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姉として
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「待ってツヴァイ」
去りゆく悲しげなその背中を呼び止めると、ツヴァイトは驚いて振り返る。「今、なんて…」と彼は何度も瞬きを繰り返した。
私は息を深く吐くと、もう一度脳内でリティシアの言葉を繰り返す。私がまず初めに姉として彼にしなければならないことは…これだ。
「その……ごめんなさい。今まで私…姉らしいことを少しもしてあげられなかったわ」
兄に言われるがまま彼を無視し、貶し続けた。私を嫌ってもおかしくはないのに、彼は私を未だに姉だと慕ってくれている。ならば私は…姉にならなければならない。
今更遅いと言われても仕方ないけれど、こうすることが一番正しいと思った。
「ターニャ姉さん……」
「今更遅いと思うけど……私がしてきたことはあまりにも酷かったわ…。本当にごめんなさい」
私がそう言って頭を下げると、ツヴァイトは「顔を上げて、姉さん」と優しい声色で呟く。
「いいんだ。姉さんの気持ちも…よく分かるから」
よく分かるだけで私が今までしてきたことが許される訳がない。でも彼は私を怒るどころか優しく謝罪を受け入れてくれた。
その姿は……私が心から愛する人によく似ているように思えた。
顔を上げると、ツヴァイトの美しい瞳が私を捉える。弟の瞳はこんなにも美しいのに、兄の瞳も、私の瞳も…酷く歪んでいたように思えた。
その瞳を見ていられずに分かりやすく逸らすと、私は静かに声を発する。
「……ツヴァイ、一緒に食べましょう。貴方が用意してくれたスイーツを。……スイーツは好き?」
「……!うん!大好きだよ!」
その言葉に私は微笑む。長い年月を経て、ようやく本当の姉弟になれた気がした。
こんなに私を慕ってくれていたのに、何故今まで冷たくしていたのだろう。
もうあんなことは…二度としたくない。これ以上…私の瞳が汚れないようにするために。
「ところでツヴァイ、やっぱり誕生日プレゼントはちゃんと持っていったほうが良かったと思う?」
「え、姉さん…まさか持っていかなかったの?あ、お屋敷に直接送ったとか?」
「いや、私が来ることがプレゼントだって言ったのよ。だからつまり…何もあげてないの」
「……姉さん、次はちゃんと持っていこうね。僕も一緒に選ぶから」
ツヴァイトは私を憐れむように見つめ、そう呟く。やっぱりあれはダメだったか…いやでも相手は私の恋敵なのよ?
リティシアだって私にプレゼントはくれなかったし。まぁ後から知ったんだから仕方ないけど…。でもリティシアくらいだもんなぁ、私と張り合える令嬢なんて……。
よし、決めた。次からは気をつけよう。ツヴァイトも選んでくれるって言ってるしね。
そんなことを考えながら二人でスイーツの用意された部屋へと向かっていると、遠くから堂々と歩いてくる人物が見えた。侍女達は皆頭を垂れ、顔を上げようとしない。
それは彼らの意思ではなく、主がそうさせているからである。
「何をやってるんだ?」
「お、お兄様……」
私は突然現れた兄に驚き、少しだけ後ずさる。その様子に疑問を持ったようであったが、彼は特に何も言わずに視線を弟へと向ける。
「ツヴァイト。お前またテストで満点を取ったそうだな」
「え、うん……そうだけど……」
「お前はこの俺を差し置いて何になるつもりなんだ?」
「え」
リックお兄様が見つめるその視線はとても弟を見る目つきではない。まるで国の反逆者を処刑するかのような鋭い眼差しだ。
私もこの視線を弟に向けていたのかと思うと寒気がした。リティシアと殿下が止めてくれなければ私は今でも兄と同様の人間であっただろう。
「国王か?笑わせるな、お前なんかに……この座は絶対に渡さない。」
「そんな、僕はそんなつもりじゃ……」
「うるさい!」
お兄様はツヴァイトを突き飛ばすと彼の持っていた本が持ち主の手を離れ、地面に転がった。
以前の私ならば、この様を笑っていたことだろう。でも今は違う。私はもう昔の私ではない。戻りたくはない。
「お兄様、やめて!」
「ターニャ?」
ツヴァイトの前に立ちはだかり、怪訝そうに顔を顰めるお兄様と対峙する。今まで兄に反抗したことなど一度もなかった。
だがこればかりはもう仕方ない。私は姉として弟を守らなければならない。私を慕ってくれる可愛い弟を、今まで守ってあげられなかった分、全力で守らなければならないのだ。
「ターニャ姉さん…」
「ツヴァイはお兄様の座を奪おうとなんてしていないわ。そんな風に冷たくするのはもうやめましょう」
私がそうきっぱりと言い切ると、兄は笑った。大声で笑い、そして私を今まで見たこともないほどの冷たい眼差しで見つめた。
「アルターニャお前……今更姉気取りか?怖い兄から守ってくれる優しい姉にでもなるつもりか?……なれると思ってるのか?」
「そ、それは……」
「今までどれだけツヴァイトを傷つけてきたと思ってる。冷たくあしらうだけに留まらず、お前は弟に手を上げた。大好きな王子様にもさぞ嫌われたことだろうな」
「……」
悔しいが、反論する言葉が出てこない。その通りだ。私はツヴァイトにとって、姉とは言えない。ただの一緒に暮らす同居人にすぎないのだ。
去りゆく悲しげなその背中を呼び止めると、ツヴァイトは驚いて振り返る。「今、なんて…」と彼は何度も瞬きを繰り返した。
私は息を深く吐くと、もう一度脳内でリティシアの言葉を繰り返す。私がまず初めに姉として彼にしなければならないことは…これだ。
「その……ごめんなさい。今まで私…姉らしいことを少しもしてあげられなかったわ」
兄に言われるがまま彼を無視し、貶し続けた。私を嫌ってもおかしくはないのに、彼は私を未だに姉だと慕ってくれている。ならば私は…姉にならなければならない。
今更遅いと言われても仕方ないけれど、こうすることが一番正しいと思った。
「ターニャ姉さん……」
「今更遅いと思うけど……私がしてきたことはあまりにも酷かったわ…。本当にごめんなさい」
私がそう言って頭を下げると、ツヴァイトは「顔を上げて、姉さん」と優しい声色で呟く。
「いいんだ。姉さんの気持ちも…よく分かるから」
よく分かるだけで私が今までしてきたことが許される訳がない。でも彼は私を怒るどころか優しく謝罪を受け入れてくれた。
その姿は……私が心から愛する人によく似ているように思えた。
顔を上げると、ツヴァイトの美しい瞳が私を捉える。弟の瞳はこんなにも美しいのに、兄の瞳も、私の瞳も…酷く歪んでいたように思えた。
その瞳を見ていられずに分かりやすく逸らすと、私は静かに声を発する。
「……ツヴァイ、一緒に食べましょう。貴方が用意してくれたスイーツを。……スイーツは好き?」
「……!うん!大好きだよ!」
その言葉に私は微笑む。長い年月を経て、ようやく本当の姉弟になれた気がした。
こんなに私を慕ってくれていたのに、何故今まで冷たくしていたのだろう。
もうあんなことは…二度としたくない。これ以上…私の瞳が汚れないようにするために。
「ところでツヴァイ、やっぱり誕生日プレゼントはちゃんと持っていったほうが良かったと思う?」
「え、姉さん…まさか持っていかなかったの?あ、お屋敷に直接送ったとか?」
「いや、私が来ることがプレゼントだって言ったのよ。だからつまり…何もあげてないの」
「……姉さん、次はちゃんと持っていこうね。僕も一緒に選ぶから」
ツヴァイトは私を憐れむように見つめ、そう呟く。やっぱりあれはダメだったか…いやでも相手は私の恋敵なのよ?
リティシアだって私にプレゼントはくれなかったし。まぁ後から知ったんだから仕方ないけど…。でもリティシアくらいだもんなぁ、私と張り合える令嬢なんて……。
よし、決めた。次からは気をつけよう。ツヴァイトも選んでくれるって言ってるしね。
そんなことを考えながら二人でスイーツの用意された部屋へと向かっていると、遠くから堂々と歩いてくる人物が見えた。侍女達は皆頭を垂れ、顔を上げようとしない。
それは彼らの意思ではなく、主がそうさせているからである。
「何をやってるんだ?」
「お、お兄様……」
私は突然現れた兄に驚き、少しだけ後ずさる。その様子に疑問を持ったようであったが、彼は特に何も言わずに視線を弟へと向ける。
「ツヴァイト。お前またテストで満点を取ったそうだな」
「え、うん……そうだけど……」
「お前はこの俺を差し置いて何になるつもりなんだ?」
「え」
リックお兄様が見つめるその視線はとても弟を見る目つきではない。まるで国の反逆者を処刑するかのような鋭い眼差しだ。
私もこの視線を弟に向けていたのかと思うと寒気がした。リティシアと殿下が止めてくれなければ私は今でも兄と同様の人間であっただろう。
「国王か?笑わせるな、お前なんかに……この座は絶対に渡さない。」
「そんな、僕はそんなつもりじゃ……」
「うるさい!」
お兄様はツヴァイトを突き飛ばすと彼の持っていた本が持ち主の手を離れ、地面に転がった。
以前の私ならば、この様を笑っていたことだろう。でも今は違う。私はもう昔の私ではない。戻りたくはない。
「お兄様、やめて!」
「ターニャ?」
ツヴァイトの前に立ちはだかり、怪訝そうに顔を顰めるお兄様と対峙する。今まで兄に反抗したことなど一度もなかった。
だがこればかりはもう仕方ない。私は姉として弟を守らなければならない。私を慕ってくれる可愛い弟を、今まで守ってあげられなかった分、全力で守らなければならないのだ。
「ターニャ姉さん…」
「ツヴァイはお兄様の座を奪おうとなんてしていないわ。そんな風に冷たくするのはもうやめましょう」
私がそうきっぱりと言い切ると、兄は笑った。大声で笑い、そして私を今まで見たこともないほどの冷たい眼差しで見つめた。
「アルターニャお前……今更姉気取りか?怖い兄から守ってくれる優しい姉にでもなるつもりか?……なれると思ってるのか?」
「そ、それは……」
「今までどれだけツヴァイトを傷つけてきたと思ってる。冷たくあしらうだけに留まらず、お前は弟に手を上げた。大好きな王子様にもさぞ嫌われたことだろうな」
「……」
悔しいが、反論する言葉が出てこない。その通りだ。私はツヴァイトにとって、姉とは言えない。ただの一緒に暮らす同居人にすぎないのだ。
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