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エディス・コーンウォール嬢の婚活
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婚活やるぞー!と叫んでみた、とはいえ、やっぱり婚約者探しは難航した。
婚約破棄をされて落ち込んでいると思っていた娘がやっと婚活に前向きになったと喜んだ両親がここぞぉ!と鼻息も荒く紹介してくれる男どもはことごとく、ほっそーりしたうらなりひょうたんみたいな奴らだった。まず顔色が白くてあかん。不健康。私はどうやら見てくれは極上らしく、私の外見を称えて囁いてくるポエムらしきもの、気持ち悪い。いらなーい。そんなのいらないからもうちょっと胸板を厚くしてウホウホ叩いてみせろよー!あ、これはマジでゴリラじゃん。
違うんだー!ゴリラとまでは言わないー!でもニホンザルじゃ困るんだー!
(今日も駄目だった…)
両親が連れ出してくれたやんごとなき貴族たちの夜会、の隅で私はうんざりしていた。ただ今夜の夜会にはオリヴィアも参加してくれてたのは私にとっては喜ばしいことだったんだけど、レオナルドがー!ぴっちり隣を陣取ってるー!とはいえさすがに私の元にやってくるのはレオナルドも止めることができなかったらしく、オリヴィアに後で会おうとか耳元に囁いている。伊達男ここに極まりけり、だな。見る人が見れば美男美女が熱烈に愛し合ってるゥとキュンキュン来るかもしれないが、私の性癖にはこそりとも刺さらないのが残念である。
「エディス…様、お久しぶりです」
人前なので、オリヴィアは丁寧な言葉遣いでにっこり微笑んだ。それから2人でそっと壁際に下がる。周囲に人もいないので、内密の話をするには持ってこいだ。私たちは小声でひそひそ会話をし始める。
「オリヴィア様も、元気そうで何よりね」
私は公爵令嬢、彼女は侯爵令嬢なので、万が一誰かに聞かれることを思うと、どうしても私の方が偉そうになってしまうのは致し方ない。オリヴィアは知的なダークグレーの瞳を煌めかせて私に尋ねる。
「その後、いかがですか?」
「全然駄目なの…落ち込んでる」
「あの…実はちょっと小耳に挟んだんですけど、オスカー・ナイトウェル将軍っていう方が今日この夜会にいらしてて、王からの覚えもめでたく、いずれ侯爵の爵位を受勲されるのではないかと囁かれていますし…多分エディス様の理想に近いのではないかと思うんですが…ただ私もまだお見かけはしていないので、ゴリラ率が何%くらいかはまだ不明です」
ついに新語が生まれました、ゴリラ率何%。
「へぇ…」
ちょっと興味はある、けど。
「いいわ、もうね、ゴリラみたいな筋肉のことは忘れることにした。もうさ、外見ばかりに拘っていても仕方ないでしょ?中身がさ大事なわけじゃん、長いこと一緒に暮らしてくには」
いくら貴族の夫婦がある程度距離を持ちながら生きていくのが大部分とはいえ、話が合わない男と暮らしていくには長すぎる、一生というのは。私はそう話しながら、前世の彼の姿を思い浮かべていた。さようなら、私の理想の筋肉。
オリヴィアはうんうん、と相槌を打ってくれる。
「もちろん、中身が一番大切なことには私は大賛成です。いくらゴリラがいいといっても、ゴリラとは住めませんものね」
いやだから私はゴリラが好きなわけじゃないけどね?
待ちきれない!と顔にでかでかと書いてあった大型犬…いやサイズ的には中型犬くらいかな?のレオナルドの元へオリヴィアを返すと途端に暇になってしまった。両親は社交に忙しいし、寄ってくる男どもは今日もうらなりひょうたんばかりだし、私も今夜はもう婚活する気は失せてしまったので、先に帰ろうかと思い立った。我が家のメイドについて来るように言って、大広間をでて玄関に向かって歩き出す。あー今夜も不発だったなぁー。
と思っていたら、酔いどれ足の侯爵子息…名前はなんだっけな…が人気のない廊下の向こうからやってきた。この前吟遊詩人になりたいんだよねーとか言いながら私につまらないオチのないポエムを囁いてきた男だ。オチつけろや!せめて、上手に韻を踏めや!ラッパーを見習えや!(あ、ラッパーなんて知らんな)と思ったのですげなく対応してしまったのである。
「これはこれはぁ、エディス嬢~」
この男にエディス嬢と呼ばれる筋合いはないんですけど、酔っ払いは無視するに限るから黙殺した。
「今夜もお一人ですかぁ~、お高く止まってるから婚約者に捨てられるんですよぉ~」
私は苦笑した。酔っ払いに正論を言っても暖簾に腕押しなのはわかっているが一応言っておいた。
「お高く止まっていませんし、婚約者には捨てられてません、合意の上で円満に破棄しましたので」
「ざけんなよっ、そういうところがお高く止まってるって言うんだよ!」
おやおや、なかなか思っていたより腐っておられるようで…。
私の後ろを歩いていたメイドが震えて青ざめている。売られた喧嘩は買いたいところだけど、やめておくか。私がため息をついて、廊下を歩き出すと彼は後ろから右腕を掴んできた。酔っ払っているから気が大きいのか、なかなかの力である。
「だとしても、酔っ払ってこうやってか弱い乙女に手を出している貴方につべこべ言われる必要はないですよね?」
男の屑だと言わんばかりにきっと睨んでやると、侯爵子息が微かに怯み、その怯んだ自分を隠すかのように大声を出す。
「俺は酔ってないっ!それから。お前が!俺の求婚を断るから家での立場がなくなったんだよ!どうしてくれるんだよっ!」
酔っ払いほど自分で酔ってないっていうんだよ…
あと家の話なんか知らんよ…
多分、だけど婚約がうまくいかなかったからじゃなくて普段の素行じゃない?
前世の私はトレーナーの彼が一時期ボクササイズにハマっていたのに付き合って、ボクササイズとキックボクササイズを習っていた時期があり、隙をついて攻撃して相手が驚いている隙に逃げることくらいは可能だ。相手が丸腰の場合に限り、だけれど、彼はこれだけ酔ってるし、まぁやろうと思えばできるかな。前世の数倍非力だけど、不意をつくことはできるはず。そう考えている間に、ますますぎゅーと腕に込められた手に力が増すが、私は一歩も譲る気がない。
「私のせいにされる…と?ご自分の器量の小ささを、他人に押しつけるからでは?」
目の前の酔っ払いを睨みつけると同時に、後ろでぶはっと笑う声がする。私が振り向くとまったく知らない男が自分の顔下半分を手で押さえながら笑っていた。
「これはこれは面白いものを見させてもらいました」
彼がツカツカとこちらに歩いて来ると、目の前の酔っ払いが徐々に震え出し、私はこの隙にと彼の手から自分の腕を救い出した。
「ナ、ナイトウェル将軍…」
ああ、この人がオリヴィアの言っていた?
あ、でも残念。
彼はゴリラではなかったーー要するに私のタイプではまったくなかったのだった。
オリヴィアの言葉を借りるなら、ゴリラ率ーーー1%。
婚約破棄をされて落ち込んでいると思っていた娘がやっと婚活に前向きになったと喜んだ両親がここぞぉ!と鼻息も荒く紹介してくれる男どもはことごとく、ほっそーりしたうらなりひょうたんみたいな奴らだった。まず顔色が白くてあかん。不健康。私はどうやら見てくれは極上らしく、私の外見を称えて囁いてくるポエムらしきもの、気持ち悪い。いらなーい。そんなのいらないからもうちょっと胸板を厚くしてウホウホ叩いてみせろよー!あ、これはマジでゴリラじゃん。
違うんだー!ゴリラとまでは言わないー!でもニホンザルじゃ困るんだー!
(今日も駄目だった…)
両親が連れ出してくれたやんごとなき貴族たちの夜会、の隅で私はうんざりしていた。ただ今夜の夜会にはオリヴィアも参加してくれてたのは私にとっては喜ばしいことだったんだけど、レオナルドがー!ぴっちり隣を陣取ってるー!とはいえさすがに私の元にやってくるのはレオナルドも止めることができなかったらしく、オリヴィアに後で会おうとか耳元に囁いている。伊達男ここに極まりけり、だな。見る人が見れば美男美女が熱烈に愛し合ってるゥとキュンキュン来るかもしれないが、私の性癖にはこそりとも刺さらないのが残念である。
「エディス…様、お久しぶりです」
人前なので、オリヴィアは丁寧な言葉遣いでにっこり微笑んだ。それから2人でそっと壁際に下がる。周囲に人もいないので、内密の話をするには持ってこいだ。私たちは小声でひそひそ会話をし始める。
「オリヴィア様も、元気そうで何よりね」
私は公爵令嬢、彼女は侯爵令嬢なので、万が一誰かに聞かれることを思うと、どうしても私の方が偉そうになってしまうのは致し方ない。オリヴィアは知的なダークグレーの瞳を煌めかせて私に尋ねる。
「その後、いかがですか?」
「全然駄目なの…落ち込んでる」
「あの…実はちょっと小耳に挟んだんですけど、オスカー・ナイトウェル将軍っていう方が今日この夜会にいらしてて、王からの覚えもめでたく、いずれ侯爵の爵位を受勲されるのではないかと囁かれていますし…多分エディス様の理想に近いのではないかと思うんですが…ただ私もまだお見かけはしていないので、ゴリラ率が何%くらいかはまだ不明です」
ついに新語が生まれました、ゴリラ率何%。
「へぇ…」
ちょっと興味はある、けど。
「いいわ、もうね、ゴリラみたいな筋肉のことは忘れることにした。もうさ、外見ばかりに拘っていても仕方ないでしょ?中身がさ大事なわけじゃん、長いこと一緒に暮らしてくには」
いくら貴族の夫婦がある程度距離を持ちながら生きていくのが大部分とはいえ、話が合わない男と暮らしていくには長すぎる、一生というのは。私はそう話しながら、前世の彼の姿を思い浮かべていた。さようなら、私の理想の筋肉。
オリヴィアはうんうん、と相槌を打ってくれる。
「もちろん、中身が一番大切なことには私は大賛成です。いくらゴリラがいいといっても、ゴリラとは住めませんものね」
いやだから私はゴリラが好きなわけじゃないけどね?
待ちきれない!と顔にでかでかと書いてあった大型犬…いやサイズ的には中型犬くらいかな?のレオナルドの元へオリヴィアを返すと途端に暇になってしまった。両親は社交に忙しいし、寄ってくる男どもは今日もうらなりひょうたんばかりだし、私も今夜はもう婚活する気は失せてしまったので、先に帰ろうかと思い立った。我が家のメイドについて来るように言って、大広間をでて玄関に向かって歩き出す。あー今夜も不発だったなぁー。
と思っていたら、酔いどれ足の侯爵子息…名前はなんだっけな…が人気のない廊下の向こうからやってきた。この前吟遊詩人になりたいんだよねーとか言いながら私につまらないオチのないポエムを囁いてきた男だ。オチつけろや!せめて、上手に韻を踏めや!ラッパーを見習えや!(あ、ラッパーなんて知らんな)と思ったのですげなく対応してしまったのである。
「これはこれはぁ、エディス嬢~」
この男にエディス嬢と呼ばれる筋合いはないんですけど、酔っ払いは無視するに限るから黙殺した。
「今夜もお一人ですかぁ~、お高く止まってるから婚約者に捨てられるんですよぉ~」
私は苦笑した。酔っ払いに正論を言っても暖簾に腕押しなのはわかっているが一応言っておいた。
「お高く止まっていませんし、婚約者には捨てられてません、合意の上で円満に破棄しましたので」
「ざけんなよっ、そういうところがお高く止まってるって言うんだよ!」
おやおや、なかなか思っていたより腐っておられるようで…。
私の後ろを歩いていたメイドが震えて青ざめている。売られた喧嘩は買いたいところだけど、やめておくか。私がため息をついて、廊下を歩き出すと彼は後ろから右腕を掴んできた。酔っ払っているから気が大きいのか、なかなかの力である。
「だとしても、酔っ払ってこうやってか弱い乙女に手を出している貴方につべこべ言われる必要はないですよね?」
男の屑だと言わんばかりにきっと睨んでやると、侯爵子息が微かに怯み、その怯んだ自分を隠すかのように大声を出す。
「俺は酔ってないっ!それから。お前が!俺の求婚を断るから家での立場がなくなったんだよ!どうしてくれるんだよっ!」
酔っ払いほど自分で酔ってないっていうんだよ…
あと家の話なんか知らんよ…
多分、だけど婚約がうまくいかなかったからじゃなくて普段の素行じゃない?
前世の私はトレーナーの彼が一時期ボクササイズにハマっていたのに付き合って、ボクササイズとキックボクササイズを習っていた時期があり、隙をついて攻撃して相手が驚いている隙に逃げることくらいは可能だ。相手が丸腰の場合に限り、だけれど、彼はこれだけ酔ってるし、まぁやろうと思えばできるかな。前世の数倍非力だけど、不意をつくことはできるはず。そう考えている間に、ますますぎゅーと腕に込められた手に力が増すが、私は一歩も譲る気がない。
「私のせいにされる…と?ご自分の器量の小ささを、他人に押しつけるからでは?」
目の前の酔っ払いを睨みつけると同時に、後ろでぶはっと笑う声がする。私が振り向くとまったく知らない男が自分の顔下半分を手で押さえながら笑っていた。
「これはこれは面白いものを見させてもらいました」
彼がツカツカとこちらに歩いて来ると、目の前の酔っ払いが徐々に震え出し、私はこの隙にと彼の手から自分の腕を救い出した。
「ナ、ナイトウェル将軍…」
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