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3学年 後期
第229話
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「また官林か……」
2回戦で道康に勝利した伸は、翌日の相手を見てため息を吐く。
可能性的には一番あり得た相手だったので驚きはしないが、道康に続いての官林学戦の生徒との試合になったことに、なんだか因縁を感じてしまう。
鷹藤兄弟が筆頭にいたからか、伸としては官林学園との因縁なんて全くいらないのだが。
「お前も鷹藤同様、負けたらワーワー言うんじゃないだろうな?」
試合の決着がついても攻撃してくるなんて、武道を学ぶものとしてあり得ない。
まさか道康だけでなく、官林学園の人間はみんなそうなのかと疑いたくなる。
そのため、伸は確認するように相手選手に問いかけた。
「……心配するな。あんな馬鹿なことするのは鷹藤だけだ。ったく。去年の兄に続き、まさかあんなことするなんて……」
大和皇国の皇都がある官林地区は、この国で一番発展しているため、少数とはいえ他の地域の出身者を下に見ている雰囲気がある。
そのため、官林学園の生徒も鷹藤兄弟のように自分たちが一番だと思っているのではないか。
しかし、そんな伸の問いかけに、対戦相手は心外だとでも言わんばかりに否定した。
「……伊角だったか? たしかに鷹藤とは違うようだな」
対戦相手である伊角の表情から、それが本心なのだと伸は感じとった。
そのため、伸は相手への礼儀を示すために、真剣な表情で木刀を構えた。
「~~~っっっ!? これほどとは……」
武器である木刀を使わず、最後まで左拳一本でねじ伏せられた。
そんなのを見せられたら、伸がとんでもない実力だということは嫌でも分かるというものだ。
分からない方がおかしいというもの。
道康もそれは分かっていたはず。
分かっていながら納得できなかったため、不正呼ばわりをしたのだろう。
理由は何にしろ、勝敗が付いたのに背後から襲い掛かるなんて言語道断だ。
兄のように退学はないかもしれないが、停学は確定だろう。
それに、兄弟で2年連続問題を起こしていることから、来年出場資格を与えられるかも分からない。
それはともかく、鷹藤家の人間だけあって道康はかなりの才能と実力を持っている。
2年でありながら、3年である自分たちでも手を焼くほどなのだが、その道康が手を抜かれて負けたのを目の当たりにした。
伸が構えを取った途端、伊角は一気に体が重くなる。
それが、伸を前にした圧力だと理解し、伊角は冷や汗をかきながら思わず呟いた。
『最初から全力で行く!!』
対峙した瞬間、勝てる気がしない。
しかし、目の前の相手に、自分の全力がどこまで通用するのか。
それを試すために、伊角は最初から全力で行くことを決め、時間をかけて魔力を練り始めた。
「……へえ~、なかなかやるな」
少しずつ魔力を練り、その魔力によって身体強化を施していく伊角。
そんな伊角を見ているだけで特に何をするわけではなく、伸はむしろ彼の魔力操作を褒めた。
時間を掛けた方がたしかに魔力操作しやすいとはいえ、伊角はとんでもない量の魔力を身体強化に使用している。
もしも操作をミスすれば、肉体に反動が来るか、せっかく溜めた魔力が霧散してしまうからだ。
高校生でこのレベルに達しているのは、伸が知っている中でも数えるほどしかいないだろう。
「……ムンッ!!」
これ以上はコントロール不可能。
そこまで来たところで、伊角は武舞台の床を蹴る。
小細工は一切考えず、一直線に伸に向かって突き進み、伊角は居合斬りを放った。
“カンッ!!”
「……ハハッ! 化け物だな……」
自分の全身全霊をかけた一撃。
せめて相手の武器を破壊出来たら御の字。
そう考えていたというのに、伸が構えた木刀に自分の木刀が当たった瞬間、気の抜けたような音しかせず、全く手ごたえがない。
それはつまり、伸が自分の攻撃の威力を受け流したということだ。
自分が時間をかけて全力を尽くしたというのに、それをこともなげに受け逃すなんて、それだけ実力差があるということだ。
それを理解した伊角は、悔しいと思うよりも笑うしかなかった。
「良い一撃だ。俺に当たらなければ、もっと上に行けたかもな……」
攻撃を難なく受け止めた伸は、その攻撃を評価しつつ伊角に呟く。
自分で言うのもなんだが、自分の実力で高校生の大会に出るのはチートに近い。
それが分かっていても、やはり出場するからには優勝したい。
そのため、伸は伊角に相手が悪かったと言わざるを得なかった。
“トンッ!!”
「っっっ!?」
攻撃を受け止めた伸は、すぐに反撃に出る。
流れるように木刀が動き、伊角の左肩を軽く叩く。
全く痛くないが、全く反応できなかった時点で勝敗が決した。
「……しょ、勝者! 新田!」
審判役の人間も大変だろう。
伸の動きがギリギリ見えているくらいなのだから。
高校生の試合だというのに、プロの魔闘師でも反応できるか怪しい動きをする伸に戸惑いつつ、審判は僅かに間が開いて勝者の名乗りを上げた。
「じゃあな……」
勝者の名乗りを受けた伸は、伊角に短く声をかけてその場から去っていく。
「……ハハッ、完敗だよ」
入場口へと向かう伸の背中を黙って見ていた伊角は、どこかスッキリしたような表情で負けを認める言葉を呟いたのだった。
2回戦で道康に勝利した伸は、翌日の相手を見てため息を吐く。
可能性的には一番あり得た相手だったので驚きはしないが、道康に続いての官林学戦の生徒との試合になったことに、なんだか因縁を感じてしまう。
鷹藤兄弟が筆頭にいたからか、伸としては官林学園との因縁なんて全くいらないのだが。
「お前も鷹藤同様、負けたらワーワー言うんじゃないだろうな?」
試合の決着がついても攻撃してくるなんて、武道を学ぶものとしてあり得ない。
まさか道康だけでなく、官林学園の人間はみんなそうなのかと疑いたくなる。
そのため、伸は確認するように相手選手に問いかけた。
「……心配するな。あんな馬鹿なことするのは鷹藤だけだ。ったく。去年の兄に続き、まさかあんなことするなんて……」
大和皇国の皇都がある官林地区は、この国で一番発展しているため、少数とはいえ他の地域の出身者を下に見ている雰囲気がある。
そのため、官林学園の生徒も鷹藤兄弟のように自分たちが一番だと思っているのではないか。
しかし、そんな伸の問いかけに、対戦相手は心外だとでも言わんばかりに否定した。
「……伊角だったか? たしかに鷹藤とは違うようだな」
対戦相手である伊角の表情から、それが本心なのだと伸は感じとった。
そのため、伸は相手への礼儀を示すために、真剣な表情で木刀を構えた。
「~~~っっっ!? これほどとは……」
武器である木刀を使わず、最後まで左拳一本でねじ伏せられた。
そんなのを見せられたら、伸がとんでもない実力だということは嫌でも分かるというものだ。
分からない方がおかしいというもの。
道康もそれは分かっていたはず。
分かっていながら納得できなかったため、不正呼ばわりをしたのだろう。
理由は何にしろ、勝敗が付いたのに背後から襲い掛かるなんて言語道断だ。
兄のように退学はないかもしれないが、停学は確定だろう。
それに、兄弟で2年連続問題を起こしていることから、来年出場資格を与えられるかも分からない。
それはともかく、鷹藤家の人間だけあって道康はかなりの才能と実力を持っている。
2年でありながら、3年である自分たちでも手を焼くほどなのだが、その道康が手を抜かれて負けたのを目の当たりにした。
伸が構えを取った途端、伊角は一気に体が重くなる。
それが、伸を前にした圧力だと理解し、伊角は冷や汗をかきながら思わず呟いた。
『最初から全力で行く!!』
対峙した瞬間、勝てる気がしない。
しかし、目の前の相手に、自分の全力がどこまで通用するのか。
それを試すために、伊角は最初から全力で行くことを決め、時間をかけて魔力を練り始めた。
「……へえ~、なかなかやるな」
少しずつ魔力を練り、その魔力によって身体強化を施していく伊角。
そんな伊角を見ているだけで特に何をするわけではなく、伸はむしろ彼の魔力操作を褒めた。
時間を掛けた方がたしかに魔力操作しやすいとはいえ、伊角はとんでもない量の魔力を身体強化に使用している。
もしも操作をミスすれば、肉体に反動が来るか、せっかく溜めた魔力が霧散してしまうからだ。
高校生でこのレベルに達しているのは、伸が知っている中でも数えるほどしかいないだろう。
「……ムンッ!!」
これ以上はコントロール不可能。
そこまで来たところで、伊角は武舞台の床を蹴る。
小細工は一切考えず、一直線に伸に向かって突き進み、伊角は居合斬りを放った。
“カンッ!!”
「……ハハッ! 化け物だな……」
自分の全身全霊をかけた一撃。
せめて相手の武器を破壊出来たら御の字。
そう考えていたというのに、伸が構えた木刀に自分の木刀が当たった瞬間、気の抜けたような音しかせず、全く手ごたえがない。
それはつまり、伸が自分の攻撃の威力を受け流したということだ。
自分が時間をかけて全力を尽くしたというのに、それをこともなげに受け逃すなんて、それだけ実力差があるということだ。
それを理解した伊角は、悔しいと思うよりも笑うしかなかった。
「良い一撃だ。俺に当たらなければ、もっと上に行けたかもな……」
攻撃を難なく受け止めた伸は、その攻撃を評価しつつ伊角に呟く。
自分で言うのもなんだが、自分の実力で高校生の大会に出るのはチートに近い。
それが分かっていても、やはり出場するからには優勝したい。
そのため、伸は伊角に相手が悪かったと言わざるを得なかった。
“トンッ!!”
「っっっ!?」
攻撃を受け止めた伸は、すぐに反撃に出る。
流れるように木刀が動き、伊角の左肩を軽く叩く。
全く痛くないが、全く反応できなかった時点で勝敗が決した。
「……しょ、勝者! 新田!」
審判役の人間も大変だろう。
伸の動きがギリギリ見えているくらいなのだから。
高校生の試合だというのに、プロの魔闘師でも反応できるか怪しい動きをする伸に戸惑いつつ、審判は僅かに間が開いて勝者の名乗りを上げた。
「じゃあな……」
勝者の名乗りを受けた伸は、伊角に短く声をかけてその場から去っていく。
「……ハハッ、完敗だよ」
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