御家騒動なんて真っ平ごめんです〜捨てられた双子の片割れは平凡な人生を歩みたい〜

伽羅

文字の大きさ
10 / 242
幼少期 

10 新生活

しおりを挟む
 ガタン、と馬車が止まった揺れで僕は目を開けた。

 外から馬車の扉が開かれ、夫が先に馬車から降り、続いて僕を抱っこした妻が馬車から降りた。

「おかえりなさいませ、旦那様、奥様」

 声が聞こえた方へ顔を向けると、眼鏡をかけた男性を筆頭にずらりと使用人達が並んでいた。

 皆、一斉に頭を下げて僕達を出迎えている。

「今戻った。馬車の中に荷物があるから運んでおいてくれ」

「かしこまりました」

 眼鏡をかけた男の人が合図をすると、侍従が二人、馬車の中から荷物を取り出している。

「今日からこのエドアルドが一緒に住む。部屋を整えてくれ」

「かしこまりました。すぐに手配いたします。それまでは奥様のお部屋でお待ちいただいてよろしいでしょうか?」 

「ええ、いいわ。それとエドアルドの面倒を見る者を決めておいてちょうだい」

「かしこまりました」

 夫妻の無茶振りにも一切反論せずに、眼鏡をかけた男性はテキパキと要望に応えていく。

 その手際の良さに僕はただ目をぱちくりさせるだけだった。

 その日から僕はこの家での生活が始まった。

 この夫婦は貴族らしく、屋敷には大勢のメイドや侍従が仕えていた。

 眼鏡をかけていた男性はこの家の執事だという。

 執事なんて本当にいるんだね。初めて見たよ。

 家名はわからないが夫の名前はピーターで、妻の方はマーガレットだと判明した。

 養子になったのだから、『父上、母上』と呼ぶべきだろうか?

 僕の世話はもっぱらメイドが中心になって行っていた。

 メイド達の噂話で知った事だけれど、この夫婦は結婚して十年になるのに子供が生まれなかったそうだ。

 そういう場合は親戚筋から養子をもらうのが妥当だと思うんだけれど、そこはちょっと事情があるらしい。

 何でも結婚を反対されていたのを押し切って結婚したそうだ。

 それなのに子宝に恵まれなかったなんて、『それ見たことか』と言われたくないらしい。

 貴族って一夫多妻が普通だと思っていたのだけれど、そうではない夫婦もいるようだ。

 生まれて間もない僕を養子に選んだのも、自分達の実の子だと誤魔化しやすいからなんだろう。

 使用人達も夫妻の実の子のように僕の世話をしてくれている。

 けれど、うら若いメイドさんに僕のオムツを替えてもらうなんてどんな羞恥プレイだよ。

 孤児院でアイラ達にオムツを替えられていた時よりも更に恥ずかしい思いをしているなんて思わなかったよ。

 僕にミルクをくれるのもメイドさんの仕事だった。

 母上は時折僕を抱っこしに来るが、父上の方は滅多に顔を見せなかった。

 やはり、養子だからそんなに愛情を注いだりしないのだろうか。

 今のところ、虐待のような扱いは受けていないから、それなりに愛情はあるのかもしれない。




 この夫婦に引き取られて二ヶ月が過ぎようとしていた。

 僕に与えられた子供部屋に母上が訪れていた時の事だった。

 ベビーベッドに寝かされている僕の顔を母上が覗き込んできたが。その顔色が悪いのが、妙に気になった。

「アー、アー」

『どうしたの?』と問いかけているつもりだけれど、当然、まだ言葉にできるはずもない。

 すると母上はベビーベッドの横にうずくまるように倒れた。

「奥様! どうされました!」

 傍にいたメイドが声をかけていたが、返事がないようだ。

 こういう時こそ赤ん坊である僕の出番だ。

「アーン! アーン!」

 僕はありったけの声で泣き叫んだ!

「エドアルド様!? どうされました?」

 僕の泣き声を聞きつけて執事が子供部屋に入ってきた。

「奥様! どうなさいました!?」

 母上が倒れているのを目にした執事が駆け寄ってくる。

「わかりません! 突然倒れられて…」

 メイドがオロオロと事情を説明する。

「とりあえずそこのソファに寝かせましょう」

 母上はソファに寝かされ、すぐに医者が手配された。

 父上も駆けつけて心配そうに母上の手を握っている。

 その頃には母上も意識を取り戻したようだが、相変わらず青い顔をしている。

 やがて医者が到着して母上の診察が始まった。

 僕もベビーベッドの上で寝返りを打って、母上の様子を見守った。

 やがて診察を終えた医者が告げたのは、驚きの言葉だった。

「おめでとうございます。ご懐妊です」


しおりを挟む
感想 144

あなたにおすすめの小説

あっ、追放されちゃった…。

satomi
恋愛
ガイダール侯爵家の長女であるパールは精霊の話を聞くことができる。がそのことは誰にも話してはいない。亡き母との約束。 母が亡くなって喪も明けないうちに義母を父は連れてきた。義妹付きで。義妹はパールのものをなんでも欲しがった。事前に精霊の話を聞いていたパールは対処なりをできていたけれど、これは…。 ついにウラルはパールの婚約者である王太子を横取りした。 そのことについては王太子は特に魅力のある人ではないし、なんにも感じなかったのですが、王宮内でも噂になり、家の恥だと、家まで追い出されてしまったのです。 精霊さんのアドバイスによりブルハング帝国へと行ったパールですが…。

嫌われたと思って離れたのに

ラム猫
恋愛
 私は、婚約者のカイルに嫌われたと思った。冷たくそっけなく、近づくたびに避けられる日々。  距離を置くことを選び、留学の準備も進めて心を落ち着かせようとするけれど——。

骸骨と呼ばれ、生贄になった王妃のカタの付け方

ウサギテイマーTK
恋愛
骸骨娘と揶揄され、家で酷い扱いを受けていたマリーヌは、国王の正妃として嫁いだ。だが結婚後、国王に愛されることなく、ここでも幽閉に近い扱いを受ける。側妃はマリーヌの義姉で、公式行事も側妃が請け負っている。マリーヌに与えられた最後の役割は、海の神への生贄だった。 注意:地震や津波の描写があります。ご注意を。やや残酷な描写もあります。

主人公の恋敵として夫に処刑される王妃として転生した私は夫になる男との結婚を阻止します

白雪の雫
ファンタジー
突然ですが質問です。 あなたは【真実の愛】を信じますか? そう聞かれたら私は『いいえ!』『No!』と答える。 だって・・・そうでしょ? ジュリアーノ王太子の(名目上の)父親である若かりし頃の陛下曰く「私と彼女は真実の愛で結ばれている」という何が何だか訳の分からない理屈で、婚約者だった大臣の姫ではなく平民の女を妃にしたのよ!? それだけではない。 何と平民から王妃になった女は庭師と不倫して不義の子を儲け、その不義の子ことジュリアーノは陛下が側室にも成れない身分の低い女が産んだ息子のユーリアを後宮に入れて妃のように扱っているのよーーーっ!!! 私とジュリアーノの結婚は王太子の後見になって欲しいと陛下から土下座をされてまで請われたもの。 それなのに・・・ジュリアーノは私を後宮の片隅に追いやりユーリアと毎晩「アッー!」をしている。 しかも! ジュリアーノはユーリアと「アッー!」をするにしてもベルフィーネという存在が邪魔という理由だけで、正式な王太子妃である私を車裂きの刑にしやがるのよ!!! マジかーーーっ!!! 前世は腐女子であるが会社では働く女性向けの商品開発に携わっていた私は【夢色の恋人達】というBLゲームの、悪役と位置づけられている王太子妃のベルフィーネに転生していたのよーーーっ!!! 思い付きで書いたので、ガバガバ設定+矛盾がある+ご都合主義。 世界観、建築物や衣装等は古代ギリシャ・ローマ神話、古代バビロニアをベースにしたファンタジー、ベルフィーネの一人称は『私』と書いて『わたくし』です。

心が折れた日に神の声を聞く

木嶋うめ香
ファンタジー
ある日目を覚ましたアンカーは、自分が何度も何度も自分に生まれ変わり、父と義母と義妹に虐げられ冤罪で処刑された人生を送っていたと気が付く。 どうして何度も生まれ変わっているの、もう繰り返したくない、生まれ変わりたくなんてない。 何度生まれ変わりを繰り返しても、苦しい人生を送った末に処刑される。 絶望のあまり、アンカーは自ら命を断とうとした瞬間、神の声を聞く。 没ネタ供養、第二弾の短編です。

三年の想いは小瓶の中に

月山 歩
恋愛
結婚三周年の記念日だと、邸の者達がお膳立てしてくれた二人だけのお祝いなのに、その中心で一人夫が帰らない現実を受け入れる。もう彼を諦める潮時かもしれない。だったらこれからは自分の人生を大切にしよう。アレシアは離縁も覚悟し、邸を出る。 ※こちらの作品は契約上、内容の変更は不可であることを、ご理解ください。

田舎娘をバカにした令嬢の末路

冬吹せいら
恋愛
オーロラ・レンジ―は、小国の産まれでありながらも、名門バッテンデン学園に、首席で合格した。 それを不快に思った、令嬢のディアナ・カルホーンは、オーロラが試験官を買収したと嘘をつく。 ――あんな田舎娘に、私が負けるわけないじゃない。 田舎娘をバカにした令嬢の末路は……。

完結 王族の醜聞がメシウマ過ぎる件

音爽(ネソウ)
恋愛
王太子は言う。 『お前みたいなつまらない女など要らない、だが優秀さはかってやろう。第二妃として存分に働けよ』 『ごめんなさぁい、貴女は私の代わりに公儀をやってねぇ。だってそれしか取り柄がないんだしぃ』 公務のほとんどを丸投げにする宣言をして、正妃になるはずのアンドレイナ・サンドリーニを蹴落とし正妃の座に就いたベネッタ・ルニッチは高笑いした。王太子は彼女を第二妃として迎えると宣言したのである。 もちろん、そんな事は罷りならないと王は反対したのだが、その言葉を退けて彼女は同意をしてしまう。 屈辱的なことを敢えて受け入れたアンドレイナの真意とは…… *表紙絵自作

処理中です...