22 / 52
22 私の部屋
しおりを挟む
エイブラムさん達がいなくなると、お父様は立ち上がり私の側にやってきた。
「アリス、おいで。お前の部屋に案内しよう」
私の部屋?
まだこの王宮へ来てそれほど時間が経っているわけではないのに、いつの間に用意していたのかしら?
差し出された手を取って立ち上がると、反対側の手をお兄様が取って歩き出す。
「こっちだよ。気に入ってくれると嬉しいな。何しろ君が生まれる前から準備していたからね」
あっさりと言われてちょっと言葉に詰まった。
確かに母親である王妃が妊娠したのだから部屋が準備されるのは当然だろう。
だけど、すり替えられて行方不明になったのだから、部屋は残されてもそのまま放置されていたんじゃないのかしら。
でも私の手を引いて歩く二人を見る限り、そんな事をしそうにはないわね。
長い廊下を歩いていくつもの扉をやり過ごしてようやく二人は立ち止まった。
「ここがアリスの部屋だよ。ちなみに向かいは僕の部屋だからね」
お兄様が合図をすると、扉の前に立っていた侍女が扉を開いて恭しく頭を下げる。
二人に連れられて一歩部屋の中に足を踏み入れれば、そこは気後れするくらい広くて豪華な部屋だった。
天蓋付きベッドは勿論、椅子やテーブル、ソファーなど、家具や調度品は侯爵家とは比べ物にならないくらいだ。
「季節毎に内装を変えたり、流行が変わるとそれを取り入れたり、いつアリスが戻ってきてもいいようにしておいた。クリスティンに似ているだろうから、その雰囲気に合わせるようにと…。こうして部屋の中にいるアリスを見る事が出来て本当に嬉しいよ」
お父様の言葉に胸が熱くなる。
「ドレスも毎年のように仕立てさせておいた。他のご令嬢の平均的なサイズで作らせたが…」
するとお父様の側に立っていた侍従が何やらお父様に耳打ちをした。
「…そうか。では、午後には登城するように伝えてくれ」
お父様の返事を聞くと侍従は部屋から出て行った。
何があったのかしら?
「そのドレスは侯爵夫人が作らせたそうだな。アリスのドレスを作るのならばその仕立て屋を呼んでくれと侯爵夫人から伝言があったそうだ」
既に私のサイズを知っているから、注文がし易いものね。
座って話をしようとソファーに移動したが、お父様は一人掛けのソファーには座らずに、私の隣に腰掛けてきた。
当然、反対側にはお兄様が座っている。
イケオジとイケメンに挟まれて座るなんて、居心地が悪くって仕方がない。
おまけに妙に近いし…。
この距離感って親子じゃ普通なの?
貴族ってあまり異性に馴れ馴れしくしないんじゃ無かった?
親子だから大丈夫なのかしら?
私の心配を他所に二人はニコニコしながら、それぞれ私の手を取ってさすっている。
どう見ても口説かれているようにしか見えないんですけど!
「アリスは向こうの世界では、貴族だったのか?」
そんな言葉がお父様から発せられて思わず「は?」と間抜けた声が出た。
「いえ、私が住んでいた国では身分制度なんてありませんでした」
「身分制度がない? それではどうやって国を運営していたんだ?」
「それぞれの地方から選ばれた人が集まって国を動かしていました」
この世界に当てはめるならば、議員が貴族という立場になるって事かしらね。
「貴族でないならば、アリスは何をしていたんだ? 既に働いていたんだろう?」
お兄様の言葉にカルチャーショックを覚える。
この世界では私の歳ではもう働いているって事かしら?
「私は高校生として学校に通っていました。私の世界では七歳から十五歳まで義務教育として学校に通わなければいけないんです。その後に仕事に就く人も多少はいましたが、ほとんどが高校に通い、更に大学へと進学していました」
私もこの世界に転移しなければ、大学に通うつもりだった。
何より私を育ててくれた両親がそのつもりだったのだ。
捨て子だと知って高校を卒業したら就職するつもりでいたけれど、両親は頑として私を大学へと行かせたがった。
迷ったが、育ててくれた恩を返すのならば、両親の望みどおりに大学に行くべきだろうと考えた。
突然私がいなくなって悲しんでいなければいいな。
「勉強はしていたんだね。この世界の文字は読めたりするのかい?」
「文字はガブリエラさんに教えて頂きました。読む事は出来ますが、書くのはまだしていません」
お兄様は目を細めて私の頭を撫でてくる。
「そうか。色々と教えなければいけない事がありそうだが、先ずはこの王宮での生活に慣れる事が先かな」
「そうだな。先程のお茶の席でもそれなりにマナーが出来ていたようだ。一週間はゆっくりして過ごせばいい」
お兄様に対抗するようにお父様も頭を撫でてくる。
十七年ぶりで嬉しいのはわかるけれど、どうにも二人の愛が重いように感じるのは気の所為じゃ無いみたい。
「アリス、おいで。お前の部屋に案内しよう」
私の部屋?
まだこの王宮へ来てそれほど時間が経っているわけではないのに、いつの間に用意していたのかしら?
差し出された手を取って立ち上がると、反対側の手をお兄様が取って歩き出す。
「こっちだよ。気に入ってくれると嬉しいな。何しろ君が生まれる前から準備していたからね」
あっさりと言われてちょっと言葉に詰まった。
確かに母親である王妃が妊娠したのだから部屋が準備されるのは当然だろう。
だけど、すり替えられて行方不明になったのだから、部屋は残されてもそのまま放置されていたんじゃないのかしら。
でも私の手を引いて歩く二人を見る限り、そんな事をしそうにはないわね。
長い廊下を歩いていくつもの扉をやり過ごしてようやく二人は立ち止まった。
「ここがアリスの部屋だよ。ちなみに向かいは僕の部屋だからね」
お兄様が合図をすると、扉の前に立っていた侍女が扉を開いて恭しく頭を下げる。
二人に連れられて一歩部屋の中に足を踏み入れれば、そこは気後れするくらい広くて豪華な部屋だった。
天蓋付きベッドは勿論、椅子やテーブル、ソファーなど、家具や調度品は侯爵家とは比べ物にならないくらいだ。
「季節毎に内装を変えたり、流行が変わるとそれを取り入れたり、いつアリスが戻ってきてもいいようにしておいた。クリスティンに似ているだろうから、その雰囲気に合わせるようにと…。こうして部屋の中にいるアリスを見る事が出来て本当に嬉しいよ」
お父様の言葉に胸が熱くなる。
「ドレスも毎年のように仕立てさせておいた。他のご令嬢の平均的なサイズで作らせたが…」
するとお父様の側に立っていた侍従が何やらお父様に耳打ちをした。
「…そうか。では、午後には登城するように伝えてくれ」
お父様の返事を聞くと侍従は部屋から出て行った。
何があったのかしら?
「そのドレスは侯爵夫人が作らせたそうだな。アリスのドレスを作るのならばその仕立て屋を呼んでくれと侯爵夫人から伝言があったそうだ」
既に私のサイズを知っているから、注文がし易いものね。
座って話をしようとソファーに移動したが、お父様は一人掛けのソファーには座らずに、私の隣に腰掛けてきた。
当然、反対側にはお兄様が座っている。
イケオジとイケメンに挟まれて座るなんて、居心地が悪くって仕方がない。
おまけに妙に近いし…。
この距離感って親子じゃ普通なの?
貴族ってあまり異性に馴れ馴れしくしないんじゃ無かった?
親子だから大丈夫なのかしら?
私の心配を他所に二人はニコニコしながら、それぞれ私の手を取ってさすっている。
どう見ても口説かれているようにしか見えないんですけど!
「アリスは向こうの世界では、貴族だったのか?」
そんな言葉がお父様から発せられて思わず「は?」と間抜けた声が出た。
「いえ、私が住んでいた国では身分制度なんてありませんでした」
「身分制度がない? それではどうやって国を運営していたんだ?」
「それぞれの地方から選ばれた人が集まって国を動かしていました」
この世界に当てはめるならば、議員が貴族という立場になるって事かしらね。
「貴族でないならば、アリスは何をしていたんだ? 既に働いていたんだろう?」
お兄様の言葉にカルチャーショックを覚える。
この世界では私の歳ではもう働いているって事かしら?
「私は高校生として学校に通っていました。私の世界では七歳から十五歳まで義務教育として学校に通わなければいけないんです。その後に仕事に就く人も多少はいましたが、ほとんどが高校に通い、更に大学へと進学していました」
私もこの世界に転移しなければ、大学に通うつもりだった。
何より私を育ててくれた両親がそのつもりだったのだ。
捨て子だと知って高校を卒業したら就職するつもりでいたけれど、両親は頑として私を大学へと行かせたがった。
迷ったが、育ててくれた恩を返すのならば、両親の望みどおりに大学に行くべきだろうと考えた。
突然私がいなくなって悲しんでいなければいいな。
「勉強はしていたんだね。この世界の文字は読めたりするのかい?」
「文字はガブリエラさんに教えて頂きました。読む事は出来ますが、書くのはまだしていません」
お兄様は目を細めて私の頭を撫でてくる。
「そうか。色々と教えなければいけない事がありそうだが、先ずはこの王宮での生活に慣れる事が先かな」
「そうだな。先程のお茶の席でもそれなりにマナーが出来ていたようだ。一週間はゆっくりして過ごせばいい」
お兄様に対抗するようにお父様も頭を撫でてくる。
十七年ぶりで嬉しいのはわかるけれど、どうにも二人の愛が重いように感じるのは気の所為じゃ無いみたい。
10
あなたにおすすめの小説
【完結】恋につける薬は、なし
ちよのまつこ
恋愛
異世界の田舎の村に転移して五年、十八歳のエマは王都へ行くことに。
着いた王都は春の大祭前、庶民も参加できる城の催しでの出来事がきっかけで出会った青年貴族にエマはいきなり嫌悪を向けられ…
ご褒美人生~転生した私の溺愛な?日常~
紅子
恋愛
魂の修行を終えた私は、ご褒美に神様から丈夫な身体をもらい最後の転生しました。公爵令嬢に生まれ落ち、素敵な仮婚約者もできました。家族や仮婚約者から溺愛されて、幸せです。ですけど、神様。私、お願いしましたよね?寿命をベッドの上で迎えるような普通の目立たない人生を送りたいと。やりすぎですよ💢神様。
毎週火・金曜日00:00に更新します。→完結済みです。毎日更新に変更します。
R15は、念のため。
自己満足の世界に付き、合わないと感じた方は読むのをお止めください。設定ゆるゆるの思い付き、ご都合主義で書いているため、深い内容ではありません。さらっと読みたい方向けです。矛盾点などあったらごめんなさい(>_<)
しつこい公爵が、わたしを逃がしてくれない
千堂みくま
恋愛
細々と仕事をして生きてきた薬師のノアは、経済的に追い詰められて仕方なく危険な仕事に手を出してしまう。それは因縁の幼なじみ、若き公爵ジオルドに惚れ薬を盛る仕事だった。
失敗して捕らえられたノアに、公爵は「俺の人生を狂わせた女」などと言い、変身魔術がかけられたチョーカーを付けて妙に可愛がる。
ジオルドの指示で王子の友人になったノアは、薬師として成長しようと決意。
公爵から逃げたいノアと、自覚のない思いに悩む公爵の話。
※毎午前中に数話更新します。
異世界育ちの侯爵令嬢と呪いをかけられた完璧王子
冬野月子
恋愛
突然日本から異世界に召喚されたリリヤ。
けれど実は、リリヤはこの世界で生まれた侯爵令嬢で、呪いをかけられ異世界(日本)へ飛ばされていたのだ。
魔力量も多く家柄の良いリリヤは王太子ラウリの婚約者候補となる。
「完璧王子」と呼ばれていたが、リリヤと同じく呪いのせいで魔力と片目の視力を失っていたラウリ。
彼との出会いの印象はあまり良いものではなかった。
【完結】うっかり異世界召喚されましたが騎士様が過保護すぎます!
雨宮羽那
恋愛
いきなり神子様と呼ばれるようになってしまった女子高生×過保護気味な騎士のラブストーリー。
◇◇◇◇
私、立花葵(たちばなあおい)は普通の高校二年生。
元気よく始業式に向かっていたはずなのに、うっかり神様とぶつかってしまったらしく、異世界へ飛ばされてしまいました!
気がつくと神殿にいた私を『神子様』と呼んで出迎えてくれたのは、爽やかなイケメン騎士様!?
元の世界に戻れるまで騎士様が守ってくれることになったけど……。この騎士様、過保護すぎます!
だけどこの騎士様、何やら秘密があるようで――。
◇◇◇◇
※過去に同名タイトルで途中まで連載していましたが、連載再開にあたり設定に大幅変更があったため、加筆どころか書き直してます。
※アルファポリス先行公開。
※表紙はAIにより作成したものです。
有能女官の赴任先は辺境伯領
たぬきち25番
恋愛
お気に入り1000ありがとうございます!!
お礼SS追加決定のため終了取下げいたします。
皆様、お気に入り登録ありがとうございました。
現在、お礼SSの準備中です。少々お待ちください。
辺境伯領の当主が他界。代わりに領主になったのは元騎士団の隊長ギルベルト(26)
ずっと騎士団に在籍して領のことなど右も左もわからない。
そのため新しい辺境伯様は帳簿も書類も不備ばかり。しかも辺境伯領は王国の端なので修正も大変。
そこで仕事を終わらせるために、腕っぷしに定評のあるギリギリ貴族の男爵出身の女官ライラ(18)が辺境伯領に出向くことになった。
だがそこでライラを待っていたのは、元騎士とは思えないほどつかみどころのない辺境伯様と、前辺境伯夫妻の忘れ形見の3人のこどもたち(14歳男子、9歳男子、6歳女子)だった。
仕事のわからない辺境伯を助けながら、こどもたちの生活を助けたり、魔物を倒したり!?
そしていつしか、ライラと辺境伯やこどもたちとの関係が変わっていく……
※お待たせしました。
※他サイト様にも掲載中
【完結】愛を知らない伯爵令嬢は執着激重王太子の愛を一身に受ける。
扇 レンナ
恋愛
スパダリ系執着王太子×愛を知らない純情令嬢――婚約破棄から始まる、極上の恋
伯爵令嬢テレジアは小さな頃から両親に《次期公爵閣下の婚約者》という価値しか見出してもらえなかった。
それでもその利用価値に縋っていたテレジアだが、努力も虚しく婚約破棄を突きつけられる。
途方に暮れるテレジアを助けたのは、留学中だったはずの王太子ラインヴァルト。彼は何故かテレジアに「好きだ」と告げて、熱烈に愛してくれる。
その真意が、テレジアにはわからなくて……。
*hotランキング 最高68位ありがとうございます♡
▼掲載先→ベリーズカフェ、エブリスタ、アルファポリス
【完結】竜王の息子のお世話係なのですが、気付いたら正妻候補になっていました
七鳳
恋愛
竜王が治める王国で、落ちこぼれのエルフである主人公は、次代の竜王となる王子の乳母として仕えることになる。わがままで甘えん坊な彼に振り回されながらも、成長を見守る日々。しかし、王族の結婚制度が明かされるにつれ、彼女の立場は次第に変化していく。
「お前は俺のものだろ?」
次第に強まる独占欲、そして彼の真意に気づいたとき、主人公の運命は大きく動き出す。異種族の壁を超えたロマンスが紡ぐ、ほのぼのファンタジー!
※恋愛系、女主人公で書くのが初めてです。変な表現などがあったらコメント、感想で教えてください。
※全60話程度で完結の予定です。
※いいね&お気に入り登録励みになります!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる