主人公は高みの見物していたい

ポリ 外丸

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2学年 前期

第115話

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「よくやったぞ。ピモ」

「キュ♪」

 呆然としている道康の肩から降りると、ピモは一目散に伸のもとへと走ってくる。
 伸が手を出してやると、ピモは跳び乗る。
 ピモのおかげで、実力がバレることなく道康に勝つことができた。
 そのため、伸は指示通りに動いてくれたことを褒めつつ、ピモの頭を撫でてあげる。
 伸に褒められたピモは、嬉しそうに声を上げた。

「たしかにちょっと卑怯ね……」

 試合前に見せることなく開始し、逃げ回っているうちにピモを道康の側に移動させる。
 ピモはかなり小さいため、道康が気付かなかったのも仕方がない。
 見学していた綾愛も、ギリギリまで気付けなかったくらいだ。
 戦う前に何か言っていたが、あんな方法で勝ちにいくとは思っていなかった。

「ちゃんと勝っただろ?」

「……そうね」

 従魔を隠してのだまし討ちのような勝利だが、伸がおこなったのはルールの範囲内だ。
 その勝利が覆るようなことはない。
 綾愛自身は認めていないが、伸が負けていれば道康と交際しなければならない所だった。
 そう考えると、どんな勝ちでも文句はない。

「ありがとうね。ピモちゃん」

「キッ!」

 礼を言い、綾愛は伸の肩に乗るピモの頭を撫でる。
 何度か顔を合わせているため、ピモも特に抵抗することなく綾愛に撫でられるのを受け入れた。

「ピモにかよ。まあ、いいか……」

 勝ったのは自分の作戦。
 なのに、ピモにだけ礼を言う綾愛にツッコミを入れる。
 だが、たしかにピモがいなければ立てられなかった作戦だったため、伸は綾愛からの礼を諦めた。

「お前やるな!」

「キキッ!」

 訓練場から出ると、了たちが伸のことを待ち受けていた。
 そして、伸のことを見つけると、すぐにピモの話へとなった。
 綾愛と奈津希は、柊家の仕事の手伝いに連れて行ったりしたため慣れているが、了たちとは初めての遭遇だ。
 そのため、話しかけて来た了に驚いたピモは、伸の背中に隠れた。

「あれっ?」

「ピモは、了みたいにガツガツしたのは苦手なんだよ」

「ガツガツって……」

 話しかけただけなのに隠れてしまったため、了は首を傾げる。
 元々、ピモはピグミーモンキーという弱い魔物。
 人間は誰もが警戒対象だ。
 それなのに、初めて会った了たちに警戒していたうえに一気に近付いてきたため、ピモは伸の背に隠れたのだ。
 ガサツな性格呼ばわりされ、了は不服そうだ。

「こいつどこで飼っていたんだ?」

「寮の自室で飼ってたぞ」

 従魔を飼う場合、学校に申請して、決められた場所で面倒を見ることになる。
 ピモほどの大きさの従魔なら、厩舎などではなく寮内でも飼えるはず。
 面倒を見ているのだから、伸とよくつるんでいる自分が見ていないわけがない。
 しかし、伸がピモの面倒を見ている所を見たことが無い気がする。
 そう思って了が問いかけると、伸は平然と返答する。
 
「マジか? 俺見たことないぞ」

「了が来た時、こいつ隠れていたから」

 同じ量に住んでいるため、伸の部屋には何度も言ったことがある。
 それなのに、ピモの姿は見なかったため、了は伸の返答に驚きの声を上げる。
 そんな了に、伸はピモに遭遇しなかった理由を簡単に説明した。
 ピモは小さいので、学校側からは自室での面倒が認められていた。
 伸と一緒にいる時はそうでもないが、やはりピモはピグミーモンキー種。
 伸の部屋に客が来ると、警戒心からすぐさま身を隠していた。
 そのため、了が今日まで見たことなかったのだ。

「気配を消すのが上手いのか?」

 姿を隠しても、気配で気付く可能性がある。
 しかし、それすらなかったということは、相当気配を消すのが上手いということなのだろう。
 ピグミーモンキーが愛玩魔物として人気があってもなかなか発見できないのは、そう言ったことからなのかもしれない。

「どうやって現れたのか分からなかったよ」

「俺も道康同様、先生が止めるまで気づかなかったぜ」

 石塚と吉井もピモの気配の消し方に言及する。
 2人も、了と同様にピモの出現に気付くのが遅れた口のようだ。

「種族的なものかな? それに、こいつ最近隠れて俺に探してもらうのが楽しいらしい」

 伸なら探そうと思えばすぐに見つけられるが、大抵の者はピグミーモンキーを見つけられない。
 普通の人間ならそうなのだが、伸は気配を消して隠れてもすぐに見付けてくれる。
 それが逆に面白いと思い、ピモは何度も伸の部屋の中でかくれんぼをしているのだ。

「そのうち暗殺者にでもなりそうですね……」

「……物騒だな」

 どんなに小さく弱い魔物でも、気配を消すことが上手ければ強者に勝つことができる。
 それが今回道康にやったことだ。
 気付かれずに接近し、毒針で一突きするだけで良い。
 鷹藤家の道康に通用した位だから、更に気配を消すのが上達すれば、ピモは立派な暗殺者になるだろう。
 奈津希がそのことを呟くと、伸は一瞬間をおいて返答した。

『こいつ結構鋭いな……』

 奈津希の呟きに、伸は内心感心する。
 若干否定ともとれる答えを返したが、実は伸の狙いを当てていたからだ。
 部屋の中だけとは言っても、ピモの気配を消す能力は少しずつ上昇している。
 それを理解している伸は、その長所を生かしてピモを強くすることにした。
 理想は、奈津希も言ったように暗殺者に仕立て上げることだ。

「帰ったらお菓子あげるからな」

「キー♪」

 ピモは、見た目は手の平サイズの子ザルだが、れっきとした魔物だ。
 基本的に何でも食べる。
 その中でも、お菓子が気に入っている。
 一仕事してくれたご褒美に、伸はピモにお菓子をあげることを告げる。
 すると、ピモは嬉しそうな声を上げた。

「ピモちゃんお菓子好きなの?」

「あぁ。ちょっと与えたら気に入ったらしい」

 ピモがお菓子好きだと知り、綾愛が反応する。
 可愛い小動物の情報は気になるようだ。

「じゃあ、今日のお礼に、私もあげるね」

「キッ!」

 道康との試合に勝ったのは、ほとんどピモのお陰だ。
 そのお礼をするために、綾愛はお菓子の提供をすることにした。
 その言葉を聞いて、ピモも嬉しそうに声を上げた。

「あんまり与えるなよ。太ったら長所が消える」

「分かってるわよ」 

 ピモのためにお菓子を買ってくれるというのは嬉しいが、身軽であるからこそ、身を隠し気配を消せる。
 お菓子の食べ過ぎで動けなくなったら、せっかくの長所が台無しだ。
 伸は念のため、綾愛に買い過ぎないように忠告をしておいた。
 その後、伸は少の期間女子に話しかけられるようになり、お菓子をもらうようになった。
 ただし、その全員がピモ目当てであることは言うまでもない。

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