エルティモエルフォ ―最後のエルフ―

ポリ 外丸

文字の大きさ
370 / 375
第14章

第370話

しおりを挟む
「ぐ…おのれ……」

「おぉ、まだ生きてるのかよ……」

 全身を斬り刻み、大量の出血と共に地面に倒れた玄武。
 その出血量は、人間どころか魔物だって即死する程の量だ。
 動けないとはいえ、まだ言葉を発している玄武に、ケイは若干の驚きと感心が混じったような感想を呟いた。

「ハァー……、疲れた」

 玄武に止めを刺した妻の美花の形見である刀を魔法の指輪に収納したケイは、ようやく力を抜いて大きく息を吐いた。
 とんでもなく集中力を必要とする魔力コントロールをしていたために、余計な力が入っていたのか、何だか肩が凝った気がする。

「判断ミスしたな。防御に徹していれば、もしかしたら勝てたかもしれなかったのにな」

「き、貴様……、まさ…か、わざ…と……」

「その通り」

 鎧を壊すことに全力を尽くし、魔力切れによる戦闘不能。
 ケイがそんな状態になったことで、玄武は勝利を確信したのだろう。
 しかし、今になって玄武も気付いたように、それはケイがわざとそう見せただけだ。
 本当の所は、ケイはまだ少しの時間、高濃度の魔闘術を使用できる状態だった。 
 自慢の鎧を壊されて、余裕がなくなっていたのだろう。
 残っている全魔力を防御に使用して身を固めていれば、ケイの魔力切れまで逃れることもできたかもしれなかった。
 しかし、そこで意識を攻撃に向けてしまったのが玄武の失敗だ。
 ケイはすぐに残りの魔力を使って高濃度魔闘術を発動させ、攻撃してきた玄武のことを斬り刻んだのだ。

「おの…れ…………」

 ケイの説明を受けた玄武は、悔し気な言葉を発すると、事切れたのか動かなくなった。

「すごい生命力だ。気を付けないと」

 玄武の尻尾の蛇も念のため斬っていたので問題なかったが、もしも斬らずにいたら玄武は最後の力を使って、勝利を確信していたケイに一撃を与えることもできたかもしれない。
 その蛇を鑑定した時に、牙に毒が仕込まれているのは理解していた。
 そのため、もしも蛇の一撃を受けていれば、ケイは毒が回って死んでいたかもしれない。
 勝利を確信した時が一番危険なのは、ケイも一緒だったということだ。
 今後のことも考えると、これは教訓にすべきだと、ケイは心の中で確認した。

「そうだ。こいつの魔石を取っておかないと……」

 結局たいした怪我を追わずに勝利することができたが、本来はギリギリの勝利といったところだ。
 ギリギリであろうと勝利は勝利。
 ケイは、戦利品として玄武の魔石を体内から取り出すことにした。

「……人型に変身したから、小さくなったのか?」

 魔石の大きさは、魔物の体躯や強さに関連する。
 玄武の元々の姿は、かなりの巨大亀だ。
 きっと魔石もでかいのかと思っていたが、玄武は人型に変身して小さくなっている。
 そのため、魔石がどうなっているのかと取り出してみると、ケイはその小ささに首を傾げた。
 大きいことは大きいが、玄武本来の大きさと強さを考えると、もっと大きくても良かったような気がするからだ。

「……いや、この感じ……」

 期待していただけに、玄武の魔石の小ささにがっかりした。
 しかし、ケイはすぐにその魔関の異様さに気が付いた。

「とんでもなく魔力が詰まっている」

 たしかに、大きさ的には期待外れだった。
 しかし、その魔石に内包されている魔力量を見てみると、大量に溜め込まれているのが感じられた。
 魔石は、魔道具を使用するための電池代わりとして利用される。
 もしこの魔石を、部屋の明かりをつけるために使用したとすると、何十年使用しても魔力が空になるようなことはないだろう。

「LEDライトかっての……」

 交換したら何年も交換不要になる。
 そう考えると、前世のLEDライトのうたい文句を思いだし、ケイは小さくツッコミを入れた。

【ご主人!!】「ワウッ!!」

「おぉ、お前ら……」

 玄武の魔石について使い道を考えていると、ケイの従魔であるキュウとクウが、こちらへと向かってきた。
 魔法を使えば移動速度もかなりのものだが、魔力を無駄にする訳もなく、キュウはいつものようにクウの頭の上に乗っている。

「無事そうでよかった」

【エヘヘ……】「ハッハッハ……」

 側に来た2匹を、ケイは嬉しそうに撫で始める。
 主人のケイに撫でられて、キュウとクウは嬉しそうだ。
 ケイが玄武を相手している最中に、キュウとクウにはダンジョンの核を破壊するように指示を出しておいた。
 玄武を倒さずに攻略してしまおうという、玄武からすれば卑怯といいたくなるような策だ。
 しかし、その策は失敗だった。
 玄武がいなくても、きちんとダンジョン核を守るための機能が存在していた。
 キュウやクウなら倒せるとは言っても、無限のように魔物が出現してくるのには相当手を焼いたことだろう。

「……大丈夫そうだな」

 ケイは、2匹を撫でながら、怪我をしていないか確認してみる。
 どうやら、怪我をしている様子はないため、ケイは一安心した。

「ようやくだな……」

【うん、そうだね】「ワウッ!」

 戦闘による疲労を回復するため、ケイたちはその場で休憩する。
 そして、少し休憩すると、ダンジョン核のある所へと向かった。
 玄武の言っていたことは嘘ではなかったらしく、ダンジョン核に近付いても魔物が出現するようなことはなかった。
 いざダンジョン核の前に立つと、ケイはこれまでのことを思いだしていた。
 階層ごとに色々と面倒な目に逢わされたが、それもいい思い出のように感じてきた。

「さて、思い出にふけっていないで、破壊するか……」

 色々と思い出されるが、いつまでもこの場にいる訳にもいかない。
 そう考えたケイは、笹と目的であるダンジョン核を破壊することにした。

「セイッ!」

“パリンッ!!”

 守る機能が失われれば、ダンジョン核を壊すことなんて容易だ。
 ケイが魔力を軽く纏った拳で殴り、ダンジョン核は簡単に破壊された。

「これをあと3か所か。長い道のりだな……」

 このダンジョンと同じものがあと3つあり、ケイは魔王復活を阻止するために攻略しないとならない。
 ここのダンジョンの攻略もかなりの月日が経っている。
 同じだけ時間がかかると考えると、全部を攻略し終えるのは1年以上かかることは確実だ。
 先のことを考えると、ケイは少し気が重くなった。

「まぁいいか。地上へ帰ろう」

【うん!】「ワウッ!」

 考えていても仕方がない。
 どうせやらなければならないのだから、ケイはあまり深く考えず、次へ向かうことにした。
 そのために、ケイはキュウたちと共に一旦地上に戻ることにした。

しおりを挟む
感想 7

あなたにおすすめの小説

悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる

竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。 評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。 身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します

namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。 マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。 その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。 「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。 しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。 「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」 公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。 前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。 これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。

男爵家の厄介者は賢者と呼ばれる

暇野無学
ファンタジー
魔法もスキルも授からなかったが、他人の魔法は俺のもの。な~んちゃって。 授けの儀で授かったのは魔法やスキルじゃなかった。神父様には読めなかったが、俺には馴染みの文字だが魔法とは違う。転移した世界は優しくない世界、殺される前に授かったものを利用して逃げ出す算段をする。魔法でないものを利用して魔法を使い熟し、やがては無敵の魔法使いになる。

異世界での異生活

なにがし
ファンタジー
役職定年を迎えた男が事故に巻き込まれケガをする。病院に運ばれ治療をしていたはずなのに、なぜか異世界に。しかも、女性の衣服を身に着け、宿屋の一室に。最低な異世界転移を迎えた男が、異世界で生きるために頑張る物語です。

完結 シシルナ島物語 少年薬師ノルド/ 荷運び人ノルド 蠱惑の魔剣

織部
ファンタジー
 ノルドは、古き風の島、正式名称シシルナ・アエリア・エルダで育った。母セラと二人きりで暮らし。  背は低く猫背で、隻眼で、両手は動くものの、左腕は上がらず、左足もほとんど動かない、生まれつき障害を抱えていた。  母セラもまた、頭に毒薬を浴びたような痣がある。彼女はスカーフで頭を覆い、人目を避けてひっそりと暮らしていた。  セラ親子がシシルナ島に渡ってきたのは、ノルドがわずか2歳の時だった。  彼の中で最も古い記憶。船のデッキで、母セラに抱かれながら、この新たな島がゆっくりと近づいてくるのを見つめた瞬間だ。  セラの腕の中で、ぽつりと一言、彼がつぶやく。 「セラ、ウミ」 「ええ、そうよ。海」 ノルドの成長譚と冒険譚の物語が開幕します! カクヨム様 小説家になろう様でも掲載しております。

高校生の俺、異世界転移していきなり追放されるが、じつは最強魔法使い。可愛い看板娘がいる宿屋に拾われたのでもう戻りません

下昴しん
ファンタジー
高校生のタクトは部活帰りに突然異世界へ転移してしまう。 横柄な態度の王から、魔法使いはいらんわ、城から出ていけと言われ、いきなり無職になったタクト。 偶然会った宿屋の店長トロに仕事をもらい、看板娘のマロンと一緒に宿と食堂を手伝うことに。 すると突然、客の兵士が暴れだし宿はメチャクチャになる。 兵士に殴り飛ばされるトロとマロン。 この世界の魔法は、生活で利用する程度の威力しかなく、とても弱い。 しかし──タクトの魔法は人並み外れて、無法者も脳筋男もひれ伏すほど強かった。

処理中です...