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第3章
第81話 異形
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「くそっ! せっかく敷島の連中を追い込んでいるというのに……」
オリアーナと優雅に戦場を眺めていたというのに、突如侵入者が現れたことで状況が変わった。
報告に来た兵の話によると、戦場に生物兵器を送り出す東西の棟を襲われ、研究員が皆殺しにされたらしい。
しかも、その侵入者は今度はこの棟を狙っているようで、下の階がどんどんと騒がしくなってくる。
せっかくこれまでアデマス王国から受けた鬱憤を晴らせると思っていたというのに、そんな事を言っている場合ではなくなってしまった。
「そんな事を言っている場合ではありませんよ! いつ侵入者が上がってくるか分かりません!」
「くそっ! 仕方ない、逃げるぞ!」
「はい!」
オリアーナの言葉で、クラレンスは歯を食いしばりつつ考えを切り替える。
この部屋には、非常時にクラレンスが脱出するための特別な通路がある。
その通路を使って、クラレンスとオリアーナは脱出を図ることにした。
「ギャッ!!」
「「っっっ!!」」
緊急避難用の通路へ向かう途中、部屋のすぐ外からうめき声が聞こえる。
2人は驚きつつその声に反応する。
すると、部屋の扉がゆっくり開いた。
「…………見つけた」
扉が開いて、1人の男が入ってくる。
そして、その男はクラレンスとオリアーナを見て笑みを浮かべた。
「久しぶりだなオリアーナ」
「……知っているのか?」
「……いいえ、全く!」
入ってきた男は限。
自分を敷島から引き取り、研究所につれていった張本人であるオリアーナに久々に会い、限は沸き上がる怒りを抑えて話しかける。
それに対し、クラレンスとオリアーナは顔を見合わせる。
どうやら相手は自分のことを知っているような様子だが、オリアーナには全く覚えがない。
「……覚えていないか。そりゃそうか、利用価値がなくなって地下廃棄場に捨てた相手だからな」
自分を見ても思い出す素振りを見せないオリアーナ。
その反応に、限はこめかみに血管を浮き上がらせるが、醜く変異して廃棄した人間のことなど覚えていないのは仕方がない。
「地下廃棄場ですって……?」
「験体番号42番……」
「っ!!」
オリアーナは地下廃棄施設という言葉に反応する。
アデマス王国の研究所にいた時、利用価値のなくなった実験体を地下に廃棄していた。
そのことを知っているということは、この男は研究所の内部に入ったことがあるということだ。
そして、限が実験体時の番号を呟いた瞬間、オリアーナは目を見開いた。
「あんた、まさか敷島の出来損ない……」
「おぉ、思いだしたか?」
験体番号42番。
それは、自分が敷島の人間を研究するために受け入れた出来損ないの番号だ。
そのことをオリアーナが思いだした様子に呟くと、限は若干嬉しそうな表情へ変わった。
殺すにしても、自分のこれまでのおこないを悔いた状態のオリアーナを殺したい。
思い出してもらえたのは喜ばしいことだ。
「……驚いたわ。まさかあの状態から生き残っているなんて……」
42番は地下廃棄場に捨てた。
そのことは、キチンと報告を受けている。
最後は度重なる実験により、二目と見れない姿に変化した化け物。
それが42番の最終的な姿だったはず。
廃棄された地下で息があったとしても、あの状態で生き残るなんてことができるなんて信じられないことだ。
いくつもの実験に耐えたことといい、どれだけ強靭な肉体と精神をしているというのだろうか。
「クラレンス伯爵。あんたアウーリエって町でこいつの研究に関わっていただろ?」
「っ!! ……まさか、アウーリエの町で研究員と領主邸を放火したのは……?」
「俺だ。人造兵器なんかに手を出したあんたも同罪だ。そいつと同様死んでもらう」
「貴様ーーっ!!」
発言内容から、この男はアウーリエの町の秘密のことを知っている。
そのため、クラレンスはこの男が領主邸の放火に関係していると察した。
そのことを問いかけると、男は白状するように返答してきたため、クラレンスは激昂した。
「貴様! ラクト帝国相手にこんなことをしてタダで済むと思っているのか!?」
「そのことは心配ない」
「……何?」
「そもそも、俺の顔を見た人間は全員死んでいる。ラクト帝国に追われることはない」
「何だと……」
ラクト帝国の陣地に侵入して殺戮を働くなど、国を相手にケンカを売っているようなものだ。
この場で自分たちを殺害しようとも、今後帝国から追われることになることは間違いない。
しかし、限はそんな事関係ないような表情で返答する。
探知を使って警備の配置は把握していた。
自分の姿を見た者は、全員始末しているため、帝国側に睨まれることもない。
というより、追っ手を仕向けられたとしても、敷島のトップレベルの相手でないと自分を殺せることはない。
殺せるものなら殺してみろと言う所だ。
「まぁ、昔話をしていても時間の無駄だ。さっさと死んでもらおう」
「くっ!」
この砦内には、まだまだ多くの兵が残っている。
その者たちが棟の異変に気付いて集まってきてしまえば、顔がバレることになる。
余計な追っ手をかけられないためにも、限は2人を殺すべく左手で刀の鞘を握り、鍔に親指をかけて少しだけ殺気を漏らした。
少しの殺気でも、クラレンスには強力なプレッシャーになる。
殺気による恐怖で足が固まり、クラレンスは脱出の通路へ向かうことができず、その場に立ち尽くすことしかできなくなった。
「フッ!」
クラレンスと験体42番のやり取りを見ていたオリアーナは、何故か急に笑みを浮かべる。
あまりにも一瞬だったために、2人はそのことに気付くことはなかった。
“スッ!!”
「ガッ!?」
「っ!?」
限が動くより先にオリアーナが動く。
背後から近付き、手に持った注射器をクラレンスに刺した。
「な、なにを……?」
「私個人が作り上げた特別製よ。私の逃走時間を稼いでください」
「貴、貴様……! ガッ!?」
注射器から液体が注入される。
オリアーナの突然の行動に、クラレンスは戸惑いつつ問いかける。
そんなクラレンスに対し、オリアーナは悪びれる様子もなく返答した。
何を注射したのか問いただそうとしたクラレンスだったが、すぐにそれができなくなった。
その場へとしゃがみ込み、クラレンスは苦しみだした。
「ガアァーーーァァア!!」
「じゃあね!」
呻き声を上げ始めたクラレンスを見たオリアーナは、限へ笑みを浮かべて一言呟くと、脱出用の通路へ向けて走り始めた。
「逃がすか!!」
オリアーナの向かう方向に扉がある。
先程の口ぶりから、その扉から脱出するつもりなのだろう。
そのことを理解した限は、オリアーナを捕まえるために追いかける。
「っ!!」
「グアァッ!!」
オリアーナを追いかける限は、突如目の前に現れた生物に足を止める。
限の進路に立ち塞がったのは、異形の姿へと変化したクラレンスだった。
オリアーナと優雅に戦場を眺めていたというのに、突如侵入者が現れたことで状況が変わった。
報告に来た兵の話によると、戦場に生物兵器を送り出す東西の棟を襲われ、研究員が皆殺しにされたらしい。
しかも、その侵入者は今度はこの棟を狙っているようで、下の階がどんどんと騒がしくなってくる。
せっかくこれまでアデマス王国から受けた鬱憤を晴らせると思っていたというのに、そんな事を言っている場合ではなくなってしまった。
「そんな事を言っている場合ではありませんよ! いつ侵入者が上がってくるか分かりません!」
「くそっ! 仕方ない、逃げるぞ!」
「はい!」
オリアーナの言葉で、クラレンスは歯を食いしばりつつ考えを切り替える。
この部屋には、非常時にクラレンスが脱出するための特別な通路がある。
その通路を使って、クラレンスとオリアーナは脱出を図ることにした。
「ギャッ!!」
「「っっっ!!」」
緊急避難用の通路へ向かう途中、部屋のすぐ外からうめき声が聞こえる。
2人は驚きつつその声に反応する。
すると、部屋の扉がゆっくり開いた。
「…………見つけた」
扉が開いて、1人の男が入ってくる。
そして、その男はクラレンスとオリアーナを見て笑みを浮かべた。
「久しぶりだなオリアーナ」
「……知っているのか?」
「……いいえ、全く!」
入ってきた男は限。
自分を敷島から引き取り、研究所につれていった張本人であるオリアーナに久々に会い、限は沸き上がる怒りを抑えて話しかける。
それに対し、クラレンスとオリアーナは顔を見合わせる。
どうやら相手は自分のことを知っているような様子だが、オリアーナには全く覚えがない。
「……覚えていないか。そりゃそうか、利用価値がなくなって地下廃棄場に捨てた相手だからな」
自分を見ても思い出す素振りを見せないオリアーナ。
その反応に、限はこめかみに血管を浮き上がらせるが、醜く変異して廃棄した人間のことなど覚えていないのは仕方がない。
「地下廃棄場ですって……?」
「験体番号42番……」
「っ!!」
オリアーナは地下廃棄施設という言葉に反応する。
アデマス王国の研究所にいた時、利用価値のなくなった実験体を地下に廃棄していた。
そのことを知っているということは、この男は研究所の内部に入ったことがあるということだ。
そして、限が実験体時の番号を呟いた瞬間、オリアーナは目を見開いた。
「あんた、まさか敷島の出来損ない……」
「おぉ、思いだしたか?」
験体番号42番。
それは、自分が敷島の人間を研究するために受け入れた出来損ないの番号だ。
そのことをオリアーナが思いだした様子に呟くと、限は若干嬉しそうな表情へ変わった。
殺すにしても、自分のこれまでのおこないを悔いた状態のオリアーナを殺したい。
思い出してもらえたのは喜ばしいことだ。
「……驚いたわ。まさかあの状態から生き残っているなんて……」
42番は地下廃棄場に捨てた。
そのことは、キチンと報告を受けている。
最後は度重なる実験により、二目と見れない姿に変化した化け物。
それが42番の最終的な姿だったはず。
廃棄された地下で息があったとしても、あの状態で生き残るなんてことができるなんて信じられないことだ。
いくつもの実験に耐えたことといい、どれだけ強靭な肉体と精神をしているというのだろうか。
「クラレンス伯爵。あんたアウーリエって町でこいつの研究に関わっていただろ?」
「っ!! ……まさか、アウーリエの町で研究員と領主邸を放火したのは……?」
「俺だ。人造兵器なんかに手を出したあんたも同罪だ。そいつと同様死んでもらう」
「貴様ーーっ!!」
発言内容から、この男はアウーリエの町の秘密のことを知っている。
そのため、クラレンスはこの男が領主邸の放火に関係していると察した。
そのことを問いかけると、男は白状するように返答してきたため、クラレンスは激昂した。
「貴様! ラクト帝国相手にこんなことをしてタダで済むと思っているのか!?」
「そのことは心配ない」
「……何?」
「そもそも、俺の顔を見た人間は全員死んでいる。ラクト帝国に追われることはない」
「何だと……」
ラクト帝国の陣地に侵入して殺戮を働くなど、国を相手にケンカを売っているようなものだ。
この場で自分たちを殺害しようとも、今後帝国から追われることになることは間違いない。
しかし、限はそんな事関係ないような表情で返答する。
探知を使って警備の配置は把握していた。
自分の姿を見た者は、全員始末しているため、帝国側に睨まれることもない。
というより、追っ手を仕向けられたとしても、敷島のトップレベルの相手でないと自分を殺せることはない。
殺せるものなら殺してみろと言う所だ。
「まぁ、昔話をしていても時間の無駄だ。さっさと死んでもらおう」
「くっ!」
この砦内には、まだまだ多くの兵が残っている。
その者たちが棟の異変に気付いて集まってきてしまえば、顔がバレることになる。
余計な追っ手をかけられないためにも、限は2人を殺すべく左手で刀の鞘を握り、鍔に親指をかけて少しだけ殺気を漏らした。
少しの殺気でも、クラレンスには強力なプレッシャーになる。
殺気による恐怖で足が固まり、クラレンスは脱出の通路へ向かうことができず、その場に立ち尽くすことしかできなくなった。
「フッ!」
クラレンスと験体42番のやり取りを見ていたオリアーナは、何故か急に笑みを浮かべる。
あまりにも一瞬だったために、2人はそのことに気付くことはなかった。
“スッ!!”
「ガッ!?」
「っ!?」
限が動くより先にオリアーナが動く。
背後から近付き、手に持った注射器をクラレンスに刺した。
「な、なにを……?」
「私個人が作り上げた特別製よ。私の逃走時間を稼いでください」
「貴、貴様……! ガッ!?」
注射器から液体が注入される。
オリアーナの突然の行動に、クラレンスは戸惑いつつ問いかける。
そんなクラレンスに対し、オリアーナは悪びれる様子もなく返答した。
何を注射したのか問いただそうとしたクラレンスだったが、すぐにそれができなくなった。
その場へとしゃがみ込み、クラレンスは苦しみだした。
「ガアァーーーァァア!!」
「じゃあね!」
呻き声を上げ始めたクラレンスを見たオリアーナは、限へ笑みを浮かべて一言呟くと、脱出用の通路へ向けて走り始めた。
「逃がすか!!」
オリアーナの向かう方向に扉がある。
先程の口ぶりから、その扉から脱出するつもりなのだろう。
そのことを理解した限は、オリアーナを捕まえるために追いかける。
「っ!!」
「グアァッ!!」
オリアーナを追いかける限は、突如目の前に現れた生物に足を止める。
限の進路に立ち塞がったのは、異形の姿へと変化したクラレンスだった。
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