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26 グレンダとの邂逅
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翌日も午後から王宮の中をセアラに案内してもらっていた。
…それにしても広すぎる。
某ランドと同じくらいの敷地面積がありそうだわ。
建物もこの王宮とは別にあちこちに点在するように建っている。
セアラの説明によると、厩舎や騎士団、魔術師団の宿舎や武器庫、倉庫など様々な物が建っているそうだ。
きっと私が足を踏み入れてはいけないような所もあるんでしょうね。
王宮の公的なエリアでは様々な人達とすれ違ったが、皆私の噂を聞いているようで私の姿を見ると立ち止まってお辞儀をしてくる。
ただ向こうから声をかけて来ることはない。
セアラに言わせると私が声をかけない限り、向こうから話しかけて来る事はないそうだ。
見知った人ならいざ知らず、初めて顔を合わせる人に声をかけるなんて、とても出来そうにない。
だけど、白いロープ姿の女性を見た時には思わず立ち止まってしまった。
…何だろう?
彼女の周りに黒いモヤのようなものが見える?
それが気になって思わず立ち止まってしまった。
「こんにちは。宮廷魔術師の方ですか?」
まさか話しかけられると思っていなかったようで、彼女はハッと顔を上げたが、軽く口元を緩めた。
「左様でございます。アリス王女でいらっしゃいますね。昨日から貴方様の噂で持ちきりですわ」
その笑みに何処か毒を含んでいるような印象を受けて私は少したじろいだ。
「そうなんですね。お名前を伺ってもよろしいですか?」
すると彼女は更に意味ありげな微笑みを私に向けてくる。
「まあ、私としたことが失礼いたしました。宮廷魔術師のグレンダと申します」
…この人がグレンダさん…
ウエーブのかかった真っ赤な髪を長く伸ばして目鼻立ちのはっきりした顔をしている。
だけど彼女の黒い瞳がまるでブラックホールのようで、その中に吸い込まれそうな気がした私は人知れず身を震わせる。
それでは、とその場を辞そうとすると、後ろから誰かの足音が聞こえた。
「グレンダ、ここにいたのか。探したぞ」
…この声は。
振り向くとエイブラムさんがにこやかな笑みを浮かべてこちらに近付いてくる。
今日は会えるかどうかわからなかったので、こうして顔を見れただけでも嬉しい。
嬉しくて顔をほころばせた私はエイブラムさんに声をかけようとした。
だが、エイブラムさんは私には目もくれずにグレンダさんの側に立った。
「グレンダ。明日の合同演習についての打ち合わせなんだが…」
「あら、エイブラム。アリス王女がいらっしゃるのよ。ご挨拶したら?」
グレンダさんに言われて、ようやく側に私がいることに気が付いたようだ。
「あ、アリス様。大変失礼いたしました。グレンダに用があるのでお借りしてもよろしいですか?」
そもそも私はグレンダさんに用があったわけではない。
それに仕事の話をするのに駄目だと言えるわけもない。
「勿論、構いませんわ」
「ありがとうございます、それでは失礼いたします」
エイブラムさんとグレンダさんは揃って私に会釈をすると、並んで歩き出した。
なんとなく二人の後ろ姿を見送っていると、不意にグレンダさんが振り返った。
そして私をあざ笑うかのような勝ち誇った笑みを向けてくる。
まるで私の恋心を見透かされたようでカッと頬が熱くなる。
それなのにセアラはグレンダの表情を見ても何も言わない。
普通、仕えている主人があんな目を向けられたら怒るか文句を言うと思うんだけれど、セアラは何も見ていないかのように振る舞っている。
どうしてセアラは何も言わないのかしら?
他の人が私を軽んじたような発言をすると「陛下にお伝えしますよ」と、ピシャリと牽制するのに…。
まさか、あの顔が見えていないかのような反応に私は思わずセアラに声をかけた。
「今、グレンダさんがこっちを見たでしょ?」
「は? いえ、振り返られずに行かれましたが…」
…え?
確かに今、グレンダさんは振り返って私を見たのに、セアラはそんな事実は無いと告げる。
一体どうなっているの?
モヤモヤとした気分を抱えながら私はセアラを伴って王宮の中を歩いて行った。
…それにしても広すぎる。
某ランドと同じくらいの敷地面積がありそうだわ。
建物もこの王宮とは別にあちこちに点在するように建っている。
セアラの説明によると、厩舎や騎士団、魔術師団の宿舎や武器庫、倉庫など様々な物が建っているそうだ。
きっと私が足を踏み入れてはいけないような所もあるんでしょうね。
王宮の公的なエリアでは様々な人達とすれ違ったが、皆私の噂を聞いているようで私の姿を見ると立ち止まってお辞儀をしてくる。
ただ向こうから声をかけて来ることはない。
セアラに言わせると私が声をかけない限り、向こうから話しかけて来る事はないそうだ。
見知った人ならいざ知らず、初めて顔を合わせる人に声をかけるなんて、とても出来そうにない。
だけど、白いロープ姿の女性を見た時には思わず立ち止まってしまった。
…何だろう?
彼女の周りに黒いモヤのようなものが見える?
それが気になって思わず立ち止まってしまった。
「こんにちは。宮廷魔術師の方ですか?」
まさか話しかけられると思っていなかったようで、彼女はハッと顔を上げたが、軽く口元を緩めた。
「左様でございます。アリス王女でいらっしゃいますね。昨日から貴方様の噂で持ちきりですわ」
その笑みに何処か毒を含んでいるような印象を受けて私は少したじろいだ。
「そうなんですね。お名前を伺ってもよろしいですか?」
すると彼女は更に意味ありげな微笑みを私に向けてくる。
「まあ、私としたことが失礼いたしました。宮廷魔術師のグレンダと申します」
…この人がグレンダさん…
ウエーブのかかった真っ赤な髪を長く伸ばして目鼻立ちのはっきりした顔をしている。
だけど彼女の黒い瞳がまるでブラックホールのようで、その中に吸い込まれそうな気がした私は人知れず身を震わせる。
それでは、とその場を辞そうとすると、後ろから誰かの足音が聞こえた。
「グレンダ、ここにいたのか。探したぞ」
…この声は。
振り向くとエイブラムさんがにこやかな笑みを浮かべてこちらに近付いてくる。
今日は会えるかどうかわからなかったので、こうして顔を見れただけでも嬉しい。
嬉しくて顔をほころばせた私はエイブラムさんに声をかけようとした。
だが、エイブラムさんは私には目もくれずにグレンダさんの側に立った。
「グレンダ。明日の合同演習についての打ち合わせなんだが…」
「あら、エイブラム。アリス王女がいらっしゃるのよ。ご挨拶したら?」
グレンダさんに言われて、ようやく側に私がいることに気が付いたようだ。
「あ、アリス様。大変失礼いたしました。グレンダに用があるのでお借りしてもよろしいですか?」
そもそも私はグレンダさんに用があったわけではない。
それに仕事の話をするのに駄目だと言えるわけもない。
「勿論、構いませんわ」
「ありがとうございます、それでは失礼いたします」
エイブラムさんとグレンダさんは揃って私に会釈をすると、並んで歩き出した。
なんとなく二人の後ろ姿を見送っていると、不意にグレンダさんが振り返った。
そして私をあざ笑うかのような勝ち誇った笑みを向けてくる。
まるで私の恋心を見透かされたようでカッと頬が熱くなる。
それなのにセアラはグレンダの表情を見ても何も言わない。
普通、仕えている主人があんな目を向けられたら怒るか文句を言うと思うんだけれど、セアラは何も見ていないかのように振る舞っている。
どうしてセアラは何も言わないのかしら?
他の人が私を軽んじたような発言をすると「陛下にお伝えしますよ」と、ピシャリと牽制するのに…。
まさか、あの顔が見えていないかのような反応に私は思わずセアラに声をかけた。
「今、グレンダさんがこっちを見たでしょ?」
「は? いえ、振り返られずに行かれましたが…」
…え?
確かに今、グレンダさんは振り返って私を見たのに、セアラはそんな事実は無いと告げる。
一体どうなっているの?
モヤモヤとした気分を抱えながら私はセアラを伴って王宮の中を歩いて行った。
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