14 / 242
幼少期
14 新しい家
しおりを挟む
院長先生は養子縁組の書類を出してきて夫婦にサインをさせた。
それと同時に誓約書を書かせていた。
万が一、僕をこの孤児院に戻す事になった時は金貨を支払うというものだ。
流石は院長先生。
口約束だけで終わらせるつもりはないらしい。
手続きが終わると院長先生は満面の笑みで僕を夫婦に手渡した。
奥さん、もとい母上がおっかなびっくり僕を抱っこする。
「まあ、結構重たいんですね」
「どれどれ。…いや、そうでもないぞ」
父上が、母上から僕を受け取って軽々と僕を抱き上げる。
そりゃ、男の方が女より力が強いんだから、そう感じるのは当たり前だと思う。
「それではこれで失礼します」
父上に抱っこされたまま僕達は院長室を後にする。
見知らぬ夫婦に連れて行かれる僕を見て、孤児院の子供達は何が起こったのか察したようだ。
「エド、行っちゃうの?」
「バイバイ、エド」
「もう戻って来る事がないようにな!」
いや、それフラグだからね。
孤児の僕には持って行く荷物なんて何もない。
僕は着の身着のまま、孤児院を出て、門の外に停めてある馬車に乗り込んだ。
父上の膝の上に抱っこされた僕の頭を隣に座った母上が優しく撫でる。
「綺麗な顔をしているわね。大きくなったらきっとハンサムになるわ」
そう言われたけれど、母上の美の基準がわからないので、話半分に聞いておこう。
第一、僕は未だに自分の顔がわからない。
孤児院では鏡なんて置いてないからだ。
院長先生によると「遊んでる最中に割ってしまうかもしれない」からだそうだが、ただ単にケチっているだけだろう。
父上達の家に行けば、鏡が見つかるだろうか?
父上の抱っこの安定感と、馬車の揺れで僕はコクリコクリと舟を漕ぎ出す。
やがて父上から誰かに手渡された感触に目を開けると、ぽっちゃりとした中年の女性の顔が目に入った。
「おや、エドアルド様。お目覚めですか?」
寝起きのぼんやりとした頭で、その女の人をじっと見つめると、ニコッと笑顔を返された。
「今日からエドアルド様のお世話をさせていただくハンナです。お部屋に行きましょうね」
そこで僕は新しい家に着いたのだとわかり、キョロキョロと辺りを見回した。
既に屋敷の中だったようで、ハンナは僕を抱っこしたまま廊下を進んでいく。
いくつかの扉を過ぎた後、ようやくハンナは立ち止まりそこの扉を開けた。
「アー(うわぁ~)!」
思わず叫んでしまうほどの豪華な部屋だった。
大きなベビーベッドが置いてあり、テーブルセットにドレッサーまでも置いてある。
そう、鏡があったんだよ。
僕がドレッサーの方に手を伸ばすと、ハンナは僕の意図を察してくれたようでそちらの方へ僕を連れて行ってくれた。
「鏡が気になるんですか? …ほら、エドアルド様が映っていますよ」
ドレッサーの鏡を覗くと、そこにはハンナに抱っこされた男の子が映っていた。
よくラノベに出てくる王子様のような金髪碧眼の赤ん坊がそこにいた。
前世での黒目黒髪の顔を見慣れていた僕としては、とても今鏡に映っているのが自分の姿だとはにわかには信じがたい。
けれど、僕が右手を差し出せば、鏡の中の赤ん坊も同じように、右手を差し出してくる。
それに僕を抱っこしているハンナも鏡に映っているのだから、鏡の中の赤ん坊は紛れもなく僕である。
確かに赤ん坊にしては綺麗な顔をしているとは思うけれど、この顔のまま大きくなれるのだろうか?
大きくなって『子供の頃は可愛かったのに…』なんてがっかりされたりしないかな?
「鏡が気に入りましたか? もっと見せてあげたいのですが、先にお召し替えをしましょうね」
そうハンナに言われて僕は鏡の中の自分の服装を確認する。
孤児院で使い古されてきた子供服だ。
最近まで着ていた服が小さくなり、一回り大きなサイズで長い袖が袖口で折ってある。
ハンナは床に敷かれているフカフカのカーペットの上に僕を降ろすと、壁際の扉の方へと向かった。
ハンナが扉を開けるとそこにはたくさんの子供服が掛けられている。
ポカンと口を開けて見ていると、ハンナはその中の一着を出すと僕の方に戻ってきた。
「そう言えばオムツも替えないといけませんね」
ハンナは僕をその場にコロンと寝かせると、僕が履いているズボンを脱がせた。
テキパキとオムツを替えると今度は着替えだ。
ハンナは僕の着替えもさっさと終わらせると、再びカーペットの上に僕を座らせる。
手際が良い所を見ると、誰かの乳母をやっていたかハンナに子供がいるかのどちらかだろう。
ハンナは僕の前に積み木を置いた。
ここは遊び方を知らないフリをするのが一番だ。
僕は両手に積み木を持つとそれにカンカンと打ち鳴らした。
ハンナはそれを止める事もなく笑いながら見ている。
こうして僕の二度目の新しい生活が始まった。
それと同時に誓約書を書かせていた。
万が一、僕をこの孤児院に戻す事になった時は金貨を支払うというものだ。
流石は院長先生。
口約束だけで終わらせるつもりはないらしい。
手続きが終わると院長先生は満面の笑みで僕を夫婦に手渡した。
奥さん、もとい母上がおっかなびっくり僕を抱っこする。
「まあ、結構重たいんですね」
「どれどれ。…いや、そうでもないぞ」
父上が、母上から僕を受け取って軽々と僕を抱き上げる。
そりゃ、男の方が女より力が強いんだから、そう感じるのは当たり前だと思う。
「それではこれで失礼します」
父上に抱っこされたまま僕達は院長室を後にする。
見知らぬ夫婦に連れて行かれる僕を見て、孤児院の子供達は何が起こったのか察したようだ。
「エド、行っちゃうの?」
「バイバイ、エド」
「もう戻って来る事がないようにな!」
いや、それフラグだからね。
孤児の僕には持って行く荷物なんて何もない。
僕は着の身着のまま、孤児院を出て、門の外に停めてある馬車に乗り込んだ。
父上の膝の上に抱っこされた僕の頭を隣に座った母上が優しく撫でる。
「綺麗な顔をしているわね。大きくなったらきっとハンサムになるわ」
そう言われたけれど、母上の美の基準がわからないので、話半分に聞いておこう。
第一、僕は未だに自分の顔がわからない。
孤児院では鏡なんて置いてないからだ。
院長先生によると「遊んでる最中に割ってしまうかもしれない」からだそうだが、ただ単にケチっているだけだろう。
父上達の家に行けば、鏡が見つかるだろうか?
父上の抱っこの安定感と、馬車の揺れで僕はコクリコクリと舟を漕ぎ出す。
やがて父上から誰かに手渡された感触に目を開けると、ぽっちゃりとした中年の女性の顔が目に入った。
「おや、エドアルド様。お目覚めですか?」
寝起きのぼんやりとした頭で、その女の人をじっと見つめると、ニコッと笑顔を返された。
「今日からエドアルド様のお世話をさせていただくハンナです。お部屋に行きましょうね」
そこで僕は新しい家に着いたのだとわかり、キョロキョロと辺りを見回した。
既に屋敷の中だったようで、ハンナは僕を抱っこしたまま廊下を進んでいく。
いくつかの扉を過ぎた後、ようやくハンナは立ち止まりそこの扉を開けた。
「アー(うわぁ~)!」
思わず叫んでしまうほどの豪華な部屋だった。
大きなベビーベッドが置いてあり、テーブルセットにドレッサーまでも置いてある。
そう、鏡があったんだよ。
僕がドレッサーの方に手を伸ばすと、ハンナは僕の意図を察してくれたようでそちらの方へ僕を連れて行ってくれた。
「鏡が気になるんですか? …ほら、エドアルド様が映っていますよ」
ドレッサーの鏡を覗くと、そこにはハンナに抱っこされた男の子が映っていた。
よくラノベに出てくる王子様のような金髪碧眼の赤ん坊がそこにいた。
前世での黒目黒髪の顔を見慣れていた僕としては、とても今鏡に映っているのが自分の姿だとはにわかには信じがたい。
けれど、僕が右手を差し出せば、鏡の中の赤ん坊も同じように、右手を差し出してくる。
それに僕を抱っこしているハンナも鏡に映っているのだから、鏡の中の赤ん坊は紛れもなく僕である。
確かに赤ん坊にしては綺麗な顔をしているとは思うけれど、この顔のまま大きくなれるのだろうか?
大きくなって『子供の頃は可愛かったのに…』なんてがっかりされたりしないかな?
「鏡が気に入りましたか? もっと見せてあげたいのですが、先にお召し替えをしましょうね」
そうハンナに言われて僕は鏡の中の自分の服装を確認する。
孤児院で使い古されてきた子供服だ。
最近まで着ていた服が小さくなり、一回り大きなサイズで長い袖が袖口で折ってある。
ハンナは床に敷かれているフカフカのカーペットの上に僕を降ろすと、壁際の扉の方へと向かった。
ハンナが扉を開けるとそこにはたくさんの子供服が掛けられている。
ポカンと口を開けて見ていると、ハンナはその中の一着を出すと僕の方に戻ってきた。
「そう言えばオムツも替えないといけませんね」
ハンナは僕をその場にコロンと寝かせると、僕が履いているズボンを脱がせた。
テキパキとオムツを替えると今度は着替えだ。
ハンナは僕の着替えもさっさと終わらせると、再びカーペットの上に僕を座らせる。
手際が良い所を見ると、誰かの乳母をやっていたかハンナに子供がいるかのどちらかだろう。
ハンナは僕の前に積み木を置いた。
ここは遊び方を知らないフリをするのが一番だ。
僕は両手に積み木を持つとそれにカンカンと打ち鳴らした。
ハンナはそれを止める事もなく笑いながら見ている。
こうして僕の二度目の新しい生活が始まった。
400
あなたにおすすめの小説
あっ、追放されちゃった…。
satomi
恋愛
ガイダール侯爵家の長女であるパールは精霊の話を聞くことができる。がそのことは誰にも話してはいない。亡き母との約束。
母が亡くなって喪も明けないうちに義母を父は連れてきた。義妹付きで。義妹はパールのものをなんでも欲しがった。事前に精霊の話を聞いていたパールは対処なりをできていたけれど、これは…。
ついにウラルはパールの婚約者である王太子を横取りした。
そのことについては王太子は特に魅力のある人ではないし、なんにも感じなかったのですが、王宮内でも噂になり、家の恥だと、家まで追い出されてしまったのです。
精霊さんのアドバイスによりブルハング帝国へと行ったパールですが…。
嫌われたと思って離れたのに
ラム猫
恋愛
私は、婚約者のカイルに嫌われたと思った。冷たくそっけなく、近づくたびに避けられる日々。
距離を置くことを選び、留学の準備も進めて心を落ち着かせようとするけれど——。
骸骨と呼ばれ、生贄になった王妃のカタの付け方
ウサギテイマーTK
恋愛
骸骨娘と揶揄され、家で酷い扱いを受けていたマリーヌは、国王の正妃として嫁いだ。だが結婚後、国王に愛されることなく、ここでも幽閉に近い扱いを受ける。側妃はマリーヌの義姉で、公式行事も側妃が請け負っている。マリーヌに与えられた最後の役割は、海の神への生贄だった。
注意:地震や津波の描写があります。ご注意を。やや残酷な描写もあります。
主人公の恋敵として夫に処刑される王妃として転生した私は夫になる男との結婚を阻止します
白雪の雫
ファンタジー
突然ですが質問です。
あなたは【真実の愛】を信じますか?
そう聞かれたら私は『いいえ!』『No!』と答える。
だって・・・そうでしょ?
ジュリアーノ王太子の(名目上の)父親である若かりし頃の陛下曰く「私と彼女は真実の愛で結ばれている」という何が何だか訳の分からない理屈で、婚約者だった大臣の姫ではなく平民の女を妃にしたのよ!?
それだけではない。
何と平民から王妃になった女は庭師と不倫して不義の子を儲け、その不義の子ことジュリアーノは陛下が側室にも成れない身分の低い女が産んだ息子のユーリアを後宮に入れて妃のように扱っているのよーーーっ!!!
私とジュリアーノの結婚は王太子の後見になって欲しいと陛下から土下座をされてまで請われたもの。
それなのに・・・ジュリアーノは私を後宮の片隅に追いやりユーリアと毎晩「アッー!」をしている。
しかも!
ジュリアーノはユーリアと「アッー!」をするにしてもベルフィーネという存在が邪魔という理由だけで、正式な王太子妃である私を車裂きの刑にしやがるのよ!!!
マジかーーーっ!!!
前世は腐女子であるが会社では働く女性向けの商品開発に携わっていた私は【夢色の恋人達】というBLゲームの、悪役と位置づけられている王太子妃のベルフィーネに転生していたのよーーーっ!!!
思い付きで書いたので、ガバガバ設定+矛盾がある+ご都合主義。
世界観、建築物や衣装等は古代ギリシャ・ローマ神話、古代バビロニアをベースにしたファンタジー、ベルフィーネの一人称は『私』と書いて『わたくし』です。
心が折れた日に神の声を聞く
木嶋うめ香
ファンタジー
ある日目を覚ましたアンカーは、自分が何度も何度も自分に生まれ変わり、父と義母と義妹に虐げられ冤罪で処刑された人生を送っていたと気が付く。
どうして何度も生まれ変わっているの、もう繰り返したくない、生まれ変わりたくなんてない。
何度生まれ変わりを繰り返しても、苦しい人生を送った末に処刑される。
絶望のあまり、アンカーは自ら命を断とうとした瞬間、神の声を聞く。
没ネタ供養、第二弾の短編です。
三年の想いは小瓶の中に
月山 歩
恋愛
結婚三周年の記念日だと、邸の者達がお膳立てしてくれた二人だけのお祝いなのに、その中心で一人夫が帰らない現実を受け入れる。もう彼を諦める潮時かもしれない。だったらこれからは自分の人生を大切にしよう。アレシアは離縁も覚悟し、邸を出る。
※こちらの作品は契約上、内容の変更は不可であることを、ご理解ください。
田舎娘をバカにした令嬢の末路
冬吹せいら
恋愛
オーロラ・レンジ―は、小国の産まれでありながらも、名門バッテンデン学園に、首席で合格した。
それを不快に思った、令嬢のディアナ・カルホーンは、オーロラが試験官を買収したと嘘をつく。
――あんな田舎娘に、私が負けるわけないじゃない。
田舎娘をバカにした令嬢の末路は……。
完結 王族の醜聞がメシウマ過ぎる件
音爽(ネソウ)
恋愛
王太子は言う。
『お前みたいなつまらない女など要らない、だが優秀さはかってやろう。第二妃として存分に働けよ』
『ごめんなさぁい、貴女は私の代わりに公儀をやってねぇ。だってそれしか取り柄がないんだしぃ』
公務のほとんどを丸投げにする宣言をして、正妃になるはずのアンドレイナ・サンドリーニを蹴落とし正妃の座に就いたベネッタ・ルニッチは高笑いした。王太子は彼女を第二妃として迎えると宣言したのである。
もちろん、そんな事は罷りならないと王は反対したのだが、その言葉を退けて彼女は同意をしてしまう。
屈辱的なことを敢えて受け入れたアンドレイナの真意とは……
*表紙絵自作
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる