御家騒動なんて真っ平ごめんです〜捨てられた双子の片割れは平凡な人生を歩みたい〜

伽羅

文字の大きさ
187 / 242
冒険者編

187 ビッグアントの駆除

しおりを挟む
 僕とアーサーは依頼書に書かれた住所に到着した。

「ここだな」

 呼び鈴を押したが誰も出てくる気配はない。

「留守かな?」

「いや、もしかしたら畑に出ているんじゃないかな?」

 この家に来る途中にも何かを植えている畑が続いていた。

 そちらには誰もいなかったからこの家の向こうにいるんだろう。

 僕とアーサーは家の裏手に続いている畑の方に足を伸ばした。

 すると畑のあちこちで作業をしている人達が見えた。

 だが、どれが依頼人なのか判断が出来ないので、とりあえず声をかけてみる事にした。

「すみませーん! 依頼書を見て来たんですがー!」

 大声で呼びかけると、作業をしている人達が一斉に顔を上げた。

 そのうちの一人の男性がこちらに向かってくる。

 ガッシリとした体格で浅黒く日焼けをしている。

「依頼書? ああ、ビッグアントの駆除の件だな。こっちに来てくれ」

 男性の後について歩いていくと、畑の外れの方に土で出来た塔のような物が立っていた。

 かなり大きな物で二階建ての家位の高さがある。

「なんですか、これ?」

「ビッグアントの巣だよ。壊そうとしてもびくともしないんだ。この巣からビッグアントが出てきては畑を荒らすんだ。見つける度に退治するんだが、またしばらくすると出てくるんだよ。結局、この巣を壊して中にいる女王アリを退治しない限りはいたちごっこになるんだ。よろしく頼むよ」

 男性は忌々しげにアリの巣を見上げている。

 確かに女王アリを退治しない限り、卵を産み続けるから働きアリを退治してもキリがないよね。

「わかりました。なんとかやってます」

 そう返事をすると男性はまた畑の方へと戻って行った。

 僕は改めてアリの巣を見上げる。

 直径は僕が両手を広げた位の大きさで円錐になっている。

 これって蟻塚ってやつかな?

 実物を見るのは初めてだけれど、こんなに大きな物が作れるなんてアリって凄いな。

 だけど、どうやってこれを壊したらいいんだろう?

「エド、どうする?」

 アーサーもアリの巣を見上げながら僕に尋ねてくる。

「そうだなあ…」

 僕は手でアリの巣を触ってみた。

 土で出来ているように見えるから、触ったら少し崩れるかと思ったが、意に反してコンクリートのように固かった。

 触って崩れるくらいならわざわざ冒険者ギルドに依頼なんて出さないよね。

 その時、アリの巣の穴から一匹のアリが姿を現した。

「うわっ!」

 そのアリのあまりの大きさに僕は思わず後ずさりする。

 アリは一瞬姿を見せたがすぐにまた巣の中に引っ込んでしまった。

 確かに「ビッグアント」という名前だから多少は大きいのだろうと思っていたが、想像以上に大きなアリだった。

 アリと言うよりはカマキリと言ったほうがいいくらいの大きさだ。

 こんなアリに畑を荒らされたら相当な被害が出そうだ。

 それにしてもこのアリの巣の中にあんなに大きなアリがうじゃうじゃいるなんて、想像しただけでゾッとするよ。

 駆除するのは少し可哀想な気もするが、依頼として受けた以上はやらなくてはならない。

 巣を壊した途端、アリ達が巣から一斉に這い出して来るのは避けたい。

「アリの巣を結界で包んで破壊するしかないな」

「アリ達はどうするんだ?」

「灼熱の炎で一瞬で焼き尽くすしかないかな」

 じわじわと焼くよりは一瞬で済ませた方がいいだろう。

「わかった。じゃあ、結界は頼むよ」

 僕はアリの巣に掌を向けて魔力を流した。

 アリの巣が一瞬で結界に覆われる。

「アーサー、いくよ」

 結界の中のアリの巣を破壊させると、土の欠片の中からうじゃうじゃとアリ達が這い出てきた。

「焼き尽くせ!」

 アーサーが結界の中に炎を投げつける。

 結界の中に大きな炎が一瞬だけ上がった後、すぐにかき消えた。

 結界の中には土の山と燃え尽きた灰だけが残っていた。
しおりを挟む
感想 144

あなたにおすすめの小説

あっ、追放されちゃった…。

satomi
恋愛
ガイダール侯爵家の長女であるパールは精霊の話を聞くことができる。がそのことは誰にも話してはいない。亡き母との約束。 母が亡くなって喪も明けないうちに義母を父は連れてきた。義妹付きで。義妹はパールのものをなんでも欲しがった。事前に精霊の話を聞いていたパールは対処なりをできていたけれど、これは…。 ついにウラルはパールの婚約者である王太子を横取りした。 そのことについては王太子は特に魅力のある人ではないし、なんにも感じなかったのですが、王宮内でも噂になり、家の恥だと、家まで追い出されてしまったのです。 精霊さんのアドバイスによりブルハング帝国へと行ったパールですが…。

嫌われたと思って離れたのに

ラム猫
恋愛
 私は、婚約者のカイルに嫌われたと思った。冷たくそっけなく、近づくたびに避けられる日々。  距離を置くことを選び、留学の準備も進めて心を落ち着かせようとするけれど——。

骸骨と呼ばれ、生贄になった王妃のカタの付け方

ウサギテイマーTK
恋愛
骸骨娘と揶揄され、家で酷い扱いを受けていたマリーヌは、国王の正妃として嫁いだ。だが結婚後、国王に愛されることなく、ここでも幽閉に近い扱いを受ける。側妃はマリーヌの義姉で、公式行事も側妃が請け負っている。マリーヌに与えられた最後の役割は、海の神への生贄だった。 注意:地震や津波の描写があります。ご注意を。やや残酷な描写もあります。

主人公の恋敵として夫に処刑される王妃として転生した私は夫になる男との結婚を阻止します

白雪の雫
ファンタジー
突然ですが質問です。 あなたは【真実の愛】を信じますか? そう聞かれたら私は『いいえ!』『No!』と答える。 だって・・・そうでしょ? ジュリアーノ王太子の(名目上の)父親である若かりし頃の陛下曰く「私と彼女は真実の愛で結ばれている」という何が何だか訳の分からない理屈で、婚約者だった大臣の姫ではなく平民の女を妃にしたのよ!? それだけではない。 何と平民から王妃になった女は庭師と不倫して不義の子を儲け、その不義の子ことジュリアーノは陛下が側室にも成れない身分の低い女が産んだ息子のユーリアを後宮に入れて妃のように扱っているのよーーーっ!!! 私とジュリアーノの結婚は王太子の後見になって欲しいと陛下から土下座をされてまで請われたもの。 それなのに・・・ジュリアーノは私を後宮の片隅に追いやりユーリアと毎晩「アッー!」をしている。 しかも! ジュリアーノはユーリアと「アッー!」をするにしてもベルフィーネという存在が邪魔という理由だけで、正式な王太子妃である私を車裂きの刑にしやがるのよ!!! マジかーーーっ!!! 前世は腐女子であるが会社では働く女性向けの商品開発に携わっていた私は【夢色の恋人達】というBLゲームの、悪役と位置づけられている王太子妃のベルフィーネに転生していたのよーーーっ!!! 思い付きで書いたので、ガバガバ設定+矛盾がある+ご都合主義。 世界観、建築物や衣装等は古代ギリシャ・ローマ神話、古代バビロニアをベースにしたファンタジー、ベルフィーネの一人称は『私』と書いて『わたくし』です。

心が折れた日に神の声を聞く

木嶋うめ香
ファンタジー
ある日目を覚ましたアンカーは、自分が何度も何度も自分に生まれ変わり、父と義母と義妹に虐げられ冤罪で処刑された人生を送っていたと気が付く。 どうして何度も生まれ変わっているの、もう繰り返したくない、生まれ変わりたくなんてない。 何度生まれ変わりを繰り返しても、苦しい人生を送った末に処刑される。 絶望のあまり、アンカーは自ら命を断とうとした瞬間、神の声を聞く。 没ネタ供養、第二弾の短編です。

三年の想いは小瓶の中に

月山 歩
恋愛
結婚三周年の記念日だと、邸の者達がお膳立てしてくれた二人だけのお祝いなのに、その中心で一人夫が帰らない現実を受け入れる。もう彼を諦める潮時かもしれない。だったらこれからは自分の人生を大切にしよう。アレシアは離縁も覚悟し、邸を出る。 ※こちらの作品は契約上、内容の変更は不可であることを、ご理解ください。

田舎娘をバカにした令嬢の末路

冬吹せいら
恋愛
オーロラ・レンジ―は、小国の産まれでありながらも、名門バッテンデン学園に、首席で合格した。 それを不快に思った、令嬢のディアナ・カルホーンは、オーロラが試験官を買収したと嘘をつく。 ――あんな田舎娘に、私が負けるわけないじゃない。 田舎娘をバカにした令嬢の末路は……。

完結 王族の醜聞がメシウマ過ぎる件

音爽(ネソウ)
恋愛
王太子は言う。 『お前みたいなつまらない女など要らない、だが優秀さはかってやろう。第二妃として存分に働けよ』 『ごめんなさぁい、貴女は私の代わりに公儀をやってねぇ。だってそれしか取り柄がないんだしぃ』 公務のほとんどを丸投げにする宣言をして、正妃になるはずのアンドレイナ・サンドリーニを蹴落とし正妃の座に就いたベネッタ・ルニッチは高笑いした。王太子は彼女を第二妃として迎えると宣言したのである。 もちろん、そんな事は罷りならないと王は反対したのだが、その言葉を退けて彼女は同意をしてしまう。 屈辱的なことを敢えて受け入れたアンドレイナの真意とは…… *表紙絵自作

処理中です...