60 / 242
幼少期
60 謁見
しおりを挟む
チャールズは緊張した面持ちで王宮の待合室にいた。
ここは国王夫妻に謁見する者達が待機するための場所だ。
チャールズ以外にも数人の貴族や商人が、自分の版が来るのを今か今かと待っている。
今までチャールズは国王夫妻への謁見理由を『爵位についてのお願い』としていたため、ことごとく却下されていた。
だが、今回の謁見理由は『新商品の献上』である。
エドアルドに教えてもらったポップコーンを売るため、この一カ月間のあいだに商会を立ち上げ販売店舗の確保をした。
そして国王夫妻への謁見の申し込みをして、ようやく許可が下りたのだ。
本日、ポップコーンを国王夫妻に献上した後、ポップコーンを販売する予定になっている。
次から次へと名前が呼ばれ、ようやくチャールズの番が回ってきた。
チャールズはポップコーンが入った箱を持った従者を従えて、待合室から謁見室へと足を進めた。
謁見室に入ると、奥の玉座に国王と王妃が並んで座っている。
チャールズは玉座へと続いている赤い絨毯の上を歩き、所定の位置で足を止めて跪いた。
チラリと見えたフィリップの顔は、やはりエドアルドに似ていた。
「スタンレイ子爵。本日は新商品を持って来たとの事だが、何を持ってきたのだ?」
国王であるフィリップに声をかけられ、チャールズは更に頭を下げる。
「はい。先日、新しいお菓子を開発いたしまして、真っ先に国王陛下と王妃様に献上しようと持ってまいりました。どうぞお納めくださいませ」
チャールズは後ろに控える従者から箱を受け取ると、恭しく頭上に掲げた。
玉座の下に待機している従僕がチャールズの掲げた箱を受け取り、フィリップの元へと運ぶ。
フィリップはその箱を一瞥した後、従僕に箱を開けさせた。
その中には数種類のポップコーンが詰められている。
「ほう。初めて見る菓子だな。一つ食べてみせろ」
フィリップは従僕にポップコーンを食べるように命じる。
これは万が一、毒が盛られている可能性を考えての事だ。
「はっ、かしこまりました」
従僕はポップコーンを一つ掴むと、物珍しげに眺めた後、自分の口に入れた。
ポップコーンを噛んだ瞬間、従僕の目が見開かれる。
その様子をフィリップは見逃さなかった。
「どうした? まさか、毒でも入っていたのではあるまいな?」
フィリップの言葉に従僕はブルブルと首を振る。
「とんでもございません! とても美味しいお菓子です。外側はカリッとしているのに中は柔らかくて初めて食べる物です」
従僕の言葉にフィリップは食べても安全だと理解したらしく、ポップコーンを一つ取り口に入れた。
しばらく咀嚼した後、フィリップは別のフレーバーのポップコーンを口に入れる。
「これはまた、別の味がするな。ん? こっちはまた刺激的な味だな。もしかして『カレー』というやつか?」
次から次へとポップコーンを頬張るフィリップに、リリベットが抗議の声を上げる。
「まあ、陛下! お一人で楽しんでいらっしゃらないで、私にも食べさせてくださいな」
リリベットの声を受けて、従僕が慌ててリリベットの前に箱を差し出した。
リリベットはポップコーンを摘むと、ためらいもなく口に入れて咀嚼する。
「あら、これはチョコレートの味がするわね。こちらは甘いけれど何の味かしら?」
「そちらはキャラメル味と申します」
チャールズがポップコーンのフレーバーの説明をするが、その間にも二人の手は止まらない。
従僕はポップコーンの箱を抱えてフィリップとリリベットの間をウロウロする羽目になっていた。
ほぼ箱が空になってきた所でようやく二人の手が止まった。
「なかなか美味しかったな。これはいつから販売するんだ?」
「はい、本日より販売開始となります」
「そうか、後で買いに向かわせよう。大義であった。下がっていいぞ」
フィリップに言われ、チャールズはペコリと頭を下げて出口に向かう。
その背中にフィリップの言葉が追いかけてきた。
「ああ、言い忘れておった。お礼と言ってはなんだが、次の陞爵の候補に加えておくからな」
チャールズは思わず叫びだしそうになるのをぐっと我慢して、もう一度深々とお辞儀をすると謁見室を出た。
ここは国王夫妻に謁見する者達が待機するための場所だ。
チャールズ以外にも数人の貴族や商人が、自分の版が来るのを今か今かと待っている。
今までチャールズは国王夫妻への謁見理由を『爵位についてのお願い』としていたため、ことごとく却下されていた。
だが、今回の謁見理由は『新商品の献上』である。
エドアルドに教えてもらったポップコーンを売るため、この一カ月間のあいだに商会を立ち上げ販売店舗の確保をした。
そして国王夫妻への謁見の申し込みをして、ようやく許可が下りたのだ。
本日、ポップコーンを国王夫妻に献上した後、ポップコーンを販売する予定になっている。
次から次へと名前が呼ばれ、ようやくチャールズの番が回ってきた。
チャールズはポップコーンが入った箱を持った従者を従えて、待合室から謁見室へと足を進めた。
謁見室に入ると、奥の玉座に国王と王妃が並んで座っている。
チャールズは玉座へと続いている赤い絨毯の上を歩き、所定の位置で足を止めて跪いた。
チラリと見えたフィリップの顔は、やはりエドアルドに似ていた。
「スタンレイ子爵。本日は新商品を持って来たとの事だが、何を持ってきたのだ?」
国王であるフィリップに声をかけられ、チャールズは更に頭を下げる。
「はい。先日、新しいお菓子を開発いたしまして、真っ先に国王陛下と王妃様に献上しようと持ってまいりました。どうぞお納めくださいませ」
チャールズは後ろに控える従者から箱を受け取ると、恭しく頭上に掲げた。
玉座の下に待機している従僕がチャールズの掲げた箱を受け取り、フィリップの元へと運ぶ。
フィリップはその箱を一瞥した後、従僕に箱を開けさせた。
その中には数種類のポップコーンが詰められている。
「ほう。初めて見る菓子だな。一つ食べてみせろ」
フィリップは従僕にポップコーンを食べるように命じる。
これは万が一、毒が盛られている可能性を考えての事だ。
「はっ、かしこまりました」
従僕はポップコーンを一つ掴むと、物珍しげに眺めた後、自分の口に入れた。
ポップコーンを噛んだ瞬間、従僕の目が見開かれる。
その様子をフィリップは見逃さなかった。
「どうした? まさか、毒でも入っていたのではあるまいな?」
フィリップの言葉に従僕はブルブルと首を振る。
「とんでもございません! とても美味しいお菓子です。外側はカリッとしているのに中は柔らかくて初めて食べる物です」
従僕の言葉にフィリップは食べても安全だと理解したらしく、ポップコーンを一つ取り口に入れた。
しばらく咀嚼した後、フィリップは別のフレーバーのポップコーンを口に入れる。
「これはまた、別の味がするな。ん? こっちはまた刺激的な味だな。もしかして『カレー』というやつか?」
次から次へとポップコーンを頬張るフィリップに、リリベットが抗議の声を上げる。
「まあ、陛下! お一人で楽しんでいらっしゃらないで、私にも食べさせてくださいな」
リリベットの声を受けて、従僕が慌ててリリベットの前に箱を差し出した。
リリベットはポップコーンを摘むと、ためらいもなく口に入れて咀嚼する。
「あら、これはチョコレートの味がするわね。こちらは甘いけれど何の味かしら?」
「そちらはキャラメル味と申します」
チャールズがポップコーンのフレーバーの説明をするが、その間にも二人の手は止まらない。
従僕はポップコーンの箱を抱えてフィリップとリリベットの間をウロウロする羽目になっていた。
ほぼ箱が空になってきた所でようやく二人の手が止まった。
「なかなか美味しかったな。これはいつから販売するんだ?」
「はい、本日より販売開始となります」
「そうか、後で買いに向かわせよう。大義であった。下がっていいぞ」
フィリップに言われ、チャールズはペコリと頭を下げて出口に向かう。
その背中にフィリップの言葉が追いかけてきた。
「ああ、言い忘れておった。お礼と言ってはなんだが、次の陞爵の候補に加えておくからな」
チャールズは思わず叫びだしそうになるのをぐっと我慢して、もう一度深々とお辞儀をすると謁見室を出た。
398
あなたにおすすめの小説
あっ、追放されちゃった…。
satomi
恋愛
ガイダール侯爵家の長女であるパールは精霊の話を聞くことができる。がそのことは誰にも話してはいない。亡き母との約束。
母が亡くなって喪も明けないうちに義母を父は連れてきた。義妹付きで。義妹はパールのものをなんでも欲しがった。事前に精霊の話を聞いていたパールは対処なりをできていたけれど、これは…。
ついにウラルはパールの婚約者である王太子を横取りした。
そのことについては王太子は特に魅力のある人ではないし、なんにも感じなかったのですが、王宮内でも噂になり、家の恥だと、家まで追い出されてしまったのです。
精霊さんのアドバイスによりブルハング帝国へと行ったパールですが…。
嫌われたと思って離れたのに
ラム猫
恋愛
私は、婚約者のカイルに嫌われたと思った。冷たくそっけなく、近づくたびに避けられる日々。
距離を置くことを選び、留学の準備も進めて心を落ち着かせようとするけれど——。
骸骨と呼ばれ、生贄になった王妃のカタの付け方
ウサギテイマーTK
恋愛
骸骨娘と揶揄され、家で酷い扱いを受けていたマリーヌは、国王の正妃として嫁いだ。だが結婚後、国王に愛されることなく、ここでも幽閉に近い扱いを受ける。側妃はマリーヌの義姉で、公式行事も側妃が請け負っている。マリーヌに与えられた最後の役割は、海の神への生贄だった。
注意:地震や津波の描写があります。ご注意を。やや残酷な描写もあります。
主人公の恋敵として夫に処刑される王妃として転生した私は夫になる男との結婚を阻止します
白雪の雫
ファンタジー
突然ですが質問です。
あなたは【真実の愛】を信じますか?
そう聞かれたら私は『いいえ!』『No!』と答える。
だって・・・そうでしょ?
ジュリアーノ王太子の(名目上の)父親である若かりし頃の陛下曰く「私と彼女は真実の愛で結ばれている」という何が何だか訳の分からない理屈で、婚約者だった大臣の姫ではなく平民の女を妃にしたのよ!?
それだけではない。
何と平民から王妃になった女は庭師と不倫して不義の子を儲け、その不義の子ことジュリアーノは陛下が側室にも成れない身分の低い女が産んだ息子のユーリアを後宮に入れて妃のように扱っているのよーーーっ!!!
私とジュリアーノの結婚は王太子の後見になって欲しいと陛下から土下座をされてまで請われたもの。
それなのに・・・ジュリアーノは私を後宮の片隅に追いやりユーリアと毎晩「アッー!」をしている。
しかも!
ジュリアーノはユーリアと「アッー!」をするにしてもベルフィーネという存在が邪魔という理由だけで、正式な王太子妃である私を車裂きの刑にしやがるのよ!!!
マジかーーーっ!!!
前世は腐女子であるが会社では働く女性向けの商品開発に携わっていた私は【夢色の恋人達】というBLゲームの、悪役と位置づけられている王太子妃のベルフィーネに転生していたのよーーーっ!!!
思い付きで書いたので、ガバガバ設定+矛盾がある+ご都合主義。
世界観、建築物や衣装等は古代ギリシャ・ローマ神話、古代バビロニアをベースにしたファンタジー、ベルフィーネの一人称は『私』と書いて『わたくし』です。
心が折れた日に神の声を聞く
木嶋うめ香
ファンタジー
ある日目を覚ましたアンカーは、自分が何度も何度も自分に生まれ変わり、父と義母と義妹に虐げられ冤罪で処刑された人生を送っていたと気が付く。
どうして何度も生まれ変わっているの、もう繰り返したくない、生まれ変わりたくなんてない。
何度生まれ変わりを繰り返しても、苦しい人生を送った末に処刑される。
絶望のあまり、アンカーは自ら命を断とうとした瞬間、神の声を聞く。
没ネタ供養、第二弾の短編です。
三年の想いは小瓶の中に
月山 歩
恋愛
結婚三周年の記念日だと、邸の者達がお膳立てしてくれた二人だけのお祝いなのに、その中心で一人夫が帰らない現実を受け入れる。もう彼を諦める潮時かもしれない。だったらこれからは自分の人生を大切にしよう。アレシアは離縁も覚悟し、邸を出る。
※こちらの作品は契約上、内容の変更は不可であることを、ご理解ください。
田舎娘をバカにした令嬢の末路
冬吹せいら
恋愛
オーロラ・レンジ―は、小国の産まれでありながらも、名門バッテンデン学園に、首席で合格した。
それを不快に思った、令嬢のディアナ・カルホーンは、オーロラが試験官を買収したと嘘をつく。
――あんな田舎娘に、私が負けるわけないじゃない。
田舎娘をバカにした令嬢の末路は……。
完結 王族の醜聞がメシウマ過ぎる件
音爽(ネソウ)
恋愛
王太子は言う。
『お前みたいなつまらない女など要らない、だが優秀さはかってやろう。第二妃として存分に働けよ』
『ごめんなさぁい、貴女は私の代わりに公儀をやってねぇ。だってそれしか取り柄がないんだしぃ』
公務のほとんどを丸投げにする宣言をして、正妃になるはずのアンドレイナ・サンドリーニを蹴落とし正妃の座に就いたベネッタ・ルニッチは高笑いした。王太子は彼女を第二妃として迎えると宣言したのである。
もちろん、そんな事は罷りならないと王は反対したのだが、その言葉を退けて彼女は同意をしてしまう。
屈辱的なことを敢えて受け入れたアンドレイナの真意とは……
*表紙絵自作
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる