御家騒動なんて真っ平ごめんです〜捨てられた双子の片割れは平凡な人生を歩みたい〜

伽羅

文字の大きさ
161 / 242
学院編

161 ブライアンからのレッスン

しおりを挟む
 その後もソファでの座り方とか、首の動かし方とか、ブライアンに細かく指摘される。

「エドワード王子はそんなに歯を見せて笑ったりはしません! もっと背筋を伸ばして! 頭を下げるのもそんなに深々と下げる必要はありません! エドワード王子はこの国で二番目に位の高い方なんですよ!」

 エドワード王子のお辞儀の仕方とか、歩き方までもブライアンにレクチャーされる。

 それにしてもよくそこまでエドワード王子の仕草を熟知しているものだと感心するよ。

 いくら幼馴染で小さい頃から交流があるといってもそこまで観察しているものかね。

 従兄弟同士でもあるし、同い年だからそれこそ双子のように過ごしてきたんだろう。

 宰相の家は王妃の実家でもあるから、割と頻繁に行き来していたのかもしれないし…。

 僕にはわからないエドワード王子とブライアンの十二年間がそこにはあるんだろう。

 だからこそ、突然現れた僕に対して複雑な思いをブライアンは持っているに違いない。

 僕が捨てられずに王宮で育っていたら、ブライアンと三人で違った関係を築く事が出来ていたんじゃないだろうか?

 それを考えるとつくづく十二年って長いな、と感じてしまう。

 そんな感傷的な気分に浸る間もなく、ブライアンの指摘がまたしても僕に襲いかかる。

「そうじゃありません! もう一度!」

 やれやれ…。

 影武者も楽じゃないな。



 その後、夕食の時間になり、サラがワゴンを押して僕達の部屋に夕食を届けに来た。

 ソファからテーブル席に移動して、夕食を食べるのだが、当然のようにブライアンからあれこれと指導を受ける。

 本当にここまで必要なんだろうかと思うのだが、念には念を入れてという事だろう。

 何しろ、既にエドワード王子は公務として様々な場面に出席している。

 人前で飲食もしているし、言葉も交わしている。

 王子という立場からいろんな人に注目されているのは分かりきった話だ。

 貴族の中には自分の娘を王子の婚約者に、と目論んでいる者もいるだろう。

 そういう人物がエドワード王子の一挙手一投足を事細かに観察していないとも限らない。

 いかに人々に違和感を抱かせないようにするのかが重要なのだ。

 ブライアンの指導を受けながら夕食を終えると、僕はソファにぐったりと身体を預けた。

 だが、途端にブライアンから叱責が飛んでくる。

「エドアルド様! そこで気を抜いてはいけません! 常に万人に見られていると意識してください!」

 …やれやれ。

 やっぱり僕には王宮で暮らすのは無理そうだ。



 夕食を終えるとサラはテーブルの上を片付け、部屋の中にある別の扉から中へ入っていった。

 しばらくするとそこから出てきて僕とブライアンにこう告げた。

「お風呂のご用意が出来ました。いつもでしたらお世話をする係がいるのですが、本日はお一人で入っていただく事になります」

 サラは申し訳なさそうに言うが、お風呂の世話までされるなんて僕には到底無理だ。

「大丈夫です。一人で入れます」

「そうですか。それではこれを…。下着は新しい物を用意させていただきましたが、寝間着はエドワード王子の物になります」

 そう言ってサラは僕に下着と寝間着を手渡してくれた。

 うわぁ!

 下着も寝間着もめちゃくちゃ手触りが良いな。

 普段僕が使っている物とは別格だよ。

「あ、どうも」

 僕はそれを受け取るとそそくさと浴室の方に向かった。

 浴室に入って一人きりになった途端、言いようのない疲労感が僕を襲う。

 脱衣かごに脱いだ服を放り込むと、かけ湯をして湯船に浸かった。

 温かいお湯に浸かっているとじわじわと緊張していた身体が緩んでくる。

 こんな状態で明日明後日と乗り越える事が出来るんだろうか?

 だけど、やると決めた以上、なんとか乗り切らないとね。

 僕は束の間の休息に思い切り浸るのだった。

 
しおりを挟む
感想 144

あなたにおすすめの小説

あっ、追放されちゃった…。

satomi
恋愛
ガイダール侯爵家の長女であるパールは精霊の話を聞くことができる。がそのことは誰にも話してはいない。亡き母との約束。 母が亡くなって喪も明けないうちに義母を父は連れてきた。義妹付きで。義妹はパールのものをなんでも欲しがった。事前に精霊の話を聞いていたパールは対処なりをできていたけれど、これは…。 ついにウラルはパールの婚約者である王太子を横取りした。 そのことについては王太子は特に魅力のある人ではないし、なんにも感じなかったのですが、王宮内でも噂になり、家の恥だと、家まで追い出されてしまったのです。 精霊さんのアドバイスによりブルハング帝国へと行ったパールですが…。

嫌われたと思って離れたのに

ラム猫
恋愛
 私は、婚約者のカイルに嫌われたと思った。冷たくそっけなく、近づくたびに避けられる日々。  距離を置くことを選び、留学の準備も進めて心を落ち着かせようとするけれど——。

骸骨と呼ばれ、生贄になった王妃のカタの付け方

ウサギテイマーTK
恋愛
骸骨娘と揶揄され、家で酷い扱いを受けていたマリーヌは、国王の正妃として嫁いだ。だが結婚後、国王に愛されることなく、ここでも幽閉に近い扱いを受ける。側妃はマリーヌの義姉で、公式行事も側妃が請け負っている。マリーヌに与えられた最後の役割は、海の神への生贄だった。 注意:地震や津波の描写があります。ご注意を。やや残酷な描写もあります。

主人公の恋敵として夫に処刑される王妃として転生した私は夫になる男との結婚を阻止します

白雪の雫
ファンタジー
突然ですが質問です。 あなたは【真実の愛】を信じますか? そう聞かれたら私は『いいえ!』『No!』と答える。 だって・・・そうでしょ? ジュリアーノ王太子の(名目上の)父親である若かりし頃の陛下曰く「私と彼女は真実の愛で結ばれている」という何が何だか訳の分からない理屈で、婚約者だった大臣の姫ではなく平民の女を妃にしたのよ!? それだけではない。 何と平民から王妃になった女は庭師と不倫して不義の子を儲け、その不義の子ことジュリアーノは陛下が側室にも成れない身分の低い女が産んだ息子のユーリアを後宮に入れて妃のように扱っているのよーーーっ!!! 私とジュリアーノの結婚は王太子の後見になって欲しいと陛下から土下座をされてまで請われたもの。 それなのに・・・ジュリアーノは私を後宮の片隅に追いやりユーリアと毎晩「アッー!」をしている。 しかも! ジュリアーノはユーリアと「アッー!」をするにしてもベルフィーネという存在が邪魔という理由だけで、正式な王太子妃である私を車裂きの刑にしやがるのよ!!! マジかーーーっ!!! 前世は腐女子であるが会社では働く女性向けの商品開発に携わっていた私は【夢色の恋人達】というBLゲームの、悪役と位置づけられている王太子妃のベルフィーネに転生していたのよーーーっ!!! 思い付きで書いたので、ガバガバ設定+矛盾がある+ご都合主義。 世界観、建築物や衣装等は古代ギリシャ・ローマ神話、古代バビロニアをベースにしたファンタジー、ベルフィーネの一人称は『私』と書いて『わたくし』です。

心が折れた日に神の声を聞く

木嶋うめ香
ファンタジー
ある日目を覚ましたアンカーは、自分が何度も何度も自分に生まれ変わり、父と義母と義妹に虐げられ冤罪で処刑された人生を送っていたと気が付く。 どうして何度も生まれ変わっているの、もう繰り返したくない、生まれ変わりたくなんてない。 何度生まれ変わりを繰り返しても、苦しい人生を送った末に処刑される。 絶望のあまり、アンカーは自ら命を断とうとした瞬間、神の声を聞く。 没ネタ供養、第二弾の短編です。

三年の想いは小瓶の中に

月山 歩
恋愛
結婚三周年の記念日だと、邸の者達がお膳立てしてくれた二人だけのお祝いなのに、その中心で一人夫が帰らない現実を受け入れる。もう彼を諦める潮時かもしれない。だったらこれからは自分の人生を大切にしよう。アレシアは離縁も覚悟し、邸を出る。 ※こちらの作品は契約上、内容の変更は不可であることを、ご理解ください。

田舎娘をバカにした令嬢の末路

冬吹せいら
恋愛
オーロラ・レンジ―は、小国の産まれでありながらも、名門バッテンデン学園に、首席で合格した。 それを不快に思った、令嬢のディアナ・カルホーンは、オーロラが試験官を買収したと嘘をつく。 ――あんな田舎娘に、私が負けるわけないじゃない。 田舎娘をバカにした令嬢の末路は……。

完結 王族の醜聞がメシウマ過ぎる件

音爽(ネソウ)
恋愛
王太子は言う。 『お前みたいなつまらない女など要らない、だが優秀さはかってやろう。第二妃として存分に働けよ』 『ごめんなさぁい、貴女は私の代わりに公儀をやってねぇ。だってそれしか取り柄がないんだしぃ』 公務のほとんどを丸投げにする宣言をして、正妃になるはずのアンドレイナ・サンドリーニを蹴落とし正妃の座に就いたベネッタ・ルニッチは高笑いした。王太子は彼女を第二妃として迎えると宣言したのである。 もちろん、そんな事は罷りならないと王は反対したのだが、その言葉を退けて彼女は同意をしてしまう。 屈辱的なことを敢えて受け入れたアンドレイナの真意とは…… *表紙絵自作

処理中です...