主人公は高みの見物していたい

ポリ 外丸

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1学年 後期

第74話

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「魔物の反応が近い!!」

 鷹藤家の配下の魔術師である横山、高木、小川の3人と共に山の魔物討伐をおこなっていた文康。
 縄張り関係のことなど無視して州境を越え、探知した魔物へと接近していった。

「っ!! オーガだ!!」

 魔力による身体強化した状態で急接近した文康は、探知した魔物の姿を確認して声を上げて一旦足を止めて樹の陰に身を隠す。
 その魔物は、身長3m近くの鬼のオーガだった。
 オーガの手には、武器のつもりなのか折れた竹を持っている。
 2m程の長さで太い孟宗竹でも、オーガにとっては丁度持ちやすい太さなのかもしれない。

「フッ! よし!」

「お待ちください! 若!」

「何だ!?」

 その大きさに一瞬息を飲んだ文康だが、すぐに笑みを浮かべてオーガへと近付こうとする。
 何を考えているのか分からないが、配下の1人である横山が文康を呼び止める。
 その配下の待ったに、行く気を削がれた文康はイラついた様子で問いかけた。

「先程も言ったように、ここは八郷地区の領域内です。もしも我々がこちらの魔物を勝手に倒したとなったら、鷹藤家が魔術師界において批判を受けることになります」

「何を言っている!? 柊家も鷹藤家の追っていた魔族を横取りしたのだから、そんなこと気にすることはない!!」

「あっ!!」

 州境を勝手に越えること自体は問題ない。
 しかし、州境を越えて別地区の魔物を倒すことは御法度になっている。
 魔物の魔石などの素材は、ある意味資源でもあるからだ。
 横山が再度そのことを注意しても聞き入れず、文康は腰に差した刀を抜いて単独でオーガへと向かって走り出してしまった。

「くそっ! やるしかない!」

「こうなったら、さっさと倒して官林地区に持って行っちまおう!」

「そうだな! まだ八郷地区の魔術師はいないからな……」

 言うことを聞くからとついてきているはずだが、文康は全く聞き入れる様子がない。
 強く言いたいところだが、鷹藤家の跡取りということもあって、配下の自分たちでは言いにくい。
 それが最悪の状況を生み出してしまった。
 文康を止めることができないのだから倒すしかない。
 自分たちなら経験上オーガを倒すことはそこまで難しくないだろう。
 探知してみると周囲には八郷地区の魔術師もいないのだから、倒して官林地区に持って行って越境行為をしていないと言い張ってしまおうと横山たちは考え、彼らはオーガへ向かっていく文康を追いかけた。

「ガアァーー!!」

「くっ!」

 文康たちに気付いたオーガは、手に持つ竹を振り下ろす。
 その攻撃に対し、文康は接近するのをやめて横へと跳び退いた。
 オーガの攻撃は文康に当たらず、そのまま大きな音を立てて地面を叩きつけた。
 直撃すればただでは済まない攻撃だと察した文康は、もしもの時のことが頭をよぎり表情を歪めた。

「若! オーガがその巨体から繰り出す攻撃は強力です! お気を付けください!」

 文康から少し遅れた横山たちが追い付き、文康に注意を促す。
 いくら文康が天才だと言っても、さすがにオーガを単体で倒すことなど難しい。
 今の攻撃だけでそれを理解したはずだ。

「防御をするだけでも吹き飛ばされる可能性があります!

「ですが、動きは遅いので連携を取って集団で戦えば倒せる相手です!」

「オーガを倒すのであれば、我々の指示に従ってください!」

 横山、高木、小川の3人は、順番にオーガとの戦闘時の注意点を説明をする。
 最低限のことだが、これさえ覚えておけば大怪我をすることはない。
 八郷地区の人間にバレないうちに倒したい彼らとしては、文康の独断による戦闘をさせている場合ではないため、強い口調で文康に話しかけた。

「……父さんやお爺様なら、オーガなんて1人で倒せるだろ?」

「それはできますが……」

「だったらこいつくらい俺も1人でやってやる!」

「「「若っ!!」」」

 1人では無理だと棟回しに言われた文康は、先程の恐怖による感情から怒りの表情へと変わっていく。
 そして、オーガを睨みつけつつ問いかけた後、横山の返答を最後まで聞かずに走り出そうとする。
 それを見た横山たちは慌てて文康を捕まえ、オーガへ向かっていこうとするのを阻止する。
 そして、文康を捕まえたまま、彼らは向かって来るオーガから距離を取った。

「お待ちください! 1人で戦うなんて危険です!」

「離せ! 俺はお爺様を越えるんだ! こんな奴くらい倒してやる!」

 文康の目標は、鷹藤家において歴代最強と言われた祖父を越えることだ。
 高校に進学しても同世代にライバルになる者がおらず、強くなるために何をすれば良いのか分からなくなっていた。
 学園の上級生は下級生に負けるわけにはいかないせいか、自分との戦闘訓練を拒否をされてばかり、学園の授業も文康にとってはつまらなく、自分が足踏みしている状態に思えてフラストレーションが溜まりっぱなしだった。
 それがこんな所で爆発してしまったのか、3人に捕まれた文康は離すように暴れる。

「…………」

「何だ?」

 何としても自分1人でオーガを倒そうとする文康。
 これ以上時間をかけていたらオーガの攻撃が飛んで来るし、八郷地区の魔術師たちが来てしまうかもしれない。
 そのことを危惧した横山は、暴れる文康の目の前に立ち拳を握りしめた。

“パンッ!!”

「っ!?」

「お、おいっ!」「横山……?」

 いきなりのことに、文康は目を見開く。
 突然配下の者に平手打ちを食らったからだ。
 高木と小川も、横山のおこないに慌てた声を上げる。
 鷹藤家の当主の孫を殴ったのだから無理はない。

「落ち着いて下さい! 若がオーガを1人で倒すのは無理です! そもそも我々の指示に従うように言われていたはずです。これ以上暴れるというのなら、我々はあなたを気絶させて逃走を図ります」

「…………」

 いきなりの平手打ちで、驚きで文康の頭は真っ白になった。
 その状態で言われたことで、自分が足を引っ張っているということを理解できた。

「……分かった。お前たちの指示に従う」

「「若!!」」

 色々なことが重なり、自分は焦っていた。
 自分の目標は祖父を越えること。
 こんな所で危険を冒す必要はない。
 そう考えた文康は、横山たちの指示に従うことに決めた。
 その文康の言葉に、高木と小川が安堵の声を上げた。

「では、オーガと戦う時の作戦を説明します……」

 これ以上暴れるようなら、横山は本当に気絶させてしまおうかと思っていた。
 しかし、冷静になってくれたことで、オーガと戦うことができる。
 文康を殴ってしまい、実は内心ドッキドキの横山は、冷静を装ってオーガとの戦闘方法を文康へと説明を始めたのだった。

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