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第2章
第45話 有力情報
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「どうした!? 手も足も出ないか!?」
薬の力によって熊の魔物へと姿を変えた冒険者殺しの男と、限は戦いを始めた。
しかし、始まってから終始熊男が攻め続けており、限は広場の中を逃げ回ってばかりいた。
その状況に、熊男の方は嬉しいそうに問いかけてくる。
限が逃げることしかできないと思っているからだろう。
「ブツブツ……」
「なんだ? 何を呟いている?」
熊男が攻撃をしつつ限をよく見てみると、何か口元が細かく動いているように見えた。
聞こえないほどの音量で、何かを呟いているようだ。
魔法を撃つための呪文か何かなのかと思えるが、限の魔力には何の変化も起きていないため、そういう訳でもない。
何を言っているのかも分からないまま、熊男は攻撃を続けるしかなかった。
『……たしか、薬物投与を好んでいた奴がいたな……』
迫り来る攻撃を躱しているだけの限は、単純に考え事をしていた。
攻撃してくる熊男は、何者かによって与えられた薬だといっていた。
限やレラを実験台にしていた研究所では、魔物に関する研究をおこなっていた。
その中には、解剖を好む者もいれば、薬物による変化を調べる者もいた。
研究所にいた時のことを思いだしていた限は、薬物班の人間の顔を思いだしていた。
『奴の研究が成功したのか? ……いや、奴は人間の姿だった。……時間制限があるのか?』
男は、薬を飲んだことで人間の姿から熊へと変化した。
冒険者が殺される事件は何度も起きており、熊の姿のままでは情報収集なんてできない。
そうなると、人間の姿に戻れる薬も持っているのか、それとも時間制限付きの肉体変化なのかもしれない。
「ガアァーー!!」
『……少しずつ、反応が速くなっているか?』
段々と熊男の攻撃が鋭くなってきている気がする。
もしかしたら、熊の体に慣れてきているのかもしれない。
だからと言って、限にとっては脅威にはなり得ず、限はただ冷静に熊男の動きを観察し続けた。
「ハァ、ハァ……、逃げてばかりいやがって……」
全体の能力が飛躍的に向上しているようだが、やはり無尽蔵のスタミナという訳ではない。
攻撃を続けていた熊男の息は切れ、ようやく異変に気付いたようだ。
「貴様、何で攻撃してこない!?」
躱すばかりで、限は全く攻撃をしてこない。
隙を窺っているという訳でもなく、ただ眺めているような限の視線に、舐められていると感じたのか、熊男は怒りを露わにする。
「…………」
「くっ! おのれ!」
問いかけられても、限は何にも答えない。
動き回っていたにもかかわらず、息を切らすどころか汗もかいていないように見える。
何か企んでいるのかと警戒しながらも、熊男はまたも限へと襲い掛かった。
「このっ! このっ!」
「……もういいか」
「何っ!?」
両前足を振り回し、爪で限を斬り裂こうする熊男。
しかし、どんなに振り回しても限には掠ることすらできない。
ずっと無言で観察するようにしていた限だが、不意にぼそっと呟いて熊男から距離を取った。
「その薬には時間制限があるのだろ?」
「……な、何を言っている?」
「図星だな?」
限の問いに対し、熊男は少し慌てたように返答した。
分かっていたことだが、その反応で自分の考えが正しかったのだと限は確信を持った。
「段々と反応が良くなったように思えたが、そこからは段々と動きが鈍る一方だ。もう効力が落ちてきたと言うことだろ?」
攻撃を避け続けつつ眺めていると、熊男の変化が見えていた。
限の言うように、ピークを迎えたように段々と動きが鈍くなり、攻撃に鋭さを感じなくなってきた。
もう薬の効力が落ちてきたと言うことなのだろう。
「くっ……」
限の言葉が正解だと言うように、熊男からまた普通の人間へと姿が戻ってきた。
そして、残ったのは真っ裸の男がいるだけになった。
「おっと! 動くなよ」
「うっ!」
薬の効力が切れた今の状況では勝てないと、男はまた魔物へ変身する薬のビンを取り出した。
しかし、限はまた薬を飲もうとする男の動きを阻止する。
刀の切っ先が喉元に突き付けられ、男は動きを止めた。
「……その魔法の指輪は殺した冒険者から奪い取ったのか?」
「……あぁ」
気配を消すローブを収納し、変身薬の入った瓶を取り出したのは魔法の指輪からだった。
この男は、その魔法の指輪を左手の5本の指に着けている。
人間状態のこの男の体つきや魔力量を見てみる限り、Bランクの冒険者に勝てるか微妙な程度の強さしかないように見える。
そんな人間が、高額なはずの魔法の指輪を5つも買えるようには思えない。
買ったのではないとすれば、殺した高ランク冒険者から奪い取ったのだと限は判断した。
そのことを問いかけると、案の定男は頷きで返してきた。
「最初に聞いたように、この薬の提供者は誰だ?」
今は男が何故冒険者を殺害していたのかよりも、魔物へ変身する薬の方が気になった。
限としては、この薬の提供者が復讐対象かどうかの確認がしたかったのだ。
「……隣町の酒場で会った男と意気投合して、俺の愚痴を聞いたその男が試してみろとくれたんだ」
「もらった? こんなのをタダで?」
「あぁ……」
人間を一時的とはいえ魔物に変えるような危険な薬を、平気で譲るなんて頭がおかしいとしか言いようがない。
しかし、限としては逆に昔の研究員の臭いが強くなった気がした。
人間を実験台にしておいて、平気な顔して反応を眺めていた人間たちの顔が思い浮かぶ。
あの時の研究員の中になら、この男に薬を渡すようなことをしてもおかしくないかもしれない。
「隣町だな?」
「あぁ……」
「そうか……」
復讐対象の情報が得られた可能性がかなり濃厚だ。
その情報を得られたことに、限は自然と笑みがこぼれてきた。
「ひっ!!」
「んっ?」
限の笑みを見て、男は小さく悲鳴を上げる。
そんな声をあげる何かあったのか限は男に目を向けるが、男はその視線に目を背けた。
気付いていなかったが、限は笑みを浮かべたその少しの間強力な殺気を放っていたのだ。
その殺気に触れた男は、心臓を握られたような錯覚に陥り、自分が手を出した人間を間違えたのだとようやく判断したのだった。
「あと、気配消すローブ寄越せ!」
「……は、はい!」
最初男が使用していたローブは、敷島の人間にはバレるかもしれないが、他の人間にはそう簡単に気付かれない。
そのローブは、これからのことに使えるかもしれない。
そのため、限はもらっておくことにした。
出し渋るかと思っていたが、男は何故かすんなりローブを渡してきた。
「……来たか?」
ローブを自分の魔法の指輪に収納すると、限は足音が近づいてくるのを感じた。
その音で誰が来たのかを察した。
「……あんたが依頼を受けた冒険者か?」
「あぁ。こいつが冒険者を殺していた犯人だ」
「……そうか」
鎧を纏って槍を持った2人組の男が広場へと入ってくる。
そして、限たちのことを見て、近付きつつ話しかけてきた。
ギルドにこの広場に犯人を誘い込むと教えていたので、治安兵に巡回をするように言っていたのかもしれない。
その治安兵の問いに対し、限は裸の男を指差し返答する。
それを聞いた治安兵は、限から提供された布を裸の男の下半身に巻いて手錠をかけた。
「後は任せてくれ」
「分かった」
どうやらこの後治安所へ連れていき、尋問でもするのだろう。
男がどんな理由でこんな犯行をおこなっていたかは分からないが、限には興味がない。
依頼は達成してもうすることがなくなった限は、宿屋に待機させているレラたちの所へ戻って寝ることにした。
薬の力によって熊の魔物へと姿を変えた冒険者殺しの男と、限は戦いを始めた。
しかし、始まってから終始熊男が攻め続けており、限は広場の中を逃げ回ってばかりいた。
その状況に、熊男の方は嬉しいそうに問いかけてくる。
限が逃げることしかできないと思っているからだろう。
「ブツブツ……」
「なんだ? 何を呟いている?」
熊男が攻撃をしつつ限をよく見てみると、何か口元が細かく動いているように見えた。
聞こえないほどの音量で、何かを呟いているようだ。
魔法を撃つための呪文か何かなのかと思えるが、限の魔力には何の変化も起きていないため、そういう訳でもない。
何を言っているのかも分からないまま、熊男は攻撃を続けるしかなかった。
『……たしか、薬物投与を好んでいた奴がいたな……』
迫り来る攻撃を躱しているだけの限は、単純に考え事をしていた。
攻撃してくる熊男は、何者かによって与えられた薬だといっていた。
限やレラを実験台にしていた研究所では、魔物に関する研究をおこなっていた。
その中には、解剖を好む者もいれば、薬物による変化を調べる者もいた。
研究所にいた時のことを思いだしていた限は、薬物班の人間の顔を思いだしていた。
『奴の研究が成功したのか? ……いや、奴は人間の姿だった。……時間制限があるのか?』
男は、薬を飲んだことで人間の姿から熊へと変化した。
冒険者が殺される事件は何度も起きており、熊の姿のままでは情報収集なんてできない。
そうなると、人間の姿に戻れる薬も持っているのか、それとも時間制限付きの肉体変化なのかもしれない。
「ガアァーー!!」
『……少しずつ、反応が速くなっているか?』
段々と熊男の攻撃が鋭くなってきている気がする。
もしかしたら、熊の体に慣れてきているのかもしれない。
だからと言って、限にとっては脅威にはなり得ず、限はただ冷静に熊男の動きを観察し続けた。
「ハァ、ハァ……、逃げてばかりいやがって……」
全体の能力が飛躍的に向上しているようだが、やはり無尽蔵のスタミナという訳ではない。
攻撃を続けていた熊男の息は切れ、ようやく異変に気付いたようだ。
「貴様、何で攻撃してこない!?」
躱すばかりで、限は全く攻撃をしてこない。
隙を窺っているという訳でもなく、ただ眺めているような限の視線に、舐められていると感じたのか、熊男は怒りを露わにする。
「…………」
「くっ! おのれ!」
問いかけられても、限は何にも答えない。
動き回っていたにもかかわらず、息を切らすどころか汗もかいていないように見える。
何か企んでいるのかと警戒しながらも、熊男はまたも限へと襲い掛かった。
「このっ! このっ!」
「……もういいか」
「何っ!?」
両前足を振り回し、爪で限を斬り裂こうする熊男。
しかし、どんなに振り回しても限には掠ることすらできない。
ずっと無言で観察するようにしていた限だが、不意にぼそっと呟いて熊男から距離を取った。
「その薬には時間制限があるのだろ?」
「……な、何を言っている?」
「図星だな?」
限の問いに対し、熊男は少し慌てたように返答した。
分かっていたことだが、その反応で自分の考えが正しかったのだと限は確信を持った。
「段々と反応が良くなったように思えたが、そこからは段々と動きが鈍る一方だ。もう効力が落ちてきたと言うことだろ?」
攻撃を避け続けつつ眺めていると、熊男の変化が見えていた。
限の言うように、ピークを迎えたように段々と動きが鈍くなり、攻撃に鋭さを感じなくなってきた。
もう薬の効力が落ちてきたと言うことなのだろう。
「くっ……」
限の言葉が正解だと言うように、熊男からまた普通の人間へと姿が戻ってきた。
そして、残ったのは真っ裸の男がいるだけになった。
「おっと! 動くなよ」
「うっ!」
薬の効力が切れた今の状況では勝てないと、男はまた魔物へ変身する薬のビンを取り出した。
しかし、限はまた薬を飲もうとする男の動きを阻止する。
刀の切っ先が喉元に突き付けられ、男は動きを止めた。
「……その魔法の指輪は殺した冒険者から奪い取ったのか?」
「……あぁ」
気配を消すローブを収納し、変身薬の入った瓶を取り出したのは魔法の指輪からだった。
この男は、その魔法の指輪を左手の5本の指に着けている。
人間状態のこの男の体つきや魔力量を見てみる限り、Bランクの冒険者に勝てるか微妙な程度の強さしかないように見える。
そんな人間が、高額なはずの魔法の指輪を5つも買えるようには思えない。
買ったのではないとすれば、殺した高ランク冒険者から奪い取ったのだと限は判断した。
そのことを問いかけると、案の定男は頷きで返してきた。
「最初に聞いたように、この薬の提供者は誰だ?」
今は男が何故冒険者を殺害していたのかよりも、魔物へ変身する薬の方が気になった。
限としては、この薬の提供者が復讐対象かどうかの確認がしたかったのだ。
「……隣町の酒場で会った男と意気投合して、俺の愚痴を聞いたその男が試してみろとくれたんだ」
「もらった? こんなのをタダで?」
「あぁ……」
人間を一時的とはいえ魔物に変えるような危険な薬を、平気で譲るなんて頭がおかしいとしか言いようがない。
しかし、限としては逆に昔の研究員の臭いが強くなった気がした。
人間を実験台にしておいて、平気な顔して反応を眺めていた人間たちの顔が思い浮かぶ。
あの時の研究員の中になら、この男に薬を渡すようなことをしてもおかしくないかもしれない。
「隣町だな?」
「あぁ……」
「そうか……」
復讐対象の情報が得られた可能性がかなり濃厚だ。
その情報を得られたことに、限は自然と笑みがこぼれてきた。
「ひっ!!」
「んっ?」
限の笑みを見て、男は小さく悲鳴を上げる。
そんな声をあげる何かあったのか限は男に目を向けるが、男はその視線に目を背けた。
気付いていなかったが、限は笑みを浮かべたその少しの間強力な殺気を放っていたのだ。
その殺気に触れた男は、心臓を握られたような錯覚に陥り、自分が手を出した人間を間違えたのだとようやく判断したのだった。
「あと、気配消すローブ寄越せ!」
「……は、はい!」
最初男が使用していたローブは、敷島の人間にはバレるかもしれないが、他の人間にはそう簡単に気付かれない。
そのローブは、これからのことに使えるかもしれない。
そのため、限はもらっておくことにした。
出し渋るかと思っていたが、男は何故かすんなりローブを渡してきた。
「……来たか?」
ローブを自分の魔法の指輪に収納すると、限は足音が近づいてくるのを感じた。
その音で誰が来たのかを察した。
「……あんたが依頼を受けた冒険者か?」
「あぁ。こいつが冒険者を殺していた犯人だ」
「……そうか」
鎧を纏って槍を持った2人組の男が広場へと入ってくる。
そして、限たちのことを見て、近付きつつ話しかけてきた。
ギルドにこの広場に犯人を誘い込むと教えていたので、治安兵に巡回をするように言っていたのかもしれない。
その治安兵の問いに対し、限は裸の男を指差し返答する。
それを聞いた治安兵は、限から提供された布を裸の男の下半身に巻いて手錠をかけた。
「後は任せてくれ」
「分かった」
どうやらこの後治安所へ連れていき、尋問でもするのだろう。
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