202 / 209
茨の道
しおりを挟む
今までの私の言動とリティシアの過去の性格から推測したらそう思われても仕方ないのに。またこの悪女は何か企んでるなって。
だが彼は確信めいてそう呟くのだった。
「リティの目の光が凄く綺麗だったからだ。嘘をついたり他人を陥れようとする人間の目は酷く濁って見える。どんなに隠そうとしても本性が見えるんだよ」
「……訳分かんないわ」
……悪役の目の光が綺麗だなんて言えるのは世界中探してもアレクだけでしょうね。悪役令嬢ほど濁った瞳をしている人間なんて他にいないもの。
リティシアじゃない私自身だってそんなに褒められた人間でもないし…きっとこの顔が美形だからそう見えただけね。
「……というか、あんなに真剣に言われたら誰だって信じるって」
「うっ…だって……これ以上貴方を傷つけたくなかったから……。私は今だけじゃなく前世でも貴方に救われたのよ。命の恩人と言っても過言ではない貴方に、こんな仕打ちをするなんて耐えられなかったのよ」
アレクが隣国のエリック王子のような人間だったらこんな罪悪感も感じなかったことだろう。彼の優しい一面を知る度に心が苦しかった。
でも今は違う。彼を傷つける必要もなければ、こうして本音を伝えることができる。これがどれだけ幸せなことか私にはよく分かる。
「リティ」
「……何?」
「リティがそんな風に思ってくれてるのに、俺がお前を怒れる訳ないだろ?」
「でも……私は貴方に一度怒られるべきだわ。わざと冷たい態度を取って傷つけたんだから…」
私が悲しげに俯くと、アレクは驚きの言葉を口にする。
「……残念だけど俺は例えリティに殺されても君を怒るつもりはないぞ」
「…え!?それは怒りなさいよ。というか反撃しさいよ!」
衝撃すぎる発言に私が目を見開いて大声をあげると彼がくすくすと笑い声を零す。
だが全く笑い事ではない。悪役に第二の主人公が殺されることを当の本人が許すだなんてどう考えてもあってはならないことだ。
「リティになら殺されても構わないさ」
アレクはそう言って微笑むので、私はなんと返すべきか迷ってしまう。
私になら殺されてもいい――そんなことを言われるなんて思ってもみなかった。
それは恐らく……例え私がアレクを裏切ろうと……彼は全てを受け入れるという意味だ。
「何よそれ……殺さないわよ、何があっても!」
「それなら良かった。まだ生きられそうだな」
「もう……」
私は感情が高ぶって振り上げた拳を力なく下げる。殺さないと言い切ったが、それはあくまでも私の意思であり、この先何があるか分からないのだということを思い出したからだ。
私は微かに震える声で声を発した。
「ねぇ、もし、もし私達の魔力の問題が解決しなかったら……本当に貴方は眠りについたまま死んでしまうかもしれないわ。私に殺されるというのはあながち間違いじゃないかもしれない。それでも、それでも……私を側においてくれるの?」
仮に嫌だと言われたら、私は離れなければならない。彼が消えるということはそのままこの国の未来が消えるということだからだ。
それに私のせいで彼の可能性を未来を奪うなんて嫌だ。はっきり否定されなくても、少しでも嫌な顔をしたら私はやはり離れなければならないだろう。彼は優しいから、言えないかもしれないから、私が察してあげなければならない。
次から次へと不安が押し寄せてきて私は感情に耐えきれず俯いてしまう。どうしても思考が悪い方へと向かってしまい、涙腺がどんどん緩んできて涙がうっすらと浮かぶ。
これで終わりかもしれない。もう二度と会えないかもしれないという耐え難い不安が拭いきれないのである。
彼は涙を浮かべる私を引き寄せると、突然強く抱きしめた。
私の理解が追いつくより早く、彼は言葉を口にする。
「リティが側にいたいと望んでくれる限り、俺はお前の側にいたい。離れる時があるとすればそれはお前からだ。俺から離れることは絶対にない。約束するよ。だから…泣かないで」
「酷いわ、そんなこと言われたら……泣いちゃうじゃない」
やっぱりまだ怖い。私の選択が大好きな彼を傷つけることになるかもしれないから。例え彼が望んでいたとしても私はその事実を受け入れることなどできないだろう。
そうなる前に離れたい。でも側にいられるのならそうしたい。
「……私は……どう考えても危険だわ。貴方とイサベルを苦しめるだけの存在なんだから。でも、離れたくない。ずっと側にいたいの。」
側にいたい。その感情だけで相手の側にいるなんて不可能だ。それが相手を傷つけるようなことになるのならば、私には絶対に無理だから。
「折角貴方が私を受け入れてくれたのに貴方を傷つけるような結果になるかもしれないなんて……そんなの私には耐えられない。貴方を殺してしまうなら私はやっぱり側にはいられない」
一緒にいるという選択肢はどう考えても茨の道だ。アレクが示してくれた唯一の光。唯一の希望。
皆が応援してくれている私達の恋が最悪な結末で終わるのであれば、いっそのことここで断ち切るべきだ。一日だけだったが、夢のような時間を……過ごせたのだから。
だが彼は確信めいてそう呟くのだった。
「リティの目の光が凄く綺麗だったからだ。嘘をついたり他人を陥れようとする人間の目は酷く濁って見える。どんなに隠そうとしても本性が見えるんだよ」
「……訳分かんないわ」
……悪役の目の光が綺麗だなんて言えるのは世界中探してもアレクだけでしょうね。悪役令嬢ほど濁った瞳をしている人間なんて他にいないもの。
リティシアじゃない私自身だってそんなに褒められた人間でもないし…きっとこの顔が美形だからそう見えただけね。
「……というか、あんなに真剣に言われたら誰だって信じるって」
「うっ…だって……これ以上貴方を傷つけたくなかったから……。私は今だけじゃなく前世でも貴方に救われたのよ。命の恩人と言っても過言ではない貴方に、こんな仕打ちをするなんて耐えられなかったのよ」
アレクが隣国のエリック王子のような人間だったらこんな罪悪感も感じなかったことだろう。彼の優しい一面を知る度に心が苦しかった。
でも今は違う。彼を傷つける必要もなければ、こうして本音を伝えることができる。これがどれだけ幸せなことか私にはよく分かる。
「リティ」
「……何?」
「リティがそんな風に思ってくれてるのに、俺がお前を怒れる訳ないだろ?」
「でも……私は貴方に一度怒られるべきだわ。わざと冷たい態度を取って傷つけたんだから…」
私が悲しげに俯くと、アレクは驚きの言葉を口にする。
「……残念だけど俺は例えリティに殺されても君を怒るつもりはないぞ」
「…え!?それは怒りなさいよ。というか反撃しさいよ!」
衝撃すぎる発言に私が目を見開いて大声をあげると彼がくすくすと笑い声を零す。
だが全く笑い事ではない。悪役に第二の主人公が殺されることを当の本人が許すだなんてどう考えてもあってはならないことだ。
「リティになら殺されても構わないさ」
アレクはそう言って微笑むので、私はなんと返すべきか迷ってしまう。
私になら殺されてもいい――そんなことを言われるなんて思ってもみなかった。
それは恐らく……例え私がアレクを裏切ろうと……彼は全てを受け入れるという意味だ。
「何よそれ……殺さないわよ、何があっても!」
「それなら良かった。まだ生きられそうだな」
「もう……」
私は感情が高ぶって振り上げた拳を力なく下げる。殺さないと言い切ったが、それはあくまでも私の意思であり、この先何があるか分からないのだということを思い出したからだ。
私は微かに震える声で声を発した。
「ねぇ、もし、もし私達の魔力の問題が解決しなかったら……本当に貴方は眠りについたまま死んでしまうかもしれないわ。私に殺されるというのはあながち間違いじゃないかもしれない。それでも、それでも……私を側においてくれるの?」
仮に嫌だと言われたら、私は離れなければならない。彼が消えるということはそのままこの国の未来が消えるということだからだ。
それに私のせいで彼の可能性を未来を奪うなんて嫌だ。はっきり否定されなくても、少しでも嫌な顔をしたら私はやはり離れなければならないだろう。彼は優しいから、言えないかもしれないから、私が察してあげなければならない。
次から次へと不安が押し寄せてきて私は感情に耐えきれず俯いてしまう。どうしても思考が悪い方へと向かってしまい、涙腺がどんどん緩んできて涙がうっすらと浮かぶ。
これで終わりかもしれない。もう二度と会えないかもしれないという耐え難い不安が拭いきれないのである。
彼は涙を浮かべる私を引き寄せると、突然強く抱きしめた。
私の理解が追いつくより早く、彼は言葉を口にする。
「リティが側にいたいと望んでくれる限り、俺はお前の側にいたい。離れる時があるとすればそれはお前からだ。俺から離れることは絶対にない。約束するよ。だから…泣かないで」
「酷いわ、そんなこと言われたら……泣いちゃうじゃない」
やっぱりまだ怖い。私の選択が大好きな彼を傷つけることになるかもしれないから。例え彼が望んでいたとしても私はその事実を受け入れることなどできないだろう。
そうなる前に離れたい。でも側にいられるのならそうしたい。
「……私は……どう考えても危険だわ。貴方とイサベルを苦しめるだけの存在なんだから。でも、離れたくない。ずっと側にいたいの。」
側にいたい。その感情だけで相手の側にいるなんて不可能だ。それが相手を傷つけるようなことになるのならば、私には絶対に無理だから。
「折角貴方が私を受け入れてくれたのに貴方を傷つけるような結果になるかもしれないなんて……そんなの私には耐えられない。貴方を殺してしまうなら私はやっぱり側にはいられない」
一緒にいるという選択肢はどう考えても茨の道だ。アレクが示してくれた唯一の光。唯一の希望。
皆が応援してくれている私達の恋が最悪な結末で終わるのであれば、いっそのことここで断ち切るべきだ。一日だけだったが、夢のような時間を……過ごせたのだから。
0
あなたにおすすめの小説
【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜
一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m
✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。
【あらすじ】
神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!
そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!
事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます!
仕事繁忙期の為、2月中旬まで更新を週一に致します。
カクヨム(吉野 ひな)様にも投稿しています。
ネグレクトされていた四歳の末娘は、前世の経理知識で実家の横領を見抜き追放されました。これからはもふもふ聖獣と美食巡りの旅に出ます。
旅する書斎(☆ほしい)
ファンタジー
アークライト子爵家の四歳の末娘リリアは、家族から存在しないものとして扱われていた。食事は厨房の残飯、衣服は兄姉のお下がりを更に継ぎ接ぎしたもの。冷たい床で眠る日々の中、彼女は高熱を出したことをきっかけに前世の記憶を取り戻す。
前世の彼女は、ブラック企業で過労死した経理担当のOLだった。
ある日、父の書斎に忍び込んだリリアは、ずさんな管理の家計簿を発見する。前世の知識でそれを読み解くと、父による悪質な横領と、家の財産がすでに破綻寸前であることが判明した。
「この家は、もうすぐ潰れます」
家族会議の場で、リリアはたった四歳とは思えぬ明瞭な口調で破産の事実を突きつける。激昂した父に「疫病神め!」と罵られ家を追い出されたリリアだったが、それは彼女の望むところだった。
手切れ金代わりの銅貨数枚を握りしめ、自由を手に入れたリリア。これからは誰にも縛られず、前世で夢見た美味しいものをたくさん食べる生活を目指す。
どうやら悪役令嬢のようですが、興味が無いので錬金術師を目指します(旧:公爵令嬢ですが錬金術師を兼業します)
水神瑠架
ファンタジー
――悪役令嬢だったようですが私は今、自由に楽しく生きています! ――
乙女ゲームに酷似した世界に転生? けど私、このゲームの本筋よりも寄り道のミニゲームにはまっていたんですけど? 基本的に攻略者達の顔もうろ覚えなんですけど?! けど転生してしまったら仕方無いですよね。攻略者を助けるなんて面倒い事するような性格でも無いし好きに生きてもいいですよね? 運が良いのか悪いのか好きな事出来そうな環境に産まれたようですしヒロイン役でも無いようですので。という事で私、顔もうろ覚えのキャラの救済よりも好きな事をして生きて行きます! ……極めろ【錬金術師】! 目指せ【錬金術マスター】!
★★
乙女ゲームの本筋の恋愛じゃない所にはまっていた女性の前世が蘇った公爵令嬢が自分がゲームの中での悪役令嬢だという事も知らず大好きな【錬金術】を極めるため邁進します。流石に途中で気づきますし、相手役も出てきますが、しばらく出てこないと思います。好きに生きた結果攻略者達の悲惨なフラグを折ったりするかも? 基本的に主人公は「攻略者の救済<自分が自由に生きる事」ですので薄情に見える事もあるかもしれません。そんな主人公が生きる世界をとくと御覧あれ!
★★
この話の中での【錬金術】は学問というよりも何かを「創作」する事の出来る手段の意味合いが大きいです。ですので本来の錬金術の学術的な論理は出てきません。この世界での独自の力が【錬金術】となります。
【完結】乙女ゲーム開始前に消える病弱モブ令嬢に転生しました
佐倉穂波
恋愛
転生したルイシャは、自分が若くして死んでしまう乙女ゲームのモブ令嬢で事を知る。
確かに、まともに起き上がることすら困難なこの体は、いつ死んでもおかしくない状態だった。
(そんな……死にたくないっ!)
乙女ゲームの記憶が正しければ、あと数年で死んでしまうルイシャは、「生きる」ために努力することにした。
2023.9.3 投稿分の改稿終了。
2023.9.4 表紙を作ってみました。
2023.9.15 完結。
2023.9.23 後日談を投稿しました。
『処刑されるたびに12歳に戻る悪役令嬢、7回目の人生は「何もせず寝て過ごす」ことに決めたら、なぜか周囲が勝手に勘違いして聖女扱いされています
六角
恋愛
公爵令嬢リリアーナは、18歳の誕生日に必ず断罪・処刑されては12歳に戻るという地獄のループを6回も繰り返していた。 真面目に努力しても、剣を極めても、裏社会を支配しても、結局は殺される運命。 心折れた彼女は、7回目の人生でついに決意する。 「もう頑張らない。どうせ死ぬなら、今回はひたすら寝て過ごそう」と。
しかし、安眠を求めて「うるさい」と敵を黙らせれば『王者の覇気』と恐れられ、寝ぼけて放った魔法は『神の奇跡』と崇められ、枕への異常なこだわりは『深遠なる儀式』と誤解されてしまう。 気がつけば、ストーカー気味のヤンデレ王子、パン屋の元ヒロイン、狂犬の如きライバル令嬢、元部下の暗殺者、そして不眠症の魔王までもが彼女の信者となり、リリアーナは意図せずして国を、そして世界を救う「最強の聖女」へと祭り上げられていく。
「お願いだから、私を寝かせて!」 睡眠欲だけで運命(システム)さえもねじ伏せる、無気力悪役令嬢の痛快勘違いサクセス(?)ストーリー!
世の中は意外と魔術で何とかなる
ものまねの実
ファンタジー
新しい人生が唐突に始まった男が一人。目覚めた場所は人のいない森の中の廃村。生きるのに精一杯で、大層な目標もない。しかしある日の出会いから物語は動き出す。
神様の土下座・謝罪もない、スキル特典もレベル制もない、転生トラックもそれほど走ってない。突然の転生に戸惑うも、前世での経験があるおかげで図太く生きられる。生きるのに『隠してたけど実は最強』も『パーティから追放されたから復讐する』とかの設定も必要ない。人はただ明日を目指して歩くだけで十分なんだ。
『王道とは歩むものではなく、その隣にある少しずれた道を歩くためのガイドにするくらいが丁度いい』
平凡な生き方をしているつもりが、結局騒ぎを起こしてしまう男の冒険譚。困ったときの魔術頼み!大丈夫、俺上手に魔術使えますから。※主人公は結構ズルをします。正々堂々がお好きな方はご注意ください。
遡ったのは君だけじゃない。離縁状を置いて出ていった妻ーー始まりは、そこからだった。
沼野 花
恋愛
夫と子供たちに、選ばれなかったイネス。
すべてを愛人に奪われ、彼女は限界を迎え、屋敷を去る。
だが、その先に待っていたのは、救いではなかった。
イネスを襲った、取り返しのつかない出来事。
変わり果てた現実を前に、
夫はようやく、自分が何を失ったのかを思い知る。
深い後悔と悲しみに苛まれながら、
失ったイネスの心を取り戻そうとする夫。
しかし、彼女の心はすでに、外の世界へと向かっていた。
贖罪を背負いながらもイネスを求め続ける夫。
そして、母の心を知っていく子供たち。
イネスが求める愛とは、
そして、幸せとは――。
御家騒動なんて真っ平ごめんです〜捨てられた双子の片割れは平凡な人生を歩みたい〜
伽羅
ファンタジー
【幼少期】
双子の弟に殺された…と思ったら、何故か赤ん坊に生まれ変わっていた。
ここはもしかして異世界か?
だが、そこでも双子だったため、後継者争いを懸念する親に孤児院の前に捨てられてしまう。
ようやく里親が見つかり、平和に暮らせると思っていたが…。
【学院期】
学院に通い出すとそこには双子の片割れのエドワード王子も通っていた。
周りに双子だとバレないように学院生活を送っていたが、何故かエドワード王子の影武者をする事になり…。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる