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第1章
第29話 別れ
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「なぁ? 本当に小人族の村がこん中にあんのか?」
「あぁ! 間違いないぞ!」
カマキリ討伐を済ませ、限たちはヴェールデ王国に入った。
研究所でたまたま助けることになった小人族のゼータを送り届けるために、ヴェールデ王国の南東に位置する森に入り霧に包まれた中を進むことになった。
しかし、霧が濃いために、道が合っているのか限たちにはいまいち分からない。
魔力を広げての探知もおこなって見ようかと思ったのだが、どういう訳か魔力を乱されているような感覚に陥り、自分たち周辺のことしか確認できないでいた。
そのせいもあってか、迷っているのではないかと不安になってきた限が尋ねると、ゼータはいつもと変わらない笑顔で答えを返してきた。
「本当かよ……」
霧のせいで視界も悪いため、まっすぐ進んでいるかも怪しいのに、平気そうな顔をしているゼータを疑いたくなってくる。
しかし、小人族があまり人目に触れないようにしているのは、この特殊な霧によるものなのかもしれない。
そう思うようにして、限は小さく愚痴りつつも霧の中を進んで行ったのだった。
「ゼータ!!」
「おぉ! ゼータ!!」
「じいちゃん!! おじちゃん!!」
ゼータの案内に従って30分以上進んで行っていると、ようやく霧が晴れてきた。
そして、完全に霧が晴れて限たちの目に入って来たのは、小さな家が建ち並ぶ村のようなものが広がっていた。
どうやら限たちのことを待ち受けていたらしく、老人と中年の見た目をした小人が、ゼータの姿を見るなり目を潤ませながら近付いてきた。
彼らを見たゼータもアルバの背から降り、すぐさま駆け出していった。
その反応を見る限り、どうやらゼータの身内のようだ。
「全く!! あれほど外に出るなといったじゃろうが!!」
「ごめん! ごめんなさい!」
やっと故郷に戻れ、もう会えないと思っていた身内に会えたことが嬉しかったのか、ゼータは涙を流して2人に謝っていた。
「良かったですね。ゼータちゃん……」
「ワフッ……」
種族は違うが、同じ性別の女性という思いがあるのか、旅の間ずっと仲の良かったレラは、うれし泣きしているゼータを見てもらい泣きしていた。
移動用の足代わりに使われていたアルバも、安心したように一息ついた。
「孫が世話になったようで済まなかったのう……」
「いや、気にしないでくれ。旅行気分も味わえて楽しかったからな……」
少しの間喜びあっていたゼータたちだが、限たちのことをずっとそのままにしておく訳にはいかないと気付いたのか、ゼータの祖父らしき老人がひとまず再会の喜びを終えて感謝の言葉をかけてきた。
しかし、暗闇の地下生活が長かったこともあり、限が言うようにここまでの道のりを結構楽しんでいた。
ゼータを送り届けるという理由でもない限り、ずっと殺伐とした復讐へ突き進んでいたかもしれない。
それでも、研究員たちだけなら死滅させることができただろうが、敷島の連中を相手にしていたら返り討ちに遭っていたかもしれない。
冷静に考える時間ができたことで、順序立てて復讐を果たすことができそうだ。
「それにしても、よく人族の俺たちを迎えてくれたな。敵だとは思わなかったのか?」
村に入ったといっても、限たちが小人たちの家の中に入れるわけもないので、外で茶を出されたりと歓迎されたのだが、そもそも人族を入れて大丈夫なのだろうか。
小人族が人入れず過ごしているのは、ゼータのように捕まえられて見世物にされたり研究材料にされたりする可能性があるからだ。
ゼータが一緒にいたからと言って、もしかしたらゼータに案内させて、小人たちを捕まえに来たと考えることも出来る。
そのため、限は彼らが少し不用心に思えた。
「大丈夫だ! ここに来るまでの霧は害意のある物はいくら進んでも村にはたどり着けないようになっている」
「へぇ~、面白い仕組みだな……」
ゼータの伯父の話によると、この小人の村は特別な魔道具で守られているそうだ。
小人族に害意のある者が、いくら捕まえた小人に案内させたからと言って、ここにたどり着けないようになっているらしい。
限が魔力を広げての探知ができなかったのも、その魔道具によって防がれていたかららしい。
もしも敷島の連中を相手にする時に使えるならと思い見せてもらったが、小人族の魔力にしか反応しないらしく、しかも同じ魔道具の製造法が分からないということなので、残念だが手に入れるのは諦めるしかなかった。
「じゃあ、俺たちは行かせてもらおう」
「もう出て行くのかのう……」
村には一泊だけさせてもらい、限たちは出て行くことにした。
とは言っても、先に述べたように家に入れるわけがないので、野宿用のテントを張って寝ただけだ。
ゼータを救って連れて来てくれたことを感謝され、宴を開いてもらえたのは嬉しかったが、出される料理や酒も小さく、結局はレラに調理してもらうことになった。
アルバは子供の小人に人気があり、背中に何人も乗せて走り回っていた。
村の小人たちが喜んでくれていたので、なかなか気分のいい時間だった。
恩人をもてなすことができたとは言い難い思いがあり、ゼータの祖父は若干残念そうな表情で話しかけてきた。
「ここは空気も良くて気分がいいが、人族の俺たちには如何せん小さいからな」
「ガハハ! それもそうだな」
限の軽口に、ゼータの伯父が豪快に笑う。
どうやらゼータが男っぽい喋り方になったのは男所帯で育ったかららしい。
ゼータの両親が病気で亡くなって、この伯父に面倒を見てもらっていたせいと言うのが正しいかもしれない。
「そう言えば、限たちは研究員たちの行き先を探しているんだったな。じいちゃんならもしかしたら分かるかもしれないぞ! じいちゃんの占いは結構当たるんだ!」
「何っ!? 本当か? 占ってもらえるか?」
「それぐらい構わんぞい」
ゼータの話によると、彼女の祖父は村の占い師をしているらしい。
敷島の連中より先に、研究員たちへの復讐を先に済ませるつもりだが、ここまでの道のりでギルドからは何の情報も入ってこなかった。
通って来ていない国に恐らくいるのだろう。
ある程度予想はしているが、念のため占ってもらうことにした。
恩人の役に立てるならとゼータの祖父も快く引き受けてくれた。
「…………う~む、北西のここら辺を示しておる」
「ここら辺て言うとソーリオか、ラクトって所か……」
占えるといっても詳細な場所までは無理らしいが、ゼータの祖父が指し示した範囲はソーリオ王国の北からラクト帝国の南の当たりだった。
どちらかというとラクト帝国の方が確率的には高いように思える。
「ありがとよじいさん! ゼータ、もう勝手にここから出るなよ!」
「お世話になりました。バイバイ、ゼータちゃん!」
「ワウッ!」
「これまでありがとな! 限! レラ! アルバ! 元気でいろよ!」
目的地となる場所は決まったため、限たちは今度こそ小人族の村から出て行くことにした。
限、レラ、アルバの順でゼータに最後の別れを告げ、ゼータが笑顔で返してきた。
「じゃあな!」
短い付き合いではあったが、救ってもらえた感謝と別れが辛いのか、ゼータは笑顔のまま涙があふれて来ていた。
時間をかけてゼータの笑顔が崩れてしまう前に、限たちは森の外へ向かうためにまた濃い霧の中へ姿を消していったのだった。
「さて……これから研究所の連中へ報復を開始しようと思っているが、レラも付いてくる気か?」
「はい! 私の命は限様の者です! 死ぬまでずっと付いて行きます! それに、私も奴らに苦しめられたお返しをしたいですので!」
「ワウッ!!」
来た時と同じように30分以上霧の中を進み、限たちは森の外へと出ることができた。
ゼータの祖父の占いを信じ、限は研究員たちを死滅するために北西へ向かうつもりだ。
しかし、初戦これは自分の復讐であって、レラが付き合う必要はない。
そう思って問いかけたのだが、重い女は健在らしく、付いてくる気満々のようだ。
アルバも、自分も付いて行くと言うかのように声をあげた。
「そうか……。よしっ! じゃあ行くか……」
「はいっ!」「ワウッ!」
付いてくるなら止めるつもりもない。
彼女たちも研究所の実験で死ぬ思いを何度も味わわされたのだから、その苦しみを返したいと思うのも当然だ。
暗闇の地下生活から抜け出した喜びを味わうのはここまでにして、限たちは自分たちを苦しめた研究員たちへの復讐を果たしに向かうことにしたのだった。
「あぁ! 間違いないぞ!」
カマキリ討伐を済ませ、限たちはヴェールデ王国に入った。
研究所でたまたま助けることになった小人族のゼータを送り届けるために、ヴェールデ王国の南東に位置する森に入り霧に包まれた中を進むことになった。
しかし、霧が濃いために、道が合っているのか限たちにはいまいち分からない。
魔力を広げての探知もおこなって見ようかと思ったのだが、どういう訳か魔力を乱されているような感覚に陥り、自分たち周辺のことしか確認できないでいた。
そのせいもあってか、迷っているのではないかと不安になってきた限が尋ねると、ゼータはいつもと変わらない笑顔で答えを返してきた。
「本当かよ……」
霧のせいで視界も悪いため、まっすぐ進んでいるかも怪しいのに、平気そうな顔をしているゼータを疑いたくなってくる。
しかし、小人族があまり人目に触れないようにしているのは、この特殊な霧によるものなのかもしれない。
そう思うようにして、限は小さく愚痴りつつも霧の中を進んで行ったのだった。
「ゼータ!!」
「おぉ! ゼータ!!」
「じいちゃん!! おじちゃん!!」
ゼータの案内に従って30分以上進んで行っていると、ようやく霧が晴れてきた。
そして、完全に霧が晴れて限たちの目に入って来たのは、小さな家が建ち並ぶ村のようなものが広がっていた。
どうやら限たちのことを待ち受けていたらしく、老人と中年の見た目をした小人が、ゼータの姿を見るなり目を潤ませながら近付いてきた。
彼らを見たゼータもアルバの背から降り、すぐさま駆け出していった。
その反応を見る限り、どうやらゼータの身内のようだ。
「全く!! あれほど外に出るなといったじゃろうが!!」
「ごめん! ごめんなさい!」
やっと故郷に戻れ、もう会えないと思っていた身内に会えたことが嬉しかったのか、ゼータは涙を流して2人に謝っていた。
「良かったですね。ゼータちゃん……」
「ワフッ……」
種族は違うが、同じ性別の女性という思いがあるのか、旅の間ずっと仲の良かったレラは、うれし泣きしているゼータを見てもらい泣きしていた。
移動用の足代わりに使われていたアルバも、安心したように一息ついた。
「孫が世話になったようで済まなかったのう……」
「いや、気にしないでくれ。旅行気分も味わえて楽しかったからな……」
少しの間喜びあっていたゼータたちだが、限たちのことをずっとそのままにしておく訳にはいかないと気付いたのか、ゼータの祖父らしき老人がひとまず再会の喜びを終えて感謝の言葉をかけてきた。
しかし、暗闇の地下生活が長かったこともあり、限が言うようにここまでの道のりを結構楽しんでいた。
ゼータを送り届けるという理由でもない限り、ずっと殺伐とした復讐へ突き進んでいたかもしれない。
それでも、研究員たちだけなら死滅させることができただろうが、敷島の連中を相手にしていたら返り討ちに遭っていたかもしれない。
冷静に考える時間ができたことで、順序立てて復讐を果たすことができそうだ。
「それにしても、よく人族の俺たちを迎えてくれたな。敵だとは思わなかったのか?」
村に入ったといっても、限たちが小人たちの家の中に入れるわけもないので、外で茶を出されたりと歓迎されたのだが、そもそも人族を入れて大丈夫なのだろうか。
小人族が人入れず過ごしているのは、ゼータのように捕まえられて見世物にされたり研究材料にされたりする可能性があるからだ。
ゼータが一緒にいたからと言って、もしかしたらゼータに案内させて、小人たちを捕まえに来たと考えることも出来る。
そのため、限は彼らが少し不用心に思えた。
「大丈夫だ! ここに来るまでの霧は害意のある物はいくら進んでも村にはたどり着けないようになっている」
「へぇ~、面白い仕組みだな……」
ゼータの伯父の話によると、この小人の村は特別な魔道具で守られているそうだ。
小人族に害意のある者が、いくら捕まえた小人に案内させたからと言って、ここにたどり着けないようになっているらしい。
限が魔力を広げての探知ができなかったのも、その魔道具によって防がれていたかららしい。
もしも敷島の連中を相手にする時に使えるならと思い見せてもらったが、小人族の魔力にしか反応しないらしく、しかも同じ魔道具の製造法が分からないということなので、残念だが手に入れるのは諦めるしかなかった。
「じゃあ、俺たちは行かせてもらおう」
「もう出て行くのかのう……」
村には一泊だけさせてもらい、限たちは出て行くことにした。
とは言っても、先に述べたように家に入れるわけがないので、野宿用のテントを張って寝ただけだ。
ゼータを救って連れて来てくれたことを感謝され、宴を開いてもらえたのは嬉しかったが、出される料理や酒も小さく、結局はレラに調理してもらうことになった。
アルバは子供の小人に人気があり、背中に何人も乗せて走り回っていた。
村の小人たちが喜んでくれていたので、なかなか気分のいい時間だった。
恩人をもてなすことができたとは言い難い思いがあり、ゼータの祖父は若干残念そうな表情で話しかけてきた。
「ここは空気も良くて気分がいいが、人族の俺たちには如何せん小さいからな」
「ガハハ! それもそうだな」
限の軽口に、ゼータの伯父が豪快に笑う。
どうやらゼータが男っぽい喋り方になったのは男所帯で育ったかららしい。
ゼータの両親が病気で亡くなって、この伯父に面倒を見てもらっていたせいと言うのが正しいかもしれない。
「そう言えば、限たちは研究員たちの行き先を探しているんだったな。じいちゃんならもしかしたら分かるかもしれないぞ! じいちゃんの占いは結構当たるんだ!」
「何っ!? 本当か? 占ってもらえるか?」
「それぐらい構わんぞい」
ゼータの話によると、彼女の祖父は村の占い師をしているらしい。
敷島の連中より先に、研究員たちへの復讐を先に済ませるつもりだが、ここまでの道のりでギルドからは何の情報も入ってこなかった。
通って来ていない国に恐らくいるのだろう。
ある程度予想はしているが、念のため占ってもらうことにした。
恩人の役に立てるならとゼータの祖父も快く引き受けてくれた。
「…………う~む、北西のここら辺を示しておる」
「ここら辺て言うとソーリオか、ラクトって所か……」
占えるといっても詳細な場所までは無理らしいが、ゼータの祖父が指し示した範囲はソーリオ王国の北からラクト帝国の南の当たりだった。
どちらかというとラクト帝国の方が確率的には高いように思える。
「ありがとよじいさん! ゼータ、もう勝手にここから出るなよ!」
「お世話になりました。バイバイ、ゼータちゃん!」
「ワウッ!」
「これまでありがとな! 限! レラ! アルバ! 元気でいろよ!」
目的地となる場所は決まったため、限たちは今度こそ小人族の村から出て行くことにした。
限、レラ、アルバの順でゼータに最後の別れを告げ、ゼータが笑顔で返してきた。
「じゃあな!」
短い付き合いではあったが、救ってもらえた感謝と別れが辛いのか、ゼータは笑顔のまま涙があふれて来ていた。
時間をかけてゼータの笑顔が崩れてしまう前に、限たちは森の外へ向かうためにまた濃い霧の中へ姿を消していったのだった。
「さて……これから研究所の連中へ報復を開始しようと思っているが、レラも付いてくる気か?」
「はい! 私の命は限様の者です! 死ぬまでずっと付いて行きます! それに、私も奴らに苦しめられたお返しをしたいですので!」
「ワウッ!!」
来た時と同じように30分以上霧の中を進み、限たちは森の外へと出ることができた。
ゼータの祖父の占いを信じ、限は研究員たちを死滅するために北西へ向かうつもりだ。
しかし、初戦これは自分の復讐であって、レラが付き合う必要はない。
そう思って問いかけたのだが、重い女は健在らしく、付いてくる気満々のようだ。
アルバも、自分も付いて行くと言うかのように声をあげた。
「そうか……。よしっ! じゃあ行くか……」
「はいっ!」「ワウッ!」
付いてくるなら止めるつもりもない。
彼女たちも研究所の実験で死ぬ思いを何度も味わわされたのだから、その苦しみを返したいと思うのも当然だ。
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