復讐、報復、意趣返し……とにかくあいつらぶっ殺す!!

ポリ 外丸

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第4章

第87話 紛れ

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「かかれー!!」

「「「「「オォーーー!!」」」」」

 指揮官の指示を受けて、ラクト帝国の兵たちが菱山派閥の敷島の者たちへと動き出す。
 源斎たち300人の敷島人の進軍に、ラクト帝国が急遽集められたのは6000。
 20倍の兵数が、敷島の者たちに襲い掛かっていった。

「フンッ!!」

「ゴアッ!!」「グエっ!!」「ウガッ!!」

 ある敷島の者に襲い掛かった帝国兵たち。
 彼らに対し、敷島の者は刀を抜いて対応する。
 そして、その敷島の者は、自分に迫った順に一殺していった。

「オラッ!!」

「ぐえっ!!」「どわっ!!」「へぶっ!!」

 少し離れた場所でも、敷島の者と帝国兵の戦いが繰り広げられる。
 槍を手に襲い掛かる帝国兵たちに、体躯の敷島人が巨大な戦斧を振り回す。
 そのたった一振りで、一気に3人の上半身と下半身が斬り裂かれることになった。

「フッ! まるで紙きれだな……」

 帝国兵たちと戦う敷島の者たちの様子を、源斎は離れた位置で眺めていた。
 何人もの帝国兵に囲まれていようとも、1人1人が強力な戦闘力を有する者たち。
 20倍の兵数差では全く苦になっておらず、源斎は当然のこととしてこの状況を受け入れていた。
 
「……やはり特殊兵器が出て来ませんね?」

 帝国兵たちの攻撃は全く通用しない。
 敷島の者たちに、掠り傷を与えるのが精一杯といったところだ。
 兵がバタバタと倒されて行くというのに、前回敷島の者たちを苦しめた生物兵器を出してくる気配がない。
 この状況に、部下の男は源斎へと話しかける。

「あぁ、あの軽口野郎の言っていたことは本当だったようだな……」

 部下の言葉に、源斎は頷きを返す。
 軽口野郎というのは、斎藤家の天祐のことだ。
 天祐が話していたことを盗み聞きし、その情報の正否を念のため確認した。
 その確認により、天祐言っていることはほぼ・・間違いないという結論になっていた。
 ほぼ・・というのは、中里家と木内家の者が生物兵器を作り出すための薬品を製造する研究所を破壊したというのが確認できなかったからだ。
 たしかに薬品を製造する研究所は、火災により全焼したという話だ。
 生物兵器の研究をしていたオリアーナたちの研究所や費用などを提供していたのは、クラレンスという伯爵だった。
 そのクラレンス伯爵の他の領地も捜査したが、研究施設は発見されなかったことから、生物兵器を作成するための薬品製造所は、アウーリエにしかなかったようだ。
 その唯一の研究所がなくなったことは確実なため、源斎たちが独断で帝国との戦闘に突き進んだのだ。

「もしも出たとしても、少数だと予想される。恐れる必要はない」

 前回ラクト帝国が送り出してきた生物兵器は、六本腕での鬼のような魔物と、魔法を得意とする暴食のワニの魔物だった。
 どちらも敷島の者でも危険な存在だったが、少数なら連携して対処すればどうにかなる相手だ。
 そのため、源斎は態度を変えることなく返答した。

「そうですね」

 六本腕の鬼と暴食のワニも、前回嫌というほど戦った。
 数が多かった場合は脅威になるが、少数なら恐れるに値しない。
 源斎の言葉に、部下の男も納得した。
 




「ハハッ! 生物兵器のない帝国兵なんて、ただのザコの集まりじゃねえか!」

「全くだ!」

 戦いは圧倒的に敷島軍の有利で進んで行く。
 死人が増えていく帝国とは違い、敷島の方は片手で数える程度の重傷者しか出ていない。
 幼少期から鍛え上げた実力を試す絶好の機会として、敷島の若い兵たちはやりたい放題と言うかのように帝国兵たちを笑みを浮かべながら斬り刻んで行った。

「ヒッ!!」

「おいおい! そんな腰が引けてちゃ、勝てる訳ないだろ?」

 10人程で取り囲んだというのに、たった2人によってあっという間に2人にまで減らされてしまった。
 あまりのことに、残った帝国兵は恐怖で後退りする。
 それを見て、敷島の1人が馬鹿にしたように話しかけた。

「ハッ!!」

「ガッ!!」

 怯えていつまで経っても攻めてこない帝国兵に対し、敷島の兵は一瞬で距離を詰めて斬りかかる。
 何もできないでいた帝国兵は、首から大量の出血を噴出してその場へと崩れ落ちた。

「反応すらできないのかよ……」

 斬り殺した敷島の兵は、つまらなそうに呟く。
 死の間際の必死な抵抗を求めていたのに、無抵抗な対応だったことに落胆したようだ。

「残りはお前だけだ。あっさり殺してやるからかかって来いよ」

 残る帝国兵はあと1人。
 標的と見定めたもう1人の敷島兵が、その帝国兵に刀の剣先を向けた。

「…………」

“スッ!”

「おぉ! いいぞ!」

 残った帝国兵は、腰が引ける訳でもなく、無言で自分に剣先を向ける敷島兵に刀を構えた。
 さっきの兵とは違い、抵抗する素振りを見せたことに、敷島兵は笑みを浮かべた。

“ズバッ!!”

「……えっ?」

 剣先を向けていた敷島兵の首が、胴体から転げ落ちる。
 本人も何が起きたのか分からず、自分の体を見上げながら素っ頓狂な声を漏らした。
 それが最期の言葉となり、敷島の兵の胴体が崩れ落ちた。

「……えっ!? な、何が……!?」

 生き残った2人の帝国兵を、1人が1人を仕留めるつもりでいた。
 いくら敷島の者でも、多勢に無勢では怪我を負う場合があるが、1対1なら脅威になるはずがないと思っていた。
 それなのに、どうして仲間の首が飛んでいるのか理解しがたい。

「くっ!! おのれ、よくもっ!!」

 仲間が殺られて何もしないわけにはいかない。
 残った敷島兵は、慌てて武器に血をびっしりと着けた帝国兵へと刀を構えた。

「その程度の実力で調子に乗っているからだ」

「何だと!?」

 少し前まで余裕をかましていたはずの敷島兵が困惑している様子を見て、帝国兵は笑みを浮かべつつ話しかける。
 その馬鹿にした態度に、敷島兵はこめかみに青筋を立てた。

「……っ!? おいっ! 何でお前はを持っているんだ!?」

 自分に対して、どこか余裕を見せるように悠然と構える帝国兵。
 それを見て、敷島兵は違和感を覚える。
 その違和感の意味はすぐに気付いた。
 敷島の人間のみが使っていると言われる刀を、その帝国兵が持っていたからだ。

“ズバッ!!”

「がっ!!」

「俺も敷島人だからだよ……」

 先程と同様に帝国兵の姿が消える。
 次の瞬間には、敷島兵の首が斬り飛ばされていた。
 そんな死に逝く敷島兵に対し、その帝国兵は冥途の土産とでも言うかのように質問の答えを返したのだった。

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