復讐、報復、意趣返し……とにかくあいつらぶっ殺す!!

ポリ 外丸

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第4章

第93話 身バレ

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「おのれ! ここまで死人が出るとは……」

 失態を取り戻すために独断で帝国への進軍をおこなったというのに、これでは失態を上乗せしたに過ぎない。
 その元凶となった帝国兵を殺さないことには退くに引けないため、源斎は自ら動くことにした。
 死屍累々と言うべき周囲の様子に、源斎は怒りで打ち震える。
 これだけの人数をかけても倒せない人間が、帝国側にいたなんて計算違いだ。
 前回の生物兵器の方が、まだマシに思えてくる。

「殺す!!」

「……おぉ! すげえ殺気だ」

 怒りの表情と共に抜刀する源斎。
 それを見て、限は武者震いをする。
 敷島の中でも最高位にいる3家のうちの1家である菱山家当主の本気と戦えることが、何故か楽しみだからだ。

“フッ!!”

「っ!!」

 刀を抜いて構えを取ったと思ったら、源斎の姿が消える。
 限は慌てて横へと跳んだ。

“ズバッ!!”

「危ね!」

「チッ!!」

 限が横に跳んだすぐ後、源斎が姿を現し刀を振り下ろす。
 それにより、先程まで限がいた場所の地面が、数メートル斬り裂かれた。
 探知した瞬間、姿を確認する前に跳ぶという選択の成功に、限は軽く胸をなで下ろす。
 初手による殺害失敗に、源斎は舌打ちをした。

「そう言えば、菱山家は気配を消すのが上手いんだったな……」

「…………貴様、何者だ?」

 限の呟きは、源斎の耳に入っていた。
 まるで敷島内部のことを知っているかのような発言だ。
 その発言に、源斎は訝し気な表情で限のことを睨みつけた。

「……何者ってのはどういうことだ?」

 源斎の様子が少し変わったのを感じ、どうやら余計なことを呟いてしまったかもしれないと、限は警戒しながら問い返す。

「考えればおかしい。敷島の人間相手にこれだけ戦える人間が帝国にいるのなら、こちらに情報が入っているはずだ。それなのに、そんな情報こちらに一切入っていない」

 帝国のことは戦争が起きる前から調べている。
 敷島の人間のなかでも、諜報能力に長けた者を送り込んでいる。
 彼らなら、これほどの強さをした者のことを見逃すはずがない。

「しかも、敷島の刀を使いこなすことなど、いくら剣の才に恵まれていようと一朝一夕ではできない。まるで昔から刀での訓練をしていたかのようだ」

 剣の才能に恵まれた者なら、武器が変わろうとも大幅に能力を落とすようなことはないだろう。
 しかし、敷島の者で島外に出られるのは、剣の才に恵まれている者ばかりだ。
 だというのに圧倒するということは、刀の扱いに慣れているとしか言いようがない。

「貴様……、帝国の人間ではないな?」

「…………」

 内部にいる諜報員が気付かなかったということは、帝国以外の人間だという可能性が高い。
 そう考えれば納得できるため源斎が問いかけると、限はどう言い逃れるべきかを考え無言になってしまった。

「その無言は肯定と受け取るぞ?」

「ハァ……」

 無言になってしまったのは失敗だった。
 帝国兵の恰好をしているというのに、源斎にはあっさりと帝国兵ではないとバレてしまった。
 自分のミスに、限はため息を吐くしかなかった。

「ご明察。しかし、俺が何者かなんて教えてやる義理はない」

 帝国兵でないということはバレたが、さすがに元斎藤家の人間だということはバレていない。
 当然そのことを教える訳もなく、限は最初に源斎がした質問に答えることを拒否した。

「それもそうだな。だとしたら……」

 敵に何者かを知られれば、場合によっては戦いに支障が出る。
 ならば、当然答える訳もない。
 答えに頷いた源斎は、話をしながら刀を限へと向ける。

「力尽くで吐かせるだけだ!」

 構えを取った途端、源斎は体内の魔力を放出し、その魔力を全身に纏った。
 そして、身体強化を図ると共に、またも強力な殺気を放った。

「フッ! 出来るもんならやってみろよ」

「ガキが! 舐めるなよ!」

 強力な殺気を受けても、限は表情を変えることはない。
 それどころか、源斎に対して手招きまでおこなう。
 そのあまりにも舐めた態度に、源斎の表情は更に険しくなった。

“フッ!!”

「…………」

 またも源斎の姿が消える、
 それを見ても、限は無言のまま動かない。

「そこだ!!」

 無言でいた限が動く。
 誰もいないところに向けて刀を振った。

「っ!!」

「くっ!」

 限が降った刀が源斎の顔の側を通り抜ける。
 そして、そのまま姿を現した源斎が放っていた突きが、限の頬を掠った。

「チッ! ちょっとズレたか……」

 一瞬の交錯の後距離を取り合うと、限は舌打をして頬から流れる血を拭う。

「……貴様、俺の位置を……」

 先程の限の攻撃に、源斎は驚きを含んだ表情で呟く。
 当たりはしなかったが、あと数センチで自分の顔が斬られていた。
 明かに、自分の位置を把握しての攻撃だった。
 しかも、破れかぶれというものではない。
 これにより、源斎は限への警戒を最大に高めることにした。

“フッ!!”

「それがいつまでも……」

 またも源斎の姿が消える。
 それを見て、限は視線を周囲へ動かす。

“フッ!!”

「通用すると思うなよ!」

「なっ!?」

 背後から斬りつけにかかると、今度は限の姿が消える。
 源斎が使っている技術と同じものだ。
 まさか自分と同じ技を使って来るとは思わず、源斎の攻撃は空を切った。

「ハッ!!」

「グッ!!」

 空振りをして隙ができた源斎。
 そこを見逃さず、限は胴を斬りかかる。
 それに反応した源斎は、体を捻って攻撃の回避にかかる。
 限の刀が振り切られると、源斎の血が舞った。

「くそっ! 浅い……」

 刀から伝わる手応えに、限は悔しそうに呟いた。
 その言葉通り、攻撃は源斎の脇腹を浅く斬ったに過ぎなかった。

「バカな……」

 脇腹を抑え、源斎は信じられないと言ったような表情で、限のことを見つめる。

「たった数回見ただけで、技を盗んだというのか……?」

 高速移動と共に気配を消す技術。
 菱山家は、得意とするこの技術で大半の人間を殺してきた。
 初見殺しともいえるこの技術に対し、目の前の帝国兵は1回目は躱すことに成功し、2回目には対応し、そして3回目には技術そのものを盗んで来た。
 菱山家自慢のこの技は、短期間で盗めるほど簡単なものではない。
 習得にはかなりの時間と労力を必要とする。
 他家の人間どころか、敷島の人間でもない者がこうもあっさりと盗むことなどできるわけがない。

「もしかして、貴様敷島の人間なのか? しかし、外に出た敷島の人間で対象に値するものは……」

 敷島の訓練を受けている者ならば、僅かな可能性としてあり得る。
 そうなると、目の前にいる帝国兵。
 いや、帝国兵の姿をした者は、敷島の人間の可能性が考えられた。

「まさか……」

 敷島の人間が島から出るには、必ず理由が存在する。
 無断で出ようとする者がいれば、場合によっては始末することがあるほど厳重なルールだ。
 そのルールを破って生き延びた者は確認されていないことから、きちんと許可を得て外に出た者ということだ。
 そのなかで、死んだとさえているがその死体が確認されていない者がいる。
 源斎は、その者のことが頭をよぎった。

「貴様、斎藤家の魔無しか?」

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