悪役令嬢リティシア

如月フウカ

文字の大きさ
27 / 209

パーティを終えて

しおりを挟む
部屋に戻ると、私は深くため息をつく。


 初めはレースのついたこれでもかと飾られた王女様専用の様なデザインが嫌すぎて抵抗しかなかった。


 しかし何日も過ごして慣れてきてからは逆にここが一番屋敷で落ち着く場所になった。まぁそれでもベッドだけは変えられるものなら今すぐにでも変えたいが。


 あの悪役令嬢リティシアの部屋だから物が床に散乱し放題かと思われたが、そこは使用人の出番の様で、私が転生に気づいた瞬間も部屋は不自然な程綺麗に保たれていた。


 ちらりと横目で見てみれば、リティシアの瞳に合わせてか、花瓶には美しいピンク色の花が添えられている。


 今朝と花瓶の色が変わっているから、恐らくルナが主人がいない時間でもサボらずに入れ替えてくれたのだろう。


 今日の事を改めて振り返ると…悪役令嬢になりきるという点に関しては微妙だったと言える。だが元々の酷すぎる評判によってどうにかなったように思えた。


 そしてアレクシスの好感度を下げるという点は、成功どころか大失敗に終わってしまった。


 彼は私を敬称なしで呼び始め、明らかに距離を縮めようとしていた。


 …それが私にとっては嫌でないと言うのだから困る。


 彼と親密になるのは嬉しいが、なってはならないと何度も言い聞かせていたはずなのに。


 彼の優しさに私は終始振り回されてばかりだった。


 アレクの上着は、明日自分で丁寧に洗って後日返そうと思う。…この世界には洗濯機なんてないだろうから、使用人に洗濯の仕方を教わらなくちゃいけないわね。


 嘘を教えられたら困るけど…まぁリティシアに反抗するような人間は殆どいないわよね。


 私は彼の上着を丁寧に畳み、棚の上にそっと置く。埃がつかないといいけど…明日どうせ洗うから平気よね。


 綺羅びやかな装飾に輝く宝石が埋められた衣装はアレクシスでなければ着こなせないことだろう。彼は服の美しさに負けることなく上手に着こなし、彼自身の魅力を一層引き立てていた。アルターニャが誰よりも美しいと言っていたが、それはあながち間違いではないと私は思う。


 兎に角…今日は一日生き残れた事に感謝しよう。


 恐らくワインを人にかけてしまうくらいやりすぎなのがリティシアらしく、どうにか乗り切れたのであろう。適度な悪役令嬢とは非常に難しいものだ。


 ふと、外からトントンと軽く叩くノックが聞こえてくる。


 返事をせずにいると、「…リティシア様、もうお休みになられてしまいましたか…?もし起きていらっしゃったらでよろしいのですが、お風呂はいかがなさいますか?」と小さな声が聞こえてくる。


 …外に出たのにお風呂に入らない訳にはいかないよね。ベッドに腰掛けて考え込んでいたが、そうもしていられない。


 私は重い腰を上げて無駄に広いお風呂場へと向かった。


【アレクシス】


 パーティがお開きとなり、全ての客が瞬く間に城からいなくなった。使用人達が後片付けをし、広間は先程までの騒がしさが嘘のように静まり返っていた。


 母さんはとっくに寝てしまったが、国王はそう簡単に寝れるほど楽な役職ではない。よって父さんはまだ起きており、更に俺を玉座の間に呼び出したのであった。


 こんな夜遅くに俺を呼ぶ時は…他人にはあまり聞かれたくない話をする時だ。一体何を話すのか、このような時間に呼び出される度に実の親でありながら緊張してしまう。


「アレクシス…我が息子よ。今日は久々のお前が出席するパーティだったが…楽しかったか」


「勿論…楽しかったよ、父さん」


 その返事に満足したのか、優しい表情を浮かべる父さんの様子に、俺はホッと胸を撫で下ろす。


 他国との関係の事、かつての女性関係の事…父さんから色んな話を聞いたが、それら全ては誰かに聞かれては国王の威厳に関わるようなものであった。


 誰にも聞かれたくない話など正直聞きたくはない。俺は父さんのような好意に見返りを求めるような裏のある人間には…なりたくない。


 その一心で、王子として人からどんなに厳しい教育を受けようと、俺自身は人に優しくしようと胸に決めて、今日までずっと生きてきた。


 優しいだけでは生きていけないとよく両親に言い聞かせられたが、それでも俺は誰かの笑顔を見るのが好きだった。誰かが喜ぶ姿が一番好きだったんだ。


 父さんは相手を選んで優しさを与え、服従させるような人間であった。言う事を聞かなければ、どんな人間であろうと容赦なく処刑をする。


 古き親友であるブロンド公爵を除いては、父さんに恩を売られ、頭が上がらない人が殆どだ。俺はそんな使い方は絶対に…しない。


 人に与える優しさは、決して見返りを求めるものではない。


 俺が呼ばれた理由はただ自分にパーティの感想を求めただけであると信じたかったのだが、その予想はいとも簡単に裏切られる事となる。


「それは良かった。だが…使用人から聞いたぞ。果たして我が国の民はそう感じていただろうか?」


「…それは…どういう…?」


「お前も分かっているだろう。一銭たりとも国の利益にならぬ…女の事を。」


 俺はその先の言葉を、聞きたくなかった。


「リティシア=ブロンド…お前の婚約者の事だ。そろそろ…それについてお前と話がしたい」
 

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m ✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。 【あらすじ】 神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!   そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!  事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます! 仕事繁忙期の為、2月中旬まで更新を週一に致します。 カクヨム(吉野 ひな)様にも投稿しています。

ネグレクトされていた四歳の末娘は、前世の経理知識で実家の横領を見抜き追放されました。これからはもふもふ聖獣と美食巡りの旅に出ます。

旅する書斎(☆ほしい)
ファンタジー
アークライト子爵家の四歳の末娘リリアは、家族から存在しないものとして扱われていた。食事は厨房の残飯、衣服は兄姉のお下がりを更に継ぎ接ぎしたもの。冷たい床で眠る日々の中、彼女は高熱を出したことをきっかけに前世の記憶を取り戻す。 前世の彼女は、ブラック企業で過労死した経理担当のOLだった。 ある日、父の書斎に忍び込んだリリアは、ずさんな管理の家計簿を発見する。前世の知識でそれを読み解くと、父による悪質な横領と、家の財産がすでに破綻寸前であることが判明した。 「この家は、もうすぐ潰れます」 家族会議の場で、リリアはたった四歳とは思えぬ明瞭な口調で破産の事実を突きつける。激昂した父に「疫病神め!」と罵られ家を追い出されたリリアだったが、それは彼女の望むところだった。 手切れ金代わりの銅貨数枚を握りしめ、自由を手に入れたリリア。これからは誰にも縛られず、前世で夢見た美味しいものをたくさん食べる生活を目指す。

どうやら悪役令嬢のようですが、興味が無いので錬金術師を目指します(旧:公爵令嬢ですが錬金術師を兼業します)

水神瑠架
ファンタジー
――悪役令嬢だったようですが私は今、自由に楽しく生きています! ――  乙女ゲームに酷似した世界に転生? けど私、このゲームの本筋よりも寄り道のミニゲームにはまっていたんですけど? 基本的に攻略者達の顔もうろ覚えなんですけど?! けど転生してしまったら仕方無いですよね。攻略者を助けるなんて面倒い事するような性格でも無いし好きに生きてもいいですよね? 運が良いのか悪いのか好きな事出来そうな環境に産まれたようですしヒロイン役でも無いようですので。という事で私、顔もうろ覚えのキャラの救済よりも好きな事をして生きて行きます! ……極めろ【錬金術師】! 目指せ【錬金術マスター】! ★★  乙女ゲームの本筋の恋愛じゃない所にはまっていた女性の前世が蘇った公爵令嬢が自分がゲームの中での悪役令嬢だという事も知らず大好きな【錬金術】を極めるため邁進します。流石に途中で気づきますし、相手役も出てきますが、しばらく出てこないと思います。好きに生きた結果攻略者達の悲惨なフラグを折ったりするかも? 基本的に主人公は「攻略者の救済<自分が自由に生きる事」ですので薄情に見える事もあるかもしれません。そんな主人公が生きる世界をとくと御覧あれ! ★★  この話の中での【錬金術】は学問というよりも何かを「創作」する事の出来る手段の意味合いが大きいです。ですので本来の錬金術の学術的な論理は出てきません。この世界での独自の力が【錬金術】となります。

【完結】乙女ゲーム開始前に消える病弱モブ令嬢に転生しました

佐倉穂波
恋愛
 転生したルイシャは、自分が若くして死んでしまう乙女ゲームのモブ令嬢で事を知る。  確かに、まともに起き上がることすら困難なこの体は、いつ死んでもおかしくない状態だった。 (そんな……死にたくないっ!)  乙女ゲームの記憶が正しければ、あと数年で死んでしまうルイシャは、「生きる」ために努力することにした。 2023.9.3 投稿分の改稿終了。 2023.9.4 表紙を作ってみました。 2023.9.15 完結。 2023.9.23 後日談を投稿しました。

『処刑されるたびに12歳に戻る悪役令嬢、7回目の人生は「何もせず寝て過ごす」ことに決めたら、なぜか周囲が勝手に勘違いして聖女扱いされています

六角
恋愛
公爵令嬢リリアーナは、18歳の誕生日に必ず断罪・処刑されては12歳に戻るという地獄のループを6回も繰り返していた。 真面目に努力しても、剣を極めても、裏社会を支配しても、結局は殺される運命。 心折れた彼女は、7回目の人生でついに決意する。 「もう頑張らない。どうせ死ぬなら、今回はひたすら寝て過ごそう」と。 しかし、安眠を求めて「うるさい」と敵を黙らせれば『王者の覇気』と恐れられ、寝ぼけて放った魔法は『神の奇跡』と崇められ、枕への異常なこだわりは『深遠なる儀式』と誤解されてしまう。 気がつけば、ストーカー気味のヤンデレ王子、パン屋の元ヒロイン、狂犬の如きライバル令嬢、元部下の暗殺者、そして不眠症の魔王までもが彼女の信者となり、リリアーナは意図せずして国を、そして世界を救う「最強の聖女」へと祭り上げられていく。 「お願いだから、私を寝かせて!」 睡眠欲だけで運命(システム)さえもねじ伏せる、無気力悪役令嬢の痛快勘違いサクセス(?)ストーリー!

世の中は意外と魔術で何とかなる

ものまねの実
ファンタジー
新しい人生が唐突に始まった男が一人。目覚めた場所は人のいない森の中の廃村。生きるのに精一杯で、大層な目標もない。しかしある日の出会いから物語は動き出す。 神様の土下座・謝罪もない、スキル特典もレベル制もない、転生トラックもそれほど走ってない。突然の転生に戸惑うも、前世での経験があるおかげで図太く生きられる。生きるのに『隠してたけど実は最強』も『パーティから追放されたから復讐する』とかの設定も必要ない。人はただ明日を目指して歩くだけで十分なんだ。 『王道とは歩むものではなく、その隣にある少しずれた道を歩くためのガイドにするくらいが丁度いい』 平凡な生き方をしているつもりが、結局騒ぎを起こしてしまう男の冒険譚。困ったときの魔術頼み!大丈夫、俺上手に魔術使えますから。※主人公は結構ズルをします。正々堂々がお好きな方はご注意ください。

遡ったのは君だけじゃない。離縁状を置いて出ていった妻ーー始まりは、そこからだった。

沼野 花
恋愛
夫と子供たちに、選ばれなかったイネス。 すべてを愛人に奪われ、彼女は限界を迎え、屋敷を去る。 だが、その先に待っていたのは、救いではなかった。 イネスを襲った、取り返しのつかない出来事。 変わり果てた現実を前に、 夫はようやく、自分が何を失ったのかを思い知る。 深い後悔と悲しみに苛まれながら、 失ったイネスの心を取り戻そうとする夫。 しかし、彼女の心はすでに、外の世界へと向かっていた。 贖罪を背負いながらもイネスを求め続ける夫。 そして、母の心を知っていく子供たち。 イネスが求める愛とは、 そして、幸せとは――。

御家騒動なんて真っ平ごめんです〜捨てられた双子の片割れは平凡な人生を歩みたい〜

伽羅
ファンタジー
【幼少期】 双子の弟に殺された…と思ったら、何故か赤ん坊に生まれ変わっていた。 ここはもしかして異世界か?  だが、そこでも双子だったため、後継者争いを懸念する親に孤児院の前に捨てられてしまう。 ようやく里親が見つかり、平和に暮らせると思っていたが…。 【学院期】 学院に通い出すとそこには双子の片割れのエドワード王子も通っていた。 周りに双子だとバレないように学院生活を送っていたが、何故かエドワード王子の影武者をする事になり…。  

処理中です...