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1学年 前期
第46話
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「……ご当主様、あの少年は本当に何者なのでしょうか?」
「…………奇遇だな。俺も同じ思いだ」
魔石を体内に取り入れてパワーアップした魔人と戦いだした伸。
その戦いを、離れた場所から眺める俊夫は、魔人を倒すなり捕まえるなりした時のために配備していた部下たちの1人の言葉に同意する。
名門の柊家の当主でありながら、魔人の相手を高校生に任せることになり恥ずかしい限りだ。
しかし、回復薬と魔術で足の怪我を治療したが、とてもではないが自分が入っていける状況ではない。
それだけ伸と魔人の移動速度が速すぎる。
「黙って見ているしかないな……」
「そうですね……」
もしも入って行こうものなら、伸の邪魔になることが分かりきっている。
つまり、完全に足手まといにしかならないということだ。
しかも、それが高校生だというのだから驚きだ。
柊家の当主として色々な強者に会ってきたが、ここまで強い高校生なんて見たことない。
この国最強と言われている鷹藤家現当主の康義でも、伸と戦って勝てるか微妙なところだ。
「……あの時のは本気だったみたいだな」
初めて邸に呼んで面会した時、伸は自分にたいして『この国最強の魔術師』と言っていた。
その時は眉唾物だったが、これほどとなると伸は本気で言っていたのだと、俊夫は今になって理解した。
「しかも、魔術だけじゃないなんて……」
伸と魔人との戦いは、終始魔人が押しているように見える。
身体強化した魔人の一撃なんて、受け止めることすら危険でしかない。
しかし、伸はそんな攻撃を刀で捌いている。
「あんな攻撃を捌くなんて、とんでもない剣技だ」
魔人の1撃1撃は、身体強化だけで防げるような攻撃ではない。
それを刀で捌くなんてとても信じられない。
伸の剣技が、それだけすごいということを示しているのだ。
どんな指導を受ければあそこまで強くなれるのか、その過酷な訓練を想像すると、俊夫は何故だか寒気がしてきた。
「あいつの言うように、本気で考えるべきかもな……」
あいつとは、俊夫の妻である静奈のことだ。
妻の静奈は、伸の実力が高いということを聞いて、娘の綾愛の婿にすることを提案していた。
綾愛の初めての魔物退治を伸と一緒にさせたりと密かに動いていたが、結局何の進展もない状況に残念そうにしていた。
あの時は勝手なことをしてと文句を言いたいところだったが、伸を綾愛に付けていたことによって命が助かったとも言える。
なので、あながち文句も言えなくなってしまった。
静奈が伸を婿にしようといった時は、絶対に娘をやるなんて考えていなかった。
しかし、この洞窟の存在を知っているということで、俊夫は伸が昔も綾愛を救った人間の可能性を感じている。
そのうちそれを確かめるつもりだが、もしもそれが本当だとしたら、もう運命と諦めるしかないのではないかと、頑なだった思いも軟化していた。
そうなった止めがこの強さだ。
娘の婿に求める無理難題を、伸は全て揃えている。
鷹藤家とのことがあるが、ここまでの強さがあればそんなの気にする意味がない。
柊家だけでは止められるかは分からないが、彼の強さも合わされば、鷹藤なんて恐れるに足らない。
「あの少年は、なんとしても柊家に入れたい」
「ご当主様……」
伸の婿取り。
静奈と同様に、内心でそれをほぼ決めた俊夫は、思わず口に出していた。
その呟きを聞いた部下たちは、驚きの声を漏らした。
当主の俊夫は、一人娘をとてもかわいがっている。
柊家に仕えている者たちの中で綾愛と年の近い息子を持つ者たちは、婿にと打診したのだが、どの者たちも拒否された。
柊家の部下の子なら、平均以上の実力を有しているのがほとんどだ。
それで駄目なら、それこそ他の地区の名門家から引き入れるしかないだろう。
だが、俊夫はそんな名門子息も近付けさせないようにしてきた。
それを知っている部下たちは、綾愛の婿になれるような人間はどこにもいないと思っていた。
それが、あの伸という少年を認めているような発言だ。
部下たちが驚くのも当然といったところだろう。
「おわっ!!」
「すごいっ!!」
高速移動による抜刀術。
それを防がれた直後、伸が魔人の顔面に魔術を打ち込んだ。
その連携攻撃に、俊夫を含めて見ていた者たちは驚きの声をあげる。
高度の剣技に、魔力の操作技術。
まともな魔術師なら、この高次元の技術を見て反応しない者はいないだろう。
「……終わったようだな?」
「……はい」
その後、至近距離の魔術を食らって立ち上がった魔人に驚いたが、伸が弱った魔人の首を斬り飛ばしたのを見て、俊夫たちは戦闘の終了を確認した。
あまりの戦いを目にしていたからか、俊夫たちはガッツポーズをするのを忘れて、伸へと向かて走り出していた。
◆◆◆◆◆
「伸君……」
「あっ! 柊殿、勝てました」
倒れた魔人の死を確信してようやく気を抜くことができた伸に、戦闘に巻き込まれないように離れていた俊夫が声をかけてきた。
戦いで負った足の怪我は、治療したようで普通に歩いている。
その俊夫に向かって、伸は魔人討伐の報告をした。
「あぁ、見させてもらった。ありがとう! 君はこの国の人間を救ったも同然だ!」
「そんな……、大袈裟ですよ」
「大袈裟なもんか。君以外であの魔人を単独で倒せる者なんて、この国にはいないだろうからな。たいした奴だ君は!」
伸の報告に、俊夫は笑顔で握手をして来た。
規模が国なんて言われても、いまいちピンとこないため、伸はそこまでのことをした気にならない。
そのため、謙遜していると、追い打ちをかけるように褒めてきた。
「……死んだか?」
「すいません。生かして捕らえるのは困難と判断しました」
魔術を食らって顔面が焼けただれた魔人の頭部を見て、俊夫は不愉快そうに呟く。
前回のように捕まえなかったことを咎められているかと思った伸は、若干申し訳なさそうに謝った。
「いや、仕方がない。ただ、自分で木畑や被害者の仇を撃ちたかっただけだよ……」
「そうですか」
今回出た魔人により、多くの命などが失われた。
その中でも、部下である木畑や攫われた医者たちなどの命を奪った兄の方の魔人には腹が立つ。
もう少しでその敵討ちができる所だったのに、弟の魔人に掻っ攫われる形になってしまった。
そのせいで、不完全燃焼のような思いになっていたために呟いただけで、別に伸を攻めている訳ではない。
勘違いさせてしまった俊夫は呟きの意味を伝え、伸もその思いに納得した。
「あっ! ここからはもういいですか?」
「んっ? あぁ、大丈夫だが……?」
俊夫と話していた伸は、あることを思いだしてスマホで現時刻を確認する。
そして、魔物や魔人の死体が転がる現状の後始末を、俊夫に任せるように話してくる。
元々俊夫は魔人を倒した後のために数人の部下を配備していたし、麓に連絡を取れば人員の補充もできるため、伸がいなくなっても問題はないだろう。
少し慌てるような伸に訝しみながらも、俊夫は問題ないことを告げた。
「早退にしたので、寮に帰らないと……」
「……そ、そうか……」
何かと思ったら、急に高校生らしい話になった。
俊夫も高校時代は寮生活だったので、焦るのも分からなくもない。
早退したのに、寮にいないとバレたら面倒なのだろう。
今回のことで伸の存在を隠し通せるか微妙だが、アリバイ作りの意味合いもある。
「ではっ!」
「……あぁ。ご苦労さん!」
あれだけの戦いをしたのに転移の魔術を発動させた伸に、まだ余裕だったんじゃないかと伺える。
しかし、それにツッコミを入れるのを耐えて、俊夫は伸を見送ったのだった。
「…………奇遇だな。俺も同じ思いだ」
魔石を体内に取り入れてパワーアップした魔人と戦いだした伸。
その戦いを、離れた場所から眺める俊夫は、魔人を倒すなり捕まえるなりした時のために配備していた部下たちの1人の言葉に同意する。
名門の柊家の当主でありながら、魔人の相手を高校生に任せることになり恥ずかしい限りだ。
しかし、回復薬と魔術で足の怪我を治療したが、とてもではないが自分が入っていける状況ではない。
それだけ伸と魔人の移動速度が速すぎる。
「黙って見ているしかないな……」
「そうですね……」
もしも入って行こうものなら、伸の邪魔になることが分かりきっている。
つまり、完全に足手まといにしかならないということだ。
しかも、それが高校生だというのだから驚きだ。
柊家の当主として色々な強者に会ってきたが、ここまで強い高校生なんて見たことない。
この国最強と言われている鷹藤家現当主の康義でも、伸と戦って勝てるか微妙なところだ。
「……あの時のは本気だったみたいだな」
初めて邸に呼んで面会した時、伸は自分にたいして『この国最強の魔術師』と言っていた。
その時は眉唾物だったが、これほどとなると伸は本気で言っていたのだと、俊夫は今になって理解した。
「しかも、魔術だけじゃないなんて……」
伸と魔人との戦いは、終始魔人が押しているように見える。
身体強化した魔人の一撃なんて、受け止めることすら危険でしかない。
しかし、伸はそんな攻撃を刀で捌いている。
「あんな攻撃を捌くなんて、とんでもない剣技だ」
魔人の1撃1撃は、身体強化だけで防げるような攻撃ではない。
それを刀で捌くなんてとても信じられない。
伸の剣技が、それだけすごいということを示しているのだ。
どんな指導を受ければあそこまで強くなれるのか、その過酷な訓練を想像すると、俊夫は何故だか寒気がしてきた。
「あいつの言うように、本気で考えるべきかもな……」
あいつとは、俊夫の妻である静奈のことだ。
妻の静奈は、伸の実力が高いということを聞いて、娘の綾愛の婿にすることを提案していた。
綾愛の初めての魔物退治を伸と一緒にさせたりと密かに動いていたが、結局何の進展もない状況に残念そうにしていた。
あの時は勝手なことをしてと文句を言いたいところだったが、伸を綾愛に付けていたことによって命が助かったとも言える。
なので、あながち文句も言えなくなってしまった。
静奈が伸を婿にしようといった時は、絶対に娘をやるなんて考えていなかった。
しかし、この洞窟の存在を知っているということで、俊夫は伸が昔も綾愛を救った人間の可能性を感じている。
そのうちそれを確かめるつもりだが、もしもそれが本当だとしたら、もう運命と諦めるしかないのではないかと、頑なだった思いも軟化していた。
そうなった止めがこの強さだ。
娘の婿に求める無理難題を、伸は全て揃えている。
鷹藤家とのことがあるが、ここまでの強さがあればそんなの気にする意味がない。
柊家だけでは止められるかは分からないが、彼の強さも合わされば、鷹藤なんて恐れるに足らない。
「あの少年は、なんとしても柊家に入れたい」
「ご当主様……」
伸の婿取り。
静奈と同様に、内心でそれをほぼ決めた俊夫は、思わず口に出していた。
その呟きを聞いた部下たちは、驚きの声を漏らした。
当主の俊夫は、一人娘をとてもかわいがっている。
柊家に仕えている者たちの中で綾愛と年の近い息子を持つ者たちは、婿にと打診したのだが、どの者たちも拒否された。
柊家の部下の子なら、平均以上の実力を有しているのがほとんどだ。
それで駄目なら、それこそ他の地区の名門家から引き入れるしかないだろう。
だが、俊夫はそんな名門子息も近付けさせないようにしてきた。
それを知っている部下たちは、綾愛の婿になれるような人間はどこにもいないと思っていた。
それが、あの伸という少年を認めているような発言だ。
部下たちが驚くのも当然といったところだろう。
「おわっ!!」
「すごいっ!!」
高速移動による抜刀術。
それを防がれた直後、伸が魔人の顔面に魔術を打ち込んだ。
その連携攻撃に、俊夫を含めて見ていた者たちは驚きの声をあげる。
高度の剣技に、魔力の操作技術。
まともな魔術師なら、この高次元の技術を見て反応しない者はいないだろう。
「……終わったようだな?」
「……はい」
その後、至近距離の魔術を食らって立ち上がった魔人に驚いたが、伸が弱った魔人の首を斬り飛ばしたのを見て、俊夫たちは戦闘の終了を確認した。
あまりの戦いを目にしていたからか、俊夫たちはガッツポーズをするのを忘れて、伸へと向かて走り出していた。
◆◆◆◆◆
「伸君……」
「あっ! 柊殿、勝てました」
倒れた魔人の死を確信してようやく気を抜くことができた伸に、戦闘に巻き込まれないように離れていた俊夫が声をかけてきた。
戦いで負った足の怪我は、治療したようで普通に歩いている。
その俊夫に向かって、伸は魔人討伐の報告をした。
「あぁ、見させてもらった。ありがとう! 君はこの国の人間を救ったも同然だ!」
「そんな……、大袈裟ですよ」
「大袈裟なもんか。君以外であの魔人を単独で倒せる者なんて、この国にはいないだろうからな。たいした奴だ君は!」
伸の報告に、俊夫は笑顔で握手をして来た。
規模が国なんて言われても、いまいちピンとこないため、伸はそこまでのことをした気にならない。
そのため、謙遜していると、追い打ちをかけるように褒めてきた。
「……死んだか?」
「すいません。生かして捕らえるのは困難と判断しました」
魔術を食らって顔面が焼けただれた魔人の頭部を見て、俊夫は不愉快そうに呟く。
前回のように捕まえなかったことを咎められているかと思った伸は、若干申し訳なさそうに謝った。
「いや、仕方がない。ただ、自分で木畑や被害者の仇を撃ちたかっただけだよ……」
「そうですか」
今回出た魔人により、多くの命などが失われた。
その中でも、部下である木畑や攫われた医者たちなどの命を奪った兄の方の魔人には腹が立つ。
もう少しでその敵討ちができる所だったのに、弟の魔人に掻っ攫われる形になってしまった。
そのせいで、不完全燃焼のような思いになっていたために呟いただけで、別に伸を攻めている訳ではない。
勘違いさせてしまった俊夫は呟きの意味を伝え、伸もその思いに納得した。
「あっ! ここからはもういいですか?」
「んっ? あぁ、大丈夫だが……?」
俊夫と話していた伸は、あることを思いだしてスマホで現時刻を確認する。
そして、魔物や魔人の死体が転がる現状の後始末を、俊夫に任せるように話してくる。
元々俊夫は魔人を倒した後のために数人の部下を配備していたし、麓に連絡を取れば人員の補充もできるため、伸がいなくなっても問題はないだろう。
少し慌てるような伸に訝しみながらも、俊夫は問題ないことを告げた。
「早退にしたので、寮に帰らないと……」
「……そ、そうか……」
何かと思ったら、急に高校生らしい話になった。
俊夫も高校時代は寮生活だったので、焦るのも分からなくもない。
早退したのに、寮にいないとバレたら面倒なのだろう。
今回のことで伸の存在を隠し通せるか微妙だが、アリバイ作りの意味合いもある。
「ではっ!」
「……あぁ。ご苦労さん!」
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