復讐、報復、意趣返し……とにかくあいつらぶっ殺す!!

ポリ 外丸

文字の大きさ
81 / 179
第3章

第81話 異形

しおりを挟む
「くそっ! せっかく敷島の連中を追い込んでいるというのに……」

 オリアーナと優雅に戦場を眺めていたというのに、突如侵入者が現れたことで状況が変わった。
 報告に来た兵の話によると、戦場に生物兵器を送り出す東西の棟を襲われ、研究員が皆殺しにされたらしい。
 しかも、その侵入者は今度はこの棟を狙っているようで、下の階がどんどんと騒がしくなってくる。
 せっかくこれまでアデマス王国から受けた鬱憤を晴らせると思っていたというのに、そんな事を言っている場合ではなくなってしまった。

「そんな事を言っている場合ではありませんよ! いつ侵入者が上がってくるか分かりません!」

「くそっ! 仕方ない、逃げるぞ!」

「はい!」

 オリアーナの言葉で、クラレンスは歯を食いしばりつつ考えを切り替える。
 この部屋には、非常時にクラレンスが脱出するための特別な通路がある。
 その通路を使って、クラレンスとオリアーナは脱出を図ることにした。

「ギャッ!!」

「「っっっ!!」」

 緊急避難用の通路へ向かう途中、部屋のすぐ外からうめき声が聞こえる。
 2人は驚きつつその声に反応する。
 すると、部屋の扉がゆっくり開いた。

「…………見つけた」

 扉が開いて、1人の男が入ってくる。
 そして、その男はクラレンスとオリアーナを見て笑みを浮かべた。

「久しぶりだなオリアーナ」

「……知っているのか?」

「……いいえ、全く!」

 入ってきた男は限。
 自分を敷島から引き取り、研究所につれていった張本人であるオリアーナに久々に会い、限は沸き上がる怒りを抑えて話しかける。
 それに対し、クラレンスとオリアーナは顔を見合わせる。
 どうやら相手は自分のことを知っているような様子だが、オリアーナには全く覚えがない。

「……覚えていないか。そりゃそうか、利用価値がなくなって地下廃棄場に捨てた相手だからな」

 自分を見ても思い出す素振りを見せないオリアーナ。
 その反応に、限はこめかみに血管を浮き上がらせるが、醜く変異して廃棄した人間のことなど覚えていないのは仕方がない。

「地下廃棄場ですって……?」

「験体番号42番……」

「っ!!」

 オリアーナは地下廃棄施設という言葉に反応する。
 アデマス王国の研究所にいた時、利用価値のなくなった実験体を地下に廃棄していた。
 そのことを知っているということは、この男は研究所の内部に入ったことがあるということだ。
 そして、限が実験体時の番号を呟いた瞬間、オリアーナは目を見開いた。

「あんた、まさか敷島の出来損ない……」

「おぉ、思いだしたか?」

 験体番号42番。
 それは、自分が敷島の人間を研究するために受け入れた出来損ないの番号だ。
 そのことをオリアーナが思いだした様子に呟くと、限は若干嬉しそうな表情へ変わった。
 殺すにしても、自分のこれまでのおこないを悔いた状態のオリアーナを殺したい。
 思い出してもらえたのは喜ばしいことだ。

「……驚いたわ。まさかあの状態から生き残っているなんて……」

 42番は地下廃棄場に捨てた。
 そのことは、キチンと報告を受けている。
 最後は度重なる実験により、二目と見れない姿に変化した化け物。
 それが42番の最終的な姿だったはず。
 廃棄された地下で息があったとしても、あの状態で生き残るなんてことができるなんて信じられないことだ。
 いくつもの実験に耐えたことといい、どれだけ強靭な肉体と精神をしているというのだろうか。

「クラレンス伯爵。あんたアウーリエって町でこいつの研究に関わっていただろ?」

「っ!! ……まさか、アウーリエの町で研究員と領主邸を放火したのは……?」

「俺だ。人造兵器なんかに手を出したあんたも同罪だ。そいつと同様死んでもらう」

「貴様ーーっ!!」

 発言内容から、この男はアウーリエの町の秘密のことを知っている。
 そのため、クラレンスはこの男が領主邸の放火に関係していると察した。
 そのことを問いかけると、男は白状するように返答してきたため、クラレンスは激昂した。

「貴様! ラクト帝国相手にこんなことをしてタダで済むと思っているのか!?」

「そのことは心配ない」

「……何?」

「そもそも、俺の顔を見た人間は全員死んでいる。ラクト帝国に追われることはない」

「何だと……」

 ラクト帝国の陣地に侵入して殺戮を働くなど、国を相手にケンカを売っているようなものだ。
 この場で自分たちを殺害しようとも、今後帝国から追われることになることは間違いない。
 しかし、限はそんな事関係ないような表情で返答する。
 探知を使って警備の配置は把握していた。
 自分の姿を見た者は、全員始末しているため、帝国側に睨まれることもない。
 というより、追っ手を仕向けられたとしても、敷島のトップレベルの相手でないと自分を殺せることはない。
 殺せるものなら殺してみろと言う所だ。

「まぁ、昔話をしていても時間の無駄だ。さっさと死んでもらおう」

「くっ!」

 この砦内には、まだまだ多くの兵が残っている。
 その者たちが棟の異変に気付いて集まってきてしまえば、顔がバレることになる。
 余計な追っ手をかけられないためにも、限は2人を殺すべく左手で刀の鞘を握り、鍔に親指をかけて少しだけ殺気を漏らした。
 少しの殺気でも、クラレンスには強力なプレッシャーになる。
 殺気による恐怖で足が固まり、クラレンスは脱出の通路へ向かうことができず、その場に立ち尽くすことしかできなくなった。

「フッ!」

 クラレンスと験体42番のやり取りを見ていたオリアーナは、何故か急に笑みを浮かべる。
 あまりにも一瞬だったために、2人はそのことに気付くことはなかった。

“スッ!!”

「ガッ!?」

「っ!?」

 限が動くより先にオリアーナが動く。
 背後から近付き、手に持った注射器をクラレンスに刺した。

「な、なにを……?」

「私個人が作り上げた特別製よ。私の逃走時間を稼いでください」

「貴、貴様……! ガッ!?」

 注射器から液体が注入される。
 オリアーナの突然の行動に、クラレンスは戸惑いつつ問いかける。
 そんなクラレンスに対し、オリアーナは悪びれる様子もなく返答した。
 何を注射したのか問いただそうとしたクラレンスだったが、すぐにそれができなくなった。
 その場へとしゃがみ込み、クラレンスは苦しみだした。

「ガアァーーーァァア!!」

「じゃあね!」

 呻き声を上げ始めたクラレンスを見たオリアーナは、限へ笑みを浮かべて一言呟くと、脱出用の通路へ向けて走り始めた。

「逃がすか!!」

 オリアーナの向かう方向に扉がある。
 先程の口ぶりから、その扉から脱出するつもりなのだろう。
 そのことを理解した限は、オリアーナを捕まえるために追いかける。

「っ!!」

「グアァッ!!」

 オリアーナを追いかける限は、突如目の前に現れた生物に足を止める。
 限の進路に立ち塞がったのは、異形の姿へと変化したクラレンスだった。

しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

ダンジョンでオーブを拾って『』を手に入れた。代償は体で払います

とみっしぇる
ファンタジー
スキルなし、魔力なし、1000人に1人の劣等人。 食っていくのがギリギリの冒険者ユリナは同じ境遇の友達3人と、先輩冒険者ジュリアから率のいい仕事に誘われる。それが罠と気づいたときには、絶対絶命のピンチに陥っていた。 もうあとがない。そのとき起死回生のスキルオーブを手に入れたはずなのにオーブは無反応。『』の中には何が入るのだ。 ギリギリの状況でユリアは瀕死の仲間のために叫ぶ。 ユリナはスキルを手に入れ、ささやかな幸せを手に入れられるのだろうか。

存在感のない聖女が姿を消した後 [完]

風龍佳乃
恋愛
聖女であるディアターナは 永く仕えた国を捨てた。 何故って? それは新たに現れた聖女が ヒロインだったから。 ディアターナは いつの日からか新聖女と比べられ 人々の心が離れていった事を悟った。 もう私の役目は終わったわ… 神託を受けたディアターナは 手紙を残して消えた。 残された国は天災に見舞われ てしまった。 しかし聖女は戻る事はなかった。 ディアターナは西帝国にて 初代聖女のコリーアンナに出会い 運命を切り開いて 自分自身の幸せをみつけるのだった。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

復讐完遂者は吸収スキルを駆使して成り上がる 〜さあ、自分を裏切った初恋の相手へ復讐を始めよう〜

サイダーボウイ
ファンタジー
「気安く私の名前を呼ばないで! そうやってこれまでも私に付きまとって……ずっと鬱陶しかったのよ!」 孤児院出身のナードは、初恋の相手セシリアからそう吐き捨てられ、パーティーを追放されてしまう。 淡い恋心を粉々に打ち砕かれたナードは失意のどん底に。 だが、ナードには、病弱な妹ノエルの生活費を稼ぐために、冒険者を続けなければならないという理由があった。 1人決死の覚悟でダンジョンに挑むナード。 スライム相手に死にかけるも、その最中、ユニークスキル【アブソープション】が覚醒する。 それは、敵のLPを吸収できるという世界の掟すらも変えてしまうスキルだった。 それからナードは毎日ダンジョンへ入り、敵のLPを吸収し続けた。 増やしたLPを消費して、魔法やスキルを習得しつつ、ナードはどんどん強くなっていく。 一方その頃、セシリアのパーティーでは仲間割れが起こっていた。 冒険者ギルドでの評判も地に落ち、セシリアは徐々に追いつめられていくことに……。 これは、やがて勇者と呼ばれる青年が、チートスキルを駆使して最強へと成り上がり、自分を裏切った初恋の相手に復讐を果たすまでの物語である。

勇者パーティーを追放されました。国から莫大な契約違反金を請求されると思いますが、払えますよね?

猿喰 森繁
ファンタジー
「パーティーを抜けてほしい」 「え?なんて?」 私がパーティーメンバーにいることが国の条件のはず。 彼らは、そんなことも忘れてしまったようだ。 私が聖女であることが、どれほど重要なことか。 聖女という存在が、どれほど多くの国にとって貴重なものか。 ―まぁ、賠償金を支払う羽目になっても、私には関係ないんだけど…。 前の話はテンポが悪かったので、全文書き直しました。

断罪まであと10分、私は処刑台の上で「ライブ配信」を開始した〜前世インフルエンサーの悪役令嬢、支持率100%でクズ王子を逆処刑する〜

深渡 ケイ
ファンタジー
断罪まで、あと10分。 処刑台の上で跪く悪役令嬢スカーレットは、笑っていた。 なぜなら彼女は―― 前世で“トップインフルエンサー”だったから。 処刑の瞬間、彼女が起動したのは禁忌の精霊石。 空に展開された巨大モニターが、全世界同時ライブ配信を開始する。 タイトルは―― 『断罪なう』。 王子の不貞、聖女の偽善、王家の腐敗。 すべてを“証拠付き・リアルタイム”で暴露する配信に、 国民の「いいね(=精霊力)」が集まり始める。 そして宣言される、前代未聞のルール。 支持率が上がるほど、処刑は不可能になる。 処刑台は舞台へ。 断罪はエンタメへ。 悪役令嬢は、世界をひっくり返す配信者となった。 これは、 処刑されるはずだった悪役令嬢が、 “ライブ配信”で王子と王国を公開処刑する物語。 支持率100%の先に待つのは、復讐か、革命か、 それとも――自由か。

最難関ダンジョンをクリアした成功報酬は勇者パーティーの裏切りでした

新緑あらた
ファンタジー
最難関であるS級ダンジョン最深部の隠し部屋。金銀財宝を前に告げられた言葉は労いでも喜びでもなく、解雇通告だった。 「もうオマエはいらん」 勇者アレクサンダー、癒し手エリーゼ、赤魔道士フェルノに、自身の黒髪黒目を忌避しないことから期待していた俺は大きなショックを受ける。 ヤツらは俺の外見を受け入れていたわけじゃない。ただ仲間と思っていなかっただけ、眼中になかっただけなのだ。 転生者は曾祖父だけどチートは隔世遺伝した「俺」にも受け継がれています。 勇者達は大富豪スタートで貧民窟の住人がゴールです(笑)

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

処理中です...