143 / 242
学院編
143 王妃との会話(サイラス視点)
しおりを挟む
サイラスはフィリップ王の執務室を出ると、そのまま王妃の元に向かった。
(今の時間はお茶会を開いているはずだが…)
週に何回か、貴族夫人を招いてお茶会を開催しているのを思い出し、サロンルームの方に向かった。
そこには王妃と数人の夫人達が楽しそうにおしゃべりをしているのが見えた。
サイラスが近づいて行くと、こちらを向いていたリリベットが目ざとく気付いた。
「あら? 何か御用かしら?」
他の貴族夫人達の手前、サイラスは妹に向かって恭しく頭を下げる。
「ご懇談中、誠に申し訳ございません。取り急ぎ確認したい事ができましたので、お時間をいただけませんか?」
リリベットはわざとらしくため息をつくと、出席している夫人達を見回した。
「残念ですが、今日はこれでお開きにしましょう。この埋め合わせはまた別の機会にいたしますね」
サイラスが姿を見せた時点でこうなる事は予想していたのだろう。
夫人達は素早く帰り支度をすると、リリベットとサイラスに挨拶をしてサロンルームを出て行った。
給仕をしていた侍女達も姿を消し、サロンルームには兄妹二人だけになる。
リリベットは新しく入れ替えられたお茶を一口飲むと、サイラスを軽く睨んだ。
「それで? 一体何の御用かしら?」
リリベットの視線を軽く受け流してサイラスもお茶に口を付けて喉を潤した。
「さっき、陛下から打ち明けられた。お前は双子を産んだそうだな」
一瞬、リリベットの手の動きが止まったが、すぐに何事もなかったかのようにカッフを口に運びお茶を飲んだ。
「…そう。とうとう認めたのね。よくもまあ、私に白を切ってくれたわね」
さして驚いていないリリベットの態度に、サイラスは先ほどのフィリップ王の言葉を思い出した。
『リリベットは自分が双子を産んだ事を知っているのかもしれない』
フィリップ王の言葉は正しかったのだと確信した。
「やはり知っていたのか。どうして気づいたんだ?」
「なんとなく違和感があったのよね。出産前のお腹もかなり大きかったし…。決定的だったのは街であの子を見かけたからよ」
「何だって!」
リリベットの発言にサイラスは頭をガンと殴られたような衝撃を受けた。
「街で見かけただって!? リリベットはその子がどこにいるのか知っているのか?」
身を乗り出すように問い詰めてくるサイラスにリリベットは少しばかり気圧されていた。
「え、ええ。会って話をしたわ。今はエルガー家の養子になっていたわ」
リリベットの口から「エルガー家」と出て来た事で、フィリップ王の推測が当たっていた事を確信した。
額に手を当てて考え込むサイラスにリリベットが逆に尋ねてくる。
「一体どうしたの? 急に双子の事を認めるなんて、何かあったの?」
サイラスは額に手を当てたまま、視線だけをリリベットに向けた。
「さっき、学院から緊急の報告書が届いた。学院の食堂に魔獣が出て、それを退治したのがエドワード王子とエドアルド・エルガー男爵子息だそうだ」
「なんですって! 魔獣!? それで、エドワード達に怪我はないの!?」
椅子を倒さんばかりの勢いで立ち上がったリリベットに、サイラスは少しばかり安堵した。
フィリップ王の事は見限っていても、子供に対する愛情はあるようだ。
「大丈夫だ。ブライアンもその場にいたらしいが誰も怪我はしていないらしい」
リリベットはホッとした顔を見せると何事もなかったかのように澄ました顔で椅子に座り直した。
「それで、お兄様はエドアルドをどうするおつもり?」
「もちろん、会いに行くよ。本人が望むなら王宮に迎え入れてもいいと陛下は仰ったからね」
それを聞いてリリベットはクスッと笑いを漏らした。
「あの子は王宮には来ないと思うわ。以前聞いた時には『迷惑です』ってはっきり言っていたもの」
「それは以前の話だろう? 今は考えが違っているかもしれない」
サイラスはお茶を飲み干して立ち上がると、最後の質問をリリベットにぶつけた。
「エドワード王子はエドアルド様を自分の兄弟だと知っているのかな?」
「あれだけそっくりなんだもの。何かしら感じ取っているんじゃないかしら?」
リリベットが肩をすくめると、サイラスは軽く頷いてサロンルームを後にした。
(今の時間はお茶会を開いているはずだが…)
週に何回か、貴族夫人を招いてお茶会を開催しているのを思い出し、サロンルームの方に向かった。
そこには王妃と数人の夫人達が楽しそうにおしゃべりをしているのが見えた。
サイラスが近づいて行くと、こちらを向いていたリリベットが目ざとく気付いた。
「あら? 何か御用かしら?」
他の貴族夫人達の手前、サイラスは妹に向かって恭しく頭を下げる。
「ご懇談中、誠に申し訳ございません。取り急ぎ確認したい事ができましたので、お時間をいただけませんか?」
リリベットはわざとらしくため息をつくと、出席している夫人達を見回した。
「残念ですが、今日はこれでお開きにしましょう。この埋め合わせはまた別の機会にいたしますね」
サイラスが姿を見せた時点でこうなる事は予想していたのだろう。
夫人達は素早く帰り支度をすると、リリベットとサイラスに挨拶をしてサロンルームを出て行った。
給仕をしていた侍女達も姿を消し、サロンルームには兄妹二人だけになる。
リリベットは新しく入れ替えられたお茶を一口飲むと、サイラスを軽く睨んだ。
「それで? 一体何の御用かしら?」
リリベットの視線を軽く受け流してサイラスもお茶に口を付けて喉を潤した。
「さっき、陛下から打ち明けられた。お前は双子を産んだそうだな」
一瞬、リリベットの手の動きが止まったが、すぐに何事もなかったかのようにカッフを口に運びお茶を飲んだ。
「…そう。とうとう認めたのね。よくもまあ、私に白を切ってくれたわね」
さして驚いていないリリベットの態度に、サイラスは先ほどのフィリップ王の言葉を思い出した。
『リリベットは自分が双子を産んだ事を知っているのかもしれない』
フィリップ王の言葉は正しかったのだと確信した。
「やはり知っていたのか。どうして気づいたんだ?」
「なんとなく違和感があったのよね。出産前のお腹もかなり大きかったし…。決定的だったのは街であの子を見かけたからよ」
「何だって!」
リリベットの発言にサイラスは頭をガンと殴られたような衝撃を受けた。
「街で見かけただって!? リリベットはその子がどこにいるのか知っているのか?」
身を乗り出すように問い詰めてくるサイラスにリリベットは少しばかり気圧されていた。
「え、ええ。会って話をしたわ。今はエルガー家の養子になっていたわ」
リリベットの口から「エルガー家」と出て来た事で、フィリップ王の推測が当たっていた事を確信した。
額に手を当てて考え込むサイラスにリリベットが逆に尋ねてくる。
「一体どうしたの? 急に双子の事を認めるなんて、何かあったの?」
サイラスは額に手を当てたまま、視線だけをリリベットに向けた。
「さっき、学院から緊急の報告書が届いた。学院の食堂に魔獣が出て、それを退治したのがエドワード王子とエドアルド・エルガー男爵子息だそうだ」
「なんですって! 魔獣!? それで、エドワード達に怪我はないの!?」
椅子を倒さんばかりの勢いで立ち上がったリリベットに、サイラスは少しばかり安堵した。
フィリップ王の事は見限っていても、子供に対する愛情はあるようだ。
「大丈夫だ。ブライアンもその場にいたらしいが誰も怪我はしていないらしい」
リリベットはホッとした顔を見せると何事もなかったかのように澄ました顔で椅子に座り直した。
「それで、お兄様はエドアルドをどうするおつもり?」
「もちろん、会いに行くよ。本人が望むなら王宮に迎え入れてもいいと陛下は仰ったからね」
それを聞いてリリベットはクスッと笑いを漏らした。
「あの子は王宮には来ないと思うわ。以前聞いた時には『迷惑です』ってはっきり言っていたもの」
「それは以前の話だろう? 今は考えが違っているかもしれない」
サイラスはお茶を飲み干して立ち上がると、最後の質問をリリベットにぶつけた。
「エドワード王子はエドアルド様を自分の兄弟だと知っているのかな?」
「あれだけそっくりなんだもの。何かしら感じ取っているんじゃないかしら?」
リリベットが肩をすくめると、サイラスは軽く頷いてサロンルームを後にした。
317
あなたにおすすめの小説
あっ、追放されちゃった…。
satomi
恋愛
ガイダール侯爵家の長女であるパールは精霊の話を聞くことができる。がそのことは誰にも話してはいない。亡き母との約束。
母が亡くなって喪も明けないうちに義母を父は連れてきた。義妹付きで。義妹はパールのものをなんでも欲しがった。事前に精霊の話を聞いていたパールは対処なりをできていたけれど、これは…。
ついにウラルはパールの婚約者である王太子を横取りした。
そのことについては王太子は特に魅力のある人ではないし、なんにも感じなかったのですが、王宮内でも噂になり、家の恥だと、家まで追い出されてしまったのです。
精霊さんのアドバイスによりブルハング帝国へと行ったパールですが…。
嫌われたと思って離れたのに
ラム猫
恋愛
私は、婚約者のカイルに嫌われたと思った。冷たくそっけなく、近づくたびに避けられる日々。
距離を置くことを選び、留学の準備も進めて心を落ち着かせようとするけれど——。
骸骨と呼ばれ、生贄になった王妃のカタの付け方
ウサギテイマーTK
恋愛
骸骨娘と揶揄され、家で酷い扱いを受けていたマリーヌは、国王の正妃として嫁いだ。だが結婚後、国王に愛されることなく、ここでも幽閉に近い扱いを受ける。側妃はマリーヌの義姉で、公式行事も側妃が請け負っている。マリーヌに与えられた最後の役割は、海の神への生贄だった。
注意:地震や津波の描写があります。ご注意を。やや残酷な描写もあります。
主人公の恋敵として夫に処刑される王妃として転生した私は夫になる男との結婚を阻止します
白雪の雫
ファンタジー
突然ですが質問です。
あなたは【真実の愛】を信じますか?
そう聞かれたら私は『いいえ!』『No!』と答える。
だって・・・そうでしょ?
ジュリアーノ王太子の(名目上の)父親である若かりし頃の陛下曰く「私と彼女は真実の愛で結ばれている」という何が何だか訳の分からない理屈で、婚約者だった大臣の姫ではなく平民の女を妃にしたのよ!?
それだけではない。
何と平民から王妃になった女は庭師と不倫して不義の子を儲け、その不義の子ことジュリアーノは陛下が側室にも成れない身分の低い女が産んだ息子のユーリアを後宮に入れて妃のように扱っているのよーーーっ!!!
私とジュリアーノの結婚は王太子の後見になって欲しいと陛下から土下座をされてまで請われたもの。
それなのに・・・ジュリアーノは私を後宮の片隅に追いやりユーリアと毎晩「アッー!」をしている。
しかも!
ジュリアーノはユーリアと「アッー!」をするにしてもベルフィーネという存在が邪魔という理由だけで、正式な王太子妃である私を車裂きの刑にしやがるのよ!!!
マジかーーーっ!!!
前世は腐女子であるが会社では働く女性向けの商品開発に携わっていた私は【夢色の恋人達】というBLゲームの、悪役と位置づけられている王太子妃のベルフィーネに転生していたのよーーーっ!!!
思い付きで書いたので、ガバガバ設定+矛盾がある+ご都合主義。
世界観、建築物や衣装等は古代ギリシャ・ローマ神話、古代バビロニアをベースにしたファンタジー、ベルフィーネの一人称は『私』と書いて『わたくし』です。
心が折れた日に神の声を聞く
木嶋うめ香
ファンタジー
ある日目を覚ましたアンカーは、自分が何度も何度も自分に生まれ変わり、父と義母と義妹に虐げられ冤罪で処刑された人生を送っていたと気が付く。
どうして何度も生まれ変わっているの、もう繰り返したくない、生まれ変わりたくなんてない。
何度生まれ変わりを繰り返しても、苦しい人生を送った末に処刑される。
絶望のあまり、アンカーは自ら命を断とうとした瞬間、神の声を聞く。
没ネタ供養、第二弾の短編です。
三年の想いは小瓶の中に
月山 歩
恋愛
結婚三周年の記念日だと、邸の者達がお膳立てしてくれた二人だけのお祝いなのに、その中心で一人夫が帰らない現実を受け入れる。もう彼を諦める潮時かもしれない。だったらこれからは自分の人生を大切にしよう。アレシアは離縁も覚悟し、邸を出る。
※こちらの作品は契約上、内容の変更は不可であることを、ご理解ください。
田舎娘をバカにした令嬢の末路
冬吹せいら
恋愛
オーロラ・レンジ―は、小国の産まれでありながらも、名門バッテンデン学園に、首席で合格した。
それを不快に思った、令嬢のディアナ・カルホーンは、オーロラが試験官を買収したと嘘をつく。
――あんな田舎娘に、私が負けるわけないじゃない。
田舎娘をバカにした令嬢の末路は……。
完結 王族の醜聞がメシウマ過ぎる件
音爽(ネソウ)
恋愛
王太子は言う。
『お前みたいなつまらない女など要らない、だが優秀さはかってやろう。第二妃として存分に働けよ』
『ごめんなさぁい、貴女は私の代わりに公儀をやってねぇ。だってそれしか取り柄がないんだしぃ』
公務のほとんどを丸投げにする宣言をして、正妃になるはずのアンドレイナ・サンドリーニを蹴落とし正妃の座に就いたベネッタ・ルニッチは高笑いした。王太子は彼女を第二妃として迎えると宣言したのである。
もちろん、そんな事は罷りならないと王は反対したのだが、その言葉を退けて彼女は同意をしてしまう。
屈辱的なことを敢えて受け入れたアンドレイナの真意とは……
*表紙絵自作
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる