主人公は高みの見物していたい

ポリ 外丸

文字の大きさ
34 / 281
1学年 前期

第34話

しおりを挟む
「あの話聞いたか?」

「あぁ! 柊家が魔人を捕縛したって話だろ?」

「さすが柊家! スゲーよな!」

 休日明けに学校に行くと、多くの生徒が先日の魔人捕縛の話をしていた。
 それもそのはず、魔人が出現したと言うだけでも大事だというのに、それが生け捕りされたというのだから尚のこと驚かされた出来事だ。
 魔術師の卵である学生の彼らにとっても無視できる話題ではないため、もちきりになるのも仕方がないことだろう。

「これで他の地区の奴らもバカにできないだろ?」

「あぁ。少しは田舎呼ばわりも減るだろな」

 しかも、それをおこなったのが、八郷地区で有名の柊家によるものというのが大きいかもしれない。
 八郷地区は、大和皇国の中でも農作物で有名な地だ。
 そのせいか、他の地域からは田舎者呼ばわりされている。
 八郷地区出身の人間からするとそれが納得いかないため、これだけの大きな成果を出した八郷地区の柊家のことが鼻が高いと思っているのだろう。

「前にここへ出た魔物もその魔人の仕業だった可能性が高いらしいな……」

「みたいだな……」

 伸といつも通り一緒に昼食をとっているいる了たちも例外ではない。 
 彼らにとってみれば、以前学園に出現した魔物が大量に出たということも引っかる所なのだろう。
 あの時に出現した魔物と戦って、全然太刀打ちできなかったことを思いだしているのかもしれない。
 柊家が流した情報によると、各地に出現した巨大モグラの魔物は、その魔人によるものだったと報告されている。
 自分たちもかかわっただけに、その魔人の狙いが了としては気になっているようだ。
 その了の呟きに、伸は軽く受け答える。

「あの巨大モグラを大量に相手にした上に魔人まで捕まえちまったてんだから……」

「スゲーよな……」

 柊家は、魔人と共に大量の魔物も討伐したことを伝えた。
 学園に出た2体の魔物でも自分たちは太刀打ちできなかった。
 石塚は、その魔物が大量に倒されたということにも衝撃を受けているようだ。
 その石塚の言葉に合わせるように、伸は返事をする。

「そんだけプロと俺たちじゃ実力差があるって事だよな……」

「そうだな……」

 自分たちでは相手にならなかった魔物を大量に倒したというのだから、それだけ実力差があるということだ。
 学園に合格したことで、プロに近付いているという思いがあったのだが、その思いが完全に天狗だったということを、まざまざと分からされたと吉井は少し落ち込むようなような口調で呟き、伸はそれに返答する。

「……何か伸は反応薄いな?」

「「そうだな」」

「えっ?」

 さっきから話をしている3人に対し、伸は短く返答するだけで話に乗っかってくるようなことはして来ない。
 その返答もタンパクな感じなため、3人は違和感を覚えたようだ。
 実際、朝からずっとその話ばかり耳に入ってくるので、飽きているというのが態度に出ていたのかもしれない。
 そこを突かれた気がし、伸は一瞬たじろいだ。

「別に……、ただ柊家の凄さを感じてただけだよ」

「……、あっそ……」

 突っ込まれた伸は、当たり障りない答えで誤魔化そうとする。
 その返答で納得したようには思えないが、了はとりあえずおさまってくれた。

「あっ!」

「おいっ!」

 伸たちが話している所で、食堂内が一瞬ざわつく。
 何かと思っていると、石塚と吉井が伸に知らせるように後ろを指を差した。

「んっ? あっ!」

 何かと思って振り返ると、そこには学園中の話題になっている柊家の人間が近付いてきた。
 当主の娘である綾愛と、その従者のように杉山夏奈津希も一緒にいる。
 その2人を見て、伸は何故食堂がざわついたのかを理解した。

「こんにちは」

「どうも」

 目当てはやはり伸だったらしく、目が合った綾愛は挨拶をして来た。
 伸もそれに軽い口調で反応する。

「放課後にいつもの場所へ来てほしいのだけど?」

「……分かった」

 何の話かは分からないが、何か用があるらしい。
 綾愛が指示するいつもの場所となると、学園から少し離れた所にある料亭だ。
 そこに呼ばれたということは、またもあそこの美味い料理が期待できるということだ。
 それにより、伸は思わず表情を緩めそうになるのを何とか抑えて、短く答えを返した。





「それで? 呼び出した理由は?」

 放課後になり、伸は言われた通りに料亭へと向かった。
 店員も顔を覚えてくれているらしく、あっさりと中へと通してくれた。
 案内された部屋で待っていると、少しして綾愛と奈津希も部屋へと案内されてきた。
 早く話を終わらせて料理を頼みたいという気持ちも少しありつつ、伸は早々にここへ呼ばれた理由を尋ねた。

「分かっているとは思うけど、先日の件による話よ」

「だろうな……」

 綾愛の言うように、何の話かは分かっていた。
 先日の魔人捕縛後は、当主の俊夫に全て任せてしまった。
 捕まえた魔人のその後や、どういう風に柊家の成果にするかなどのことは聞いていない。
 伸としては、鷹藤家に知られないようにしてくれればいいので、その他のことはどうでもいいというのが本心だ。
 一応当事者なので、どういう風に話を進めるかの確認もあるのだろう。
 俊夫はその説明を同じ学園に通う綾愛にさせることにしたようだ。

「捕まえた魔人は皇都へ連れていかれることになったのだけど、あなたの望み通り、あの魔人は柊家が捕まえたということに魔闘組合に報告したわ。でも、誰が倒したのかをどこまで隠せておけるか分からないわ」

「そうだよな……」

 綾愛の言葉に、伸は分かっていたように頷きを返す。
 現在は捕まえた柊家の施設によって厳重警戒で捕縛されているが、魔人の研究をするならトップの研究者たちが集まる皇都でおこなうとなるのは当然だ。
 そのため、魔人を皇都へ輸送するのは分かっていたことだ。
 柊家の人間が出現した魔人を捕まえたということは、簡単に解決できるので嘘にはならない。
 伸によって制圧されたと知られても、伸が柊家の人間であるように手配すればいいだけのことだからだ。

「魔人が喋っちまうかもしれないからな……」

 柊家の人間が口をつぐんでも、魔人が会話ができる。
 皇都に運ばれて聞かれた魔人は、誰にやられたのかを話してしまうだろう。
 そうなれば、柊家の人間としては話さなければならなくなり、伸の名前を出すしかない。
 伸が何者かを調べようとすれば、八郷学園の高校生であると知られていまうかもしれないため、柊家は伸の名前を秘匿するという約束を反故にしてしまうことになる。
 そのことをあらかじめ伝えてきたのだろう。

「そうなったら仕方がない」

「それで……」

「ん? 何だ?」

 あの時伸は、多くの市民に被害が及ぶことを考えて、魔人を放置するという選択をしなかった。
 魔人についてはこれからの先の未来のことを考えたら殺してしまう訳にはいかなかった。
 研究材料と利用できるように生け捕りにしたのだから、それでバレてしまうのは仕方がない。
 鷹藤家も、今回のことで柊家にまで手を出すようなことはないだろう。
 そう思って諦めている伸に、綾愛は何か言いにくそうにしている。
 まだ何かあるのかと思い、伸は首を傾げて問いかけた。

「約束を守れなかった身としては言いにくいのですが、父としては柊家との関係は継続して欲しいとの話です」

「何だ、そんな事か……。そっちが迷惑でないなら別にこっちから切るつもりはないさ」

「そう……。それを聞いて安心したわ」

 魔人を捕まえたのは柊家ということは、国中に大々的に発表してしまった。
 いまさら伸が関係ないと言い出したら、柊家の評判は一気に落ちる。
 そうならないためにも、伸には柊家の関係者でいてもらいたいが、約束としていた伸の秘匿を守れなかったため、頼むしかない立場の綾愛は急に敬語で話してきた。
 しかし、伸としては別に柊との関係を切るつもりはない。
 鷹藤との関係を抜きにしても、名門の柊家が後ろ盾でいてくれるのはありがたい。
 なんなら、卒業後もいいところに就職が内定しているようなものだ。
 伸が関係を切らないことに安堵したのか、綾愛はすぐに口調が戻った。

「じゃあ、どうぞ」

「やった!」

 話はそこで終わりと言うかのように、綾愛は伸へメニューを渡す。
 それに反応するように、またここの料理が食べられると知った伸はガッツポーズをしたのだった。

しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m ✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。 【あらすじ】 神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!   そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!  事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます! 仕事繁忙期の為、2月中旬まで更新を週一に致します。 カクヨム(吉野 ひな)様にも投稿しています。

プライベート・スペクタル

点一
ファンタジー
【星】(スターズ)。それは山河を変えるほどの膂力、千里を駆ける脚力、そして異形の術や能力を有する超人・怪人達。 この物語はそんな連中のひどく…ひどく個人的な物語群。 その中の一部、『龍王』と呼ばれた一人の男に焦点を当てたお話。 (※基本 隔週土曜日に更新予定)

異世界で目覚めたら、もふもふ騎士団に保護されてました ~ちびっ子だけど、獣人たちの平穏のためお世話係がんばります!!~

ありぽん
ファンタジー
神のミスで命を落とした芽依は、お詫びとして大好きな異世界へ転生させてもらえることに。だが転生の際、またしても神のミスで、森の奥地に幼女の姿で送られてしまい。転生の反動で眠っていた瞳は、気づかないうちに魔獣たちに囲まれてしまう。 しかしそんな危機的状況の中、森を巡回していた、獣人だけで構成された獣騎士団が駆け付けてくれ、芽依はどうにかこの窮地を切り抜けることができたのだった。 やがて目を覚ました芽依は、初めは混乱したものの、すぐに現状を受け入れ。またその後、同じ種族の人間側で保護する案も出たが、ある事情により、芽依はそのまま獣騎士団の宿舎で暮らすことに。 そこで芽依は、助けてくれた獣騎士たちに恩を返すため、そして日々厳しい任務に向かう獣人たちが少しでも平穏に過ごせるようにと、お世話係を買って出る。 そんな芽依に、当初は不安だった獣人たちだったが、元気で明るい瞳の存在は、次第に獣人たちの力となっていくのだった。 これはちびっ子転生者の芽依が、獣人や魔獣たちのために奮闘し、癒しとなっていく。そんな、ほっこりまったり? な物語。

『急所』を突いてドロップ率100%。魔物から奪ったSSRスキルと最強装備で、俺だけが規格外の冒険者になる

仙道
ファンタジー
 気がつくと、俺は森の中に立っていた。目の前には実体化した女神がいて、ここがステータスやスキルの存在する異世界だと告げてくる。女神は俺に特典として【鑑定】と、魔物の『ドロップ急所』が見える眼を与えて消えた。  この世界では、魔物は倒した際に稀にアイテムやスキルを落とす。俺の眼には、魔物の体に赤い光の点が見えた。そこを攻撃して倒せば、【鑑定】で表示されたレアアイテムが確実に手に入るのだ。  俺は実験のために、森でオークに襲われているエルフの少女を見つける。オークのドロップリストには『剛力の腕輪(攻撃力+500)』があった。俺はエルフを助けるというよりも、その腕輪が欲しくてオークの急所を剣で貫く。  オークは光となって消え、俺の手には強力な腕輪が残った。  腰を抜かしていたエルフの少女、リーナは俺の圧倒的な一撃と、伝説級の装備を平然と手に入れる姿を見て、俺に同行を申し出る。  俺は効率よく強くなるために、彼女を前衛の盾役として採用した。  こうして、欲しいドロップ品を狙って魔物を狩り続ける、俺の異世界冒険が始まる。 12/23 HOT男性向け1位

詠唱? それ、気合を入れるためのおまじないですよね? ~勘違い貴族の規格外魔法譚~

Gaku
ファンタジー
「次の人生は、自由に走り回れる丈夫な体が欲しい」 病室で短い生涯を終えた僕、ガクの切実な願いは、神様のちょっとした(?)サービスで、とんでもなく盛大な形で叶えられた。 気がつけば、そこは剣と魔法が息づく異世界。貴族の三男として、念願の健康な体と、ついでに規格外の魔力を手に入れていた! これでようやく、平和で自堕落なスローライフが送れる――はずだった。 だが、僕には一つ、致命的な欠点があった。それは、この世界の魔法に関する常識が、綺麗さっぱりゼロだったこと。 皆が必死に唱える「詠唱」を、僕は「気合を入れるためのおまじない」だと勘違い。僕の魔法理論は、いつだって「体内のエネルギーを、ぐわーっと集めて、どーん!」。 その結果、 うっかり放った火の玉で、屋敷の壁に風穴を開けてしまう。 慌てて土魔法で修復すれば、なぜか元の壁より遥かに豪華絢爛な『匠の壁』が爆誕し、屋敷の新たな観光名所に。 「友達が欲しいな」と軽い気持ちで召喚魔法を使えば、天変地異の末に伝説の魔獣フェンリル(ただし、手のひらサイズの超絶可愛い子犬)を呼び出してしまう始末。 僕はただ、健康な体でのんびり暮らしたいだけなのに! 行く先々で無自覚に「やりすぎ」てしまい、気づけば周囲からは「無詠唱の暴君」「歩く災害」など、実に不名誉なあだ名で呼ばれるようになっていた……。 そんな僕が、ついに魔法学園へ入学! 当然のように入学試験では的を“消滅”させて試験官を絶句させ、「関わってはいけないヤバい奴」として輝かしい孤立生活をスタート! しかし、そんな規格外な僕に興味を持つ、二人の変わり者が現れた。 魔法の真理を探求する理論オタクの「レオ」と、強者との戦いを求める猪突猛進な武闘派女子の「アンナ」。 この二人との出会いが、モノクロだった僕の世界を、一気に鮮やかな色に変えていく――! 勘違いと無自覚チートで、知らず知らずのうちに世界を震撼させる! 腹筋崩壊のドタバタコメディを軸に、個性的な仲間たちとの友情、そして、世界の謎に迫る大冒険が、今、始まる!

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~

おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。 どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。 そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。 その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。 その結果、様々な女性に迫られることになる。 元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。 「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」 今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

ネグレクトされていた四歳の末娘は、前世の経理知識で実家の横領を見抜き追放されました。これからはもふもふ聖獣と美食巡りの旅に出ます。

旅する書斎(☆ほしい)
ファンタジー
アークライト子爵家の四歳の末娘リリアは、家族から存在しないものとして扱われていた。食事は厨房の残飯、衣服は兄姉のお下がりを更に継ぎ接ぎしたもの。冷たい床で眠る日々の中、彼女は高熱を出したことをきっかけに前世の記憶を取り戻す。 前世の彼女は、ブラック企業で過労死した経理担当のOLだった。 ある日、父の書斎に忍び込んだリリアは、ずさんな管理の家計簿を発見する。前世の知識でそれを読み解くと、父による悪質な横領と、家の財産がすでに破綻寸前であることが判明した。 「この家は、もうすぐ潰れます」 家族会議の場で、リリアはたった四歳とは思えぬ明瞭な口調で破産の事実を突きつける。激昂した父に「疫病神め!」と罵られ家を追い出されたリリアだったが、それは彼女の望むところだった。 手切れ金代わりの銅貨数枚を握りしめ、自由を手に入れたリリア。これからは誰にも縛られず、前世で夢見た美味しいものをたくさん食べる生活を目指す。

今更気付いてももう遅い。

ユウキ
恋愛
ある晴れた日、卒業の季節に集まる面々は、一様に暗く。 今更真相に気付いても、後悔してももう遅い。何もかも、取り戻せないのです。

処理中です...