復讐、報復、意趣返し……とにかくあいつらぶっ殺す!!

ポリ 外丸

文字の大きさ
132 / 179
第5章

第132話 暗躍

しおりを挟む
「……なんだ? これは……」

 重蔵の命により砦の防衛を任されている宏直は、変装した限を発見したという報告に来た部下と共に砦内を移動する。
 そして、案内されて辿り着いた先の状況を見て、驚きの声を上げる。

「どうなっているんだ!?」

「わ、分かりません。隊長からは、光宮様が到着する頃には捕縛しておくと聞いていたのですが……」

 現状を見た宏直は、怒鳴るようにして案内した者に問いかける。
 しかし、問いかけられた者もこの現状が理解できていないらしく、戸惑うようにして返答した。

「全員死んでいる……」

 2人の目の前には、人の山が築かれている。
 確認するまでもなく、誰も彼もが息絶えているのが分かる。

「返り討ちに遭ったというのか……」

 恐らく、変装した限を発見した者たちは、始末するためにこの部屋に追い込んだのだろう。
 しかし、この現状から考えると、返り討ちに遭ったと考えるのが妥当だ。

「しかし、この部屋の大きさでこの人数なら、いくら魔無しが強くなっているからと言っても不可能では……」

 死体の山が築かれているこの部屋は、それほど大きくない。
 戦闘するにしても、大袈裟に動き回れはしない。
 そんな大きさの部屋で大人数に囲まれれば、どんなに強くてもまともには戦えず、最終的には仕留められるしかない。
 こちらからすると、多少の被害を受けてでも限を排除できれば御の字。
 この部屋に追い込んだ時点で、勝利は決まったようなもの。
 返り討ちに遭うはずがない。

「信秀までいたというのに……」

 宏直の部下の中でも、特に実力を買っていた永山信秀。
 1つの隊を任せていた彼の死体までも転がっており、見る限り強化薬を使用した形跡がある。
 そんな彼ですら、限の前に屈したということになる。
 その実力の高さに、宏直は自分が限のことをまだ甘く見ていたのだと思わされた。

「探せ!! 奴はまた何者かに変装しているはずだ!!」

「は、はいっ!!」

 味方の死体はあるが、限の死体はない。
 そのことから、宏直は信秀を殺して砦内のどこかに潜伏しているのだと判断した。
 配下を殺られて頭に血が上った宏直は、荒い口調で部下へと命令した。

「くそっ!! 戦いの前に人数を減らされるなんて・・…」

 部屋に山のように積まれた死体。
 そう聞くと大量のように思えるが、砦内にいる兵の数からすると1割にも満たない。
 とはいえ、このように開戦前に味方を減らされては、勝てる戦いも苦戦することになりかねない。
 兵に砦内にいるであろう限の捜索と始末を指示した宏直は、砦の外の敵の動きを探るため、佐武のいる防壁の上へと戻ることにした。





「……なっ!?」

 佐武のいる防壁の上へと戻った宏直は、またも驚きの声を上げることになった。
 何故なら、そこにも多くの死体が転がっていたからだ。

「佐武殿!?」

 生存者がいないか捜索していた宏直は、敵の監視を任せていた哲司までも倒れているのを発見する。
 彼も怪我を負い、かなりの出血をしていることから、宏直は哲司まで殺されたのかと声をかける。

「光宮…殿……」

「おぉ!! 生きておられたか!?」

 宏直の声に反応したのか、閉じられていた哲司の目が開く。
 そして、目を開いた哲司は、言葉を途切れさせながらも宏直の名前を口にした。
 周りに転がる兵たちと同様傷だらけで動かなかいことから、半ば絶望的な想像をしていただけに、宏直は哲司から反応があったことに喜びの表情へと変わる。

「申し訳…ない。に…やられた」

「喋らなくていい!」

 この場を守ることができず、哲司は申し訳なさそうに謝ってくる。
 そんな事より、傷口が開かないように喋らないで欲しい。

「おいっ! すぐに佐武殿を医務室へ!」

「は、はいっ!」「畏まりました!」

 生きていただけで安心した宏直は、側にいた兵に向かって指示を出す。
 それを受けた兵が数人駆け寄り、哲司を抱えて医務室へと運び始めた。

「くそっ!! 魔無しの奴め!!」

 1度ならず、2度までも限にやられた。
 それなのに、その姿はなかなか見つからない。
 良いようにやられていることに、頭に血が上った宏直は壁に拳を打ち付けた。

『フッ!!』

 悔しそうにする宏直を密かに見ていた限は、声を出さずに笑みを浮かべる。

「……待て!!」

「っ!?」

 何を思ったのか、宏直が哲司を抱える兵を呼び止める。
 突然止められたことで、限は内心驚く。
 まだ砦内の兵は多いというのに、バレるのはいくら限でも危険だ。
 そんな事を考えていると、宏直はこちらへ向かって近づいてきた。

「うっ!」「痛いです……」

「……すまん。勘違いか……」

「「いいえ……」」

 近付いてきた宏直は、哲司を抱える兵たちの顔をつねる。
 その感触から、変装をしているようには感じない。
 自分の考えが間違っていたことが分かり、宏直は疑った兵たちに謝った。
 謝られた兵たちは、つねられた部分を赤くしながら、哲司を医務室へ運ぶことを再開した。





「チッ! 痛えな……」

「俺たちが疑われちまったじゃねえか……」

 哲司を医務室へと運び終えた兵は、彼が気絶していることを良いことに愚痴をこぼす。
 佐武家当主でありながら、限にやられた哲司に幻滅したような言葉を呟いた。
 宏直に疑われ、頬をつねられことになったのだから、愚痴りたくなるのも仕方がない。

「それにしても、さっさと魔無しの奴を探し出さないとな」

「あぁ、これ以上減らされるのは迷惑だ」

 宏直だけではなく、兵たちも限の行為に怒りが湧いている。
 これ以上仲間を減らされては、砦の外にいるアデマス軍と戦う時に苦労することになってしまう。

「あいつどこにいるんだよ」

「面倒だから自分から出て来いってんだ」

 どこにいるかも分からないし、誰に変装しているかもすぐには分からない。
 そんな限を探さないといけないことに、兵たちは文句を呟いた。

「それじゃあ……」

「「っっっ!?」」

 ただの愚痴に反応があるなんて思わなかった兵たちは、驚きつつ声がした方へと振り向く。
 そして、兵たちはそこで永遠に意識を失った。

「さて、次に行くか……」

 そう呟き、限は哲司・・の顔から、今殺した片方の兵の顔へ変装する。
 本物の哲司は、防壁の上で限が背後から接近して殺し、魔法の指輪に収納してある。
 その死体を取り出し、先程まで自分が寝ていたベッドの上へと放置する。
 死んだ人間が動いていればすぐばれる。
 そのため、先程殺して変装した兵の死体を収納し、また砦内の兵たちの暗殺の続きを開始することにした。

しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

ダンジョンでオーブを拾って『』を手に入れた。代償は体で払います

とみっしぇる
ファンタジー
スキルなし、魔力なし、1000人に1人の劣等人。 食っていくのがギリギリの冒険者ユリナは同じ境遇の友達3人と、先輩冒険者ジュリアから率のいい仕事に誘われる。それが罠と気づいたときには、絶対絶命のピンチに陥っていた。 もうあとがない。そのとき起死回生のスキルオーブを手に入れたはずなのにオーブは無反応。『』の中には何が入るのだ。 ギリギリの状況でユリアは瀕死の仲間のために叫ぶ。 ユリナはスキルを手に入れ、ささやかな幸せを手に入れられるのだろうか。

存在感のない聖女が姿を消した後 [完]

風龍佳乃
恋愛
聖女であるディアターナは 永く仕えた国を捨てた。 何故って? それは新たに現れた聖女が ヒロインだったから。 ディアターナは いつの日からか新聖女と比べられ 人々の心が離れていった事を悟った。 もう私の役目は終わったわ… 神託を受けたディアターナは 手紙を残して消えた。 残された国は天災に見舞われ てしまった。 しかし聖女は戻る事はなかった。 ディアターナは西帝国にて 初代聖女のコリーアンナに出会い 運命を切り開いて 自分自身の幸せをみつけるのだった。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

復讐完遂者は吸収スキルを駆使して成り上がる 〜さあ、自分を裏切った初恋の相手へ復讐を始めよう〜

サイダーボウイ
ファンタジー
「気安く私の名前を呼ばないで! そうやってこれまでも私に付きまとって……ずっと鬱陶しかったのよ!」 孤児院出身のナードは、初恋の相手セシリアからそう吐き捨てられ、パーティーを追放されてしまう。 淡い恋心を粉々に打ち砕かれたナードは失意のどん底に。 だが、ナードには、病弱な妹ノエルの生活費を稼ぐために、冒険者を続けなければならないという理由があった。 1人決死の覚悟でダンジョンに挑むナード。 スライム相手に死にかけるも、その最中、ユニークスキル【アブソープション】が覚醒する。 それは、敵のLPを吸収できるという世界の掟すらも変えてしまうスキルだった。 それからナードは毎日ダンジョンへ入り、敵のLPを吸収し続けた。 増やしたLPを消費して、魔法やスキルを習得しつつ、ナードはどんどん強くなっていく。 一方その頃、セシリアのパーティーでは仲間割れが起こっていた。 冒険者ギルドでの評判も地に落ち、セシリアは徐々に追いつめられていくことに……。 これは、やがて勇者と呼ばれる青年が、チートスキルを駆使して最強へと成り上がり、自分を裏切った初恋の相手に復讐を果たすまでの物語である。

勇者パーティーを追放されました。国から莫大な契約違反金を請求されると思いますが、払えますよね?

猿喰 森繁
ファンタジー
「パーティーを抜けてほしい」 「え?なんて?」 私がパーティーメンバーにいることが国の条件のはず。 彼らは、そんなことも忘れてしまったようだ。 私が聖女であることが、どれほど重要なことか。 聖女という存在が、どれほど多くの国にとって貴重なものか。 ―まぁ、賠償金を支払う羽目になっても、私には関係ないんだけど…。 前の話はテンポが悪かったので、全文書き直しました。

断罪まであと10分、私は処刑台の上で「ライブ配信」を開始した〜前世インフルエンサーの悪役令嬢、支持率100%でクズ王子を逆処刑する〜

深渡 ケイ
ファンタジー
断罪まで、あと10分。 処刑台の上で跪く悪役令嬢スカーレットは、笑っていた。 なぜなら彼女は―― 前世で“トップインフルエンサー”だったから。 処刑の瞬間、彼女が起動したのは禁忌の精霊石。 空に展開された巨大モニターが、全世界同時ライブ配信を開始する。 タイトルは―― 『断罪なう』。 王子の不貞、聖女の偽善、王家の腐敗。 すべてを“証拠付き・リアルタイム”で暴露する配信に、 国民の「いいね(=精霊力)」が集まり始める。 そして宣言される、前代未聞のルール。 支持率が上がるほど、処刑は不可能になる。 処刑台は舞台へ。 断罪はエンタメへ。 悪役令嬢は、世界をひっくり返す配信者となった。 これは、 処刑されるはずだった悪役令嬢が、 “ライブ配信”で王子と王国を公開処刑する物語。 支持率100%の先に待つのは、復讐か、革命か、 それとも――自由か。

最難関ダンジョンをクリアした成功報酬は勇者パーティーの裏切りでした

新緑あらた
ファンタジー
最難関であるS級ダンジョン最深部の隠し部屋。金銀財宝を前に告げられた言葉は労いでも喜びでもなく、解雇通告だった。 「もうオマエはいらん」 勇者アレクサンダー、癒し手エリーゼ、赤魔道士フェルノに、自身の黒髪黒目を忌避しないことから期待していた俺は大きなショックを受ける。 ヤツらは俺の外見を受け入れていたわけじゃない。ただ仲間と思っていなかっただけ、眼中になかっただけなのだ。 転生者は曾祖父だけどチートは隔世遺伝した「俺」にも受け継がれています。 勇者達は大富豪スタートで貧民窟の住人がゴールです(笑)

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

処理中です...