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第2章
第44話 変身
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「……ここでいいだろ」
冒険者ばかりを狙う魔物の情報を得ようと、限はいくつかの酒場を巡った。
しかし、どこのマスターも同じような情報を話すだけで、これといった情報が手に入ることはなかった。
どこのマスターも、酒場で情報収集していれば襲ってくるという話だったが、これで自分も襲われる条件は整ったことになる。
どれほどの強さの魔物か分からないため、念のため広場のようなところで待ち受けることにした。
ここなら多少暴れても、住民などに被害が及ぶことはないだろう。
「おいっ! 出てこいよ!」
広場の中央に立ち、暗闇に向かって声をかける限。
まるでそこに何かいるかのような口ぶりだ。
「ずっと付いてきているお前だよ!」
何の反応も起きない。
しかし、限は先程と同じく暗闇に向けて声をかける。
それでも何も変わらないかと思ったら、暗闇から1人の人間が現れ、広場へと入ってきた。
「そう、お前だ。俺に何か用があるのか?」
情報収集に酒場を回っていた時、2軒目から付いてくる気配が感じられた。
しかし、相変わらず探知魔法に引っかからない。
普通なら気のせいかと思うところだが、限は確信をもってそのまま行動を続けた。
昔、この追跡者と同じような感覚を味わったことがあるからだ。
「……気付いていたのか?」
「バレていないと思っていたのか?」
被害に遭った冒険者は、みんな背後からナイフで一突きされて襲撃者に気付いたという話だった。
恐らくこの男に刺されたのだろう。
しかし、限にはそれが通用しなかった。
フードを深く被っているため分からないが、男は口元を見る限り腑に落ちないといったような表情をしていることだろう。
「そのローブ。気配を消す能力が付与されているんだろ?」
「なるほど、このローブのことを知っていたか……」
男が被っているローブ。
それに限は心当たりがあった。
任務で外に出ていた敷島の人間が、何者かによって深手を負わされて帰ってきたと言うことがあった。
探知にかからなかったため敵の攻撃に気付くのが遅れ、抵抗する間もなく攻撃を受けてしまったという話だ。
深手を負っても何とか逃げ延びてきたというのは、さすがに敷島の人間だといえるが、その探知にかからない方法が気になった。
それを怪我を負った者に尋ねた所、気配を消すローブに身に纏っていたという話だった。
ハイド能力に長けた魔物の皮を使い作り上げた物らしい。
しかし、そもそもそんな魔物を見つけることは難しく、ローブを作れるまでとなると相当な時間と労力を要したことだろう。
「昔よく訓練されたんでな……」
同じ轍を踏まないように同じ機能を有したローブを手に入れ、僅かな違和感を感じ取る訓練をするようになった。
幼少期からのカリキュラムとして組み込まれているため、限もその訓練を受けていたのだが、元々探知のできなかった限にとっては、この訓練は結構得意な方だった。
こんな時は敷島の訓練も役に立つため、気に入らないが認めざるを得ない。
「気配を消して後ろから刺して魔物に襲わせるってやり方か……」
このローブはそう簡単に手に入らない。
敷島の諜報力を利用しても、手に入れるまでかなりの期間がかかったという話だ。
運良く手に入れたのかもしれないが、使い方が褒められたものではない。
「……魔物はどこに隠している? 気配を感じないが……」
この男は隠蔽フードを被っていたことで気配を消していたようだが、敷島出の限には通用しなかった。
しかし、被害者証言の魔物の方はどう隠しているのか、探知も気配も感じられない。
「まぁいい、何で冒険者を狙っているのか分からないが、少々やり過ぎたな……」
姿を現しても気配を感じさせない生物なんて存在しない。
熊の魔物がどこにいるのかは分からないが、この男をどうにかすれば姿を現すだろう。
そう考えた限は、腰に差した刀に手をかけた。
「ここで止めさせてもらう」
「フッ!」
「……?」
軽く腰を落とし、いつでも斬りかかれるように構えた限に対し、男は笑みを浮かべる。
限は何がおかしいのか分からず訝しんだ。
「これまでもギリギリで気付いた人間はいた。しかしそんな奴らも殺してきた……」
戦闘態勢に入った限に、男も何かをする気でいるようだ。
もしかして魔物を呼ぶ何かをするのかと限は思っていたが、男が出したのはビン。
中に何か錠剤のようなものが入っている。
「この俺自身がな!!」
そう言うと男はローブを脱ぎ、ビンに入った錠剤を一粒飲み込んだ。
「グウッ……!!」
「……っ!? その姿……」
変化がすぐに起きる。
錠剤を飲んだ男の体がジワジワと巨大化し、全身が毛におおわれていった。
そして変化し終わると、報告にあった熊の魔物の姿になっていた。
殺してきた冒険者の中には、高ランクの者もいた。
そう言った人間は、修羅場をくぐってきた感のようなもので男の攻撃を躱した者もいた。
限の言うように、背後から致命傷を与えてから殺すのが男の手口だ。
しかし、間違っているのは、魔物を呼び出して殺したのではなく、この男が魔物と化して殺したということだったようだ。
「冒険者は皆殺しだ!」
「お前!! 何を飲んだ!?」
普通魔物は言葉を話さない。
しかし、男は魔物の姿へと変化したというのに、言語を喋っている。
どうやら人間の知能を持ったまま肉体を変化させたようだ。
それが先程飲んだ錠剤の力なのだろう。
限はそんな物があるなんて知らなかったため、思わず男へと問いかけていた。
「ある者から貰った薬だ!!」
「っ!! ある者?」
姿が魔物へ変わっても、男との会話が可能なようだ。
しかし、問いに対する返答に、限はなんとなく引っかかりを覚えた。
この魔物化の薬を、この男はもらったと言った。
つまり、作り与えた人間は他にいるということになる。
「……その薬を誰から貰った?」
人間を魔物に変えるような薬を作る人間。
限はその人間に少しだけ心当たりがあった。
恐らく、限に人体実験を繰り返した研究員に違いない。
魔物の製造を研究していた奴らが、このような薬を作り上げたのだろう。
半ば限の頭の中では確定しているが、念のため確認の意味で男に問いかけた。
「知ってどうする?」
「……いいから答えろ!」
限の問いに対し、男は首を傾げつつ聞き返す。
質問にもったいぶるような男の態度に、限は若干イラ立つ。
実験に苦しむ自分を平然と眺めていた研究員たち。
昔の嫌なことが思い出されて、限の中で怒りが湧いてきていたからだろう。
ようやく欲しい情報に近付けたと思えた限は、男を睨みつけたまま怒鳴った。
「……良いだろう。俺に勝てたら教えてやるよ!!」
何だか限の様子に違和感を感じつつも、男は自信ありげに言って来る。
しかし、その言葉に、限は笑みを浮かべた。
「……そうか。簡単なことだな……」
「……何?」
たしかに男は熊の魔物の力を得て、危険な存在へと変わったかもしれない。
高ランク冒険者でも1人では手に負えないかもしれないが、限からしたらそこまでの存在ではない。
限は鞘から刀を抜いて、熊へと変化した男へと向けた。
「……舐めているのか?」
自分の姿を見ても余裕の態度で接してくる限に、男は段々と怒りを覚えてきた。
どんな高ランク冒険者も、この姿を見れば多少慌てた様子を見せるものだが、平然と戦う気でいる。
それが舐められているように感じた男は、前足を地面につけて前傾姿勢をとった。
「死ねー!!」
4本の足を使った瞬発力により、熊に変わった男は猛烈な勢いで限との距離を詰めていったのだった。
冒険者ばかりを狙う魔物の情報を得ようと、限はいくつかの酒場を巡った。
しかし、どこのマスターも同じような情報を話すだけで、これといった情報が手に入ることはなかった。
どこのマスターも、酒場で情報収集していれば襲ってくるという話だったが、これで自分も襲われる条件は整ったことになる。
どれほどの強さの魔物か分からないため、念のため広場のようなところで待ち受けることにした。
ここなら多少暴れても、住民などに被害が及ぶことはないだろう。
「おいっ! 出てこいよ!」
広場の中央に立ち、暗闇に向かって声をかける限。
まるでそこに何かいるかのような口ぶりだ。
「ずっと付いてきているお前だよ!」
何の反応も起きない。
しかし、限は先程と同じく暗闇に向けて声をかける。
それでも何も変わらないかと思ったら、暗闇から1人の人間が現れ、広場へと入ってきた。
「そう、お前だ。俺に何か用があるのか?」
情報収集に酒場を回っていた時、2軒目から付いてくる気配が感じられた。
しかし、相変わらず探知魔法に引っかからない。
普通なら気のせいかと思うところだが、限は確信をもってそのまま行動を続けた。
昔、この追跡者と同じような感覚を味わったことがあるからだ。
「……気付いていたのか?」
「バレていないと思っていたのか?」
被害に遭った冒険者は、みんな背後からナイフで一突きされて襲撃者に気付いたという話だった。
恐らくこの男に刺されたのだろう。
しかし、限にはそれが通用しなかった。
フードを深く被っているため分からないが、男は口元を見る限り腑に落ちないといったような表情をしていることだろう。
「そのローブ。気配を消す能力が付与されているんだろ?」
「なるほど、このローブのことを知っていたか……」
男が被っているローブ。
それに限は心当たりがあった。
任務で外に出ていた敷島の人間が、何者かによって深手を負わされて帰ってきたと言うことがあった。
探知にかからなかったため敵の攻撃に気付くのが遅れ、抵抗する間もなく攻撃を受けてしまったという話だ。
深手を負っても何とか逃げ延びてきたというのは、さすがに敷島の人間だといえるが、その探知にかからない方法が気になった。
それを怪我を負った者に尋ねた所、気配を消すローブに身に纏っていたという話だった。
ハイド能力に長けた魔物の皮を使い作り上げた物らしい。
しかし、そもそもそんな魔物を見つけることは難しく、ローブを作れるまでとなると相当な時間と労力を要したことだろう。
「昔よく訓練されたんでな……」
同じ轍を踏まないように同じ機能を有したローブを手に入れ、僅かな違和感を感じ取る訓練をするようになった。
幼少期からのカリキュラムとして組み込まれているため、限もその訓練を受けていたのだが、元々探知のできなかった限にとっては、この訓練は結構得意な方だった。
こんな時は敷島の訓練も役に立つため、気に入らないが認めざるを得ない。
「気配を消して後ろから刺して魔物に襲わせるってやり方か……」
このローブはそう簡単に手に入らない。
敷島の諜報力を利用しても、手に入れるまでかなりの期間がかかったという話だ。
運良く手に入れたのかもしれないが、使い方が褒められたものではない。
「……魔物はどこに隠している? 気配を感じないが……」
この男は隠蔽フードを被っていたことで気配を消していたようだが、敷島出の限には通用しなかった。
しかし、被害者証言の魔物の方はどう隠しているのか、探知も気配も感じられない。
「まぁいい、何で冒険者を狙っているのか分からないが、少々やり過ぎたな……」
姿を現しても気配を感じさせない生物なんて存在しない。
熊の魔物がどこにいるのかは分からないが、この男をどうにかすれば姿を現すだろう。
そう考えた限は、腰に差した刀に手をかけた。
「ここで止めさせてもらう」
「フッ!」
「……?」
軽く腰を落とし、いつでも斬りかかれるように構えた限に対し、男は笑みを浮かべる。
限は何がおかしいのか分からず訝しんだ。
「これまでもギリギリで気付いた人間はいた。しかしそんな奴らも殺してきた……」
戦闘態勢に入った限に、男も何かをする気でいるようだ。
もしかして魔物を呼ぶ何かをするのかと限は思っていたが、男が出したのはビン。
中に何か錠剤のようなものが入っている。
「この俺自身がな!!」
そう言うと男はローブを脱ぎ、ビンに入った錠剤を一粒飲み込んだ。
「グウッ……!!」
「……っ!? その姿……」
変化がすぐに起きる。
錠剤を飲んだ男の体がジワジワと巨大化し、全身が毛におおわれていった。
そして変化し終わると、報告にあった熊の魔物の姿になっていた。
殺してきた冒険者の中には、高ランクの者もいた。
そう言った人間は、修羅場をくぐってきた感のようなもので男の攻撃を躱した者もいた。
限の言うように、背後から致命傷を与えてから殺すのが男の手口だ。
しかし、間違っているのは、魔物を呼び出して殺したのではなく、この男が魔物と化して殺したということだったようだ。
「冒険者は皆殺しだ!」
「お前!! 何を飲んだ!?」
普通魔物は言葉を話さない。
しかし、男は魔物の姿へと変化したというのに、言語を喋っている。
どうやら人間の知能を持ったまま肉体を変化させたようだ。
それが先程飲んだ錠剤の力なのだろう。
限はそんな物があるなんて知らなかったため、思わず男へと問いかけていた。
「ある者から貰った薬だ!!」
「っ!! ある者?」
姿が魔物へ変わっても、男との会話が可能なようだ。
しかし、問いに対する返答に、限はなんとなく引っかかりを覚えた。
この魔物化の薬を、この男はもらったと言った。
つまり、作り与えた人間は他にいるということになる。
「……その薬を誰から貰った?」
人間を魔物に変えるような薬を作る人間。
限はその人間に少しだけ心当たりがあった。
恐らく、限に人体実験を繰り返した研究員に違いない。
魔物の製造を研究していた奴らが、このような薬を作り上げたのだろう。
半ば限の頭の中では確定しているが、念のため確認の意味で男に問いかけた。
「知ってどうする?」
「……いいから答えろ!」
限の問いに対し、男は首を傾げつつ聞き返す。
質問にもったいぶるような男の態度に、限は若干イラ立つ。
実験に苦しむ自分を平然と眺めていた研究員たち。
昔の嫌なことが思い出されて、限の中で怒りが湧いてきていたからだろう。
ようやく欲しい情報に近付けたと思えた限は、男を睨みつけたまま怒鳴った。
「……良いだろう。俺に勝てたら教えてやるよ!!」
何だか限の様子に違和感を感じつつも、男は自信ありげに言って来る。
しかし、その言葉に、限は笑みを浮かべた。
「……そうか。簡単なことだな……」
「……何?」
たしかに男は熊の魔物の力を得て、危険な存在へと変わったかもしれない。
高ランク冒険者でも1人では手に負えないかもしれないが、限からしたらそこまでの存在ではない。
限は鞘から刀を抜いて、熊へと変化した男へと向けた。
「……舐めているのか?」
自分の姿を見ても余裕の態度で接してくる限に、男は段々と怒りを覚えてきた。
どんな高ランク冒険者も、この姿を見れば多少慌てた様子を見せるものだが、平然と戦う気でいる。
それが舐められているように感じた男は、前足を地面につけて前傾姿勢をとった。
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