【完結】異世界転移したら騎士団長と相思相愛になりました〜私の恋を父と兄が邪魔してくる〜

伽羅

文字の大きさ
27 / 52

27 舞踏会

しおりを挟む
 私がこの世界に転移してから早くも一ヶ月が過ぎた。

 あれから王宮での生活にも慣れ、貴族社会の常識を学び、ダンスやマナーも身に着けた。

 そして、今日は国内の主だった貴族を招いての舞踏会が開かれる。

 そう、つまり私のお披露目である。

 私の事は生まれてすぐに病弱のため、王都の外れで静養していたという事になっている。

 私と入れ替えられたアリシアが生きていれば、私の代わりをさせるつもりだったが、アリシアは虚弱で長くは生きられないとわかっていたからだ。

 実際にアリシアは一歳を迎える前に亡くなった。

 彼女のお墓は王都にある平民の墓地に埋葬された。

 私はお忍びでお兄様に連れられてアリシアのお墓参りに行ってきた。

 小さな墓石に『アリシア』と刻まれ、周りを花で埋め尽くされていた。

 この花は魔法で一年中枯れないようになっているそうだ。

 私達が入れ替えられずにアリシアが健康で、私が異世界に飛ばされなかったら、きっと仲の良い友達になれたかもしれない。

 
 舞踏会の夜、私は大広間に続く扉の前に立っていた。

 既に大広間には大勢の貴族達で埋め尽くされている。

 さっき、うっかり大広間の様子を覗いたのは大きな間違いだったわ。

 まさかあんなに集まっているとは思わなかったのよ。

 そのため、今にも心臓が口から飛び出しそうな勢いでドキドキドキ脈打っている。

「アリス、大丈夫かい? 顔が引き攣っているよ」

 隣に立つお兄様が心配そうに私の顔を覗き込む。

「だ、大丈夫よ。これくらい耐えてみせるわ」

 声が震えているのは気の所為よ。

 やがてお父様が先に大広間へと入場していった。

 次は私とお兄様が呼ばれる番だわ。

「続いてアンドリュー王子様、アリス王女様」

 名前が呼ばれてサッと扉が開かれる。

 お兄様にエスコートされて私は大広間の中へと足を踏み入れた。

「「「おおっ!」」」

 という歓声と共に

「王妃様によく似ていらっしゃるわ」

「お元気そうで安心したわ」 

 などと言う声が私の耳に届く。

 ご令嬢達の鋭い視線は、お兄様にエスコートされている私への牽制かしらね。

 まだ、誰とも婚約していないのだから、私達がペアを組むのは当然だと思うのよね。

 大広間の壇上に上がり、お父様の横に並べられた椅子に腰掛ける。

 皆が静まり返ったのを見計らってお父様が立ち上がった。

「本日はよく集まってくれた。既に聞き及んでいるかもしれないが、長らく静養していたアリスがようやく健康を取り戻してくれた。亡き王妃も喜んでいるだろう。アリス、皆さんにご挨拶しなさい」 

 お父様に促されて私は立ち上がると、一歩前に進み出てお辞儀をした。

「本日はようこそおいでくださいました。こうして元気になれて皆様にお会いできて大変嬉しく思います。どうかよろしくお願いいたします」

 割れんばかりの拍手が大広間に響き渡る。

 とりあえず第一関門突破ね。

 ホッとする間もなくダンスの時間がやってくる。

 最初は主催である王族が踊るのだが、打ち合わせでは私とお兄様が踊る事になっていた。

 しかし…。

 何故か私の手を取って、お父様とお兄様が睨み合っている。

「父上。私とアリスが踊る事になっていたはずですが?」

「何を言う! ここは当然、私と踊るに決まっているだろう」

 …恥ずかしいから止めてもらいたいものだわ。

 いつもはお父様を諌める宰相も、今日は我関せずを決め込んでいる。

 そうなるとこの場を収めるのは私しかいないだろう。

 ここはやはりお父様の顔を立てておくべきだろう。

「お兄様。申し訳ありませんが、先にお父様と踊ります。その後はお兄様と踊りますわ。よろしいでしょう?」

 ニコリと微笑むと、お兄様は渋々とお父様にダンスの権利を譲った。

 大広間にいる貴族達の目が、生暖かいものになっている。

 誰か!

 お兄様にお嫁さんを紹介して!
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【完結】恋につける薬は、なし

ちよのまつこ
恋愛
異世界の田舎の村に転移して五年、十八歳のエマは王都へ行くことに。 着いた王都は春の大祭前、庶民も参加できる城の催しでの出来事がきっかけで出会った青年貴族にエマはいきなり嫌悪を向けられ…

しつこい公爵が、わたしを逃がしてくれない

千堂みくま
恋愛
細々と仕事をして生きてきた薬師のノアは、経済的に追い詰められて仕方なく危険な仕事に手を出してしまう。それは因縁の幼なじみ、若き公爵ジオルドに惚れ薬を盛る仕事だった。 失敗して捕らえられたノアに、公爵は「俺の人生を狂わせた女」などと言い、変身魔術がかけられたチョーカーを付けて妙に可愛がる。 ジオルドの指示で王子の友人になったノアは、薬師として成長しようと決意。 公爵から逃げたいノアと、自覚のない思いに悩む公爵の話。 ※毎午前中に数話更新します。

【完結】うっかり異世界召喚されましたが騎士様が過保護すぎます!

雨宮羽那
恋愛
 いきなり神子様と呼ばれるようになってしまった女子高生×過保護気味な騎士のラブストーリー。 ◇◇◇◇  私、立花葵(たちばなあおい)は普通の高校二年生。  元気よく始業式に向かっていたはずなのに、うっかり神様とぶつかってしまったらしく、異世界へ飛ばされてしまいました!  気がつくと神殿にいた私を『神子様』と呼んで出迎えてくれたのは、爽やかなイケメン騎士様!?  元の世界に戻れるまで騎士様が守ってくれることになったけど……。この騎士様、過保護すぎます!  だけどこの騎士様、何やら秘密があるようで――。 ◇◇◇◇ ※過去に同名タイトルで途中まで連載していましたが、連載再開にあたり設定に大幅変更があったため、加筆どころか書き直してます。 ※アルファポリス先行公開。 ※表紙はAIにより作成したものです。

ご褒美人生~転生した私の溺愛な?日常~

紅子
恋愛
魂の修行を終えた私は、ご褒美に神様から丈夫な身体をもらい最後の転生しました。公爵令嬢に生まれ落ち、素敵な仮婚約者もできました。家族や仮婚約者から溺愛されて、幸せです。ですけど、神様。私、お願いしましたよね?寿命をベッドの上で迎えるような普通の目立たない人生を送りたいと。やりすぎですよ💢神様。 毎週火・金曜日00:00に更新します。→完結済みです。毎日更新に変更します。 R15は、念のため。 自己満足の世界に付き、合わないと感じた方は読むのをお止めください。設定ゆるゆるの思い付き、ご都合主義で書いているため、深い内容ではありません。さらっと読みたい方向けです。矛盾点などあったらごめんなさい(>_<)

【完結】転生したらラスボスの毒継母でした!

白雨 音
恋愛
妹シャルリーヌに裕福な辺境伯から結婚の打診があったと知り、アマンディーヌはシャルリーヌと入れ替わろうと画策する。 辺境伯からは「息子の為の白い結婚、いずれ解消する」と宣言されるが、アマンディーヌにとっても都合が良かった。「辺境伯の財で派手に遊び暮らせるなんて最高!」義理の息子など放置して遊び歩く気満々だったが、義理の息子に会った瞬間、卒倒した。 夢の中、前世で読んだ小説を思い出し、義理の息子は将来世界を破滅させようとするラスボスで、自分はその一因を作った毒継母だと知った。破滅もだが、何より自分の死の回避の為に、義理の息子を真っ当な人間に育てようと誓ったアマンディーヌの奮闘☆  異世界転生、家族愛、恋愛☆ 短めの長編(全二十一話です) 《完結しました》 お読み下さり、お気に入り、エール、いいね、ありがとうございます☆ 

酒飲み聖女は気だるげな騎士団長に秘密を握られています〜完璧じゃなくても愛してるって正気ですか!?〜

鳥花風星
恋愛
太陽の光に当たって透けるような銀髪、紫水晶のような美しい瞳、均整の取れた体つき、女性なら誰もが羨むような見た目でうっとりするほどの完璧な聖女。この国の聖女は、清楚で見た目も中身も美しく、誰もが羨む存在でなければいけない。聖女リリアは、ずっとみんなの理想の「聖女様」でいることに専念してきた。 そんな完璧な聖女であるリリアには誰にも知られてはいけない秘密があった。その秘密は完璧に隠し通され、絶対に誰にも知られないはずだった。だが、そんなある日、騎士団長のセルにその秘密を知られてしまう。 秘密がばれてしまったら、完璧な聖女としての立場が危うく、国民もがっかりさせてしまう。秘密をばらさないようにとセルに懇願するリリアだが、セルは秘密をばらされたくなければ婚約してほしいと言ってきた。 一途な騎士団長といつの間にか逃げられなくなっていた聖女のラブストーリー。 ◇氷雨そら様主催「愛が重いヒーロー企画」参加作品です。

過労薬師です。冷酷無慈悲と噂の騎士様に心配されるようになりました。

黒猫とと
恋愛
王都西区で薬師として働くソフィアは毎日大忙し。かかりつけ薬師として常備薬の準備や急患の対応をたった1人でこなしている。 明るく振舞っているが、完全なるブラック企業と化している。 そんな過労薬師の元には冷徹無慈悲と噂の騎士様が差し入れを持って訪ねてくる。 ………何でこんな事になったっけ?

【完結】愛を知らない伯爵令嬢は執着激重王太子の愛を一身に受ける。

扇 レンナ
恋愛
スパダリ系執着王太子×愛を知らない純情令嬢――婚約破棄から始まる、極上の恋 伯爵令嬢テレジアは小さな頃から両親に《次期公爵閣下の婚約者》という価値しか見出してもらえなかった。 それでもその利用価値に縋っていたテレジアだが、努力も虚しく婚約破棄を突きつけられる。 途方に暮れるテレジアを助けたのは、留学中だったはずの王太子ラインヴァルト。彼は何故かテレジアに「好きだ」と告げて、熱烈に愛してくれる。 その真意が、テレジアにはわからなくて……。 *hotランキング 最高68位ありがとうございます♡ ▼掲載先→ベリーズカフェ、エブリスタ、アルファポリス

処理中です...