てしてくれた二人だけのお祝いなのに、その中心で一人夫が帰らない現実を受け入れる。もう彼を諦める潮時かもしれない。だったらこれからは自分の人生を大切にしよう。アレシアは離縁も覚悟し、邸を出る。 ※こちらの作品は契約上、内容の変更は不可であることを、ご理解ください。

田舎娘をバカにした令嬢の末路

冬吹せいら
恋愛
オーロラ・レンジ―は、小国の産まれでありながらも、名門バッテンデン学園に、首席で合格した。 それを不快に思った、令嬢のディアナ・カルホーンは、オーロラが試験官を買収したと嘘をつく。 ――あんな田舎娘に、私が負けるわけないじゃない。 田舎娘をバカにした令嬢の末路は……。

完結 王族の醜聞がメシウマ過ぎる件

音爽(ネソウ)
恋愛
王太子は言う。 『お前みたいなつまらない女など要らない、だが優秀さはかってやろう。第二妃として存分に働けよ』 『ごめんなさぁい、貴女は私の代わりに公儀をやってねぇ。だってそれしか取り柄がないんだしぃ』 公務のほとんどを丸投げにする宣言をして、正妃になるはずのアンドレイナ・サンドリーニを蹴落とし正妃の座に就いたベネッタ・ルニッチは高笑いした。王太子は彼女を第二妃として迎えると宣言したのである。 もちろん、そんな事は罷りならないと王は反対したのだが、その言葉を退けて彼女は同意をしてしまう。 屈辱的なことを敢えて受け入れたアンドレイナの真意とは…… *表紙絵自作

処理中です...