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予想外
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そして侍女は俺から視線を軽く逸らすと、なんとも言いにくそうに声を発する。
「…ところで殿下、本当にリティシア様と結婚なさるおつもりですか?言いにくいですけどリティシア様は…あんまり良い性格の方ではありませんよね。もういっそのことこの手紙のお姫様か隣国の王女様の方に乗り換えた方が…」
「それはリティシアに失礼だろ。…それにリティシアは昔のリティシアじゃない。今は凄く良い子だよ」
侍女は恐らく俺を心配してそう呟いたのだろうが、どうしても流す事はできなかった。
今の彼女は本当に以前の彼女とは違う。彼女の過去ばかりを見ているのも、他の女性と比べるのも失礼以外の何物でもない。
俺の返答を聞いた侍女は納得がいかなかったのか、先程と同じように深くため息をついた。
「どうですかね。殿下はきっと覚えてないでしょうけど以前リティシア様との関係をお尋ねした時にもきっと根は良い子だからって仰ったんですよ?殿下が優しいだけじゃないんですか?」
その思いもよらぬ言葉に俺は返答に悩んでしまう。
俺はただ誰かに優しくしようと努力しているだけで本当に優しい訳では決して…ない。まだまだそれに関しては努力が足りないところだと思う。
それから…以前の俺はリティシアを根は良い子だと信じ…いや優しい人になってくれると信じてただ彼女を見守っていた。今回の俺もリティシアをただ側で見守っているだけだ。
…もしかしたらリティシア自身が優しくなったのではなくて、優しい人になればいいのにという俺の願望が具現化しただけなのかもしれない。
彼女は本当は優しくなんかなくて、以前のようなお転婆で周囲を困らせるような人で…何も変わっていないのではないか?
もしくはリティシアが変わったことを誰も信じてくれないのは俺のせいなのではないか?
俺が彼女のどんな噂を聞いても信じずにただ見守ってきたから、今も彼女自身は何も変わっていないのに俺の優しさだけで受け入れていると思われてしまうのでは?果たしてそれは…優しさなのか?
優しさというのは見守るだけじゃなくてその人の辛さや悲しみを軽くしてあげるものではないだろうか。その人の悪い部分も指摘して治してあげるのも一種の優しさとも言えるだろう。
俺はリティシアに今まで何をしてあげていたんだろう?これから彼女に何をしてあげれば良いんだ…?
リティシアは俺のために何かをしてくれたのに…俺は何も返せていないんじゃ…。
…そうか、こんなんじゃ嫌われていてもしょうがないよな。
今までの彼女は俺が何を言っても聞かないから半ば諦めていたところがあるのかもしれない。
だが今は違う。今の彼女は誰かを思い、誰かの為に動くことのできる優しい人だ。何か力になってあげたい。
以前何もしてあげられなかったのなら…今から何かをしてあげればいいんだ。彼女が望むもの全て…俺が叶えてみせる。
そうすれば彼女はもう少し…俺の側にいてくれるだろうか。
「殿下?聞いてますか?」
「あぁ…ごめん。ちょっと考え事をしてたんだ」
完全に一人で考え込んでしまって返答するのを忘れていた。
リティシア…彼女については考えれば考えるほどどこまでも悩んでしまう。
彼女が何を考えているのか、何をしてほしいのか、俺についてどう思っているのか…まるで分からないのだから、仕方ないと言えば仕方ないのだが。
「いえ、謝る必要はございませんよ。ところで…殿下が女性に夢中になったことなんて今までありましたっけ?」
「…え?」
「今まで一度もありませんでしたよね。誰かが殿下に夢中になることはこれまで何度もありましたが…逆は全くありませんでしたよ。ですが…今リティシア様のことをお考えになられていましたね?長年お勤めしてきた私には分かりますよ。」
その質問の意図が分からずに聞き返すと侍女はこちらの返答を待たずに勝手に話を続ける。
「確かにそうだけど…それがどうかしたのか?」
「殿下はリティシア様のことが好きなんですか?どんな美しいお姫様も殿下を落とすことはできなかったのに…あの悪女として名高いリティシア様を…まさか殿下が…」
「違う。リティシアはそんな人じゃない!」
思わず机を手で思い切り叩くと、その勢いで資料が数枚ふわりと浮く。彼女のことが好きなのかという質問については返事をすることができなかった。
俺の予想外の行動に驚いて少し怯んだ侍女であったが、それでも尚こちらを真っ直ぐに見つめてくる。
「…殿下。今ならまだ間に合います。リティシア様を諦めて今からでも他のお姫様を探…」
「俺はリティシア以外と婚約するつもりはない。これ以上何かを言うつもりならもう下がれ」
自分でも驚くほど冷たい声と視線を向けると侍女は更に驚いて目を見開く。そして彼女は震える声で言葉を紡いでいく。
「で、殿下…?今私に下がれと…?」
「あぁ。悪いがこれ以上話す気はない」
「…申し訳ございません。余計なことを言ってしまいました。ご無礼をお許し下さい。ただ…私達使用人共は皆殿下の幸せを祈っております。よくお考え下さいませ。失礼します」
侍女は深く頭を下げるとそのまま部屋を出ていく。
侍女はただ自分を心配していただけなのについ必要以上に怒ってしまったと後から後悔が襲ってくる。
だが俺はそれ以上に自分の行動が理解できなかった。今まで自分が誰かに対してここまで怒ったことは果たしてあったか…?グレンとの喧嘩ですらこんなことはしなかった。
そんなに嫌だったのか。リティシアが悪く言われることが。
二度も悪く言われたから嫌だったのか、それともその言葉自体が嫌だったのか。
そういえばあの時…エリック殿下が彼女を悪く言った時もそうだ。どこからか怒りが込み上げてきた。
よく分からないが…俺が思っているよりも彼女の存在が俺の中で大きくなっていることを確かに感じたのだった。
「…ところで殿下、本当にリティシア様と結婚なさるおつもりですか?言いにくいですけどリティシア様は…あんまり良い性格の方ではありませんよね。もういっそのことこの手紙のお姫様か隣国の王女様の方に乗り換えた方が…」
「それはリティシアに失礼だろ。…それにリティシアは昔のリティシアじゃない。今は凄く良い子だよ」
侍女は恐らく俺を心配してそう呟いたのだろうが、どうしても流す事はできなかった。
今の彼女は本当に以前の彼女とは違う。彼女の過去ばかりを見ているのも、他の女性と比べるのも失礼以外の何物でもない。
俺の返答を聞いた侍女は納得がいかなかったのか、先程と同じように深くため息をついた。
「どうですかね。殿下はきっと覚えてないでしょうけど以前リティシア様との関係をお尋ねした時にもきっと根は良い子だからって仰ったんですよ?殿下が優しいだけじゃないんですか?」
その思いもよらぬ言葉に俺は返答に悩んでしまう。
俺はただ誰かに優しくしようと努力しているだけで本当に優しい訳では決して…ない。まだまだそれに関しては努力が足りないところだと思う。
それから…以前の俺はリティシアを根は良い子だと信じ…いや優しい人になってくれると信じてただ彼女を見守っていた。今回の俺もリティシアをただ側で見守っているだけだ。
…もしかしたらリティシア自身が優しくなったのではなくて、優しい人になればいいのにという俺の願望が具現化しただけなのかもしれない。
彼女は本当は優しくなんかなくて、以前のようなお転婆で周囲を困らせるような人で…何も変わっていないのではないか?
もしくはリティシアが変わったことを誰も信じてくれないのは俺のせいなのではないか?
俺が彼女のどんな噂を聞いても信じずにただ見守ってきたから、今も彼女自身は何も変わっていないのに俺の優しさだけで受け入れていると思われてしまうのでは?果たしてそれは…優しさなのか?
優しさというのは見守るだけじゃなくてその人の辛さや悲しみを軽くしてあげるものではないだろうか。その人の悪い部分も指摘して治してあげるのも一種の優しさとも言えるだろう。
俺はリティシアに今まで何をしてあげていたんだろう?これから彼女に何をしてあげれば良いんだ…?
リティシアは俺のために何かをしてくれたのに…俺は何も返せていないんじゃ…。
…そうか、こんなんじゃ嫌われていてもしょうがないよな。
今までの彼女は俺が何を言っても聞かないから半ば諦めていたところがあるのかもしれない。
だが今は違う。今の彼女は誰かを思い、誰かの為に動くことのできる優しい人だ。何か力になってあげたい。
以前何もしてあげられなかったのなら…今から何かをしてあげればいいんだ。彼女が望むもの全て…俺が叶えてみせる。
そうすれば彼女はもう少し…俺の側にいてくれるだろうか。
「殿下?聞いてますか?」
「あぁ…ごめん。ちょっと考え事をしてたんだ」
完全に一人で考え込んでしまって返答するのを忘れていた。
リティシア…彼女については考えれば考えるほどどこまでも悩んでしまう。
彼女が何を考えているのか、何をしてほしいのか、俺についてどう思っているのか…まるで分からないのだから、仕方ないと言えば仕方ないのだが。
「いえ、謝る必要はございませんよ。ところで…殿下が女性に夢中になったことなんて今までありましたっけ?」
「…え?」
「今まで一度もありませんでしたよね。誰かが殿下に夢中になることはこれまで何度もありましたが…逆は全くありませんでしたよ。ですが…今リティシア様のことをお考えになられていましたね?長年お勤めしてきた私には分かりますよ。」
その質問の意図が分からずに聞き返すと侍女はこちらの返答を待たずに勝手に話を続ける。
「確かにそうだけど…それがどうかしたのか?」
「殿下はリティシア様のことが好きなんですか?どんな美しいお姫様も殿下を落とすことはできなかったのに…あの悪女として名高いリティシア様を…まさか殿下が…」
「違う。リティシアはそんな人じゃない!」
思わず机を手で思い切り叩くと、その勢いで資料が数枚ふわりと浮く。彼女のことが好きなのかという質問については返事をすることができなかった。
俺の予想外の行動に驚いて少し怯んだ侍女であったが、それでも尚こちらを真っ直ぐに見つめてくる。
「…殿下。今ならまだ間に合います。リティシア様を諦めて今からでも他のお姫様を探…」
「俺はリティシア以外と婚約するつもりはない。これ以上何かを言うつもりならもう下がれ」
自分でも驚くほど冷たい声と視線を向けると侍女は更に驚いて目を見開く。そして彼女は震える声で言葉を紡いでいく。
「で、殿下…?今私に下がれと…?」
「あぁ。悪いがこれ以上話す気はない」
「…申し訳ございません。余計なことを言ってしまいました。ご無礼をお許し下さい。ただ…私達使用人共は皆殿下の幸せを祈っております。よくお考え下さいませ。失礼します」
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だが俺はそれ以上に自分の行動が理解できなかった。今まで自分が誰かに対してここまで怒ったことは果たしてあったか…?グレンとの喧嘩ですらこんなことはしなかった。
そんなに嫌だったのか。リティシアが悪く言われることが。
二度も悪く言われたから嫌だったのか、それともその言葉自体が嫌だったのか。
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よく分からないが…俺が思っているよりも彼女の存在が俺の中で大きくなっていることを確かに感じたのだった。
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