悪役令嬢リティシア

如月フウカ

文字の大きさ
205 / 209

忍び寄る影

しおりを挟む
「百倍になって返ってきますよ。」


「……否めないわね」


 流石にそんなことはしないだろうが……そうする可能性があるというだけで怖い。これはありがたく受け取っておこう。折角選んでくれたものだしね。


「ではそのネックレスは大切にしまっておきますね。あ、それとも今日着けていかれますか?」


 ルナのその思わぬ提案に私は少し悩む。


「あ……じゃぁそうしようかしら。特に出掛ける予定もないけどね」


「予定がなくても使ってあげると物は喜ぶと思いますよ」


 ルナがそう言いながら私を座らせ、私の首にネックレスをふわりとかけると、一瞬で鎖同士を引っ掛けてくれる。流石は侍女、こういうのは手慣れているらしい。イサベルもその手付きを見て感心していた。


 私の胸元でネックレスが光を反射してキラリと輝く。いつ見ても飽きない美しさだ。


「本当にリティ様によくお似合いですね。私もアクセサリーを贈れば良かったです」


「何言ってるの。貴女から貰った薔薇もなかなかのものだったわよ?」


「本当ですか?お優しいですねリティ様は。」


 イサベルは嬉しそうにくすくすと笑う。この笑顔に主要人物達が次々と惚れてしまうのは分かる気がする。


 というか最早国宝級だと思う。なんとも愛らしい存在だ。


 主人公だからと助けただけだったが、結果的にこの子と仲良くなれてよかった。なんてったってこの可愛らしさを毎日拝めるんだからね。もう城へ無理やり連れて行く必要もなくなっちゃったし。


「あっ!そうだリティ様、こちらへ!昨日はお疲れですぐ寝てしまったので見ていませんよね?リティ様宛のプレゼントが沢山来ているんですよ!」


「えっ?全て送り返すってのは……」


「ダメです。受け取って下さい。」


「ルナ……はぁ、分かったわ」


 ルナに完全否定され、諦めた私は重い腰を上げる。二人と共に知りもしない貴族や王族からのプレゼントを確認しに向かうのであった。


【???】


 時は少し遡り、前日の夜のこと。


 静かな空間にコツン、コツンと響く靴音があった。現状この空間で聞くことのできる音は、私の履いたハイヒールの音と、そして私が息をする音だけだ。


 侍女や執事達は皆頭を垂れ、私が通り過ぎるのを息を呑んで待っている。私の機嫌を損ねることは自分の首がはねられる時だということを、彼らはよく知っているのだ。


 そして私はとある部屋に辿り着くと、ノックもせずに扉を開く。本来ならば叱られる場面であろうが、私はそうすることが許された人間だから関係ない。


 私は玉座の間に足を踏み入れると、輝く王冠を被る人物に対し、微笑んだ。


「陛下。そろそろあの女を始末する時ではありませんか?」


 私の言葉を受け、陛下はにやりと笑みを浮かべた。


「そうだな」


 その言葉に、今度は私が笑みを浮かべる。これは全て私の思惑通りに進んでいるということへの……喜びの現れである。


「ではどうか私にお任せ下さい。良い考えがございますの。陛下は大船に乗ったおつもりでいてくだされば結構ですわ」


「そうか。流石…我が妻は頼もしいな」


 そう言って再び笑い声を上げる陛下に私は微笑んでみせる。そう、私はいつだって有能でなければならない。


 陛下はふと何かを思い出したのか、笑い声をピタリと止める。そして思い悩むかのように口を開いた。


「それにしてもあの男は…一体何をしているのだ…奴ほどの腕前なら既に始末できているはずなのに…」


 私は笑みを崩さず、口元を扇子で隠し答える。


「彼では甘すぎますわ。私達の息子の親友なんですもの。あの子がどれだけ他人に甘くて優しい子か……貴方もご存知でしょう」


「うむ……それもそうだな。ではお前に任せるとしよう。任せたぞ」


「はい。有難うございます」


 見てなさい、私の息子に手を出したこと……必ず後悔させてやるわ。私は不敵な笑みを浮かべ、翻すと玉座の間を後にした。


 何度も始末するチャンスはあったが、敢えて見逃してきた。それは最高のタイミングを見計らうため。


 そう、今がその時だ。


【リティシア】


 時は元に戻って、誕生日パーティの翌日の朝である。


 大量のプレゼントを前にして嫌気が差しながらもなんとか半分くらいは確認することができた。


 悪女に送るプレゼントなんて大したことないだろうと思っていたが、私が変わったのではないかという噂が少なからず広まっているらしく、例年より豪華なものが多くなっている。


 そのせいで罪悪感も倍である。

 私はリティシアじゃないってのに……。一体どんな気持ちで受け取れっていうのよ。


 プレゼント確認が嫌になり、顔をあげると、そこで私はいつも見えるはずの姿が見えないことに気づいた私は、ルナに声をかける。


「ねぇ、そういえばアーグレンは?どこにいるの?」


「アーグレン様は今いらっしゃいません。早朝にお城からのお呼び出しがあって、お嬢様に報告する間もなく行ってしまわれたようです。」


「アーグレン様はリティ様にお伝えできずに発つのがとても申し訳ないと仰られていましたよ。」


 次いでイサベルがそう伝えてくれる。


 そう、いないのね……それにしても急にお城から呼び出されるなんて何があったのかしら?前も急に呼ばれてたし騎士団長ってほんとに大変ね。


 そう思ったその瞬間、部屋の扉が突然開け放たれる。私達の視線は一瞬にして扉の方角に釘付けになった。


「リティ、ちょっとこっちに来て頂戴!」


 やって来たのはお母様だった。ノックもせず、とても焦っているようだ。彼女は私の手を引くと、そのまま部屋の外へと連れて行こうとする。


「お、お母様?一体どうしたのですか?」


「皇后陛下がリティを呼んでるんだよ!」


 お母様の側にいたお父様が、そう呟いた。


「えっ……皇后陛下が……!?」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m ✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。 【あらすじ】 神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!   そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!  事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます! 仕事繁忙期の為、2月中旬まで更新を週一に致します。 カクヨム(吉野 ひな)様にも投稿しています。

ネグレクトされていた四歳の末娘は、前世の経理知識で実家の横領を見抜き追放されました。これからはもふもふ聖獣と美食巡りの旅に出ます。

旅する書斎(☆ほしい)
ファンタジー
アークライト子爵家の四歳の末娘リリアは、家族から存在しないものとして扱われていた。食事は厨房の残飯、衣服は兄姉のお下がりを更に継ぎ接ぎしたもの。冷たい床で眠る日々の中、彼女は高熱を出したことをきっかけに前世の記憶を取り戻す。 前世の彼女は、ブラック企業で過労死した経理担当のOLだった。 ある日、父の書斎に忍び込んだリリアは、ずさんな管理の家計簿を発見する。前世の知識でそれを読み解くと、父による悪質な横領と、家の財産がすでに破綻寸前であることが判明した。 「この家は、もうすぐ潰れます」 家族会議の場で、リリアはたった四歳とは思えぬ明瞭な口調で破産の事実を突きつける。激昂した父に「疫病神め!」と罵られ家を追い出されたリリアだったが、それは彼女の望むところだった。 手切れ金代わりの銅貨数枚を握りしめ、自由を手に入れたリリア。これからは誰にも縛られず、前世で夢見た美味しいものをたくさん食べる生活を目指す。

どうやら悪役令嬢のようですが、興味が無いので錬金術師を目指します(旧:公爵令嬢ですが錬金術師を兼業します)

水神瑠架
ファンタジー
――悪役令嬢だったようですが私は今、自由に楽しく生きています! ――  乙女ゲームに酷似した世界に転生? けど私、このゲームの本筋よりも寄り道のミニゲームにはまっていたんですけど? 基本的に攻略者達の顔もうろ覚えなんですけど?! けど転生してしまったら仕方無いですよね。攻略者を助けるなんて面倒い事するような性格でも無いし好きに生きてもいいですよね? 運が良いのか悪いのか好きな事出来そうな環境に産まれたようですしヒロイン役でも無いようですので。という事で私、顔もうろ覚えのキャラの救済よりも好きな事をして生きて行きます! ……極めろ【錬金術師】! 目指せ【錬金術マスター】! ★★  乙女ゲームの本筋の恋愛じゃない所にはまっていた女性の前世が蘇った公爵令嬢が自分がゲームの中での悪役令嬢だという事も知らず大好きな【錬金術】を極めるため邁進します。流石に途中で気づきますし、相手役も出てきますが、しばらく出てこないと思います。好きに生きた結果攻略者達の悲惨なフラグを折ったりするかも? 基本的に主人公は「攻略者の救済<自分が自由に生きる事」ですので薄情に見える事もあるかもしれません。そんな主人公が生きる世界をとくと御覧あれ! ★★  この話の中での【錬金術】は学問というよりも何かを「創作」する事の出来る手段の意味合いが大きいです。ですので本来の錬金術の学術的な論理は出てきません。この世界での独自の力が【錬金術】となります。

【完結】乙女ゲーム開始前に消える病弱モブ令嬢に転生しました

佐倉穂波
恋愛
 転生したルイシャは、自分が若くして死んでしまう乙女ゲームのモブ令嬢で事を知る。  確かに、まともに起き上がることすら困難なこの体は、いつ死んでもおかしくない状態だった。 (そんな……死にたくないっ!)  乙女ゲームの記憶が正しければ、あと数年で死んでしまうルイシャは、「生きる」ために努力することにした。 2023.9.3 投稿分の改稿終了。 2023.9.4 表紙を作ってみました。 2023.9.15 完結。 2023.9.23 後日談を投稿しました。

『処刑されるたびに12歳に戻る悪役令嬢、7回目の人生は「何もせず寝て過ごす」ことに決めたら、なぜか周囲が勝手に勘違いして聖女扱いされています

六角
恋愛
公爵令嬢リリアーナは、18歳の誕生日に必ず断罪・処刑されては12歳に戻るという地獄のループを6回も繰り返していた。 真面目に努力しても、剣を極めても、裏社会を支配しても、結局は殺される運命。 心折れた彼女は、7回目の人生でついに決意する。 「もう頑張らない。どうせ死ぬなら、今回はひたすら寝て過ごそう」と。 しかし、安眠を求めて「うるさい」と敵を黙らせれば『王者の覇気』と恐れられ、寝ぼけて放った魔法は『神の奇跡』と崇められ、枕への異常なこだわりは『深遠なる儀式』と誤解されてしまう。 気がつけば、ストーカー気味のヤンデレ王子、パン屋の元ヒロイン、狂犬の如きライバル令嬢、元部下の暗殺者、そして不眠症の魔王までもが彼女の信者となり、リリアーナは意図せずして国を、そして世界を救う「最強の聖女」へと祭り上げられていく。 「お願いだから、私を寝かせて!」 睡眠欲だけで運命(システム)さえもねじ伏せる、無気力悪役令嬢の痛快勘違いサクセス(?)ストーリー!

遡ったのは君だけじゃない。離縁状を置いて出ていった妻ーー始まりは、そこからだった。

沼野 花
恋愛
夫と子供たちに、選ばれなかったイネス。 すべてを愛人に奪われ、彼女は限界を迎え、屋敷を去る。 だが、その先に待っていたのは、救いではなかった。 イネスを襲った、取り返しのつかない出来事。 変わり果てた現実を前に、 夫はようやく、自分が何を失ったのかを思い知る。 深い後悔と悲しみに苛まれながら、 失ったイネスの心を取り戻そうとする夫。 しかし、彼女の心はすでに、外の世界へと向かっていた。 贖罪を背負いながらもイネスを求め続ける夫。 そして、母の心を知っていく子供たち。 イネスが求める愛とは、 そして、幸せとは――。

御家騒動なんて真っ平ごめんです〜捨てられた双子の片割れは平凡な人生を歩みたい〜

伽羅
ファンタジー
【幼少期】 双子の弟に殺された…と思ったら、何故か赤ん坊に生まれ変わっていた。 ここはもしかして異世界か?  だが、そこでも双子だったため、後継者争いを懸念する親に孤児院の前に捨てられてしまう。 ようやく里親が見つかり、平和に暮らせると思っていたが…。 【学院期】 学院に通い出すとそこには双子の片割れのエドワード王子も通っていた。 周りに双子だとバレないように学院生活を送っていたが、何故かエドワード王子の影武者をする事になり…。  

オバサンが転生しましたが何も持ってないので何もできません!

みさちぃ
恋愛
50歳近くのおばさんが異世界転生した! 転生したら普通チートじゃない?何もありませんがっ!! 前世で苦しい思いをしたのでもう一人で生きて行こうかと思います。 とにかく目指すは自由気ままなスローライフ。 森で調合師して暮らすこと! ひとまず読み漁った小説に沿って悪役令嬢から国外追放を目指しますが… 無理そうです…… 更に隣で笑う幼なじみが気になります… 完結済みです。 なろう様にも掲載しています。 副題に*がついているものはアルファポリス様のみになります。 エピローグで完結です。 番外編になります。 ※完結設定してしまい新しい話が追加できませんので、以後番外編載せる場合は別に設けるかなろう様のみになります。

処理中です...