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1学年 後期
第87話
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「ハッ!! ハッ!!」
「くっ! っと!」
昨日の試合とは全く逆で、今日の試合は長期戦になっていた。
了は魔術による遠距離攻撃が得意ではないため、距離を詰めての接近戦しか勝機はない。
しかし、対戦相手の東堂は、1、2回戦の時の了の戦いぶりからそれが分かっているため、魔術を放って近付かせない。
「ハァ、ハァ……」
「くそっ!」
了が攻撃を躱して一定の距離から離れると、東堂は一旦水球の攻撃を停止する。
すると、了も乱れた息を整えようと回復にかかるため、これでは試合開始直後と変わらない。
最初のうちは甚振るように水球の魔術を放っていた東堂だったが、了の身軽な攻撃回避によって全然当たらないため焦りを覚えてきていた。
「チッ! いい加減にしろよ!」
「マジかよっ!!」
ここまで東堂が自身の周りに作り出している水球は5つ。
了が一定の距離に近付くと、それを発射して迎撃していた。
しかし、このままでは埒が明かないと判断したのか、東堂はもう1つ水球を増やした。
5つでもかなりの魔力コントロールがないとできないことだが、更にもう1つ増えたことに了は驚きの声を上げた。
『……手のうちを隠していたって事か? しかし、今さら1つ増やしたところで……』
5つの多起動魔術は高校生にしてはかなりの技術だ。
更にもう1つとなると、かなりの実力者でないとできないことだ。
伸からすれば5つでも6つでも大したことではないが、それを対処しなければならない了にはきついところだろう。
これまでそうしなかったのは、この先の戦いのために隠していたということだろう。
たしかに1つ増えれば了が接近戦に持ち込む難易度は跳ね上がるが、東堂の魔術攻撃に慣れた今では当たる訳でもない。
近付かせなければ勝てると分かっていた相手に、長時間粘られたことで焦ったのだろうか。
案の定、伸が思った通り水球の魔術は了に当たらない。
その代わり、東堂との距離が更に離れたことで、了が接近することも難しくなった。
「くそっ! こうなったら……」
1年と3年という学年差があり、接近することができなければ負けると分かっている了と、勝てると分かっている手こずっている東堂では、心理的に差が出てきたようだ。
6つにしようとも戦況がたいして変わらなかったことで、東堂は更に慌てる。
本来なら、このまま続ければ了の体力が尽きて攻撃が当たるようになるところだったのだが、東堂は焦りからかそうなるのを待てなかったようだ。
威力の高い魔術を放って了を倒そうと考えた東堂は、6つの水球を放ってすぐに魔力を溜める動作へと入った。
「了!! 今だ!!」
6つの水球を躱した了に、伸が大きな声を上げる。
阿吽の呼吸とでもいうのか、了もそれが何を意味するのかを理解し、全身に覆っていた魔力のほとんどを脚へと送り、地面を蹴る。
「ハーッ!!」
「っっっ!! こいつっ!!」
昨日の試合でもおこなった移動速度の加速。
それをおこなって、了は強力魔術を放とうとしていた東堂との距離を一気に詰めた。
魔力を溜めていた東堂は、驚きつつも了への対応へ移る。
「がっ!!」「ごっ!!」
一直線に接近した了の木刀と、それに合わせるように東堂の木刀が交差する。
お互い相手の木刀が胴へと当たり、その衝撃で吹き飛んで行った。
「両者ダウン!!」
吹き飛んだ2人が倒れたのを見て、審判が声を上げる。
こういった場合、場外同様20カウント以内にどちらかが立ち上がらないと、両者ノックダウンの引き分けとなり、翌日の再試合へと移ることになる。
そのため、審判はカウントを開始した。
「ぐぅ……」「うぅ……」
カウントの開始に反応するように、東堂、了の順で体を起こし始める。
木刀に込められた魔力量は互角。
しかし、どちらかというと浅く攻撃を食らった了の方が動きが鈍いように見える。
それもそのはず、魔力を脚に集めて加速するために、了は体の他の部位に纏う魔力を減らしていた。
そのため、身体強化が弱まっており、浅く当たっただけでもかなりのダメージを受けたのだ。
しかも、調節して昨日よりも魔力を残した加速だったとはいえ、結構な魔力を使ってしまったことによる疲労も加わって、かなりしんどい状況だ。
「くそっ……」
「フウ、フウ……」
両者ともに20カウント内に立ち上がる。
つまり、試合は続行。
胴へ受けたダメージに耐えながら、東堂は木刀を構える。
それに反し、了はダメージと魔力消費で立つのがやっとといったような状況だ。
「ハッ!!」
「くっ!!」
ダメージを受けたことで、さっきまでの焦りが飛んだのか、東堂は冷静に了への攻撃を開始する。
この状況でも了の得意な接近戦より、魔術による遠距離攻撃の方が確実だと判断したのか、またも水球を放って攻撃した。
了はダメージと疲労感で鈍った足でその攻撃を左へ跳ぶことで躱そうとする。
だが、躱しきれず、水球が右腕に掠る。
「ハッ!」
「がっ!!」
更に追撃をする東堂の水球を、今度は右へと躱そうとする。
しかし、またも躱しきれず、左腕に浅く当たった。
その痛みに了の表情が歪んだ。
「了! 降参しろ!」
東堂の水球攻撃は先程までの連射ではなく、しっかりと魔力を込めた一発を了へと放つように変えている。
動きが鈍っているのに、速度と威力が上がった攻撃を了が躱すのは難しい。
さっきの攻撃で仕留めきらなかった時点で了の勝利は遠退いた。
これ以上戦うのは危険だと思ったセコンドの伸は、降参することを提案する。
「ハァ、ハァ……」
「…………了?」
伸の提案が聞こえているはずなのだが、了はまだやる気らしく聞き流している。
接近戦しかないのに近付けない。
さっきの受けた攻撃で、左手も痛めている。
勝機がないのに、どうしてまだ戦うつもりなのか伸は首を傾げる。
「しぶとい!!」
「ぐあっ!!」
ギリギリの回避を続けていた了だったが、とうとう東堂の攻撃が了の足に当たってしまった。
「くっ……」
木刀を杖にするようにして、了は何とか倒れることを回避した。
しかし、片足ではもう回避し続けることは不可能。
それなのに、了は降参をしない。
「ハッ!!」
「っっっ!!」
追撃するように放った水球を、了は魔力を纏った木刀で受け止める。
魔力をかなり使って弱った状態の了ではその水球の威力を抑えきれず、持っていた木刀が飛ばされてしまった。
「了!! もう無理だ!!」
「…………」
「……了! どうして?」
無手の状況ではもう話にならない。
伸は了に再度降参することを提案した。
しかし、了は再度伸の言葉を聞き流したため、伸は理解できないでいた。
「くっ! っと!」
昨日の試合とは全く逆で、今日の試合は長期戦になっていた。
了は魔術による遠距離攻撃が得意ではないため、距離を詰めての接近戦しか勝機はない。
しかし、対戦相手の東堂は、1、2回戦の時の了の戦いぶりからそれが分かっているため、魔術を放って近付かせない。
「ハァ、ハァ……」
「くそっ!」
了が攻撃を躱して一定の距離から離れると、東堂は一旦水球の攻撃を停止する。
すると、了も乱れた息を整えようと回復にかかるため、これでは試合開始直後と変わらない。
最初のうちは甚振るように水球の魔術を放っていた東堂だったが、了の身軽な攻撃回避によって全然当たらないため焦りを覚えてきていた。
「チッ! いい加減にしろよ!」
「マジかよっ!!」
ここまで東堂が自身の周りに作り出している水球は5つ。
了が一定の距離に近付くと、それを発射して迎撃していた。
しかし、このままでは埒が明かないと判断したのか、東堂はもう1つ水球を増やした。
5つでもかなりの魔力コントロールがないとできないことだが、更にもう1つ増えたことに了は驚きの声を上げた。
『……手のうちを隠していたって事か? しかし、今さら1つ増やしたところで……』
5つの多起動魔術は高校生にしてはかなりの技術だ。
更にもう1つとなると、かなりの実力者でないとできないことだ。
伸からすれば5つでも6つでも大したことではないが、それを対処しなければならない了にはきついところだろう。
これまでそうしなかったのは、この先の戦いのために隠していたということだろう。
たしかに1つ増えれば了が接近戦に持ち込む難易度は跳ね上がるが、東堂の魔術攻撃に慣れた今では当たる訳でもない。
近付かせなければ勝てると分かっていた相手に、長時間粘られたことで焦ったのだろうか。
案の定、伸が思った通り水球の魔術は了に当たらない。
その代わり、東堂との距離が更に離れたことで、了が接近することも難しくなった。
「くそっ! こうなったら……」
1年と3年という学年差があり、接近することができなければ負けると分かっている了と、勝てると分かっている手こずっている東堂では、心理的に差が出てきたようだ。
6つにしようとも戦況がたいして変わらなかったことで、東堂は更に慌てる。
本来なら、このまま続ければ了の体力が尽きて攻撃が当たるようになるところだったのだが、東堂は焦りからかそうなるのを待てなかったようだ。
威力の高い魔術を放って了を倒そうと考えた東堂は、6つの水球を放ってすぐに魔力を溜める動作へと入った。
「了!! 今だ!!」
6つの水球を躱した了に、伸が大きな声を上げる。
阿吽の呼吸とでもいうのか、了もそれが何を意味するのかを理解し、全身に覆っていた魔力のほとんどを脚へと送り、地面を蹴る。
「ハーッ!!」
「っっっ!! こいつっ!!」
昨日の試合でもおこなった移動速度の加速。
それをおこなって、了は強力魔術を放とうとしていた東堂との距離を一気に詰めた。
魔力を溜めていた東堂は、驚きつつも了への対応へ移る。
「がっ!!」「ごっ!!」
一直線に接近した了の木刀と、それに合わせるように東堂の木刀が交差する。
お互い相手の木刀が胴へと当たり、その衝撃で吹き飛んで行った。
「両者ダウン!!」
吹き飛んだ2人が倒れたのを見て、審判が声を上げる。
こういった場合、場外同様20カウント以内にどちらかが立ち上がらないと、両者ノックダウンの引き分けとなり、翌日の再試合へと移ることになる。
そのため、審判はカウントを開始した。
「ぐぅ……」「うぅ……」
カウントの開始に反応するように、東堂、了の順で体を起こし始める。
木刀に込められた魔力量は互角。
しかし、どちらかというと浅く攻撃を食らった了の方が動きが鈍いように見える。
それもそのはず、魔力を脚に集めて加速するために、了は体の他の部位に纏う魔力を減らしていた。
そのため、身体強化が弱まっており、浅く当たっただけでもかなりのダメージを受けたのだ。
しかも、調節して昨日よりも魔力を残した加速だったとはいえ、結構な魔力を使ってしまったことによる疲労も加わって、かなりしんどい状況だ。
「くそっ……」
「フウ、フウ……」
両者ともに20カウント内に立ち上がる。
つまり、試合は続行。
胴へ受けたダメージに耐えながら、東堂は木刀を構える。
それに反し、了はダメージと魔力消費で立つのがやっとといったような状況だ。
「ハッ!!」
「くっ!!」
ダメージを受けたことで、さっきまでの焦りが飛んだのか、東堂は冷静に了への攻撃を開始する。
この状況でも了の得意な接近戦より、魔術による遠距離攻撃の方が確実だと判断したのか、またも水球を放って攻撃した。
了はダメージと疲労感で鈍った足でその攻撃を左へ跳ぶことで躱そうとする。
だが、躱しきれず、水球が右腕に掠る。
「ハッ!」
「がっ!!」
更に追撃をする東堂の水球を、今度は右へと躱そうとする。
しかし、またも躱しきれず、左腕に浅く当たった。
その痛みに了の表情が歪んだ。
「了! 降参しろ!」
東堂の水球攻撃は先程までの連射ではなく、しっかりと魔力を込めた一発を了へと放つように変えている。
動きが鈍っているのに、速度と威力が上がった攻撃を了が躱すのは難しい。
さっきの攻撃で仕留めきらなかった時点で了の勝利は遠退いた。
これ以上戦うのは危険だと思ったセコンドの伸は、降参することを提案する。
「ハァ、ハァ……」
「…………了?」
伸の提案が聞こえているはずなのだが、了はまだやる気らしく聞き流している。
接近戦しかないのに近付けない。
さっきの受けた攻撃で、左手も痛めている。
勝機がないのに、どうしてまだ戦うつもりなのか伸は首を傾げる。
「しぶとい!!」
「ぐあっ!!」
ギリギリの回避を続けていた了だったが、とうとう東堂の攻撃が了の足に当たってしまった。
「くっ……」
木刀を杖にするようにして、了は何とか倒れることを回避した。
しかし、片足ではもう回避し続けることは不可能。
それなのに、了は降参をしない。
「ハッ!!」
「っっっ!!」
追撃するように放った水球を、了は魔力を纏った木刀で受け止める。
魔力をかなり使って弱った状態の了ではその水球の威力を抑えきれず、持っていた木刀が飛ばされてしまった。
「了!! もう無理だ!!」
「…………」
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