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1学年 前期
第23話
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「いたっ!」
「っ!?」
坑道内を進んでいると、伸は一旦足を止めて道の先を指差した。
伸の後ろを歩いていた綾愛がその方向に目をやると、そこには虫型の魔物がこちらへ近付いて来ているのが見えた。
中型犬ほどの大きさのコガネムシといったところで、虫型ではよく見るタイプの魔物だ。
「あの程度なら大丈夫だろ。任せた」
「う、うん」
よく見るタイプの魔物だけあって、その強さはたいしたことがないというのが分かる。
なので、綾愛の初討伐の訓練として倒させることにした。
戦うように言われた綾愛は、先日学園に出た魔物の時は何も考えずに攻めかかれたようだが、いざ冷静な状態で戦うとなると緊張しているようだ。
表情が強張ったまま、魔物と戦うために伸の前へと出た。
「たいしたことないから、落ち着いて戦え」
「分かった」
緊張で少し硬くなっているのが分かるため、伸は落ち着くように話しかける。
その言葉に納得したのか、綾愛は1度深呼吸して落ち着きを取り戻した。
そして、伸たちに警戒したように近付いてくる魔物に向けて、右手を上げて魔力を練り始めた。
「ハッ!」
「っ!!」
右手に集まった魔力を、虫の魔物へ向けて放つ。
学園の授業でおこなっている魔力弾の的当てを、そのまま実行したようだ。
飛んで行った魔力弾は見事に魔物に当たり、倒れた魔物は動かなくなった。
「やった!」
初の魔物の討伐に、綾愛は嬉しそうに声をあげる。
そして、魔術で魔物の死体を収納しようと近付こうとした。
「待てっ!」
「えっ? 何?」
魔物へ近付こうとする綾愛を、伸が前に出て制止する。
その伸が若干険しい表情をしているため、綾愛は何か失敗したのか不安になった。
「魔物に当たったはいいけど、ちゃんと死んだか探知したのか? 確認しないで近付くのは危険だって学園でも習ってるだろ?」
「あっ!」
伸の言葉で、綾愛はようやく自分の失敗に気が付いた。
魔力を目に集める探知の魔術を使うことで、魔物の状態を確認することができる。
学園の授業でも探知の魔術は指導されているし、倒した魔物に近付く前にはちゃんと探知してから近付くように言われている。
その理由が目の前で起こった。
綾愛が倒したと思われる魔物を伸が指さすと、動かなくなっていた魔物が動き出して体を起こした。
先程の魔力弾でダメージを受けはしたのだろうが、死んではいなかったようだ。
「あの虫は外骨格が固い。だからあの一撃で死ぬかは疑わしい。しかも、擬死することで有名な魔物だ。あのままいってたら危なかったぞ」
「……ごめんなさい」
学園では、魔物の情報もタブレットに提供していて、その最初の方にこの魔物の情報が出てくる。
その中にちゃんと擬死、つまりは死んだふりをするという情報が記されている有名な魔物のため、綾愛も知っているはずだが、魔物を倒せたという喜びで、探知の魔術による確認と魔物の知識が飛んでしまっていたらしい。
伸の言うように、あのまま行っていたら危うく怪我をするところだった。
綾愛は自分の迂闊さに反省し、少し俯きつつ謝ってきた。
「まあ、初心者あるあるだ。続きをおこなってくれ」
「うん!」
危ないところだったが、綾愛は自分の失敗に気が付いている。
ならば、ここからは大丈夫だろうと、伸は起き上がった魔物を引き続き綾愛に戦わせることにした。
「大丈夫ね?」
「あぁ」
「収納!」
その後の魔物との戦いは無難に済んだ。
綾愛の魔力弾を数発受けて、魔物はボロボロになって動かなくなった。
今度こそ魔物が死んだことを確認し、綾魔は安堵したように伸へ問いかけた。
そして、伸の返答を受けた綾愛は、収納の魔術を発動して魔物死体を異空間へ収納した。
「さっきの戦闘で、君のよくない所が1つ分かった」
「よくない所?」
「あぁ」
魔物の戦闘がひとまず終わった所で、伸は綾愛の欠点を伝えることにした。
無警戒で魔物に近付こうとしたのは反省したが、他によくない所があると言われてもよく分からないため、綾愛は首を傾げる。
「魔力弾の溜めから発射までが遅い。あれじゃ咄嗟の時間に合わないかもしれないぞ」
「……なるほど」
学園の授業を聞いているかのように、伸が述べた注意点に綾愛は頷く。
さっきの戦闘では魔物の動きは鈍かったため問題なかったのだが、魔力弾の連射が遅かった。
不意打ちなどで対応する時に、あの発射速度では遅すぎる。
以前両親から指導を受けた時にも同じようなことを言われていたため、綾愛もすんなり納得した。
「どうすればいいの?」
「魔力のコントロールの訓練をするべきだな」
「魔力コントロール……」
親に言われるよりも、同級生に言われた方が何故だか響いた。
実力差があるとは言っても、同じ年の伸ができるのだから、自分も出来ないといけない気がしたからかもしれない。
しかし、その訓練方法を尋ねると、伸からは普通の答えが返ってきた。
体内の魔力を色々な個所へと移動させるという、魔術師なら誰もが最初に習うような訓練だ。
その訓練なら、綾愛も毎日のようにしているのに、その訓練をするように言って来る意味が分からない。
「君がしているのは基礎の魔力コントロールで、必要な量を必要な場所へ限界ギリギリの速度で動かすような、自分を追い込む訓練なんてしていないんだろ?」
「えぇ……」
たしかに、魔力を動かす訓練はしているが、地味な練習のせいか無難なコントロール訓練しかしていない気がする。
伸の言うギリギリまで自分を追い込むような訓練をやった所で、たいして成果が感じられないため、恐らく誰もが同じように無難な訓練で済ませているのではないだろうか。
「魔力コントロールは基礎にして奥義に近いものがある。どんな魔術も魔力を使うんだから、魔力コントロールがスムーズにできないと戦いでは役に立たない。地味だからって手を抜いていたら駄目だ」
「……たしかに!」
伸の言うように、魔術は魔力によって発動するものだ。
その魔力を自由自在に操れてこそ、魔物と戦えるようになるのだ。
あまりの正論に、綾愛は目から鱗が落ちるような思いがした。
「今回は魔物に慣れることが目標だから、次へ行こう」
「うん」
魔力コントロールは落ち着いた場所でおこなうもの。
そのため、家でやってもらうとして、今日は綾愛が魔物になれるのが目的。
坑道内の魔物の討伐もしないといけないため、先へと進むことにした。
◆◆◆◆◆
「なぁ? 本当にあの小僧に任せて綾愛様は大丈夫なのか?」
「静奈様が仰ったんだから大丈夫だろ」
伸が綾愛の指導をしつつ魔物退治をしている頃、他の坑道では柊家に仕えている者たちが、4人1組で魔物退治をおこなっていた。
出てくる魔物を退治しながら進む中、1人が伸のことを話題に上げた。
今回の作戦に急遽加えられたため、彼らは伸の実力を知らない。
ただ、高校生ながら当主である俊夫のお墨付きだという話だった。
綾愛の訓練のために呼んだという話だが、所詮は高校生。
自分たちが綾愛の訓練についた方が、安全なのではないかという思いが消えないのだ。
その気持ちは分からなくないが、当主婦人の指示なのだから、今さら言っても仕方がないことだ。
「そんな事より、そろそろ最深部に着くんじゃないか?」
「あぁ……」
彼らは名門柊家の魔闘組合員。
プロらしく、常に警戒しつつ先へと進んで来た。
そして、彼らが一番先に最奥にたどり着きそうだ。
ここから先は何が出るか分からないため、彼らは警戒しつつ最深部へと足を進めた。
「「「「「……ギュッ!」」」」」
「「「「っっっ!!」」」」
最深部に足を踏み入れると、4人は信じられないものを発見する。
あまりのことに驚いた彼らは、すぐさま逃走を開始した。
彼らが見たもの、大量の強力な魔物がひしめき合うように存在していたのだ。
「っ!?」
坑道内を進んでいると、伸は一旦足を止めて道の先を指差した。
伸の後ろを歩いていた綾愛がその方向に目をやると、そこには虫型の魔物がこちらへ近付いて来ているのが見えた。
中型犬ほどの大きさのコガネムシといったところで、虫型ではよく見るタイプの魔物だ。
「あの程度なら大丈夫だろ。任せた」
「う、うん」
よく見るタイプの魔物だけあって、その強さはたいしたことがないというのが分かる。
なので、綾愛の初討伐の訓練として倒させることにした。
戦うように言われた綾愛は、先日学園に出た魔物の時は何も考えずに攻めかかれたようだが、いざ冷静な状態で戦うとなると緊張しているようだ。
表情が強張ったまま、魔物と戦うために伸の前へと出た。
「たいしたことないから、落ち着いて戦え」
「分かった」
緊張で少し硬くなっているのが分かるため、伸は落ち着くように話しかける。
その言葉に納得したのか、綾愛は1度深呼吸して落ち着きを取り戻した。
そして、伸たちに警戒したように近付いてくる魔物に向けて、右手を上げて魔力を練り始めた。
「ハッ!」
「っ!!」
右手に集まった魔力を、虫の魔物へ向けて放つ。
学園の授業でおこなっている魔力弾の的当てを、そのまま実行したようだ。
飛んで行った魔力弾は見事に魔物に当たり、倒れた魔物は動かなくなった。
「やった!」
初の魔物の討伐に、綾愛は嬉しそうに声をあげる。
そして、魔術で魔物の死体を収納しようと近付こうとした。
「待てっ!」
「えっ? 何?」
魔物へ近付こうとする綾愛を、伸が前に出て制止する。
その伸が若干険しい表情をしているため、綾愛は何か失敗したのか不安になった。
「魔物に当たったはいいけど、ちゃんと死んだか探知したのか? 確認しないで近付くのは危険だって学園でも習ってるだろ?」
「あっ!」
伸の言葉で、綾愛はようやく自分の失敗に気が付いた。
魔力を目に集める探知の魔術を使うことで、魔物の状態を確認することができる。
学園の授業でも探知の魔術は指導されているし、倒した魔物に近付く前にはちゃんと探知してから近付くように言われている。
その理由が目の前で起こった。
綾愛が倒したと思われる魔物を伸が指さすと、動かなくなっていた魔物が動き出して体を起こした。
先程の魔力弾でダメージを受けはしたのだろうが、死んではいなかったようだ。
「あの虫は外骨格が固い。だからあの一撃で死ぬかは疑わしい。しかも、擬死することで有名な魔物だ。あのままいってたら危なかったぞ」
「……ごめんなさい」
学園では、魔物の情報もタブレットに提供していて、その最初の方にこの魔物の情報が出てくる。
その中にちゃんと擬死、つまりは死んだふりをするという情報が記されている有名な魔物のため、綾愛も知っているはずだが、魔物を倒せたという喜びで、探知の魔術による確認と魔物の知識が飛んでしまっていたらしい。
伸の言うように、あのまま行っていたら危うく怪我をするところだった。
綾愛は自分の迂闊さに反省し、少し俯きつつ謝ってきた。
「まあ、初心者あるあるだ。続きをおこなってくれ」
「うん!」
危ないところだったが、綾愛は自分の失敗に気が付いている。
ならば、ここからは大丈夫だろうと、伸は起き上がった魔物を引き続き綾愛に戦わせることにした。
「大丈夫ね?」
「あぁ」
「収納!」
その後の魔物との戦いは無難に済んだ。
綾愛の魔力弾を数発受けて、魔物はボロボロになって動かなくなった。
今度こそ魔物が死んだことを確認し、綾魔は安堵したように伸へ問いかけた。
そして、伸の返答を受けた綾愛は、収納の魔術を発動して魔物死体を異空間へ収納した。
「さっきの戦闘で、君のよくない所が1つ分かった」
「よくない所?」
「あぁ」
魔物の戦闘がひとまず終わった所で、伸は綾愛の欠点を伝えることにした。
無警戒で魔物に近付こうとしたのは反省したが、他によくない所があると言われてもよく分からないため、綾愛は首を傾げる。
「魔力弾の溜めから発射までが遅い。あれじゃ咄嗟の時間に合わないかもしれないぞ」
「……なるほど」
学園の授業を聞いているかのように、伸が述べた注意点に綾愛は頷く。
さっきの戦闘では魔物の動きは鈍かったため問題なかったのだが、魔力弾の連射が遅かった。
不意打ちなどで対応する時に、あの発射速度では遅すぎる。
以前両親から指導を受けた時にも同じようなことを言われていたため、綾愛もすんなり納得した。
「どうすればいいの?」
「魔力のコントロールの訓練をするべきだな」
「魔力コントロール……」
親に言われるよりも、同級生に言われた方が何故だか響いた。
実力差があるとは言っても、同じ年の伸ができるのだから、自分も出来ないといけない気がしたからかもしれない。
しかし、その訓練方法を尋ねると、伸からは普通の答えが返ってきた。
体内の魔力を色々な個所へと移動させるという、魔術師なら誰もが最初に習うような訓練だ。
その訓練なら、綾愛も毎日のようにしているのに、その訓練をするように言って来る意味が分からない。
「君がしているのは基礎の魔力コントロールで、必要な量を必要な場所へ限界ギリギリの速度で動かすような、自分を追い込む訓練なんてしていないんだろ?」
「えぇ……」
たしかに、魔力を動かす訓練はしているが、地味な練習のせいか無難なコントロール訓練しかしていない気がする。
伸の言うギリギリまで自分を追い込むような訓練をやった所で、たいして成果が感じられないため、恐らく誰もが同じように無難な訓練で済ませているのではないだろうか。
「魔力コントロールは基礎にして奥義に近いものがある。どんな魔術も魔力を使うんだから、魔力コントロールがスムーズにできないと戦いでは役に立たない。地味だからって手を抜いていたら駄目だ」
「……たしかに!」
伸の言うように、魔術は魔力によって発動するものだ。
その魔力を自由自在に操れてこそ、魔物と戦えるようになるのだ。
あまりの正論に、綾愛は目から鱗が落ちるような思いがした。
「今回は魔物に慣れることが目標だから、次へ行こう」
「うん」
魔力コントロールは落ち着いた場所でおこなうもの。
そのため、家でやってもらうとして、今日は綾愛が魔物になれるのが目的。
坑道内の魔物の討伐もしないといけないため、先へと進むことにした。
◆◆◆◆◆
「なぁ? 本当にあの小僧に任せて綾愛様は大丈夫なのか?」
「静奈様が仰ったんだから大丈夫だろ」
伸が綾愛の指導をしつつ魔物退治をしている頃、他の坑道では柊家に仕えている者たちが、4人1組で魔物退治をおこなっていた。
出てくる魔物を退治しながら進む中、1人が伸のことを話題に上げた。
今回の作戦に急遽加えられたため、彼らは伸の実力を知らない。
ただ、高校生ながら当主である俊夫のお墨付きだという話だった。
綾愛の訓練のために呼んだという話だが、所詮は高校生。
自分たちが綾愛の訓練についた方が、安全なのではないかという思いが消えないのだ。
その気持ちは分からなくないが、当主婦人の指示なのだから、今さら言っても仕方がないことだ。
「そんな事より、そろそろ最深部に着くんじゃないか?」
「あぁ……」
彼らは名門柊家の魔闘組合員。
プロらしく、常に警戒しつつ先へと進んで来た。
そして、彼らが一番先に最奥にたどり着きそうだ。
ここから先は何が出るか分からないため、彼らは警戒しつつ最深部へと足を進めた。
「「「「「……ギュッ!」」」」」
「「「「っっっ!!」」」」
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