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急いで門へと向かうと、御者に頼んで馬車を用意させる。俺の思い詰めたような表情に気づいたのか、彼女は終始こちらの様子を窺っていた。
「…悪い、リティシア。帰りは送れそうにない。急ぎで確かめたい事ができたんだ。…一人で大丈夫か?」
道中に言うと心配させてしまうと思い、直前で彼女にそう告げると、不思議そうな顔をこちらに向けてくる。…すぐに顔を背けたが。
リティシアを送れないのは不安だが、どうしても今すぐ確かめたい事がある。これ以上彼女を引き止めてはおけないし、彼女自身を不安にさせたくはない。
「あらそう。貴方がいなくてせいせいするわ。」
彼女のピンク色の瞳が街灯を受けて怪しく光る。今ではこの発言も彼女の性格上のもので、別に敵意がないのだろうと思えた。
「それは良…くはないか。とにかく、ごめん。…リティシアを無事に家まで届けるように。」
「分かりました」
そう告げると、御者は深く頭を下げてくる。続いてリティシアに目を向けると、ふと彼女の髪飾りが目に入った。
そこで閃いた俺はこちらに目もくれず馬車に乗り込もうとした彼女を、直前で止める。
「あ、ちょっと待って」と呼び止めた俺を心底不服そうに見つめてくる。
「そのバレッタ、貸してくれるか?」
彼女が身に着けているバレッタは間違いなく俺が以前渡したものだ。それならば、この方法も使えるはず。
リティシアは俺の発言に驚いた様子を見せたが、素直にバレッタを外してこちらに手渡してくれる。
「壊したら承知しないわよ」
「分かってる。絶対に壊さない」
一瞬見せたから返せとでも言うのかと思ったが、彼女は意外にも俺が今から何をするのか興味津々のように思えた。
…そういえば、魔法を見た時もそうだった。まるで初めて魔法を見たかのような…そんな純粋な瞳をしていた。
…まぁ、それはあり得ないけどな。
俺は静かに「守護」と呪文を唱えると俺の手から放たれた水の渦は激しく回りながらバレッタへと綺麗に収納されていく。
リティシアはまたしても魔法を驚いたように見つめた後、こちらの説明を今か今かと待っているようであった。
…なんだか親に新しい知識を教わる子供みたいだな。
その様子を指摘したりしたらまた平手打ちをされそうなので、ここは黙っておく事にする。
「一度だけ…危険を察知した時に俺の水の魔法が発動する。だからなるべく外出する時はそれをつけておいてほしい」
彼女自身の魔力が凄いので、大抵の事では傷つかないとは思うが、咄嗟のことで判断が遅れるなどという事も考えられる。
この魔法をかけておけば、俺のいない時でも、水の魔法が独自に危険を察知し、彼女を危険から護ってくれるのである。
…一回きりというのが難点ではあるのだが、魔法を込める道具のバレッタが小さい為仕方ない。もう少し大きければもう少し多い数の魔法を込められたのだが。
それでも、ないよりはずっとマシなはずだ。
強気な態度から周囲に誤解されやすい彼女を、きっと護ってくれる。
いつか皆が彼女を理解してくれれば良いのだが…彼女はそう望んでいないようにも思えて、そんな日は遠いんだろうなとも思う。
…だからせめて俺だけでも、彼女をちゃんと理解しようと思う。見かけだけじゃなく、その中身を見ていきたい。
「…余計な事をするのね。私は最強の魔法使いなのよ?危険なんか起こる訳ないじゃないの」
今日倒れた人間が言う台詞とはとても思えないが、いつもの調子に戻って正直とてもホッとしている。元気で、強いリティシアが一番彼女らしい。
「いくら最強でも油断する事だってあるだろ?そういう時に勝手に発動するから、なるべくつけておいてくれ」
「はいはい。王子様って随分と過保護なのね。分かったわ、適当に着けておくわね」
ひらひらと手を揺らし面倒くさそうに彼女は告げているが、俺から受け取ったバレッタを即座に髪に着けていた。
…相当お気に入りらしい。良かった。これなら頻繁に身につけてくれるかもな。
「じゃぁ、リティシア気をつけて。ご両親に遅くまで引き止めて申し訳ないと伝えておいてくれ」
「分かったわ。じゃぁね」
彼女がバタンと強く扉を閉めるとそれが合図となり馬車はゆっくりと加速し、走り始める。
馬車の姿が完全に見えなくなった後、俺は素早く呪文を唱え、水の渦を先程の庭園へと飛ばす。水の渦の視界を共有し、こちらへと画像を鮮明に伝える事が出来る。
…正確には水に視界などないのだが、その付近にあるものを映像として送ってくれるような感覚だ。竜ドラゴンを使って自分が行くよりも、こっちの方が恐らくずっと早いだろう。
集中し、視界を水の渦へと集中させる。俺とリティシアが見たマギーラックは確かに青い花だった。だが俺の記憶が正しければ、マギーラックは…。
渦は庭園の奥へと辿り着くと、ある花の前でぐるぐると円を描いて映像を伝えてくれる。
…やはり、そうか。そういう事だったんだ。先程からずっと考えてた。母さんの言葉の意味を。ようやく…ようやく理解出来た。
…気づきたくは、なかったけど。
「…悪い、リティシア。帰りは送れそうにない。急ぎで確かめたい事ができたんだ。…一人で大丈夫か?」
道中に言うと心配させてしまうと思い、直前で彼女にそう告げると、不思議そうな顔をこちらに向けてくる。…すぐに顔を背けたが。
リティシアを送れないのは不安だが、どうしても今すぐ確かめたい事がある。これ以上彼女を引き止めてはおけないし、彼女自身を不安にさせたくはない。
「あらそう。貴方がいなくてせいせいするわ。」
彼女のピンク色の瞳が街灯を受けて怪しく光る。今ではこの発言も彼女の性格上のもので、別に敵意がないのだろうと思えた。
「それは良…くはないか。とにかく、ごめん。…リティシアを無事に家まで届けるように。」
「分かりました」
そう告げると、御者は深く頭を下げてくる。続いてリティシアに目を向けると、ふと彼女の髪飾りが目に入った。
そこで閃いた俺はこちらに目もくれず馬車に乗り込もうとした彼女を、直前で止める。
「あ、ちょっと待って」と呼び止めた俺を心底不服そうに見つめてくる。
「そのバレッタ、貸してくれるか?」
彼女が身に着けているバレッタは間違いなく俺が以前渡したものだ。それならば、この方法も使えるはず。
リティシアは俺の発言に驚いた様子を見せたが、素直にバレッタを外してこちらに手渡してくれる。
「壊したら承知しないわよ」
「分かってる。絶対に壊さない」
一瞬見せたから返せとでも言うのかと思ったが、彼女は意外にも俺が今から何をするのか興味津々のように思えた。
…そういえば、魔法を見た時もそうだった。まるで初めて魔法を見たかのような…そんな純粋な瞳をしていた。
…まぁ、それはあり得ないけどな。
俺は静かに「守護」と呪文を唱えると俺の手から放たれた水の渦は激しく回りながらバレッタへと綺麗に収納されていく。
リティシアはまたしても魔法を驚いたように見つめた後、こちらの説明を今か今かと待っているようであった。
…なんだか親に新しい知識を教わる子供みたいだな。
その様子を指摘したりしたらまた平手打ちをされそうなので、ここは黙っておく事にする。
「一度だけ…危険を察知した時に俺の水の魔法が発動する。だからなるべく外出する時はそれをつけておいてほしい」
彼女自身の魔力が凄いので、大抵の事では傷つかないとは思うが、咄嗟のことで判断が遅れるなどという事も考えられる。
この魔法をかけておけば、俺のいない時でも、水の魔法が独自に危険を察知し、彼女を危険から護ってくれるのである。
…一回きりというのが難点ではあるのだが、魔法を込める道具のバレッタが小さい為仕方ない。もう少し大きければもう少し多い数の魔法を込められたのだが。
それでも、ないよりはずっとマシなはずだ。
強気な態度から周囲に誤解されやすい彼女を、きっと護ってくれる。
いつか皆が彼女を理解してくれれば良いのだが…彼女はそう望んでいないようにも思えて、そんな日は遠いんだろうなとも思う。
…だからせめて俺だけでも、彼女をちゃんと理解しようと思う。見かけだけじゃなく、その中身を見ていきたい。
「…余計な事をするのね。私は最強の魔法使いなのよ?危険なんか起こる訳ないじゃないの」
今日倒れた人間が言う台詞とはとても思えないが、いつもの調子に戻って正直とてもホッとしている。元気で、強いリティシアが一番彼女らしい。
「いくら最強でも油断する事だってあるだろ?そういう時に勝手に発動するから、なるべくつけておいてくれ」
「はいはい。王子様って随分と過保護なのね。分かったわ、適当に着けておくわね」
ひらひらと手を揺らし面倒くさそうに彼女は告げているが、俺から受け取ったバレッタを即座に髪に着けていた。
…相当お気に入りらしい。良かった。これなら頻繁に身につけてくれるかもな。
「じゃぁ、リティシア気をつけて。ご両親に遅くまで引き止めて申し訳ないと伝えておいてくれ」
「分かったわ。じゃぁね」
彼女がバタンと強く扉を閉めるとそれが合図となり馬車はゆっくりと加速し、走り始める。
馬車の姿が完全に見えなくなった後、俺は素早く呪文を唱え、水の渦を先程の庭園へと飛ばす。水の渦の視界を共有し、こちらへと画像を鮮明に伝える事が出来る。
…正確には水に視界などないのだが、その付近にあるものを映像として送ってくれるような感覚だ。竜ドラゴンを使って自分が行くよりも、こっちの方が恐らくずっと早いだろう。
集中し、視界を水の渦へと集中させる。俺とリティシアが見たマギーラックは確かに青い花だった。だが俺の記憶が正しければ、マギーラックは…。
渦は庭園の奥へと辿り着くと、ある花の前でぐるぐると円を描いて映像を伝えてくれる。
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