主人公は高みの見物していたい

ポリ 外丸

文字の大きさ
127 / 281
2学年 前期

第127話

しおりを挟む
「……へえ~、木の魔人でも血は赤いのね?」

 不意を突き、仕留めるつもりで斬りつけたのだが浅かったようだが、斬りつけた木の魔人の腹部からは、血のような液体が流れている。
 木の魔人ということだから、内臓までも木でできている可能性を感じていたのだが、表面部分だけのようだ。
 思わぬ発見に、綾愛は意外そうに呟いた。

「このっ!!」

「っ!」

 見下すような綾愛の発言に腹を立てた木の魔人は、魔力を集めた手を地面に突く。
 それにより、綾愛が立つ地面の周辺に変化が起きる。
 地面が隆起し、棘のような物が綾愛に向かって襲い掛かった。

「……土魔術。まぁ、木の魔人なら当然ね……」

 木の魔人なら、土や水に関する魔術が使えてもおかしくない。
 反応速くバックステップして躱した綾愛は、木の魔人がおこなったことを確認するように呟いた。

「おのれ!! 人間の小娘風情が俺に傷を!!」

「回復魔術? 治癒力強化かしら……」

 綾愛に距離を取らせた木の魔人は、傷口に魔力を集める。
 それにより、綾愛に斬られた腹の傷が少しずつ回復していった。
 それを見た綾愛は、回復の魔術を使用したのかと思った。
 しかし、魔術を使った様子はないため、綾愛は木の魔人が自分の治癒力を上げたのだと判断した。

「殺す!! 殺してやる!!」

 魔人である自分が、人間の、しかも成人していない娘に傷をつけられた。
 そのことが許せない木の魔人は、目を血走らせて綾愛のことを睨みつけて叫んだ。

「ハァー!!」

 怒りの表情と共に、木の魔人は全身に纏う魔力量を増やす。
 更に全身の身体強化を図ったようだ。

「死ねーー!!」

「フッ!」

 力いっぱい地を蹴り、木の魔人は綾愛へと接近した木の魔人は、綾愛へ向けて剣の形に変えた右腕を思いっきり振り下ろす。
 その攻撃を、綾愛は息を吐いて横へと躱した。

「くっ! このっ! このっ!」

「フッ! ハッ!」

 攻撃を躱された木の魔人は、綾愛を追うように両手を振りまわす。
 しかし、その攻撃も綾愛には当たらない。
 ダッキングとスウェーをして、木の魔人の攻撃をギリギリのところで躱す。

「おのれー!! ちょこまかと!」

 全力の攻撃が完全に見切られている。
 綾愛に攻撃を躱され続け、木の魔人は更に頭に血が上っていった。
 そのため、攻撃が単調になっていることに気付かないまま両手を振り回し続けた。

「くらえーーっ!!」

 躱し続ける綾愛は、木の魔人の攻撃が単調になっていることには当然気付いている。
 その攻撃に合わせ、冷静にカウンターチャンスを窺っていた。
 攻撃が当たらないことで焦りを覚えた木の魔人は、強力な一撃を加えようと、右腕の剣を思いっきり振り下ろす。
 しかし、綾愛はその大振りの攻撃を待っていた。

「ハッ!!」

「ギャッ!!」

 木の魔人の攻撃を躱しつつ、綾愛は刀を合わせる。
 狙い通りにカウンターを当てた綾愛は、木の魔人の右腕を斬り飛ばすことに成功した。

「グウッ……」

 右腕を斬られ大量の血が噴き出る。
 その苦痛に、木の魔人は表情を歪める。

「綾愛ちゃん……すごい」

 相手は魔物ではなく人類の敵とも言うべき魔人だというのに、完全に綾愛のペースで戦闘が進んで行っている。
 そんな綾愛の戦いを見て、距離を取って見ていた奈津希は感嘆する。
 もしもの時にはと考えて援護をする予定だったが、その必要もないかもしれない。

「ガアァーー!!」

「っ!!」

 片腕を斬り飛ばしたことで勝機を見た綾愛は、追撃をするように木の魔人へと迫る。
 しかし、木の魔人が魔力が高まったため、接近を中断して距離を取る。

「ハァッ!!」

「なっ!! 手が……」

 何をするのかと思っていたら、木の魔人は高めた大量の魔力が右腕の切断面へと集めた。
 すると、先程綾愛が斬り飛ばしたはずの右腕が生えて。
 欠損した肉体を魔術で再生する場合、大量の医療魔術師が必要になる。
 しかし、木の魔人は自分の力だけで再生させたため、綾愛は驚きの声を上げた。

「木の特性からかしら……」

 回復系の魔術が得意というだけでは、いくら魔人だからといってこれほど短時間で欠損部位を回復させることはできないはず。
 何か他にも理由があるはずと考えた綾愛は、その特性によるのなのだろうと結論づけた。

「ハァ、ハァ……」

「腕を治したのはすごいけれど、血を止めるだけで済ませるべきだったわね」

 魔術と再生能力により、あっという間に腕を治したのは素直に称賛に値する。
 しかし、その代償として、木の魔人の魔力が大幅に下がった。
 まだ戦闘中だというのに、それでは治した意味がない。
 一気に魔力が減ったことによる疲労により、木の魔人は息を切らす。
 そんな木の魔人に対し、綾愛は忠告するように話しかけた。

「殺す!!」

 綾愛の警告など耳に入らず、木の魔人は再生した右腕をまたも剣の形へと変える。
 そして、身体強化の魔力が減って落ちた速度で、またも綾愛へと襲い掛かった。

「綾愛ちゃん!!」

「っ!! くっ!!」

 奈津希は掛け声と共に、木の魔人に向かって火の矢を発射する。
 横から飛んできた攻撃に慌てた木の魔人は、接近の脚を止めて両手の剣で攻撃を防ごうとする。

「こんな魔術なんて……」

 飛んできた火の矢を、木の魔人は難なく弾いた。
 隙をついて攻撃をして来たようだが、たいした威力の魔術ではない。
 所詮は人間の小娘の攻撃と、木の魔人は僅かに落ち着きを取り戻した。

「終わりよ!!」

「っっっ!!」

 落ち着きを取り戻したのはいいが、その時にはもう遅い。
 木の魔人が奈津希の魔術攻撃を防いでいる間に、今度は綾愛が距離を詰めていた。
 つまり、先程の奈津希の攻撃はこの機会を作るためのもので、綾愛もその意図を理解した。
 そして接近した綾愛を見て、木の魔人は目を見開く。
 火の矢を防ぐために両手を使用したため、自分は完全に無防備だ。
 これでは攻撃を防げないと、木の魔人は迫り来る綾愛の刀をただ見ていることしかできなかった。

「ガッ!!」

 まるで走馬灯のようにゆっくりと迫る綾愛の刀。
 それが最期に、木の魔人の意識は消えた。
 綾愛が刀を振り抜き、木の魔人の首を斬り飛ばしたのだ。

「……やっぱり新田君はすごいわね」

 奈津希の援護を受けたとはいえ、魔人を1人で倒した綾愛は小さく呟く。
 これまで出現したの魔人の中では弱くても、魔人は魔人。
 少し前の自分なら、決してこのように勝てはしなかっただろう。
 勝利できた理由。
 それは、伸に人体操作をしてもらたことにより、魔力の操作技術が上達したからだ。
 刀を鞘に納めた綾愛は、密かに伸に感謝したのだった。

しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

冤罪で辺境に幽閉された第4王子

satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。 「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。 辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m ✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。 【あらすじ】 神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!   そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!  事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます! 仕事繁忙期の為、2月中旬まで更新を週一に致します。 カクヨム(吉野 ひな)様にも投稿しています。

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~

おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。 どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。 そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。 その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。 その結果、様々な女性に迫られることになる。 元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。 「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」 今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

ネグレクトされていた四歳の末娘は、前世の経理知識で実家の横領を見抜き追放されました。これからはもふもふ聖獣と美食巡りの旅に出ます。

旅する書斎(☆ほしい)
ファンタジー
アークライト子爵家の四歳の末娘リリアは、家族から存在しないものとして扱われていた。食事は厨房の残飯、衣服は兄姉のお下がりを更に継ぎ接ぎしたもの。冷たい床で眠る日々の中、彼女は高熱を出したことをきっかけに前世の記憶を取り戻す。 前世の彼女は、ブラック企業で過労死した経理担当のOLだった。 ある日、父の書斎に忍び込んだリリアは、ずさんな管理の家計簿を発見する。前世の知識でそれを読み解くと、父による悪質な横領と、家の財産がすでに破綻寸前であることが判明した。 「この家は、もうすぐ潰れます」 家族会議の場で、リリアはたった四歳とは思えぬ明瞭な口調で破産の事実を突きつける。激昂した父に「疫病神め!」と罵られ家を追い出されたリリアだったが、それは彼女の望むところだった。 手切れ金代わりの銅貨数枚を握りしめ、自由を手に入れたリリア。これからは誰にも縛られず、前世で夢見た美味しいものをたくさん食べる生活を目指す。

最難関ダンジョンをクリアした成功報酬は勇者パーティーの裏切りでした

新緑あらた
ファンタジー
最難関であるS級ダンジョン最深部の隠し部屋。金銀財宝を前に告げられた言葉は労いでも喜びでもなく、解雇通告だった。 「もうオマエはいらん」 勇者アレクサンダー、癒し手エリーゼ、赤魔道士フェルノに、自身の黒髪黒目を忌避しないことから期待していた俺は大きなショックを受ける。 ヤツらは俺の外見を受け入れていたわけじゃない。ただ仲間と思っていなかっただけ、眼中になかっただけなのだ。 転生者は曾祖父だけどチートは隔世遺伝した「俺」にも受け継がれています。 勇者達は大富豪スタートで貧民窟の住人がゴールです(笑)

プライベート・スペクタル

点一
ファンタジー
【星】(スターズ)。それは山河を変えるほどの膂力、千里を駆ける脚力、そして異形の術や能力を有する超人・怪人達。 この物語はそんな連中のひどく…ひどく個人的な物語群。 その中の一部、『龍王』と呼ばれた一人の男に焦点を当てたお話。 (※基本 隔週土曜日に更新予定)

詠唱? それ、気合を入れるためのおまじないですよね? ~勘違い貴族の規格外魔法譚~

Gaku
ファンタジー
「次の人生は、自由に走り回れる丈夫な体が欲しい」 病室で短い生涯を終えた僕、ガクの切実な願いは、神様のちょっとした(?)サービスで、とんでもなく盛大な形で叶えられた。 気がつけば、そこは剣と魔法が息づく異世界。貴族の三男として、念願の健康な体と、ついでに規格外の魔力を手に入れていた! これでようやく、平和で自堕落なスローライフが送れる――はずだった。 だが、僕には一つ、致命的な欠点があった。それは、この世界の魔法に関する常識が、綺麗さっぱりゼロだったこと。 皆が必死に唱える「詠唱」を、僕は「気合を入れるためのおまじない」だと勘違い。僕の魔法理論は、いつだって「体内のエネルギーを、ぐわーっと集めて、どーん!」。 その結果、 うっかり放った火の玉で、屋敷の壁に風穴を開けてしまう。 慌てて土魔法で修復すれば、なぜか元の壁より遥かに豪華絢爛な『匠の壁』が爆誕し、屋敷の新たな観光名所に。 「友達が欲しいな」と軽い気持ちで召喚魔法を使えば、天変地異の末に伝説の魔獣フェンリル(ただし、手のひらサイズの超絶可愛い子犬)を呼び出してしまう始末。 僕はただ、健康な体でのんびり暮らしたいだけなのに! 行く先々で無自覚に「やりすぎ」てしまい、気づけば周囲からは「無詠唱の暴君」「歩く災害」など、実に不名誉なあだ名で呼ばれるようになっていた……。 そんな僕が、ついに魔法学園へ入学! 当然のように入学試験では的を“消滅”させて試験官を絶句させ、「関わってはいけないヤバい奴」として輝かしい孤立生活をスタート! しかし、そんな規格外な僕に興味を持つ、二人の変わり者が現れた。 魔法の真理を探求する理論オタクの「レオ」と、強者との戦いを求める猪突猛進な武闘派女子の「アンナ」。 この二人との出会いが、モノクロだった僕の世界を、一気に鮮やかな色に変えていく――! 勘違いと無自覚チートで、知らず知らずのうちに世界を震撼させる! 腹筋崩壊のドタバタコメディを軸に、個性的な仲間たちとの友情、そして、世界の謎に迫る大冒険が、今、始まる!

処理中です...