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許さない
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【アーグレン】
随分と慌てた様子で駆け込んできた騎士団の一人によって、私はアレクと公女様の状況を知った。
今日二人が出掛けていたことは私も当然知っていたのだが、敢えて護衛につかなかった。何故かというと…親友である私に婚約者とのデートを見られるのは流石に嫌なのではないかと思い、気を遣ったからであった。
だがその私の気遣いはすぐに後悔へと変わった。
こんなことなら初めから護衛についておくべきだった。騎士団の人々が使えないわけではないが、彼らにはまだまだ未熟な点が多い。それでも町中を歩くだけなのだから彼らでも対処できる程度のことしか起こらないだろうと高を括っていた。
アレクと公女様自身も相当強いお方だから、なにもないだろうと信じていたのに…まさか怪しい階段を降りていくなどと一体誰が予想できただろうか。
入り口が閉まっていく階段など、どう考えても普通のデート場所ではない。私は二人に何かがあったのだと察し、溜まっていた仕事を放り投げ飛び出した。
固く閉ざされていた入り口は剣で強引に破壊し、なるべく音を立てずに中にいた人々を外へ出すよう騎士団へ指示した。
周囲に敵の気配はしない。公女様とアレクはもっとずっと奥の方にいるのであろうと考えた私は高い段差を乗り越え、できる限りの速度で走り抜けた。
途中で、公女様の声が聞こえた。それは誰かに助けを求める声だった。
私はいても立ってもいられずに公女様と敵の間に飛び込んだ。二人が無事で本当によかった。とりあえず二人を逃すことには成功した。
自分に残された任務はもう一つ。二人が助けたがっていた見知らぬ少女を助けることだ。
「クソッ、あの二人を捕まえられないのならせめてこの女だけでも…」
獲物を二人も逃した男が悔しそうに表情を歪め、私を睨みつける。私が行かせるわけがないだろう。さて、どうやって彼女を助けようか。
男の言葉を聞いた茶髪の少女が静かに声を発した。
「…つまり、私が大人しくしていればあの二人を捕まえないんですね?」
「…そうだな。アイツらを捕まえるのは難しそうだ。だからお前で我慢してやろう…さぁその剣をしまえ、騎士よ。お前の主人を見逃してやるといっているんだ」
先ほどのやり取りから私と彼らとの関係を察したようだ。
だがしかし、この男は勘違いをしている。主人を助けるのは当然のこと。そしてまた主人の願いを叶えることも騎士として…至極当然のことなのだ。
私は思わず笑みを零した。
「見逃してやる?仮にそれを言うとしたら私の台詞なのではないか?」
私の剣に、静かに真っ赤に燃え盛る炎が纏う。暗かった辺りが一瞬にして照らされる。
正確に言うと炎によって照らされた空間は一部だけであり、相変わらず周囲には薄暗い空間が続いている。しかし灯りがあろうとなかろうと関係ない。
敵がそこにいるのであれば斬る。それだけだ。
私の大切な主人…アレクと公女様を苦しめる存在は決して許さない。
「まぁ…初めから見逃すつもりなどないけどな。」
ここに来るまでに幾つもあった牢屋に閉じ込められていた人々の内の一人が言っていた。
私達は奴隷にされる寸前であって、もう何人もの人々が売られていったと。ただ売られるのを待つだけの絶望的な日々を過ごしていたところを我々騎士団に救われたのだと話していた。
私は細かい話を聞かずにアレクと公女様を助けに走ってしまったため詳しい話は知らないが、この情報だけでも十分捕まえる理由になる。
恐らくもっと沢山の悪事を働いているのであろう。目の前に立つこの男は、明らかなる罪人だ。
「奴隷制度は大昔に廃止されている。にも関わらず幾多もの人間を奴隷として売り捌いていた。貴様の罪は重い。王族騎士団長の名誉にかけ貴様を捕える」
剣に纏う炎が一層力を増し、男の人相の悪い顔を照らしあげた。未だ拘束され、身動きの取れない少女の顔は、不安そうに歪んでいた。
「王子様に公爵令嬢、おまけに王族騎士団長か…一度は王子に釣られて捨てようと思った女だが…。一体この平民は何者なんだ?」
男は興味を示し始め、彼女を見つめるが、彼女は訳の分からないといった表情を浮かべる。
正直言って私にも理由は分からない。だが私は知っている。私の主人であるアレクシス王子とリティシア公女は、平民を一切差別しない珍しい貴族であるということを。
勿論彼らが助けたいと望むのであれば、平民であろうが王であろうが全く関係ないが。
「ご令嬢、貴女は何も心配する必要はありません。私の主人たちも、貴女も必ず助け出してみせますから」
「騎士様…」
私は少しだけ男との距離を縮めると、突然男は首を抑えていないもう片方の手でナイフを取り出す。そして少女の首に突き付けると、「動くな!それ以上近寄ればこの女を殺す!」と脅しをかけてくる。
私の気が変わらないことを悟った男は少女を盾にしてこのまま逃げる気なのだろう。少女の顔が恐怖で染まった。
「はぁ…面倒ですね」
私は思わず呆れてしまった。あまりにも浅はかすぎるその考えに。
随分と慌てた様子で駆け込んできた騎士団の一人によって、私はアレクと公女様の状況を知った。
今日二人が出掛けていたことは私も当然知っていたのだが、敢えて護衛につかなかった。何故かというと…親友である私に婚約者とのデートを見られるのは流石に嫌なのではないかと思い、気を遣ったからであった。
だがその私の気遣いはすぐに後悔へと変わった。
こんなことなら初めから護衛についておくべきだった。騎士団の人々が使えないわけではないが、彼らにはまだまだ未熟な点が多い。それでも町中を歩くだけなのだから彼らでも対処できる程度のことしか起こらないだろうと高を括っていた。
アレクと公女様自身も相当強いお方だから、なにもないだろうと信じていたのに…まさか怪しい階段を降りていくなどと一体誰が予想できただろうか。
入り口が閉まっていく階段など、どう考えても普通のデート場所ではない。私は二人に何かがあったのだと察し、溜まっていた仕事を放り投げ飛び出した。
固く閉ざされていた入り口は剣で強引に破壊し、なるべく音を立てずに中にいた人々を外へ出すよう騎士団へ指示した。
周囲に敵の気配はしない。公女様とアレクはもっとずっと奥の方にいるのであろうと考えた私は高い段差を乗り越え、できる限りの速度で走り抜けた。
途中で、公女様の声が聞こえた。それは誰かに助けを求める声だった。
私はいても立ってもいられずに公女様と敵の間に飛び込んだ。二人が無事で本当によかった。とりあえず二人を逃すことには成功した。
自分に残された任務はもう一つ。二人が助けたがっていた見知らぬ少女を助けることだ。
「クソッ、あの二人を捕まえられないのならせめてこの女だけでも…」
獲物を二人も逃した男が悔しそうに表情を歪め、私を睨みつける。私が行かせるわけがないだろう。さて、どうやって彼女を助けようか。
男の言葉を聞いた茶髪の少女が静かに声を発した。
「…つまり、私が大人しくしていればあの二人を捕まえないんですね?」
「…そうだな。アイツらを捕まえるのは難しそうだ。だからお前で我慢してやろう…さぁその剣をしまえ、騎士よ。お前の主人を見逃してやるといっているんだ」
先ほどのやり取りから私と彼らとの関係を察したようだ。
だがしかし、この男は勘違いをしている。主人を助けるのは当然のこと。そしてまた主人の願いを叶えることも騎士として…至極当然のことなのだ。
私は思わず笑みを零した。
「見逃してやる?仮にそれを言うとしたら私の台詞なのではないか?」
私の剣に、静かに真っ赤に燃え盛る炎が纏う。暗かった辺りが一瞬にして照らされる。
正確に言うと炎によって照らされた空間は一部だけであり、相変わらず周囲には薄暗い空間が続いている。しかし灯りがあろうとなかろうと関係ない。
敵がそこにいるのであれば斬る。それだけだ。
私の大切な主人…アレクと公女様を苦しめる存在は決して許さない。
「まぁ…初めから見逃すつもりなどないけどな。」
ここに来るまでに幾つもあった牢屋に閉じ込められていた人々の内の一人が言っていた。
私達は奴隷にされる寸前であって、もう何人もの人々が売られていったと。ただ売られるのを待つだけの絶望的な日々を過ごしていたところを我々騎士団に救われたのだと話していた。
私は細かい話を聞かずにアレクと公女様を助けに走ってしまったため詳しい話は知らないが、この情報だけでも十分捕まえる理由になる。
恐らくもっと沢山の悪事を働いているのであろう。目の前に立つこの男は、明らかなる罪人だ。
「奴隷制度は大昔に廃止されている。にも関わらず幾多もの人間を奴隷として売り捌いていた。貴様の罪は重い。王族騎士団長の名誉にかけ貴様を捕える」
剣に纏う炎が一層力を増し、男の人相の悪い顔を照らしあげた。未だ拘束され、身動きの取れない少女の顔は、不安そうに歪んでいた。
「王子様に公爵令嬢、おまけに王族騎士団長か…一度は王子に釣られて捨てようと思った女だが…。一体この平民は何者なんだ?」
男は興味を示し始め、彼女を見つめるが、彼女は訳の分からないといった表情を浮かべる。
正直言って私にも理由は分からない。だが私は知っている。私の主人であるアレクシス王子とリティシア公女は、平民を一切差別しない珍しい貴族であるということを。
勿論彼らが助けたいと望むのであれば、平民であろうが王であろうが全く関係ないが。
「ご令嬢、貴女は何も心配する必要はありません。私の主人たちも、貴女も必ず助け出してみせますから」
「騎士様…」
私は少しだけ男との距離を縮めると、突然男は首を抑えていないもう片方の手でナイフを取り出す。そして少女の首に突き付けると、「動くな!それ以上近寄ればこの女を殺す!」と脅しをかけてくる。
私の気が変わらないことを悟った男は少女を盾にしてこのまま逃げる気なのだろう。少女の顔が恐怖で染まった。
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