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第5章
第120話 噂
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「があっ!!」「ぐあっ!!」
アデマス王国の貴族たちによる連合軍。
その兵たちにより、1人また1人と敷斎側の兵が城壁から落とされて行く。
「しつこい!!」
アデマス側の兵が敷斎側の兵を叩き落としても、彼らは何度も這い上がってくる。
そのしぶとさに、落とす側の兵たちは思わず愚痴る。
「くっ! まずいな……」
高所から落とされても、1度や2度では薬により強化された肉体は壊れない。
奴隷紋を付けられている彼らは、命令に従って死ぬまで攻め続けるしかないのだろう。
そんな敷斎兵を止め続けることは難しく、城壁の上にいるアデマス兵たちは抑えきれなくなってきた。
「城門も時間の問題だぞ!」
敷斎側は、城壁からの侵入を試みると共に、攻城兵器により城門の破壊をおこなって来ている。
そちらも兵たちが攻撃することで抑えていたのだが、限界が近付いて来ていた。
「退避するぞ!」
「了解!」
城門の限界が近いと知ると、アデマス兵たちはすぐさま階段を駆け下り、近くに配備していた馬へと乗りこみ、そのまま南へ向けて走らせた。
まるで予定通りの行動と言うように、兵たちは迅速に動く。
そして、兵たちが城壁から砦内に入り、城門が壊される頃には砦の南門までたどり着いていた。
「……よし! 今だ!」
南門から馬に乗ったアデマス兵が飛び出す。
そして、全ての兵が砦内から脱出した様子を確認した最後尾の兵が、ある方向に向かって合図を送る。
“ズドーーーンッ!!”
合図を受けたのは、先に南門から脱出していた魔法師団だ。
魔法師団の彼らは、待っていたと言わんばかりに魔法を発動させる。
それにより、敵の侵入した砦全体が爆発を起こし、巨大な噴煙を巻き上げた。
「馬車を発車させろ!」
設置した魔法陣を発動させるだけとはいえ、魔法師団の者たちは魔力を使い切ることになった。
そのため、魔力の消費による疲労で、多くの者が気を失う。
彼らがこうなることは承知済み。
そのため、他の兵は倒れた彼らをテキパキと荷台に乗せ、すぐさま馬車を発車させた。
「……本当にこれで良いのかよ」
砦内に入り込んだ大量の敷斎側の兵たち。
いくら薬で強化していようとも、あれだけの爆発に呑み込まれては、ただでは済まないはず。
もしも生き残れたとしたら、運が良いとしか言いようがない。
しかし、彼らも元はアデマス王国の人間で、敷斎側の手によって奴隷化されて指示に従っていただけに過ぎない。
そんな彼らを砦ごと吹き飛ばすなんて、やはり心が痛む。
巨大な噴煙を巻き上げる砦に、指揮をしていた男は思わず呟いた。
「閉門!!」
爆破した砦から南西にしばらく進み、アデマス兵たちは別の砦へと辿り着いた。
逃げてきた兵が全員砦内に入ると、砦の門が閉められる。
「ご苦労でしたな。リンドン殿」
「ありがとうございます。ラトバラ様」
少しして、砦内のアデマス王国貴族たちが会議室に集合する。
そして、一番上座に座る男性ことラトバラ公爵が、逃走してきた指揮官の男性ことリンドン伯爵に、作戦成功の労いの言葉をかける。
王都近くを領地としているため、公爵家・侯爵家の者たちはすぐさま敷島の者たちによって潰されていった。
その中でも、ラトバラ公爵だけは王都の異変に逸早く気付き、逃走を計ったことで難を逃れた。
今や王家の血を引くのは彼と彼の息子だけ。
彼らを旗頭として、アデマス側は戦っている。
「………………」
「……どうした? 作戦成功したにおかかわらず、表情が優れないな」
「いや……」
敵を大量に倒すことに成功したというのに、リンドン伯は表情が暗い。
それを見て、ラトバラはその理由を問いかける。
それに対し、リンドンは言いにくそうに頭を左右に振った。
「……気持ちはわかる。攻めてくるのは敷島の奴らに奴隷されたアデマス王国の者たち。そんな彼らを殲滅しなければならないのだからな……」
「ラトバラ様……」
ラトバラは、リンドンが思っていることをズバリ言い当てる。
何故なら、彼自身も同じ思いをしているからだ。
敵を砦ごと破壊するという無残な策を講じたが、本当はそんなことしたくはない。
出来れば、敷島の人間だけを始末してこの戦いに勝利したい。
「彼らのことが気になるのは分かる。しかし、彼らを倒さない限り敷島の連中を相手にする事も出来ん」
「はい……」
無理やり奴隷にし、薬で強化して戦わせる。
敷島の者たちは、そんな事を平気でやる連中だ。
強化奴隷兵の彼らを倒さない限り、後方に控える敷島の者たちには届かない。
アデマス王国の復興が最終目標の自分たちは、どんな方法を取ってでも敷島の者たちを殲滅しなければならない。
そのためには、彼らを犠牲にする事を我慢するしかない。
「これで奴らはなかなか攻め込んで来られないでしょう。しかし、あの噂は本当なのでしょうか?」
敷島の者たちを殲滅するためには、彼らに奴隷兵として利用されているアデマスの者たちを倒さなければならない。
今回のことで敵は同じ目に遭わないよう慎重になり、無理やり攻め込んでくるようなことはなくなるだろう。
そうやって、攻め込ませなくするために、リンドンたちは砦ごとの破壊をおこなったのだ。
このような方法を取ったのは、リンドンが言うようにある噂が根底にあるからだ。
「我々も真偽のほどは定かではない。だが、あの噂に縋るしか勝機が見い出せないのが現状だ」
今回の作戦は、この砦に攻め込ませないようにして時間を稼ぐためだ。
兵たちの中で流れるある噂。
それを信じて時間を稼げば勝機がある。
確証の無い噂に頼らなければならないなんて、兵たちとしてもいまいち士気が上がらないだろうが、噂が本当ならこちらが一気に攻勢に出られる。
ラトバラたちアデマス側は、噂を信じて時間を稼ぎ、勝機が訪れるのを待つしかなかった。
「……うまくいったようですね」
「あぁ」
ラトバラたちが会議をしている中、鎧を身に纏った2人の兵が砦内を歩いていた。
そして、周りに人がいないことを確認した2人は、小さい声で会話を始めた。
「アデマス側は我々が流した信じているようだ」
「えぇ」
噂を流したのは彼らだ。
流した噂は彼らが意図した通りにアデマス王国側の上層部にまで届き、その噂を元にした戦いへと移行していった。
思い通りの結果になっていることに、鎧に身を包んだ2人。
限とレラはその場を後にした。
アデマス王国の貴族たちによる連合軍。
その兵たちにより、1人また1人と敷斎側の兵が城壁から落とされて行く。
「しつこい!!」
アデマス側の兵が敷斎側の兵を叩き落としても、彼らは何度も這い上がってくる。
そのしぶとさに、落とす側の兵たちは思わず愚痴る。
「くっ! まずいな……」
高所から落とされても、1度や2度では薬により強化された肉体は壊れない。
奴隷紋を付けられている彼らは、命令に従って死ぬまで攻め続けるしかないのだろう。
そんな敷斎兵を止め続けることは難しく、城壁の上にいるアデマス兵たちは抑えきれなくなってきた。
「城門も時間の問題だぞ!」
敷斎側は、城壁からの侵入を試みると共に、攻城兵器により城門の破壊をおこなって来ている。
そちらも兵たちが攻撃することで抑えていたのだが、限界が近付いて来ていた。
「退避するぞ!」
「了解!」
城門の限界が近いと知ると、アデマス兵たちはすぐさま階段を駆け下り、近くに配備していた馬へと乗りこみ、そのまま南へ向けて走らせた。
まるで予定通りの行動と言うように、兵たちは迅速に動く。
そして、兵たちが城壁から砦内に入り、城門が壊される頃には砦の南門までたどり着いていた。
「……よし! 今だ!」
南門から馬に乗ったアデマス兵が飛び出す。
そして、全ての兵が砦内から脱出した様子を確認した最後尾の兵が、ある方向に向かって合図を送る。
“ズドーーーンッ!!”
合図を受けたのは、先に南門から脱出していた魔法師団だ。
魔法師団の彼らは、待っていたと言わんばかりに魔法を発動させる。
それにより、敵の侵入した砦全体が爆発を起こし、巨大な噴煙を巻き上げた。
「馬車を発車させろ!」
設置した魔法陣を発動させるだけとはいえ、魔法師団の者たちは魔力を使い切ることになった。
そのため、魔力の消費による疲労で、多くの者が気を失う。
彼らがこうなることは承知済み。
そのため、他の兵は倒れた彼らをテキパキと荷台に乗せ、すぐさま馬車を発車させた。
「……本当にこれで良いのかよ」
砦内に入り込んだ大量の敷斎側の兵たち。
いくら薬で強化していようとも、あれだけの爆発に呑み込まれては、ただでは済まないはず。
もしも生き残れたとしたら、運が良いとしか言いようがない。
しかし、彼らも元はアデマス王国の人間で、敷斎側の手によって奴隷化されて指示に従っていただけに過ぎない。
そんな彼らを砦ごと吹き飛ばすなんて、やはり心が痛む。
巨大な噴煙を巻き上げる砦に、指揮をしていた男は思わず呟いた。
「閉門!!」
爆破した砦から南西にしばらく進み、アデマス兵たちは別の砦へと辿り着いた。
逃げてきた兵が全員砦内に入ると、砦の門が閉められる。
「ご苦労でしたな。リンドン殿」
「ありがとうございます。ラトバラ様」
少しして、砦内のアデマス王国貴族たちが会議室に集合する。
そして、一番上座に座る男性ことラトバラ公爵が、逃走してきた指揮官の男性ことリンドン伯爵に、作戦成功の労いの言葉をかける。
王都近くを領地としているため、公爵家・侯爵家の者たちはすぐさま敷島の者たちによって潰されていった。
その中でも、ラトバラ公爵だけは王都の異変に逸早く気付き、逃走を計ったことで難を逃れた。
今や王家の血を引くのは彼と彼の息子だけ。
彼らを旗頭として、アデマス側は戦っている。
「………………」
「……どうした? 作戦成功したにおかかわらず、表情が優れないな」
「いや……」
敵を大量に倒すことに成功したというのに、リンドン伯は表情が暗い。
それを見て、ラトバラはその理由を問いかける。
それに対し、リンドンは言いにくそうに頭を左右に振った。
「……気持ちはわかる。攻めてくるのは敷島の奴らに奴隷されたアデマス王国の者たち。そんな彼らを殲滅しなければならないのだからな……」
「ラトバラ様……」
ラトバラは、リンドンが思っていることをズバリ言い当てる。
何故なら、彼自身も同じ思いをしているからだ。
敵を砦ごと破壊するという無残な策を講じたが、本当はそんなことしたくはない。
出来れば、敷島の人間だけを始末してこの戦いに勝利したい。
「彼らのことが気になるのは分かる。しかし、彼らを倒さない限り敷島の連中を相手にする事も出来ん」
「はい……」
無理やり奴隷にし、薬で強化して戦わせる。
敷島の者たちは、そんな事を平気でやる連中だ。
強化奴隷兵の彼らを倒さない限り、後方に控える敷島の者たちには届かない。
アデマス王国の復興が最終目標の自分たちは、どんな方法を取ってでも敷島の者たちを殲滅しなければならない。
そのためには、彼らを犠牲にする事を我慢するしかない。
「これで奴らはなかなか攻め込んで来られないでしょう。しかし、あの噂は本当なのでしょうか?」
敷島の者たちを殲滅するためには、彼らに奴隷兵として利用されているアデマスの者たちを倒さなければならない。
今回のことで敵は同じ目に遭わないよう慎重になり、無理やり攻め込んでくるようなことはなくなるだろう。
そうやって、攻め込ませなくするために、リンドンたちは砦ごとの破壊をおこなったのだ。
このような方法を取ったのは、リンドンが言うようにある噂が根底にあるからだ。
「我々も真偽のほどは定かではない。だが、あの噂に縋るしか勝機が見い出せないのが現状だ」
今回の作戦は、この砦に攻め込ませないようにして時間を稼ぐためだ。
兵たちの中で流れるある噂。
それを信じて時間を稼げば勝機がある。
確証の無い噂に頼らなければならないなんて、兵たちとしてもいまいち士気が上がらないだろうが、噂が本当ならこちらが一気に攻勢に出られる。
ラトバラたちアデマス側は、噂を信じて時間を稼ぎ、勝機が訪れるのを待つしかなかった。
「……うまくいったようですね」
「あぁ」
ラトバラたちが会議をしている中、鎧を身に纏った2人の兵が砦内を歩いていた。
そして、周りに人がいないことを確認した2人は、小さい声で会話を始めた。
「アデマス側は我々が流した信じているようだ」
「えぇ」
噂を流したのは彼らだ。
流した噂は彼らが意図した通りにアデマス王国側の上層部にまで届き、その噂を元にした戦いへと移行していった。
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