悪役令嬢リティシア

如月フウカ

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魔力測定

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「確かに聞く機会は何度もありましたが…これ以上アレクに迷惑をかける訳にはいきませんから…」


 なるほど…それなら納得できるわね。ただでさえアレクには助けられているのに自分の我儘で迷惑をかける訳にはいかないと…。


 アレクの方もなんとなくアーグレンが魔法について話したくないんだなってことを察していてそのままになっていたんでしょうね。


 そう言われてみれば小説でアーグレンが魔法を使うシーンは確かになかったかもしれないけど…そんな理由があったのね。


「じゃぁ分かった。アレクの代わりに私が貴方に魔法を教えるし、魔力も見てあげるわ。」


「よろしいんですか?」


「遠慮しないで。貴方は私の護衛騎士なんだから」


「護衛騎士は普通ご主人様から何かを教わったりはしないはずですが…」


「よく考えてみて、アーグレン。私が貴方に魔法を教える。その結果貴方はもっと強くなる。その力で私を護衛できる。ほら素晴らしいサイクルのできあがりじゃない?」


 私が人差し指を立て順を追ってその素晴らしいサイクルの説明をしていったのだが、アーグレンはいまいち納得がいっていない様子だった。


「公女様のご厚意だとしか思えな…」


「さぁ確認するわよ」


 これ以上話しても埒が明かないと察した私は眼鏡をかけ、彼の魔力を確認する。


 確かに彼の魔力のオーラは真っ赤であり、炎属性であることが確認できた。問題はその魔力の高さだ。私は驚いて言葉を失った。


「公女様?どうなさいましたか?」


「この魔力の高さで今まで魔法を使ってこなかっただなんて…貴方、宝の持ち腐れにもほどがあるわよ」


 アレクや私には流石に及ばないだろうけど…それにしても濃い色だわ。


 色が濃い程魔力が強いってことだから…彼は魔法の素質があるのね。全く…平民は魔力が高い人の方が少ないんじゃなかったの?


「…普通では?」


「これが普通なら私とアレクは化物だけど?」


「…申し訳ございません」


「いや冗談よ…」


 私ってそんなに怖いのかな…。悪役顔だから怖いんだろうな…ごめんね、冗談が通じない顔で。


 別に私とアレクが化け物だって言いたいの!?信じられないわ!とかを言いたかった訳じゃなかったのよ…?


 まぁ兎に角これだけ素質があれば十分ね。アーグレンは絶対強くなれるわ。


「それじゃ教えるわね。」


「はい」


「まず手を前に出して…頭の中で炎をイメージしたら呪文を唱える。呪文は分かる?」


「…いえ」


「『リフレイア』よ。さぁ、やってみて。魔法は気合いよ。」


 つい最近まで魔法のまの字も使えなかった私がこんな風に偉そうに誰かに教えるようになるなんて想像もしていなかったわ。


 だが私の説明をいまいち理解ができなかったらしいアーグレンは手を前に出したまま硬直してしまう。


「…想像して呪文を唱えるだけですか?」


「そうよ。後は…気合い」


「それが一番分かりません…」


 アレクはもっと丁寧に教えてくれていた気がしないでもないけど、これが私流の教え方。魔法は気合よ。私だって気合でどうにかしたんだもの。


 私の気合論がどうしても信じられないらしいアーグレンは疑惑の表情を浮かべたままとりあえず呪文を唱える。


「…リフレイア」


 しかし何も起きなかった。


 私に注がれる彼の視線に耐えきれずそっぽを向くと必死に思考を巡らせる。


 あれ?私はなんとなくでできたんだけどな…でもこれだけは分かる。失敗の原因は間違いなく指導者の私よね。


 ごめんって。そんな目で見ないでよ。やっぱり気合いだけじゃ無理だろって顔しないで!


 とその時突然、アレクの言葉を思い出した。


「何故一つの呪文で色々な事ができるのかというと、そこには想像力が働いているからなんだ。まずは自分の中に眠る魔力を開放してから、その絵の通りに炎を想像してくれ。目を開けたままでも使えるけど、目を瞑ると集中力が上がるぞ」


 …あぁ、私よりずっと丁寧で分かりやすい説明…そうか、これが足りなかったのね。


「…魔法は想像力、表現力、それから魔力が必要なの。表現力は呪文を唱えるだけで補ってくれるから、大事なのは想像力ね。まず自分の中に眠る魔力を開放してから魔法を使うの。ちなみに目を瞑ると集中力が上がるわ。」


 完全にアレクの受け売りだけどまぁ良いでしょう…アレクなら許してくれるよね。


 唐突に丁寧になった説明に驚きながらも彼は素直に手を前に差し出し、目を瞑る。見ているだけで分かる驚異の集中力で…魔力の流れを探っていく。そして彼は呪文を唱えた。


リフレイア


 その瞬間ぼうっと彼の手の平に炎が灯り、彼は驚愕の表情を浮かべる。


 私は思わず彼の手を握ると「凄いわ!ちゃんとできた!」と彼以上に喜んでしまう。人に教えて何かが成功するとこっちまで気分が良いものなのね。


「さて…まだ終わりじゃないわよ。もう一つ貴方に教えることがある」


「…もう一つですか?」


「えぇ。誰かに変身できたらいいなって思うこと…あるでしょ?」


「…変身魔法…ですか?」


 私はその言葉に答える代わりににやりと口元で笑ってみせた。やっぱりうちの護衛騎士様は魔法も剣も…なんでもできないとね。
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