主人公は高みの見物していたい

ポリ 外丸

文字の大きさ
104 / 281
1学年 後期

第104話

しおりを挟む
「ヌンッ!!」

 魔力を操作し、カルミネは無数の水の玉を生み出す。
 そして、それを自分の周りへと浮き上がらせた。

「その数……、魔術の方が得意というのは嘘ではなかったようだな」

 あれだけの水の玉を作り出し、コントロールする技術。
 先程カルミネが言った、接近戦より魔術の方が得意だという言葉は、それを見る限り本当だったようだ。

「ハッ!!」

 カルミネが手を向けることで、サッカーボールほどの大きさをした無数の水の玉が、康義へと殺到する。

「くっ!!」

 殺到する水の玉に対し、康義は移動と迎撃の選択をとる。
 的を絞らせないように動き回りつつ、躱せそうにない場合は魔力を纏った刀で斬って魔力を霧散させる。

「フゥ~……」

「おぉ! すごいすごい……」

 少しして水の玉の攻撃が治まる。
 カルミネが作り出した水の玉を、康義は全て防ぎきったのだ。
 動き回ったことによる体力の消失に、康義は息を深く吐いた。
 そんな康義のことを、敵であるはずのカルミネは拍手をして褒める。

「じゃあ、次はこれだ」

「っ!!」

 水の玉を防いだ康義に対し、カルミネはまたも魔術を発動させる。
 先程の水の玉と同等のサイズの火の玉を作り出した。

「ホイッ!!」

「グオッ!!」

 攻撃が迫るが、水から火に代わっただけ。
 康義は先程と同じように、移動と迎撃をおこなって火の玉を防ぐ。

「ハイ! 次!」

「くっ!!」

 火の玉を防ぐと、カルミネは次に石弾による攻撃を放ってくる。
 康義はそれも同じように防ぐ。

「ハァ、ハァ、無駄なことをいつまで続けるつもりだ!?」

 たしかに今の所防戦一方だ。
 しかし、このような攻撃が続いたところで、魔力の無駄をしているに過ぎない。
 自分音体力が続くか、それとも魔力が尽きるかの戦いをカルミネはするつもりなのだらろうか。

「……無駄じゃないさ」

「っ!?」

 康義の質問に答えると、カルミネは先程の石弾の魔術を発動する。
 無駄だと言っているのに、同じ攻撃をしてくるつもりのカルミネに、康義は首を傾げる。

「ハッ!!」

「フンッ!!」

 これまでと同じく、康義は回避と迎撃を繰り返す。
 違うのは、カルミネが防がれても魔術を発動し続けていることだ。
 攻撃が止まないからといって、康義は驚かない。
 何かカルミネには企みがあるのだろうと、警戒しつつ冷静に対処した。

「ツッ!」

「やっぱりな。弾いて割れた小さい石は当たる」

 迫り来る石弾を弾くと、割れた細かい石が体に当たり、康義は僅かに表情を歪める。
 それを見て、カルミネは笑みを浮かべ、石弾を放ったことが間違いなかったのだと確信した。
 カルミネの放つ石弾は、地面の土を固めて使用しているため、魔力を変化させて放っている火や水とは違い実態がある。
 その石弾を弾けば直撃は受けなくても、割れた石まで防ぎきることなどできない。

「……この程度の小石、たいしたことではない!」

「そうか。じゃあ、どれだけ我慢できるか見せてもらおう」

 小石といっても、高速で飛んできている。
 それが当たるのだからかなりの痛みを生じるが、それをわざわざ敵に言うわけがない。
 そのため、康義は再度カルミネの攻撃が無意味だと伝える。
 それが康義の強がりだと読み取ったカルミネは、またも大量の石弾を作り出し、康義へ向けて発射させた。

「ハアァーー!!」

 最初のうちは回避と防御をしていた康義だが、段々と回避よりも防御一辺倒になっていく。
 そして、とうとう足を止め、飛んでくる石弾を刀で防ぐことに専念するようになった。
 カルミネが石弾の数を増やしているからだ。
 直撃は大ダメージになると容易に想像できるため、康義は必死に石弾を弾く。
 しかし、弾くと石は割れ、割れた小石が康義の体の一部に当たり痛みを与える。
 それがカルミネが魔術を放つのをやめるまでずっと続いた。

「フゥ~……、これだけの数を防ぎきるなんてすごいな」

「ハァ、ハァ……」

 ようやく石弾が収まると、カルミネは感心したように呟く。
 その表情は、魔力消費による疲労がにじみ出ている。
 それに対し、康義は肩で息をする。
 60を超えた年齢からか、昔ほど体力が続かない。
 しかし、体力よりも問題なのは、カルミネの狙い通りに進んでいることだ。
 たしかに石弾を防ぎきってはいるが、防いで当たる小石が馬鹿にできない。
 塵も積もれば山になるではないが、康義の体中に痣ができていることだろう。
 ただの魔力の無駄遣いだと思わせるためにも、康義は痛みを顔に出さない。

「人間でおかわりしたのは初めてだ……」

「っ!!」

 感心したようにン呟くと、カルミネはこれまで以上の数の石弾を作り上げる。
 どうやら、康義の体に小石のダメージが蓄積されていることを理解しているようだ。
 このままジワジワと康義を動けなくしていくつもりなのだろう。

「ハッ!!」

「くっ!!」

 またも石弾の攻撃が開始され、康義は防御に入る。

『くそっ! 少しでも間があれば……』

 迫り来る石弾を弾きつつ、康義は歯噛みする。
 このまま弾いた小石を被弾し続ければ、いつか自分は動けなくなる。
 そうなる前にカルミネに一撃を見舞いたいのだが、これでは反撃の糸口すらない。
 石弾の被弾を覚悟に突っ込むという手もないわけではないが、全力で強化した肉体が何回耐えられるか分からない。
 博打に出るか否かを、康義は悩んでいた。

「ハハハッ! このままジワジワ弱っていくのは見ものだな」

 康義が反撃に出るか考えているなか、カルミネは愉悦の表情へ変わる。
 現状康義は弱っていくばかり、それが楽しくて仕方がないようだ。

「っ!? がっ!!」

 このまま時間をかけて弱らせていくつもりでいたカルミネに、突如石弾が飛んでくる。
 石弾だったために、気付くのが遅れた。
 飛んできた石弾は、カルミネの横っ面に直撃した。

「っ!! あの野郎!!」

 同じ石弾の魔術を使うことで警戒が鈍った。
 直撃を受けて口から血を流したカルミネは、石弾を飛ばした人間を睨みつける。
 睨みつけた先には、鷹藤康義の息子である康則が立っていた。

「よくやった。康則……」

「っっっ!!」

 カルミネの懐に入り、康義は息子を褒める言葉を小さく呟く。
 戦闘に巻き込まないために離れているように言ったが、その康則に助けられた。
 顔面に攻撃を受けたことにより、自分への攻撃の手が鈍った。
 その瞬間を見逃す訳もなく、康義はカルミネ距離を一気に縮めたのだ。

「ハアァーー!!」

「っ!!」

 距離を一気に縮めた康義は、カルミネに対して全力で刀を振り下ろした。

しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

冤罪で辺境に幽閉された第4王子

satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。 「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。 辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m ✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。 【あらすじ】 神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!   そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!  事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます! 仕事繁忙期の為、2月中旬まで更新を週一に致します。 カクヨム(吉野 ひな)様にも投稿しています。

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~

おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。 どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。 そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。 その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。 その結果、様々な女性に迫られることになる。 元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。 「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」 今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

ネグレクトされていた四歳の末娘は、前世の経理知識で実家の横領を見抜き追放されました。これからはもふもふ聖獣と美食巡りの旅に出ます。

旅する書斎(☆ほしい)
ファンタジー
アークライト子爵家の四歳の末娘リリアは、家族から存在しないものとして扱われていた。食事は厨房の残飯、衣服は兄姉のお下がりを更に継ぎ接ぎしたもの。冷たい床で眠る日々の中、彼女は高熱を出したことをきっかけに前世の記憶を取り戻す。 前世の彼女は、ブラック企業で過労死した経理担当のOLだった。 ある日、父の書斎に忍び込んだリリアは、ずさんな管理の家計簿を発見する。前世の知識でそれを読み解くと、父による悪質な横領と、家の財産がすでに破綻寸前であることが判明した。 「この家は、もうすぐ潰れます」 家族会議の場で、リリアはたった四歳とは思えぬ明瞭な口調で破産の事実を突きつける。激昂した父に「疫病神め!」と罵られ家を追い出されたリリアだったが、それは彼女の望むところだった。 手切れ金代わりの銅貨数枚を握りしめ、自由を手に入れたリリア。これからは誰にも縛られず、前世で夢見た美味しいものをたくさん食べる生活を目指す。

最難関ダンジョンをクリアした成功報酬は勇者パーティーの裏切りでした

新緑あらた
ファンタジー
最難関であるS級ダンジョン最深部の隠し部屋。金銀財宝を前に告げられた言葉は労いでも喜びでもなく、解雇通告だった。 「もうオマエはいらん」 勇者アレクサンダー、癒し手エリーゼ、赤魔道士フェルノに、自身の黒髪黒目を忌避しないことから期待していた俺は大きなショックを受ける。 ヤツらは俺の外見を受け入れていたわけじゃない。ただ仲間と思っていなかっただけ、眼中になかっただけなのだ。 転生者は曾祖父だけどチートは隔世遺伝した「俺」にも受け継がれています。 勇者達は大富豪スタートで貧民窟の住人がゴールです(笑)

プライベート・スペクタル

点一
ファンタジー
【星】(スターズ)。それは山河を変えるほどの膂力、千里を駆ける脚力、そして異形の術や能力を有する超人・怪人達。 この物語はそんな連中のひどく…ひどく個人的な物語群。 その中の一部、『龍王』と呼ばれた一人の男に焦点を当てたお話。 (※基本 隔週土曜日に更新予定)

詠唱? それ、気合を入れるためのおまじないですよね? ~勘違い貴族の規格外魔法譚~

Gaku
ファンタジー
「次の人生は、自由に走り回れる丈夫な体が欲しい」 病室で短い生涯を終えた僕、ガクの切実な願いは、神様のちょっとした(?)サービスで、とんでもなく盛大な形で叶えられた。 気がつけば、そこは剣と魔法が息づく異世界。貴族の三男として、念願の健康な体と、ついでに規格外の魔力を手に入れていた! これでようやく、平和で自堕落なスローライフが送れる――はずだった。 だが、僕には一つ、致命的な欠点があった。それは、この世界の魔法に関する常識が、綺麗さっぱりゼロだったこと。 皆が必死に唱える「詠唱」を、僕は「気合を入れるためのおまじない」だと勘違い。僕の魔法理論は、いつだって「体内のエネルギーを、ぐわーっと集めて、どーん!」。 その結果、 うっかり放った火の玉で、屋敷の壁に風穴を開けてしまう。 慌てて土魔法で修復すれば、なぜか元の壁より遥かに豪華絢爛な『匠の壁』が爆誕し、屋敷の新たな観光名所に。 「友達が欲しいな」と軽い気持ちで召喚魔法を使えば、天変地異の末に伝説の魔獣フェンリル(ただし、手のひらサイズの超絶可愛い子犬)を呼び出してしまう始末。 僕はただ、健康な体でのんびり暮らしたいだけなのに! 行く先々で無自覚に「やりすぎ」てしまい、気づけば周囲からは「無詠唱の暴君」「歩く災害」など、実に不名誉なあだ名で呼ばれるようになっていた……。 そんな僕が、ついに魔法学園へ入学! 当然のように入学試験では的を“消滅”させて試験官を絶句させ、「関わってはいけないヤバい奴」として輝かしい孤立生活をスタート! しかし、そんな規格外な僕に興味を持つ、二人の変わり者が現れた。 魔法の真理を探求する理論オタクの「レオ」と、強者との戦いを求める猪突猛進な武闘派女子の「アンナ」。 この二人との出会いが、モノクロだった僕の世界を、一気に鮮やかな色に変えていく――! 勘違いと無自覚チートで、知らず知らずのうちに世界を震撼させる! 腹筋崩壊のドタバタコメディを軸に、個性的な仲間たちとの友情、そして、世界の謎に迫る大冒険が、今、始まる!

処理中です...