悪役令嬢リティシア

如月フウカ

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騎士の魔法

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「…分かりました。公女様の言葉を信じます。…出過ぎた真似を致しまして申し訳ございませんでした」


「…私も、悪かったわ」


 いや本当は全部私が悪いんだけどね…アーグレンはただ純粋に気になって聞いただけなんだろうから。なんで逆ギレしてるのって話よね、ホント…。


 恐らくだけど…私はリティシアとしての生活に慣れすぎてそれ以上の待遇を求めてしまっているんでしょうね。


 人間というのは一つ手に入れるとまたその上を手に入れたくなるものだから。私みたいな悪役令嬢は望んじゃいけないって初めから分かっていたはずなのに。


 アーグレンやアレクと関わっているとどうしても別の未来があるんじゃないかって…そう思えてきてしまう。


 ないのよ。ここは小説なんだから。変な期待なんかしちゃダメ。アレクが不幸になって私だけが幸せになる未来なら絶対にいらない。


 周りの人全員を不幸にして私一人が幸せになる未来もいらない。


 だったら私一人が喜んで悪役を演じて不幸になってやるわよ。


 悪役を倒せば主人公は幸せになれる。それが…物語というものなんだから。


「公女様…」


「気にしないで。さっき本当はこんなことを聞くつもりじゃなかったって言ってたけど…何か他に用があったの?」


「はい。公女様がご招待されたティーパーティが近日中に開かれるのであれば、ご一緒することができなくなりそうです。陛下からの呼び出しがありまして…騎士団の様子と溜まった業務をこなしてきますので数週間は確実に帰れなくなりそうだと…そうお伝えしに来たんです。」


 なるほどね…アーグレンはそれを伝えに来たのね。


 王様がわざわざ呼び出すなんて一体どんな用事なのかしら?まぁ彼は騎士団長だし直接呼び出しがあってもおかしくはないか。


「では失礼します。公女様、改めて…申し訳ございませんでした。」


 言うや否やさっさと部屋を去ろうとするアーグレンを引き留める為に私は必死に頭を回転させる。


 このまま帰したら一人反省会とかしていつまでも引きずりそうだからね。何か違う話題を振らなきゃ。


「待って。私からも一つ聞かせてよ」


「…はい」


 彼は足を止め、振り返ると私の言葉を待っている。


 よし、とりあえず引き留めるのには成功したわ。でも質問なんて考えてなかったわ…。私がアーグレンに聞きたいことねぇ…うーん…あぁ、これ、聞いてみようかな。


「アーグレン、貴方…貴方の属性は何?よく考えたら貴方が魔法を使うところなんて一度も見たことがないわ」


 その言葉に彼は驚くと少し悩んだ様子を見せる。そして彼は衝撃の事実を口にする。


「…私の属性は炎ですが…生まれてから一度も魔法を使ったことがありません」


「へぇ使ったことがな…」


 私は彼の言葉を繰り返しかけたが、驚いて目を見開く。


「えっ!?」


 驚く私とはよそに彼はあくまでも平然としてその事実を語っていた。彼にとってはそれが当たり前で、別に驚くべきことではないのだろう。


 だがこの世界では魔力の高さが重視されるはず…そんな世界で魔法が使えないと色々大変なのでは…?


「公女様は知らないのが当然だと思うのですが、実は平民は魔力の高い人の方が少ないんですよ。運良く魔力が高く生まれていればもうとっくに魔術師か何かになっているでしょう。なので魔力が極端に高くない限りは魔力が話題に登ることはありません。皆魔力が低いことを隠そうとしますからね。」


 なるほどね…貴族や王族基準だと魔力が高い人が多いから余計に魔力が重視されているってことね。


「そうだったのね。でも…魔法を使ったことがないのに自分の属性が何か分かってるなんておかしいじゃない?」


 そうよ。それに私と同じ炎属性なんて初めて聞いたわよ。


 別に公爵家のみに与えられた属性ではないから同じ属性の人間がいてもおかしくはないけどまさかこんなに身近にいるとはね。


「私の両親もその先祖も皆炎属性でしたから…恐らく私も炎属性かと…」


 アーグレンは自信がなさそうに言葉を紡いでいき、私から視線を逸らす。


 …確信がないのね。まぁそりゃそうか。使ったことないんだから。


 なんか…ついこの前まで魔法が使えなかった私と同じね。これは…ほっとけないわ。


「アーグレン。貴方の魔力、私が見てあげるわ」


「それは…魔道具ですか?」


 私は部屋に置かれていた眼鏡を手に取るとアーグレンが興味深そうにそれを眺めてくる。


 ひょっとしたら平民出身の彼は見たことすらないのかもしれない。魔道具というのは普通の道具よりもずっと価値のあるものだから。


「えぇ。アレクに貰ったの。これでその人の属性だけじゃなく魔力の強さも分かるのよ」


 騎士団長と魔道具ってあんまり関係なさそうだしその立場になってからもなかなか目にしないものなのかしらね。


 そこで私は素朴な疑問が浮かんだので彼に一つ問いかけてみる。


「…というかアレクが持ってるんだから聞けばすぐに分かったことじゃない。魔法だって教えてもらえたはずなのに…どうして聞かなかったの?」
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