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エディス・コーンウォール嬢の婚活
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「うわぁぁぁこの魚を炙ったの、めちゃくちゃ白ワインに合いますねぇ」
オリヴィア・エヴァンスがうっとりした顔で私が作ったつまみを頬張って笑顔になった。
私はエディス・コーンウォール公爵令嬢。ついこの前、生まれた時から決まっていた公爵子息との婚約が破棄された悲劇のヒロインーというのは建前で、幼い頃から自分が前世で読んでいた好きな小説の《悪役令嬢その1》であるという自覚があったのでまったくショックでもなんでもない。もともと、幼なじみの彼のことは友人としては気に入っていたが異性としてはみていなかったし、いずれ破棄されることがわかっているのであれば、そのために準備しながら生きていけばいいだけである。
オリヴィアは、私が《悪役令嬢その1》として本格的に活動し始めた頃にあるお茶会で出会った《悪役令嬢その2》なのだが、本人はほどほどの令嬢だと思っているようだが何をおっしゃるうさぎさん、とても可愛らしい美少女侯爵令嬢である。彼女との《悪役令嬢》としての活動は非常にスムーズで、私は彼女の聡明さを気に入っていたのだが、私が物語から退場するその日にお互いが前世の記憶持ちの、転生令嬢ということが判明して大盛り上がりをしたのだ!その時にお疲れ様呑み会をしようと固く約束したのがようやく今日果たせている、というわけだ。
常々、ヒーローにそんなに惹かれているようにはどうしても思えないオリヴィアが《悪役令嬢その2》であるのは何故かと疑問に思っていたのだが全ての謎がこれで一気に解けた。そんな彼女はヒーローの親友ポジションにいた美貌のレオナルド・サットン侯爵子息に見染められて、あれよあれよという間に婚約をしたという。
「そうなのよ、ここの食事って油が多い上に、基本こってり味か、塩味じゃない?こう…料理の足し算ばかりって感じで、時々我慢できなくなるのよね」
「すごくよく分かります、たまに白いご飯の上に卵のせて、醤油かけたくなります」
「分かるわ~、それにネギがあったら私死ねるかも」
コーンウォール公爵家はもちろん住み込みの料理人がいるので普段私も手を出すことはないのだが、今日はオリヴィアとの念願の呑み会だったので料理人に頼んで、両親には内緒で私がつまみを作らせてもらったのだ。白魚を炙ったもの、ブルスケッタ、カルパッチョのようなもの、ローストビーフのサラダ、まぁ調味料などは手に入らないものがあるので正確には自分がかつて食べていたものとは違うのだが、なんとはなしに再現できたし、オリヴィアは涙も流さんばかりに喜んでくれた。食って大事よねー。
「でもこれでやっとエディス様も婚活できますねっ!どんな方がタイプなんですか?」
オリヴィアがにこにこ笑いながら言うので、私はそのことを思い出して気持ちが重くなった。私の表情が暗くなったのを見て、彼女がこてんと首を倒す。か、可愛いなぁ…。私にこの可愛げがあればなぁ…。
「タイプはね…筋骨隆々の、ゴリラであればゴリラでいいの」
「ええっ!めちゃくちゃ意外ですっ!!」
オリヴィアの婚約者のレオナルドは、貴族令嬢の夢といっていいほどの王子様ぶりだから、私の趣味は受け入れてもらえないだろうな…知ってた。
「もうね、貴族子息では絶対いないってのはわかってるんだよね~」
レオナルドはそれでも鍛えているほうだと思うが、私の理想はガテン系の男性だし、基本的に貴族男性にそういう男はいない、わかってるーーわかってるんだーーーーー!!!!
「さすがにそうですよね…」
「みんな吹けば飛ぶ感じでしょ~ダメなの、地にぶっとい足ががっつりとついているタイプじゃないと…!筋肉があればあるだけ、ごッつい男が私をこう…ぐぐぐーと抱きしめてくれるという図に萌えるのよ、そういう性癖なのよっ」
「騎士とかの方がいい感じですよね?」
「騎士の方がまだ可能性あるよね…でもうちの両親が騎士ではダメっていうから…あああ貴族子息でゴリラ、いないかなぁ」
しばらく何事か考えていたオリヴィアが我慢できなくなったのか爆笑した。
当ててみましょうか、何を想像したのか、ゴリラが貴族風の衣装を着てシャラランシャラランと畏って歩いている姿を思い浮かべたよね?違うからね?私のタイプはゴリラじゃなくて、一応人間だからね?
「貴族子息でゴリラな方がいらしたらすぐにエディス様にお知らせします」
「よろしく頼むわぁ」
ぐびびびーと目の前の白ワインを一気に煽った。
「エディス様って前世では何をされていたんですか?」
「ヨガのインストラクター、でもメインは居酒屋のキッチンのバイトしてた」
私は前世は齢27歳で世を去った、交通事故だった。前世では付き合っていた彼氏がいて、彼とそろそろ籍を入れようかと思っていたところだった。え?聞きたい?彼はね、ヨガのインストラクターをしているジムで知り合った、ガチムチ系のトレーナーでした。もうぼんやりとしか思い出せないけど、理想の筋肉だったなぁ…。
「ああ、なるほど、それでこれだけお料理を作るのが上手でいらっしゃるんですね」
「いやいや、いわゆる居酒屋飯だから料理の基礎があるわけじゃないんだよ。オリヴィア様は何してたの?」
「私は単なる普通のSEです」
「システムエンジニア!」
あまりにも縁のない職種で想像がつかないが、響きはとっても賢そうである。
「こう…パソコンの前に座ってなんかシステムを作ったりっていう?」
「確かにそういう方もいらっしゃいますけど、私はプログラミングはあまりしていませんでしたが…」
分からんわ。オリヴィアはでもあっさりした口調で続けた。
「でも私の仕事って要するに日本であれだけの環境がないと出来ないことでして、結局転生してしまうとなんの役に立たないっていうか。エディス様みたいにヨガや料理が出来る方が、結局何倍も生活を豊かにすると思います」
いい子だなー
レオナルドって元婚約者の親友ポジションだったから、まぁ顔見知りではあるんだけど、意外に女を見る目あったんだなー。あいつが連れていた女ってろくなやついなかったけどなぁー。ん?連れてたっけ?女たちが一方的に熱をあげてただけ?あいつって今まで付き合ってたことあったっけか?
オリヴィアと散々笑って話して、趣味じゃない男たちの間から婚約者をいずれ選ばなきゃいけないと思って鬱々していた心が、多少すっきりした。
「じゃ、ゴリラを見つけたら連絡するねー」
最後にはすっかり砕けた口調になったオリヴィアが多少間違った主旨の発言をしながら帰っていった。ゴリラじゃないよー!私は人間が好きなんだよー!
よぉぉし、私、婚活がんばるぞ!
オリヴィア・エヴァンスがうっとりした顔で私が作ったつまみを頬張って笑顔になった。
私はエディス・コーンウォール公爵令嬢。ついこの前、生まれた時から決まっていた公爵子息との婚約が破棄された悲劇のヒロインーというのは建前で、幼い頃から自分が前世で読んでいた好きな小説の《悪役令嬢その1》であるという自覚があったのでまったくショックでもなんでもない。もともと、幼なじみの彼のことは友人としては気に入っていたが異性としてはみていなかったし、いずれ破棄されることがわかっているのであれば、そのために準備しながら生きていけばいいだけである。
オリヴィアは、私が《悪役令嬢その1》として本格的に活動し始めた頃にあるお茶会で出会った《悪役令嬢その2》なのだが、本人はほどほどの令嬢だと思っているようだが何をおっしゃるうさぎさん、とても可愛らしい美少女侯爵令嬢である。彼女との《悪役令嬢》としての活動は非常にスムーズで、私は彼女の聡明さを気に入っていたのだが、私が物語から退場するその日にお互いが前世の記憶持ちの、転生令嬢ということが判明して大盛り上がりをしたのだ!その時にお疲れ様呑み会をしようと固く約束したのがようやく今日果たせている、というわけだ。
常々、ヒーローにそんなに惹かれているようにはどうしても思えないオリヴィアが《悪役令嬢その2》であるのは何故かと疑問に思っていたのだが全ての謎がこれで一気に解けた。そんな彼女はヒーローの親友ポジションにいた美貌のレオナルド・サットン侯爵子息に見染められて、あれよあれよという間に婚約をしたという。
「そうなのよ、ここの食事って油が多い上に、基本こってり味か、塩味じゃない?こう…料理の足し算ばかりって感じで、時々我慢できなくなるのよね」
「すごくよく分かります、たまに白いご飯の上に卵のせて、醤油かけたくなります」
「分かるわ~、それにネギがあったら私死ねるかも」
コーンウォール公爵家はもちろん住み込みの料理人がいるので普段私も手を出すことはないのだが、今日はオリヴィアとの念願の呑み会だったので料理人に頼んで、両親には内緒で私がつまみを作らせてもらったのだ。白魚を炙ったもの、ブルスケッタ、カルパッチョのようなもの、ローストビーフのサラダ、まぁ調味料などは手に入らないものがあるので正確には自分がかつて食べていたものとは違うのだが、なんとはなしに再現できたし、オリヴィアは涙も流さんばかりに喜んでくれた。食って大事よねー。
「でもこれでやっとエディス様も婚活できますねっ!どんな方がタイプなんですか?」
オリヴィアがにこにこ笑いながら言うので、私はそのことを思い出して気持ちが重くなった。私の表情が暗くなったのを見て、彼女がこてんと首を倒す。か、可愛いなぁ…。私にこの可愛げがあればなぁ…。
「タイプはね…筋骨隆々の、ゴリラであればゴリラでいいの」
「ええっ!めちゃくちゃ意外ですっ!!」
オリヴィアの婚約者のレオナルドは、貴族令嬢の夢といっていいほどの王子様ぶりだから、私の趣味は受け入れてもらえないだろうな…知ってた。
「もうね、貴族子息では絶対いないってのはわかってるんだよね~」
レオナルドはそれでも鍛えているほうだと思うが、私の理想はガテン系の男性だし、基本的に貴族男性にそういう男はいない、わかってるーーわかってるんだーーーーー!!!!
「さすがにそうですよね…」
「みんな吹けば飛ぶ感じでしょ~ダメなの、地にぶっとい足ががっつりとついているタイプじゃないと…!筋肉があればあるだけ、ごッつい男が私をこう…ぐぐぐーと抱きしめてくれるという図に萌えるのよ、そういう性癖なのよっ」
「騎士とかの方がいい感じですよね?」
「騎士の方がまだ可能性あるよね…でもうちの両親が騎士ではダメっていうから…あああ貴族子息でゴリラ、いないかなぁ」
しばらく何事か考えていたオリヴィアが我慢できなくなったのか爆笑した。
当ててみましょうか、何を想像したのか、ゴリラが貴族風の衣装を着てシャラランシャラランと畏って歩いている姿を思い浮かべたよね?違うからね?私のタイプはゴリラじゃなくて、一応人間だからね?
「貴族子息でゴリラな方がいらしたらすぐにエディス様にお知らせします」
「よろしく頼むわぁ」
ぐびびびーと目の前の白ワインを一気に煽った。
「エディス様って前世では何をされていたんですか?」
「ヨガのインストラクター、でもメインは居酒屋のキッチンのバイトしてた」
私は前世は齢27歳で世を去った、交通事故だった。前世では付き合っていた彼氏がいて、彼とそろそろ籍を入れようかと思っていたところだった。え?聞きたい?彼はね、ヨガのインストラクターをしているジムで知り合った、ガチムチ系のトレーナーでした。もうぼんやりとしか思い出せないけど、理想の筋肉だったなぁ…。
「ああ、なるほど、それでこれだけお料理を作るのが上手でいらっしゃるんですね」
「いやいや、いわゆる居酒屋飯だから料理の基礎があるわけじゃないんだよ。オリヴィア様は何してたの?」
「私は単なる普通のSEです」
「システムエンジニア!」
あまりにも縁のない職種で想像がつかないが、響きはとっても賢そうである。
「こう…パソコンの前に座ってなんかシステムを作ったりっていう?」
「確かにそういう方もいらっしゃいますけど、私はプログラミングはあまりしていませんでしたが…」
分からんわ。オリヴィアはでもあっさりした口調で続けた。
「でも私の仕事って要するに日本であれだけの環境がないと出来ないことでして、結局転生してしまうとなんの役に立たないっていうか。エディス様みたいにヨガや料理が出来る方が、結局何倍も生活を豊かにすると思います」
いい子だなー
レオナルドって元婚約者の親友ポジションだったから、まぁ顔見知りではあるんだけど、意外に女を見る目あったんだなー。あいつが連れていた女ってろくなやついなかったけどなぁー。ん?連れてたっけ?女たちが一方的に熱をあげてただけ?あいつって今まで付き合ってたことあったっけか?
オリヴィアと散々笑って話して、趣味じゃない男たちの間から婚約者をいずれ選ばなきゃいけないと思って鬱々していた心が、多少すっきりした。
「じゃ、ゴリラを見つけたら連絡するねー」
最後にはすっかり砕けた口調になったオリヴィアが多少間違った主旨の発言をしながら帰っていった。ゴリラじゃないよー!私は人間が好きなんだよー!
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