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28 妹の帰還(アンドリュー視点)
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幼馴染であるエイブラムが女性を保護したという話はすぐに私の耳に届いた。
幼い頃から女性に言い寄られ過ぎて、女嫌いだと噂の彼にしては珍しい事だと思った。
女嫌いと噂をされながら、最近は魔術師の女性に入れあげているとも聞いているが、流石にその彼女との婚姻は難しいだろう。
その魔術師の女性は平民出身だと聞いているから、次期侯爵のエイブラムとは身分差がある。
それでも、どうしても結婚したければ色々と抜け道は有るわけで、エイブラムが泣きついて来たら考えてやらなくもないと思っている。
そんなエイブラムが別の女性を保護するとは…。
だが、貴族女性が人攫いに攫われたとは聞いていないから、その女性も恐らく平民なのだろう。
まったく、あいつは何をやっているんだか…。
翌日、報告に来たエイブラムをからかうと案の定、私の事に飛び火してきた。
母上の事に触れてエイブラムは謝罪してきたが、そんな事で咎めたりはしない。
だが、実際に母上の事で結婚に踏み切れないのは事実だ。
母上は息子の私から見ても理想の女性だった。
私が生まれた後、中々次の子供に恵まれない事に心を痛めていたのを知っている。
周りの貴族達も母上のいない所で噂をしていたから、尚更母上が気の毒で仕方がなかった。
そんな折、ようやく二人目を授かった事で、生き生きとしてきた母上に私もようやく安堵したものだった。
歳が離れているから余計に弟か妹が生まれて来るのを心待ちにしていた。
それなのに…。
母上が産気づいたと聞いて駆け付けた時には既に母上の息は無かった。
つい先日、侯爵夫人とエイブラムと共に顔を見に行った時は、ニコニコと出迎えてくれた母上が、青褪めた顔で目を閉じて横たわっていた。
その傍らのベッドには生まれたばかりの妹が、母上の死も知らずにすやすやと眠っていた。
母上によく似た顔立ちの妹を、母上の分まで可愛がってやろうと誓ったのに、それが妹と会った最初で最後の事だった。
母上の死のドサクサに紛れて妹は別人にすり替えられていた。
父上はすぐさま逃げた女を探したが、その女も死体で見つかり、妹の行方はわからないままだった。
おまけにすり替えられた赤子は健康状態が悪く、長くは持たないと告げられた。
父上は妹の事は世間に隠して、病弱だと告げて療養に行った事にした。
残された赤ん坊はアイリスと名付けて王宮の一角で面倒を見ていた。
実の妹ではない事で複雑な思いもしたが、アイリスには罪はない。
連れ去られた妹の代わりとはいえ、それなりに愛情は注いだつもりだ。
虚弱ではあったが、よく笑う可愛い赤ん坊だった。
その笑顔で妹がいない空虚な私の心を埋めてくれた。
それなのにそのアイリスも一歳を迎える前に亡くなった。
父上は国内の孤児院を片端から調べたが、妹は何処にも見つからなかった。
それから十七年。
エイブラムの母親の侯爵夫人が私と父上に面会を申し出てきた。
場を設けて謁見室に向かうと、侯爵夫人は満面の笑みで「会わせたい人がいる」と告げた。
「どちらかの結婚相手でも連れてきたのか」と問えば、背後から一人の女性を私の方へと押しやる。
顔を上げた彼女を見た途端、私は息を呑んだ。
母上!?
そこには生前の姿とまったく同じ女性の姿があった。
ただ一点、母上とは違う瞳の色。
だが、それはまさしく父上と同じ瞳の色だった。
どれほどこの時を待ちわびた事か。
だが私も父上も妹のアリスは国内の何処かにいたのだと思っていたが、アリスは自分は異世界から来たという。
まさか、そんな話があるのか?
半信半疑の私と違って父上には心当たりがあるようだ。
調査を始めてしばらくして、アイリスを産んだ女性がとある魔術師と親しかったらしい事を突き止めた。
だが、その魔術師の名前を聞いて私は驚愕した。
それはエイブラムが気にかけているグレンダの父親の名前だった。
まさか、グレンダの父親がアリスを異世界に送ったのだろうか?
もし、そうならば父親はおろかグレンダまでも何らかの処罰が下るかもしれない。
さて、私はこの事実をエイブラムに告げるべきだろうか?
幼い頃から女性に言い寄られ過ぎて、女嫌いだと噂の彼にしては珍しい事だと思った。
女嫌いと噂をされながら、最近は魔術師の女性に入れあげているとも聞いているが、流石にその彼女との婚姻は難しいだろう。
その魔術師の女性は平民出身だと聞いているから、次期侯爵のエイブラムとは身分差がある。
それでも、どうしても結婚したければ色々と抜け道は有るわけで、エイブラムが泣きついて来たら考えてやらなくもないと思っている。
そんなエイブラムが別の女性を保護するとは…。
だが、貴族女性が人攫いに攫われたとは聞いていないから、その女性も恐らく平民なのだろう。
まったく、あいつは何をやっているんだか…。
翌日、報告に来たエイブラムをからかうと案の定、私の事に飛び火してきた。
母上の事に触れてエイブラムは謝罪してきたが、そんな事で咎めたりはしない。
だが、実際に母上の事で結婚に踏み切れないのは事実だ。
母上は息子の私から見ても理想の女性だった。
私が生まれた後、中々次の子供に恵まれない事に心を痛めていたのを知っている。
周りの貴族達も母上のいない所で噂をしていたから、尚更母上が気の毒で仕方がなかった。
そんな折、ようやく二人目を授かった事で、生き生きとしてきた母上に私もようやく安堵したものだった。
歳が離れているから余計に弟か妹が生まれて来るのを心待ちにしていた。
それなのに…。
母上が産気づいたと聞いて駆け付けた時には既に母上の息は無かった。
つい先日、侯爵夫人とエイブラムと共に顔を見に行った時は、ニコニコと出迎えてくれた母上が、青褪めた顔で目を閉じて横たわっていた。
その傍らのベッドには生まれたばかりの妹が、母上の死も知らずにすやすやと眠っていた。
母上によく似た顔立ちの妹を、母上の分まで可愛がってやろうと誓ったのに、それが妹と会った最初で最後の事だった。
母上の死のドサクサに紛れて妹は別人にすり替えられていた。
父上はすぐさま逃げた女を探したが、その女も死体で見つかり、妹の行方はわからないままだった。
おまけにすり替えられた赤子は健康状態が悪く、長くは持たないと告げられた。
父上は妹の事は世間に隠して、病弱だと告げて療養に行った事にした。
残された赤ん坊はアイリスと名付けて王宮の一角で面倒を見ていた。
実の妹ではない事で複雑な思いもしたが、アイリスには罪はない。
連れ去られた妹の代わりとはいえ、それなりに愛情は注いだつもりだ。
虚弱ではあったが、よく笑う可愛い赤ん坊だった。
その笑顔で妹がいない空虚な私の心を埋めてくれた。
それなのにそのアイリスも一歳を迎える前に亡くなった。
父上は国内の孤児院を片端から調べたが、妹は何処にも見つからなかった。
それから十七年。
エイブラムの母親の侯爵夫人が私と父上に面会を申し出てきた。
場を設けて謁見室に向かうと、侯爵夫人は満面の笑みで「会わせたい人がいる」と告げた。
「どちらかの結婚相手でも連れてきたのか」と問えば、背後から一人の女性を私の方へと押しやる。
顔を上げた彼女を見た途端、私は息を呑んだ。
母上!?
そこには生前の姿とまったく同じ女性の姿があった。
ただ一点、母上とは違う瞳の色。
だが、それはまさしく父上と同じ瞳の色だった。
どれほどこの時を待ちわびた事か。
だが私も父上も妹のアリスは国内の何処かにいたのだと思っていたが、アリスは自分は異世界から来たという。
まさか、そんな話があるのか?
半信半疑の私と違って父上には心当たりがあるようだ。
調査を始めてしばらくして、アイリスを産んだ女性がとある魔術師と親しかったらしい事を突き止めた。
だが、その魔術師の名前を聞いて私は驚愕した。
それはエイブラムが気にかけているグレンダの父親の名前だった。
まさか、グレンダの父親がアリスを異世界に送ったのだろうか?
もし、そうならば父親はおろかグレンダまでも何らかの処罰が下るかもしれない。
さて、私はこの事実をエイブラムに告げるべきだろうか?
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