悪役令嬢リティシア

如月フウカ

文字の大きさ
90 / 209

書斎へ

しおりを挟む
 初めは私達の剣幕に驚いたようであったが、アレクシスはなんとか納得してくれた。


 恐らく彼の名誉が傷つけられたということは我慢ができるが、私達が傷ついたという事実は許せないということなのだろう。


 私達が一番傷ついているのは貴方が傷つけられたことなのに、貴方は気づかないんでしょうね。


 まぁ…それがアレクらしいんだけどね。


 さてと、きっちり今後に役立ちそうな本を頂いていくわよ。王族の所有してる本なんだから期待していいわよね。


「ここから先はターニャがご案内致しますので彼女に着いていって下さい」


「では殿下、ご案内致しますわ。こちらへ来てくださいませ」


 エリック殿下が言い終わるや否や笑顔でアルターニャが述べたのだが、その発言を聞けば分かる通り彼女は私達の存在を完全に無視している。


 貴女ちゃんと聞いてた?


 一応貴女の兄は彼らにお詫びしなさいって言ったのよ。彼(アレクシス)だけじゃないんだからね。


「王女様、本当に宜しいのですか?王女様の誕生日に王女様から何かを頂くというのはちょっと…」


 一旦納得はしたものの完全に納得したわけではなかったらしく戸惑いながらアレクシスが呟くがアルターニャは満面の笑みで返す。


 その不気味なほどの明るさが怖いわ…。


「いえいえ、ご迷惑をおかけしたのは事実ですし、どうかお詫びさせて下さい。殿下にはまたこの城に来てほしいですから」


 その時は私もまた行くわよ。


 こんな危険なところにアレク一人を行かせるなんて絶対に無理だわ。


 私達は何故か足取りの軽いアルターニャに案内されながら王室の書斎に歩いて向かう。


 彼女は暇さえあればアレクシスに話しかけていてここぞとばかりにアピールを繰り返している。


 そんな事しても無駄よ。何をしたって主人公には敵わないんだから。


 …勿論それは私もなんだけどね。


 無駄な努力を頑張る可哀想なアルターニャから視線を逸らし、壁に飾られた絵画や高そうな壺を見つめる。


 どうしてこうお城とかお金のある場所にはこういうものが置いてあるのかしらね。


 普段使うことなんて殆ど無いだろうから完全にこういうのは飾り目的で買うんでしょう。


 でも…私みたいな現代人にとっては全く買う意味が分からないわ。


 こんなのを買うなら代わりにスマホ代を払う方が確実にお得だもの。


 あ、スマホ…もう全然触ってないな。最初は誰とも連絡が出来なくて不便だなと感じていたけどないならないで意外と慣れるものね。


 それに連絡をする相手も初めは誰もいなかったわけだし…連絡先に0の文字が刻まれるよりはない方がよかったかもしれないわ。


 今スマホを手に入れたとしたらアレクシスはすぐ交換してくれるかな。アーグレンもしてくれそう。


 …でもアルターニャはいらないかな。


 なんか既読スルーしたら電話で凄い勢いで怒られそうだし。それから私の名前を「婚約破棄しろ」に変更されそうだしね。


 私がそんな事を考えているとは全く知らないアーグレンはアルターニャに聞こえないように小声で私に囁いてくる。


「公女様、先ほどはアレクに貰えるなら貰っておけと言ってしまいましたが…一体アルターニャ王女は何を企んでいるのでしょうか…」


 アルターニャの行動全てが怪しいというのは私も納得できるわ。でも…かと言ってずっと警戒してるのも疲れるわよね。


「さぁね。でも貴方の言う通り折角くれるなら断らずに貰っておくべきよね。私達はそれほどのことをされたんだし」


「そうですよね。私もそう思います。ですが…先ほどエリック殿下がアルターニャ王女に耳打ちしていたことがどうしても気になるんですよね…」


「考えていても分からないことは考えない方が気が楽よ。でも…これだけは覚えておいて。もし何かあったら私ではなくアレクを優先して護って。良いわね」


「公女様。私にとってはどちらも命に替えても護りたい大切な主人なのです。どちらか片方ではありません。必ずお二人共お助け致します。」


 その強い意志のこもった瞳に私は一瞬言葉を失うが、彼らしいなと感じ自然と口元が綻ぶ。


「…貴方は根っからの騎士ね。その年で騎士団長になれたのも納得だわ」


「いえ、私などアレクがいなければ騎士団長には絶対になれなかったでしょう。彼には感謝しても…しきれません。一生をかけてお護りするつもりです。それは勿論公女様も同じです。どうかご理解下さい」


 彼が護るという言葉を発する度に強固な意志がよく感じ取れる。生半可な気持ちでは無い。彼は身も心も主人を護る使命を背負った完全なる騎士なのであろう。


 彼が忠実な騎士であればある程、私は安心してアレクを任せることが出来る。


 どうかこれからもずっと…私の代わりに彼の側にいてあげて欲しい。


 それから…貴方の使命は私を護ることではないのだということをちゃんと気づいてくれると良いんだけどな…。


「着きましたわ。こちらがルトレット王国自慢の書斎になります。実は他国のお客様を入れた事が一度もないので、殿下が初めてのお客様ということになりますね」


 いつの間にか辿り着いていたらしい書斎を笑顔で紹介する彼女に私は盛大に呆れるしかない。


 …だから私達は?
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m ✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。 【あらすじ】 神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!   そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!  事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます! 仕事繁忙期の為、2月中旬まで更新を週一に致します。 カクヨム(吉野 ひな)様にも投稿しています。

ネグレクトされていた四歳の末娘は、前世の経理知識で実家の横領を見抜き追放されました。これからはもふもふ聖獣と美食巡りの旅に出ます。

旅する書斎(☆ほしい)
ファンタジー
アークライト子爵家の四歳の末娘リリアは、家族から存在しないものとして扱われていた。食事は厨房の残飯、衣服は兄姉のお下がりを更に継ぎ接ぎしたもの。冷たい床で眠る日々の中、彼女は高熱を出したことをきっかけに前世の記憶を取り戻す。 前世の彼女は、ブラック企業で過労死した経理担当のOLだった。 ある日、父の書斎に忍び込んだリリアは、ずさんな管理の家計簿を発見する。前世の知識でそれを読み解くと、父による悪質な横領と、家の財産がすでに破綻寸前であることが判明した。 「この家は、もうすぐ潰れます」 家族会議の場で、リリアはたった四歳とは思えぬ明瞭な口調で破産の事実を突きつける。激昂した父に「疫病神め!」と罵られ家を追い出されたリリアだったが、それは彼女の望むところだった。 手切れ金代わりの銅貨数枚を握りしめ、自由を手に入れたリリア。これからは誰にも縛られず、前世で夢見た美味しいものをたくさん食べる生活を目指す。

どうやら悪役令嬢のようですが、興味が無いので錬金術師を目指します(旧:公爵令嬢ですが錬金術師を兼業します)

水神瑠架
ファンタジー
――悪役令嬢だったようですが私は今、自由に楽しく生きています! ――  乙女ゲームに酷似した世界に転生? けど私、このゲームの本筋よりも寄り道のミニゲームにはまっていたんですけど? 基本的に攻略者達の顔もうろ覚えなんですけど?! けど転生してしまったら仕方無いですよね。攻略者を助けるなんて面倒い事するような性格でも無いし好きに生きてもいいですよね? 運が良いのか悪いのか好きな事出来そうな環境に産まれたようですしヒロイン役でも無いようですので。という事で私、顔もうろ覚えのキャラの救済よりも好きな事をして生きて行きます! ……極めろ【錬金術師】! 目指せ【錬金術マスター】! ★★  乙女ゲームの本筋の恋愛じゃない所にはまっていた女性の前世が蘇った公爵令嬢が自分がゲームの中での悪役令嬢だという事も知らず大好きな【錬金術】を極めるため邁進します。流石に途中で気づきますし、相手役も出てきますが、しばらく出てこないと思います。好きに生きた結果攻略者達の悲惨なフラグを折ったりするかも? 基本的に主人公は「攻略者の救済<自分が自由に生きる事」ですので薄情に見える事もあるかもしれません。そんな主人公が生きる世界をとくと御覧あれ! ★★  この話の中での【錬金術】は学問というよりも何かを「創作」する事の出来る手段の意味合いが大きいです。ですので本来の錬金術の学術的な論理は出てきません。この世界での独自の力が【錬金術】となります。

【完結】乙女ゲーム開始前に消える病弱モブ令嬢に転生しました

佐倉穂波
恋愛
 転生したルイシャは、自分が若くして死んでしまう乙女ゲームのモブ令嬢で事を知る。  確かに、まともに起き上がることすら困難なこの体は、いつ死んでもおかしくない状態だった。 (そんな……死にたくないっ!)  乙女ゲームの記憶が正しければ、あと数年で死んでしまうルイシャは、「生きる」ために努力することにした。 2023.9.3 投稿分の改稿終了。 2023.9.4 表紙を作ってみました。 2023.9.15 完結。 2023.9.23 後日談を投稿しました。

『処刑されるたびに12歳に戻る悪役令嬢、7回目の人生は「何もせず寝て過ごす」ことに決めたら、なぜか周囲が勝手に勘違いして聖女扱いされています

六角
恋愛
公爵令嬢リリアーナは、18歳の誕生日に必ず断罪・処刑されては12歳に戻るという地獄のループを6回も繰り返していた。 真面目に努力しても、剣を極めても、裏社会を支配しても、結局は殺される運命。 心折れた彼女は、7回目の人生でついに決意する。 「もう頑張らない。どうせ死ぬなら、今回はひたすら寝て過ごそう」と。 しかし、安眠を求めて「うるさい」と敵を黙らせれば『王者の覇気』と恐れられ、寝ぼけて放った魔法は『神の奇跡』と崇められ、枕への異常なこだわりは『深遠なる儀式』と誤解されてしまう。 気がつけば、ストーカー気味のヤンデレ王子、パン屋の元ヒロイン、狂犬の如きライバル令嬢、元部下の暗殺者、そして不眠症の魔王までもが彼女の信者となり、リリアーナは意図せずして国を、そして世界を救う「最強の聖女」へと祭り上げられていく。 「お願いだから、私を寝かせて!」 睡眠欲だけで運命(システム)さえもねじ伏せる、無気力悪役令嬢の痛快勘違いサクセス(?)ストーリー!

世の中は意外と魔術で何とかなる

ものまねの実
ファンタジー
新しい人生が唐突に始まった男が一人。目覚めた場所は人のいない森の中の廃村。生きるのに精一杯で、大層な目標もない。しかしある日の出会いから物語は動き出す。 神様の土下座・謝罪もない、スキル特典もレベル制もない、転生トラックもそれほど走ってない。突然の転生に戸惑うも、前世での経験があるおかげで図太く生きられる。生きるのに『隠してたけど実は最強』も『パーティから追放されたから復讐する』とかの設定も必要ない。人はただ明日を目指して歩くだけで十分なんだ。 『王道とは歩むものではなく、その隣にある少しずれた道を歩くためのガイドにするくらいが丁度いい』 平凡な生き方をしているつもりが、結局騒ぎを起こしてしまう男の冒険譚。困ったときの魔術頼み!大丈夫、俺上手に魔術使えますから。※主人公は結構ズルをします。正々堂々がお好きな方はご注意ください。

遡ったのは君だけじゃない。離縁状を置いて出ていった妻ーー始まりは、そこからだった。

沼野 花
恋愛
夫と子供たちに、選ばれなかったイネス。 すべてを愛人に奪われ、彼女は限界を迎え、屋敷を去る。 だが、その先に待っていたのは、救いではなかった。 イネスを襲った、取り返しのつかない出来事。 変わり果てた現実を前に、 夫はようやく、自分が何を失ったのかを思い知る。 深い後悔と悲しみに苛まれながら、 失ったイネスの心を取り戻そうとする夫。 しかし、彼女の心はすでに、外の世界へと向かっていた。 贖罪を背負いながらもイネスを求め続ける夫。 そして、母の心を知っていく子供たち。 イネスが求める愛とは、 そして、幸せとは――。

御家騒動なんて真っ平ごめんです〜捨てられた双子の片割れは平凡な人生を歩みたい〜

伽羅
ファンタジー
【幼少期】 双子の弟に殺された…と思ったら、何故か赤ん坊に生まれ変わっていた。 ここはもしかして異世界か?  だが、そこでも双子だったため、後継者争いを懸念する親に孤児院の前に捨てられてしまう。 ようやく里親が見つかり、平和に暮らせると思っていたが…。 【学院期】 学院に通い出すとそこには双子の片割れのエドワード王子も通っていた。 周りに双子だとバレないように学院生活を送っていたが、何故かエドワード王子の影武者をする事になり…。  

処理中です...